アフリカでのビジネス事例国際会計事務所グループSCSがアフリカに初拠点を開設

2026年5月22日

2002年に設立された日本発の国際会計事務所グループのSCS Invictusグループ(本社:シンガポール)は、2025年8月にアフリカ初となる拠点を南アフリカ共和国(南ア)に設立した。同社のアフリカでの事業展開について、SCS Invictus South Africaのダイレクターである松本聖矢氏に話を聞いた(取材日:2026年4月16日)。

質問:
貴社の海外展開の状況や特徴は。
答え:
会計監査・税務・M&A・海外進出および子会社管理・運営に係るコンサルティングを主軸とし、日本企業の進出から進出後の現地運営まで支援している。記帳代行や給与計算代行といったバックオフィス領域に関わるアウトソーシング業務なども行っている。
現在は、アジア、北米、欧州、中南米などに世界20拠点を構える。各拠点では進出した日本企業向けサービスを中心にしているということもあり、日本人の会計士を配置しているという特徴を持つ。
また、各国の駐在員が長期間にわたり駐在している点も、同グループの強みの1つだ。短くても5年、長い駐在員だと15年近くに及ぶこともあり、そういった意味では「現地に根を張った会計事務所」といえるのではないか。

SCS Invictus South Africaダイレクターの松本氏(ジェトロ撮影)
質問:
南アに進出した理由は。また、ケニアやエジプトとの比較などを経て南アへ進出した動機は。
答え:
南アを選んだ最大の理由は、日本企業が進出後に事業を安定的に運営していくための実務拠点として、アフリカの中でも比較的基盤の整った市場だと考えたためだ。金融・法務・会計・人材の面で一定の基盤があり、営業拠点としてだけでなく、地域統括やバックオフィス機能を担う拠点としても位置付けやすい点に魅力を感じた。
決して、ケニアやエジプトへの進出の可能性がないわけではない。ケニアは東アフリカの成長のハブであり、エジプトは製造拠点や中東とのリンクという点でも重要な場所であるという位置付けだ。今後の拠点設立の可能性はある。
また、アジアと比べても、アフリカ全体、そして南アに関する日本語の情報は限られており、特に会計、税務、ビザなどの実務に関する情報は少ないと感じている。そのため、日本企業にとっては、進出時だけでなく進出後の運営においても不確実性を下げにくい環境にある。そうした中で、現地実務を理解し、日本企業目線で伴走できる専門家が現地にいることには大きな意義があると考えている。
質問:
今後のアフリカでのビジネス展開は。
答え:
まずは南アにおいて、日本企業向けに、進出支援、会計・税務・監査サポート・給与計算などの子会社管理を支える基盤サービスをしっかり整えていきたい。合わせて、内部統制を含むガバナンス体制の構築・運用支援、日本本社へのレポーティング支援、クロスボーダー税務対応など、上流から下流までワンストップで支援できる体制をさらに強化していく方針だ。
また、南アを実務拠点としつつ、周辺国や他のアフリカ主要国に関する相談にも、案件に応じて柔軟に対応していきたいと考えている。その際には、新たな拠点展開の可能性も視野に入れつつ、SCSグループ内の各拠点との連携強化も重要だと考えている。例えば、インド、トルコ、欧州拠点(英国、オランダ)と連携しながら、北アフリカや東アフリカへの対応可能性を広げていきたい。
質問:
貴社が南ア拠点設立で苦労したことは。
答え:
拠点設立に当たって苦労した点はいくつかあるが、総じて言えるのは、南ア特有の実務の進め方に適応していくことだったと感じている。
例えば、ビザの取得については、日本人の申請件数自体が多くないこともあり、当局側も日本人への対応に必ずしも慣れておらず、手続きがより煩雑になっているように感じた。誤った情報に出くわすこともあるため、信頼できる専門家を見極めることの重要性を強く感じた。また、オンラインではなかなかうまく進まなかったことも、実際に現地に来て対面で話すことですんなり解決する場合もあり、コミュニケーションの進め方などについても違いを感じた。
そのほか、パブリックオフィサー(注1)のような南ア特有の制度や、福利厚生制度をはじめとする現地の慣習を、組織としてどのように機能させていくかといった点についても、制度の存在を知るだけでは足りず、実務上どのように運用していくかを理解することが重要だと感じた。
質問:
サポートしている日本企業からの問い合わせ内容はどういったものがあるか。
答え:
南ア特有のものと、他国でも共通してみられるものの両方がある。南ア特有のものとしては、まず外貨規制に関する問い合わせが挙げられる。南アから海外送金を行う場合、南ア準備銀行との折衝が必要となるケースも多く、想定以上に時間を要することを前提として計画する必要がある。
また、南ア子会社に駐在員を置かず、英国やアラブ首長国連邦(UAE)のドバイなどから遠隔で管理する事例もあるが、その場合、どのような管理体制を構築し、どのように現地実務を把握しながら内部統制を効かせていくかが大きな課題になりやすく、この点に関する問い合わせも多い。特に、不正やエラーが起きにくい仕組みをどのように作り、運用していくかは重要な論点の1つとなっている。
一方、どの国でも共通する悩みとしては、現地の税務計算や会計業務における納期管理や品質管理の難しさがある。また、税務当局から指摘や追徴を受けた際に、十分なサポートが得られず困っているといった相談も多い。
質問:
会計事務所からみた南アの会計制度や税制面の注意点は。
答え:
制度面の違いとしては、例えば南アでは見積もり納付(Provisional Tax)があり、1年分をまとめてではなく、前払いとして分割で納付する仕組みとなっている。付加価値税(VAT)についても、日本の消費税とは異なり、特に輸出取引に係る税務処理や、その根拠となる証憑(しょうひょう)管理の面で留意が必要だ。また、駐在員に関する税務については、南アと日本の両方の制度や慣習を踏まえて対応する必要がある。
ただ、実務上、制度上の差異以上に重要だと感じるのは、現地の税務管理をどのような体制で運営するかという点だ。税務当局への対応では、現地で必要な資料を整え、根拠を持って説明できるかが重要となる。税理士に資料を渡して全て任せてしまうと、当時の処理の背景が資料だけでは追えなくなり、ブラックボックス化してしまうリスクがある。そのため、会社側で申告内容をレビューしたり、継続的にモニタリングしたりできる体制を整えたりすることも重要だ。
会計面でいうと、南アでは会社法に基づき国際財務報告基準(IFRS)または中小企業向け国際財務報告基準(IFRS for SMEs)が用いられている。日本本社でIFRSを採用していない場合は基準差に留意が必要になるものの、独自のローカル基準が用いられているわけではないため、その点の障壁は相対的に高くないといえる。一方で、監査や独立レビューの要否判断にパブリックインタレストスコア(注2)といった独自の指標が用いられているなど、制度運用面では南ア特有の特徴もある。それ以外にも、黒人経済力強化政策(BEE政策)(注3)、採用市場の環境、外貨送金規制の実務など、日本とは異なる前提がいくつかあるため、制度面だけでなく実務面も含めて理解しておくことが重要だと考えている。
質問:
貴社の進出時のジェトロのサポートについてはどうであったか。
答え:
海外事務所による現地事情ブリーフィングサービス貿易投資相談ではさまざまなことを教えてもらった。ジェトロの駐在員とは、南アに来てからも気軽に問い合わせができて助かっている。実際に南アに来て直面する問題などもあり、気軽に相談できることは非常に助かった。車両の手配などの生活の立ち上げや安全情報をはじめ、当地での関係者の紹介などもいろいろと助けていただいた。
ジェトロが実施したザンビアミッション(2026年3月12日付ビジネス短信参照)に参加できたことも非常に有意義だった。現地の関係者や企業の声に直接触れることで、机上では得られない解像度を持つことができた。実際に視察先企業の最高財務責任者(CFO)と話す機会があったり、独自のルートで現地の会計事務所を訪問したりしたが、進出時には情報だけでなく「今の現地感覚」を把握することも重要であるため、こうしたジェトロのアレンジメントの意義は非常に大きいと感じた。加えて、視察先だけでなく、移動時間などを通してアフリカの他国からこのミッションに参加している日系企業と意見交換ができたことも有意義な時間となった。別のミッションなどが今後開催されるのであれば、またぜひ参加したいと思う。

注1:
パブリックオフィサー(Public Officer):南ア企業が税務当局との窓口として選任する責任者。Tax Administration Act, 2011の第246条に基づき設置され、実務上は南ア居住者であることが必要となる。 本文に戻る
注2:
パブリックインタレストスコア(Public Interest Score):南アの会社法に基づき、企業が社会に与える影響力や公共性を数値化した指標。従業員数、売上高、負債、株主数などから計算され、会計監査の必要性や財務諸表の報告基準を決定するために使用される。詳細は南ア制度情報「外国企業の会社設立手続き・必要書類」を参照。 本文に戻る
注3:
黒人経済力強化政策(BEE政策):南ア国民の不平などを是正し、経済的機会を全ての国民に拡大することを目的としたアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)。詳細は南ア制度情報「備考」を参照。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
多崎 央(たさき おう)
2001年、ジェトロ入構。ジェトロ・カラチ事務所、対日投資部、経済産業省出向、ジェトロ・ニューヨーク事務所、ビジネス展開支援部、イノベーション部などを経て、2025年7月から現職。

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今後記事を追加していきます。

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