アフリカでのビジネス事例ユニ・チャーム、アフリカで子供用紙おむつや女性用商品を生産
エジプトでシェア拡大、ケニアにも進出

2026年2月6日

人口増加が続くアフリカにおいて、ユニ・チャームは、子供用の紙おむつや女性用生理用品を販売する。エジプトでは自社工場で生産しており、直近の販売を見ると、女性用生理用品で同国シェアNo1に達した。

同社によると、現地での販売拡大には、(1)現地ニーズをとらえた商品改良、(2)現地生産による手ごろな価格での販売、(3)現地での営業強化、(4)テレビ・SNS・店頭などで多様なPR方法を用いたマーケティング、(5)現地と本社幹部の定期会合での素早い意思決定、などが重要になるという。

今後もケニアを含むアフリカ諸国への展開・拡大を目指している。アフリカ展開の現状と方向性について、同社の高久堅二取締役専務に話を聞いた(取材日:2026年1月26日)。


高久堅二取締役専務(同社提供)
質問:
御社の海外展開とアフリカ事業の方針は。
答え:
当社では1970年代から「社是」に海外展開を掲げている。海外売り上げは既に約6割を占めているが、今後も海外展開を進めていく。
アフリカにおいては、女性の生理用品の普及率は半分以下であり、ケニアでは3割にとどまる。より多くの女性に当社の商品を使ってもらうなど、衛生用品の普及促進と女性の社会進出支援、そして現地の社会課題の解決に貢献したい。このため、他社がハイリスクと考えているアフリカ諸国を含む国々でのリスクを十分に見極め、管理した上で、着実に現地での生産・販売を進める。
既にエジプトに工場があり、2023年8月より、エジプトからケニア、ガーナ、コートジボワールへ輸出販売している。アフリカにおける今後の重点国は、ケニア、ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、南アフリカ共和国などだ。人口規模、経済の安定性、治安などの安全性などを踏まえて、リストアップした。
質問:
エジプトでの事業概要は。
答え:
元々中東のサウジアラビアに1990年代から展開し、販売を伸ばしており、同じアラブ諸国、イスラム圏で人口も多いエジプトに進出した。2010年にアフリカにおいて初となる工場をエジプトのカイロ近郊の工業都市テンス・オブ・ラマダンに設立した。従業員は1,000人を超える規模だ。子供用紙おむつ、女性用の生理用品「SOFY」などを生産し、現地で販売している。設立当初は「アラブの春」などで大変な時期もあったが、直近の販売を見ると、女性用生理用品でエジプトでのシェアNo.1を達成した。前年比20%増の高い伸びを示した。

エジプト工場概観(同社提供)

エジプト生産でシェア拡大する女性用商品
(同社提供)
質問:
エジプトや中東アフリカ諸国の状況は。
答え:
エジプトでは一般人は普段、近代的スーパーマーケットよりも、小規模店舗、スーク(青空市場)などで買い物をする。小規模店舗では、まとまったパッケージでの販売のほか、少額でも買えるように、ばら売り(1個ずつ)の販売も行う。
エジプトでは、長年、欧州ブランドと競合していたほか、近年はトルコ製品なども競合となっている。エジプトでは、紙おむつは「Baby Joy」というブランドで展開し、日本のマークを入れている。エジプトやアフリカ諸国でも、日本の自動車メーカーに築いていただいた「日本ブランドは高品質」といった評判がある。当社としても日本ブランドにて、高品質の商品を届けることで、日本ブランドの評判をさらに高めていきたい。
なお、エジプトで生産した商品を、ケニアなどに輸出する際に、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)により、関税が優遇される国もある。
中東のサウジアラビアでは、肌に良いオリーブオイルを材料に使った商品も、現地の人には評判がよい。機能的にはオリーブオイルを利用することで、「なめらかさ」が向上する。なお、数年前までサウジアラビアは厳格なイスラム教で男女が一緒の場所で働くことが難しかったため、女性雇用者専用の製造ラインを作るなど、女性の雇用機会を創出する取り組みも行った。サウジアラビアの工場で生産した商品は、アラブ首長国連邦などの湾岸協力会議(GCC)諸国にも輸出している。
質問:
ケニアでの活動概要は。
答え:
2024年から輸入による女性用生理用品「SOFY」を販売開始した。輸入の際はケニアのモンバサ港で荷揚げし、ナイロビなど人口が多い都市を中心にケニア全土に販売している。モンバサ港からケニア国内への物流は今のところ問題ない。ケニアは他の東アフリカ諸国のハブとしても位置付けている。
2025年1月から現地でのOEM生産にて、女性用生理用品「Long Lasting」の製造を開始した。重点国のうちケニアから先に始めたのは、早期にOEM協力先が見つかり、タイミングが良かったためだ。OEMも活かし、スピード感を持って生産開始となった。

店頭での商品販売の様子(同社提供)

吊り下げ、ばら売りでの販売の様子(同社提供)
なお、当社と豊田通商は、ケニアにおいて合弁会社を設立した(2025年6月18日付同社プレスリリース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。豊田通商は、CFAOというフランス発のアフリカ商社を買収するなど、アフリカで積極的にビジネスを展開し、現地での知見がある(2025年2月28日付地域・分析レポート「豊田通商、アフリカ54カ国で未来に向けて積極的にビジネス展開」参照)。特に法律・経済・社会についてのリスク詳細情報を把握している点が当社にとって心強い。サプライチェーンなどは当社が担い、アフリカの専門性を持つ同社には、FS(実現可能性調査)の協力をお願いしたほか、合弁会社の法務や人事関連などをお任せするなど協力・分担して活動している。単独でケニアに出ていくよりもリスクが少ないと考える。
質問:
エジプトでの販売増加や成功の要因は。
答え:
ひとつには営業部隊の強化だ。増員した営業部隊が代理店に営業するほか、ローカルの小売店などにも売り込んでいる。
さらに、現地のニーズを徹底して把握し、商品を改良することも重要だ。エジプトでは、紙おむつなどの吸収性を高め、長持ちにして、夜間の交換回数を減らすための改良などを行った。アラビア語など現地語で評判や説明文をつけるなどパッケージの改良も行っている。
商品の改良や販売の改善には、現地駐在員と本社幹部とのコミュニケーションも必要だと考える。OODAループ(Observe:観察、Orient:状況判断、Decide:意思決定。Act:行動)のメソッドを活用し、迅速な意思決定で海外展開や販売拡大に取り組んでいる。加えて、現場の社員と経営陣が情報を共有し、ともに目標に向かって進んでいく、「共振の経営」を重視している。2025年は毎週、幹部を含めた本社側とアフリカ駐在員との会議を実施した。
また、各種マーケティングも行っている。テレビCMのほか、現地のローカルネットワークでの訴求も重要だ。現地の生の声を、SNSなどで、こまめに(高頻度・定期的)に情報発信している。当社の現地スタッフが、実際に商品の良い点を伝えることで、日本人が伝えるよりも現地の人に届きやすい。道端で商品を山積みにして商品を目立たせて認知度を高めるのも効果があると考えている。これを当社独自の言い回しで「ロードショー(Road show)」と呼び、各国で実施している。

「Baby Joy」ロードショーの様子(同社提供)
質問:
これからアフリカに取り組む日本企業へのアドバイスは。
答え:
アフリカでの消費財の販売において、現地で手ごろな価格にすることを考えると、現地生産が原則となると考えた方が良い。もちろん、工場の立ち上げは計画どおりにはいかず、遅れが生じるなど課題は多い。どの国でも最初は苦労するが、中期的な視点が必要だ。
また、各種手続きなどには課題もあり、現地でのビジネスにはハードルもある。良い現地パートナーを見つけることも重要だ。
現地に優秀な人材もいるが、人材育成も重要であり、社内の教育・育成を徹底している。また、会社の理念を大事にしており、当社のミッション、ビジョン、バリューなどを現地スタッフにも共感・共振してもらうよう心掛けている。
なお、エジプト工場は、コロナ禍において夜間外出禁止令が発令された際も、政府の許可を得て24時間体制で工場を稼働できていた。当社の理念に共感している現地スタッフがいたからこそ、人々の暮らしを支える生理用品や紙おむつを欠品することなく、生産を継続できたと考える。
質問:
第9回アフリカ開発会議(TICAD9)への参画は。
答え:
TICAD9ではケニアのウィリアム・ルト大統領と対話し、ケニアへの進出を念頭に「ケニアにようこそ」との声もいただいた。現地のトップとの会談もできる場であった。
TICAD9の「官民ビジネス対話」にも登壇し、(1)域内関税の整備の必要性、(2)国ごとに異なる制度の統一、(3)衛生・教育活動への官民一体となった支援強化について、民間企業の立場から、現地での課題と改善案などについて発信した(2025年8月29日付同社ニュースリリース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )。アフリカ政府や日本側に共感いただいたものと思う。今後、TICADが、議論の場からさらに一歩進み、現地の課題解決に直接的につながる実践的な場になることも期待したい。
アフリカやTICAD9の情報については、以下のページを参照。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。

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