アフリカでのビジネス事例日建、地雷除去機で輸出実績(アフリカ)

2025年9月4日

成長が著しいアフリカ。一方で政情が不安定な国があり、各地で政変や紛争が起こっている。対人地雷が用いられることもあり、現地の危機となっている。地雷は値段が安く扱いが簡単なために、世界各地の戦争や紛争で使用され、家や学校、畑など、人々がふだん生活する場所までもが危険な地雷原となっているという。このような中、日本政府は、2025年8月に横浜市で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)において、地雷撤去に関する「アフリカ地雷対策プラットフォーム」の設立を発表した。

また、機器を開発・改良して、課題解決を目指す民間企業もある。そうした企業の1つが日建だ。アフリカでの普及のため、TICAD9のテーマ別イベントとしてジェトロが開催した「TICAD Business Expo & Conference(TBEC)」に出展した。本稿では、同社製造部の笠井彰主任と海外部の工藤俊哉主任へのインタビューを基に活動を紹介する(取材日:2025年8月20日)。

質問:
御社の概要は。
答え:
山梨県南アルプス市を拠点に、主に建設機械に関連した事業を展開している。建機営業部・建機サービス部では、山梨県内を中心に日立建機の販売・サービスを提供。製品開発部・製造部では設計・製缶・塗装・組み立てを手がける。
建機については、カスタマイズやメンテナンス、リニューアル塗装を手掛ける。そのほか、自社製品(草刈機や切株破砕機、油圧式散水装置など)を全国的に販売している。国内売り上げがメインながら、世界各国に輸出もしている。
対人地雷除去機は、1995年から開発に着手した。2000年代から輸出。世界各国で、地雷除去・農地復興・インフラ整備に活躍している。
質問:
地雷除去機械の詳細は。
答え:
油圧ショベルを地雷除去用に開発し、輸出している。欧州企業がブルドーザーを基に製造する地雷除去機材とは異なり、油圧ショベルの形態は世界的に珍しい。
基本的には油圧ショベルながら、安全性を確保するため改装した。例えば、運転席のガラスに多層強化ガラスを採用して、保護耐久性を上げたかたちだ。ガラスの強度は、通常の300倍に当たる。
作業員の安全確保のための試験も重視する。発注から完成まで約1年かけ、海外へ分解して輸送し、現地で組み立てる。各国への輸送には数カ月かかり、アフリカでの納入までに12カ月以上かかる場合もある。その後、運転やメンテナンスについて指導するなど、研修機会も設ける。機材には白色の塗装をしている。白は国連の色で、紛争地などでも敵意や威圧を与えない。
人の手による地雷撤去は危険だ。地雷除去機は価格も輸送時間もかかるものの、人道的な撤去が可能になる。さらに、手作業に比べ、約20~100倍ものスピードで処理できる。
また、地雷除去機にアタッチメント(用途別に装着する機械)を取り付けることで農耕やインフラ整備の機械ともなり、地雷原での復興に活用することができる。

日建の展示ブース(ジェトロ撮影)

日建の地雷撤去機械(ジェトロ撮影)
質問:
輸出先は。
答え:
これまで12カ国に、151機を納入した。世界トップレベルのシェアになる。アフリカには、アンゴラに32機、モザンビークにも2機納入実績がある。アンゴラには、長い国内紛争により地雷が多かった。
地雷処理機の開発・制作を始めたきっかけは、雨宮清会長がカンボジアで、おばあさんに「この国を助けてください」との願いを聞いたことだった。そのときから、日本の技術で手助けをしている。アジア諸国への納入が多いほか、中南米など世界中に輸出している。近年はウクライナにも納入した。
質問:
ビジネス上の課題は。
答え:
各国で、事情や文化背景、技術者の習熟度が異なることがある。そのため技術指導の際、それぞれ方法を変えるなど工夫が必要だ。なお、アフリカへの輸出には、輸送の時間もかかる。
質問:
アフリカでの事業に関するアドバイスは。
答え:
商品ニーズがあるか、確認が必要だ。地雷除去機では、政府の地雷撤去ニーズがあることが前提だ。機材の性質から、日本の政府開発援助(ODA)事業で展開している。各国の状況や納入先の要望に応じて、カスタマイズしている。また、納入後、研修員を現地に派遣し、運転やメンテナンスの技術指導研修を行うなど人材育成も重視している。
質問:
今後の方針は。
答え:
TICAD9の機会に実機を展示したところ、来場したアフリカ各国の政府機関に、実際に見て搭乗してもらうことができた。仕様を説明だけに終わらず、体験してもらうことで反応が良かった。
今回商談できた東アフリカなど、アフリカ諸国向けの新たな展開を目指している。展示ブースに来場した人たちと連絡を取り合い、アフリカの展開拡大を目指したい。
さらに、今後も顧客のニーズをくみ取り、機器の改良や新規機器の開発にも取り組んでいきたい。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。

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