アフリカでのビジネス事例TOKYO8 GLOBAL、微生物肥料の現地生産モデルで農業課題に挑む

2026年9月25日

2025年8月に横浜で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のテーマ別イベントとして、ジェトロは「TICAD Business EXPO & Conference(TBEC)」を主催した(2025年8月27日付ビジネス短信参照)。TBECを構成する4つのゾーンのうちの1つ「Japan Fair」は、日本とアフリカのビジネス関係強化と交流促進を目的に開催され、日本企業194社・団体が出展した。TOKYO8 GLOBAL(東京都)は、Japan Fairに出展した企業の1つであり、微生物技術を活用した農業用微生物肥料「Tokyo8」の普及を通じて、アフリカの農業生産性向上や循環型農業の推進に取り組むなど、現地の課題解決につながる事業を展開している。TBECへの出展を経て現在どのように事業が進展しているのか、取締役の石田陽平氏、国際営業を担当するラボーヌ・エノラ氏を中心に話を聞いた(取材日: 2026年6月17日)。

現地生産型フランチャイズでアフリカ展開

質問:
貴社の概要について。
答え:
当社は、農業用微生物肥料「Tokyo8」の海外事業を展開している。親会社である太陽油化は汚泥処理事業を基幹事業としており、都市部の排水処理において長年微生物の研究を重ねてきた。その過程で得られた知見を生かして開発したのがTokyo8であり、当社はその海外展開を担っている。Tokyo8は約1,500種の微生物群からなり、土壌環境を改善して作物の生育を促進する。化学肥料を使用した場合と同等か、それを上回る収量が得られた例もある。さらに高温障害への耐性や病害への抵抗性の向上も期待できる。2022年には有機JAS資材登録を取得した。

日本国内で販売する「Tokyo8」(同社提供)

マラウイ産の「Tokyo8」(同社提供)
質問:
海外展開の現状は。
答え:
現在はフランチャイズ方式を中心に海外展開を進めている。基本的には、当社が日本からTokyo8の菌種となる微生物原液と製造ノウハウを提供し、現地パートナーがTokyo8の生産・販売を担うモデルだ。現地では家畜の糞尿と水を原料としてTokyo8を培養・増産する仕組みを採用しており、月10リットルの原液から月間約3,000リットルのTokyo8を生産できる。
肥料としての販売に必要な肥料登録が完了しているのは日本、インドネシア、タンザニア、マラウイだ。さらにザンビア、マダガスカル、南アフリカ共和国、ナイジェリア、ガーナ、ウガンダなどでも登録手続きを進めている。現在はこれらの国々に加え、フィリピンやアフガニスタンなどでも事業を展開している。
なお、マラウイの製造拠点では、微生物原液の生産体制も整っており、アフリカ周辺国への供給が可能になっている。
質問:
フランチャイズ方式のメリットは。
答え:
最大のメリットは、農家に近い場所でTokyo8を生産することで、現地での販売価格を日本国内の約20%に抑え、現地の経済水準に見合った価格で供給できることだ。完成品を日本から輸出する場合と比べて、輸送コストや関税を抑えられるほか、現在の中東情勢による肥料価格高騰といった国際情勢の影響も受けにくい。輸入肥料への依存度が高い新興国の農業に適したモデルだと考えている。
また、小規模な製造ユニットから事業を始めて周辺の農家に利用者を広げながら、段階的に生産規模を拡大できる点や、現地パートナーが主体となって生産・販売を担うため、日本人社員が常駐する必要がないことも強みだ。
質問:
アフリカ地域への事業展開のきっかけは。
答え:
国内で普及した製品を、その後アフリカへ展開するという流れではなかった。Tokyo8の開発当初、国内での認知度向上に苦労する中、ジェトロやJICAの取り組みを通じてアフリカ出身の人材と出会った。交流を重ねる中で、アフリカでは農業を巡る課題があり、Tokyo8が必要とされる可能性があることを知った。
そこで、アフリカ出身の留学生らにTokyo8のサンプルを母国に持ち帰ってもらい、現地の農地で試験した。その結果、収量などに関する実証データが得られ、留学生らがまとめたレポートは、日本国内の農家にTokyo8の効果を説明する際にも活用された。アフリカで得られた実証結果は、アフリカ側からのTokyo8への関心だけでなく、国内での製品普及も後押しするという展開になった。
国際営業担当のラボーヌとの出会いも、こうしたつながりの1つだ。彼女は、化学肥料に頼るのではなく、土壌環境そのものを改善するTokyo8に魅力と可能性を感じ、入社した。当社にはほかにもアフリカ地域出身の社員が在籍しており、それぞれが持つ現地の知見やネットワークを生かしながら、自国をはじめとするアフリカ各国での事業展開を進めている。こうした人材とのつながりが、当社のアフリカ事業を支えている。
質問:
TBEC出展後の成果は。
答え:
TBECへの出展を通じて、複数の国で具体的な案件形成につながった。それまでのアフリカでのネットワークは、JICA事業の関係者や日本への留学経験者とのつながりが中心だったが、TBECでは、ビジネスに関心を持つ現地企業と接点を持つことができた。ナイジェリアでは現地企業1社との契約締結に至り、商標登録や肥料登録の手続きを進めるとともに、現在も複数の企業との協議を継続している。マダガスカルでは肥料当局関係者との接点が生まれ、肥料登録に向けた手続きが進展した。ガーナでは現地企業の支援のもと肥料登録手続きを進めており、登録完了後の契約締結を見据えて3社が待機している。ウガンダでもMOU(覚書)を締結し、事業化に向けた準備を進めている。

最大の課題は肥料登録、実証で効果を実感してもらう

質問:
アフリカ市場で事業展開する上での課題は。
答え:
最大の課題は肥料登録だ。国ごとに制度や手続きが異なり、登録完了までに最短でも1年はかかる。手続きに必要な情報が分散していることに加え、担当者によって説明が異なる場合もあり、外国企業にとって登録方法を把握すること自体が難しい。行政機関の担当者や政策方針が変わると、それまでの調整をあらためて行わなければならないこともある。そのため、現地パートナーと連携しながら、製品の特性や効果を根気強く説明していく必要がある。
こうした課題に対応するため、当社では、Tokyo8の製造ユニットを現地に設置して肥料を製造し、周辺の農家に提供してTokyo8の効果測定を行っている。こうして得られた収量増加や土壌改善のデータを、製品の有効性を示すエビデンスとして農業省などへ提供し、肥料登録に向けた手続きを進めている。
また、商品の特性上、農家に商品の価値を実感してもらうことも重要だ。Tokyo8を実際に使用して効果を体感してもらうため、各国でテスト圃場(試験用農地)やデモプロット(展示・実証用農地)を設置し、作物の育成状況や栽培結果を直接確認できる機会を設けている。マラウイでは23カ所のデモプロットを運営しており、地域の農業普及員とも連携しながら利用拡大を進めている。

マラウイの製造ユニット設置現場(同社提供)
質問:
今後の事業の展望は。
答え:
今後もアフリカ地域を中心にフランチャイズ網の拡大を進めていく方針だ。当面は肥料登録を進めながら、各国で実証事例を積み重ね、利用者の拡大を図っていく。農業生産性の向上だけでなく、現地の資源を活用した肥料生産を通じて、食料安全保障の強化や農産物の品質向上にも貢献したいと考えている。
さらに、Tokyo8を使って生産された高品質な農産物を、日本を含む海外市場につなぐ仕組みづくりも将来的な構想として描いている。日本市場が求める品質やニーズを現地の生産者に伝え、生産された農産物の販路確保まで支援することで、肥料の生産・販売にとどまらず、地域内で持続的に経済が循環する仕組みの構築を目指している。

同社で海外展開を担う、左からシバレ氏、ジャジャ氏、ラボーヌ氏、石田氏、クジョー氏、ラコトゥマララ氏
(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課
山本 彩織(やまもと さおり)
2026年5月から現職。中東・アフリカ地域の調査業務を担当。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
天神 和泉(てんじん いずみ)
2015年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援課、ジェトロ静岡、企画部海外地域戦略班(アフリカ担当)を経て、2022年7月から現職。

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