アフリカでのビジネス事例住友商事がエチオピアで通信事業、サービス開始3年弱で1,000万加入者

2026年4月14日

エチオピアは人口約1億3,000万人を擁するアフリカ第2位の人口大国だ。長年、国営通信会社エチオテレコム(以下、エチオテレコム)が市場を独占してきたが、通信分野の自由化政策により2022年10月、外資初の通信事業者としてサファリコム・エチオピアが商業サービスを開始した。同社は、英国のボーダフォングループ傘下のケニアの通信最大手サファリコム、住友商事らによる合弁会社だ。2025年7月には加入者数が1,000万人を突破、サファリコム(ケニア)の2025年3月期決算では前年比65.4%増という大幅な増収を記録したが、サファリコム・エチオピアがグループ全体の売上成長を牽引している。現地で事業を支援する住友商事アディスアベバ事務所の櫛谷吉生氏に、その成長の背景と今後の展望について聞いた(取材日:2025年10月15日)。

質問:
サファリコム・エチオピアの事業概要と、住友商事の関わりについて。
答え:
サファリコム・エチオピアは、エチオピア政府による通信分野自由化の一環として2021年に設立され、2022年10月に商業サービスを開始した。携帯電話による音声通話、モバイルデータ通信、モバイル決済サービス「M-PESA」を提供している。2025年7月時点で90日間アクティブユーザー数は1,000万人を突破した。
住友商事は、1990年代からモンゴル、ロシア、米国、ミャンマーなどでの通信関連事業への出資実績を持ち、これらの経験を活かしてエチオピア事業にも参画している。サファリコム・エチオピアは、親会社であるケニアのサファリコムのノウハウを活用している。エチオピアはアフリカ第2位の人口を有し、通信市場の成長ポテンシャルが大きい。東アフリカにおける通信・金融サービスの拡大という観点から、重要な市場と位置付けている。

店舗内の様子(サファリコム・エチオピア提供)
質問:
1,000万加入者達成について。
答え:
サービス開始から約2年9カ月での達成となった。エチオテレコムが圧倒的なシェアを有する中での参入だったが、ケニアのサファリコムが持つ東アフリカでの通信インフラ構築のノウハウと、品質の高いサービス提供が成長の要因だ。既にエチオピア人口の約55%を高速データネットワークでカバーしており、従来のエチオテレコムが持つ「国営・伝統的」なイメージに対し、サファリコムは「国際的」「革新的」「若者志向」という新しいブランド価値を前面に打ち出した点が大きい。これが、平均年齢が低いエチオピアにおいて、特に都市部のデジタルネイティブ世代の支持獲得につながっている。また、これらの事業活動を通じ、直接・間接雇用を含めて、2万人以上の雇用機会の創出にも貢献している。

サファリコム・エチオピアのスタッフ(同社提供)
質問:
M-PESA事業について。
答え:
2023年に外資企業として初めてエチオピア国立銀行からモバイルマネーライセンスを取得し、同年下半期より「M-PESA」の提供を開始した。M-PESAはケニアをはじめ東アフリカで広く普及しているモバイル送金・決済サービスで、銀行口座を持たない人々にも金融サービスへのアクセスを提供する「金融包摂」の象徴的存在だ。2025年9月期時点で、エチオピアにおけるM-PESAユーザー数は340万人に達した。
現在は送金や決済が主だが、利用データを活用したクレジットスコアリングに基づくローン提供など、金融サービスの拡充も進めている。農村部の小規模事業者や女性層への金融アクセスを改善し、エチオピアに「デジタル金融」という新たな選択肢を定着させていく過程にある。エチオテレコムの「Telebirr」が先行する中、ケニアのサファリコムが持つM-PESAの運用経験、ボーダフォングループが持つ東アフリカ圏でのノウハウ、住友商事が持つアジアでのデジタル付加価値サービスの経験を武器にサービス拡充を図っている。

モバイルマネー「M-PESA」の操作画面(同社提供)

利用方法を説明するスタッフ(同社提供)
質問:
事業展開における課題について。
答え:
主に3つの課題に直面している。 1つ目は輸入手続き。携帯電話ネットワーク構築のための設備輸入では、一定期間の輸入関税免税措置を受けているが、外国企業がこの規模の設備輸入で免税を受けた前例がなく、複数の省庁にプロセスを確認する必要があり、相当な時間を要した。
2つ目は税制。「最低代替税(minimum alternative tax)」(注)と呼ばれる新たな税制が導入されるなど、当初の事業計画では想定していなかった追加の税コストが発生している。
3つ目は為替兌換(だかん)。通信サービスからの売り上げは現地通貨ブル建てである一方、設備投資の大部分は米ドルなどの外貨で行われる。稼いだ現地通貨を外貨に兌換することが依然として容易ではなく、株主からの出資金や外貨建てローンを原資とせざるを得ない状況が続いている。
エチオピアには制度未整備な部分も多いが、こうした課題を単なる障害ではなく、政府とともに制度を作り上げていく「国づくりへの参画」の機会と捉えている。
通信という社会インフラを担う立場から、規制整備や市場発展に建設的に関与していく姿勢が、現地社会における信頼醸成にもつながっていると考えている。
質問:
今後の展望について。
答え:
エチオピアは人口増加が続くアフリカの成長市場であり、通信・金融サービスの浸透余地は大きい。為替制度改革の進展による外貨調達環境の改善を見据えながら、引き続きネットワーク拡大とM-PESAサービスの普及に注力していく方針だ。エチオピア政府が掲げる「Digital Ethiopia 2030」が目指す、デジタル技術を通じた包摂的かつ持続的な経済成長の実現にも資するかたちで、短期的な利益追求よりも中長期的な視点で、現地社会とともに持続的な成長を目指していく。

注:
その他の税法のいかなる規定にもかかわらず、税額が当該課税年度の売上高の2.5%を下回る場合に、別途定められた税率で最低税を納付する制度。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・アディスアベバ事務所
石川 晶一 (いしかわ しょういち)
2014年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ愛媛、ジェトロ・プノンペン、貿易投資相談課などを経て、2024年8月から現職。

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