アフリカでのビジネス事例林業大手タンリー、ラバーウッド加工で日本企業との連携模索(コートジボワール)
2026年9月8日
コートジボワールの森林資源は、この数十年で急速に減少している。同国の水・森林省は2021年の発表で、同国の森林被覆を297万ヘクタールと推計し、過去60年間で森林面積の約90%が失われたとしている。世界銀行によると、国土に占める森林率は1990年の24.7%から2023年には7.9%まで低下している。こうした森林減少は、カカオなど換金作物の農地拡大に加え、適切な管理を伴わない木材伐採や薪炭材利用など、複数の要因によるものであり、同国の木材産業にとって大きな課題となっている。
こうした環境の変化について、コートジボワールを代表する林業企業タンリー・コートジボワール(Thanry Côte d’Ivoire、以下タンリー)は、「従来型の天然林依存の木材産業にはもはや成長の余地がない」と指摘する。同社の社長であるマリオ・カリージョ(Mario CARRILLO)氏を中心に話を聞いた(取材日:2026年2月27日)。同社は天然林材への依存からの脱却を進めており、ラバーウッドやカーボンクレジットを新たな事業の柱に据えるとともに、日本企業との協業機会を模索している。
天然林資源減少に対応し、事業構造を転換
タンリーは、フランスに事業上のルーツを持ち、1950年代からコートジボワールで事業を展開してきた林業企業であり、現在では約16万ヘクタールの森林管理権益を有する国内有力企業となっている。同社は、森林資源の管理から伐採、製材、輸出までを一貫して手掛ける垂直統合型モデルを構築している。林業・木材事業を中核とし、従業員数は1,000人を超える。
一方、同社を取り巻く事業環境は大きく変化している。同社によると、天然林資源の減少に加え、輸出向け木材製品に求められる乾燥基準への対応が課題となっている。特に、大型断面材や一部樹種は乾燥工程に長期間を要するため、輸出採算性の低下や販売先の制約につながっているという。その結果、かつて主要な取引先であったフランス国鉄(SNCF)向けの鉄道枕木市場を失うなど、事業面でも影響が生じている。
こうした状況を受け、同社は天然林材に依存した従来の事業構造を見直し、ラバーウッド(天然ゴム老木)や再植林、カーボンクレジットを新たな事業の柱とするポートフォリオの転換を進めている。特に、今後供給の拡大が見込まれるラバーウッドを次世代の主要原料と位置付け、森林資源の枯渇という課題を新たな成長機会に転換しようとしている。
ラバーウッドを次世代原料に、加工工場を計画
ラバーウッドとは、天然ゴムの生産に利用されるゴムの木が、ラテックスの採取期間を終えた後に伐採され、木材として利用されるものだ。その背景には、コートジボワールの天然ゴム産業の急成長がある。国連食糧農業機関(FAO)によると、コートジボワールは2024年に約169万トンの天然ゴムを生産し、アフリカ最大、世界でも第3位の生産国として、世界の天然ゴム供給を支えている。
タンリーによると、コートジボワールでは多くのゴム農園が植え替え時期を迎えており、ラテックスの採取を終えたゴム老木の供給増加が見込まれている。ゴムの木は通常、25~30年程度ラテックスを生産した後、生産性の低下に伴って植え替えられる。同社は、2028年には利用可能なラバーウッド資源量が年間300万立方メートルに達すると予測している。天然林資源が著しく減少する中、これまで十分に活用されてこなかったゴム老木を、天然林材に代わる新たな木材資源として活用する方針だ。
同社はコートジボワール西部ドゥエクエ(Duékoué)にラバーウッド加工工場の建設を計画している。この計画は、ラバーウッドを単なる代替原料としてではなく、コートジボワール林業全体の構造転換を意味している。
同社の製材品や木材製品は、アフリカ域内市場だけでなく、欧州、中東、インド、米国など幅広い市場に販売され、一部はパキスタン、ドミニカ共和国、メキシコにも輸出されている。世界各地から引き合いがある一方、日本企業との取引実績はこれまでないという。販売価格は品質や市場によって異なり、国内向け低品質材は1立方メートル当たり約10万CFAフラン(約2万8,000円、1CFAフラン=約0.28円)だが、欧州向けの高品質材は1立方メートル当たり1,200~1,300ユーロに達する場合がある。アフリカ域内では高級材の需要が限られるため、二級品や三級品の販売が中心となり、価格も相対的に低いという。
中国製設備が浸透、日本企業には加工技術で期待
設備調達を巡っては、中国企業の存在感が急速に高まっている。かつて西アフリカで使用される木材加工機械や産業設備は、ドイツやイタリアなど欧州製が中心だったが、約15年前から中国製機械の導入が急増した。同社はその背景として、欧州メーカーが熱帯地域の操業環境に十分対応しなかった一方、中国メーカーは西アフリカの現場環境やニーズを踏まえ、実用性を重視した機械を供給したことを挙げている。
同様の変化は輸送用トラック市場でも起きている。かつて主流だったルノー、ボルボ、メルセデスなどの欧州メーカーに代わり、中国メーカーがシェアを急速に拡大している。一方、日本企業については、いすゞの輸送車両やコマツの建設・鉱山機械などは認知されているものの、木材加工機械分野ではほとんど認知されていないという。
こうした中、タンリーは日本企業との協業分野として、特にラバーウッド加工技術を挙げている。計画中の加工工場では、小径木の効率的な加工や高付加価値製品の製造に関するノウハウが求められている。また、同社は再植林を通じたカーボンクレジット事業も進めていることから、共同植林、カーボンクレジットの購入、ESG投資などを通じた連携にも期待を寄せている。
コートジボワールの林業は現在、大きな転換期を迎えている。タンリーの取り組みは、従来の天然林材への依存を抑え、ラバーウッドを新たな木材資源として活用するとともに、再植林やカーボンクレジットへ事業領域を広げる動きを示している。こうした変化は、日本企業にとっても、木材加工技術や森林再生分野での新たな協業機会となり得る。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ・アビジャン事務所(執筆当時)
安藤 佳耶(あんどう かや) - 2023年、ジェトロ入構。イノベーション部ビジネスデベロップメント課にて対日投資支援、オープンイノベーション事業を担当。2025年8月から現職。コートジボワールを中心とした西アフリカ地域の事業運営や調査を担当。





閉じる





