アフリカでのビジネス事例ルワンダでLPガスのラストワンマイル供給に取り組むサイサン
2026年10月13日
ジェトロは、国際協力機構(JICA)、国連開発計画(UNDP)、国連工業開発機関(UNIDO)とともに7月27日、四機関連携「アフリカビジネスセミナー in埼玉 ―成長市場アフリカをビジネスチャンスへ―」を埼玉県さいたま市で開催した。アフリカ市場の概況や各機関の支援策の紹介を行ったほか、アフリカビジネスに取り組む埼玉県企業が登壇。サイサン(本社:埼玉県さいたま市)は東アフリカの内陸国ルワンダにおける自社の事業経験について語った。本稿では、当日の講演内容と同社への追加取材(取材日:2026年8月21日)を基に、その取り組みを紹介する。
同社は、家庭用、産業用の液化石油(LP)ガスを中心に、都市ガスや各種工業用ガス、電気、宅配水、住宅設備など、生活に関わる事業を幅広く展開している。海外ではLPガスの貯蔵・充塡(じゅうてん)事業を中心に、モンゴル、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、ネパール、タイ、ラオス、インドに進出してきた。
こうした海外展開に続き、同社は2024年、アフリカで初となる事業拠点をルワンダに設けた。

15年以上の検討を経てアフリカへ
サイサンは15年以上前からアフリカへの進出を検討してきた。人口増加と経済成長に伴い、LPガス需要の拡大が見込まれるためだ。アフリカの多くの地域では、家庭の調理用燃料として薪や木炭が使用されている。LPガスへの転換は、調理環境の改善や室内空気汚染の軽減に加え、森林資源の保護にもつながる。
同社は、2018年度の経済産業省補助事業「第4回 飛びだせJapan!」の活用をきっかけに、アフリカでの事業展開に向けた調査・検討を本格化させ、コンゴ民主共和国やタンザニアなどで事業の可能性を探った。しかし、継続的な事業活動が期待できる現地パートナーとの接点を得られなかったことに加え、制度・規制、物流・インフラ、採算性、事業の拡張性などを検討した結果、具体的な進出には至らなかったという。
検討を重ねる中、同社が着目したのがルワンダだった。UNDPによると、ルワンダでは、2022年時点で世帯の76.1%が調理に薪を使用し、17.3%が木炭を使用している。また、同社によれば、ルワンダのLPガスの2025年時点での年間消費量は約4万2,000トンと推計される一方、仮に1人当たりの需要が日本と同程度になった場合、年間約120万トンの需要規模になるという。これは単純計算による参考値だが、同社は、薪や木炭への依存度の高さを踏まえると、LPガスへの燃料転換に伴う需要拡大の余地があるとみている。
ルワンダの事業環境や政策面も進出判断の材料となった。2023年度には、同社は経済産業省の「質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業費補助金」に採択され、ルワンダでの事業可能性を調査した。その結果、政治・社会の安定性や行政手続きの透明性、継続的な経済成長など、事業展開の基礎的な条件が比較的整っていることがわかった。また、ルワンダ政府が国家変革戦略(NST1)で薪などへの依存低減を掲げ、EUの支援を受けて「ルワンダ国家LPガスマスタープラン」を作成するなど、LPガス普及に向けた具体的な方向性が示されていたことも評価した。
進出の具体化を後押ししたのが、関係者から紹介を受けた現地企業ジブ(Jibu)との出会いだった。ジブは、ルワンダ国内で飲料水の製造・販売を行うフランチャイズチェーンを展開し、国内に複数の店舗を持つ。飲料水とLPガスはいずれも家庭で継続的に使用される生活必需品であり、ジブの店舗網や地域に根差した販売・運営ノウハウをLPガス事業にも活用できると判断した。サイサンは2024年5月、ジブとの合弁会社ジブガスワン(Jibu Gas One)をルワンダに設立した。

現地パートナーとラストワンマイル供給に取り組む
一般的にLPガスを家庭などに普及させるには、燃料の輸入・貯蔵体制に加え、容器の充塡・配送や安全管理を担う地域密着型の供給網を整える必要がある。ジブガスワンは、ルワンダ国内に輸入されたLPガスを国内の貯蔵設備所有事業者から仕入れ、販売している。ルワンダは内陸国であり、LPガスはタンザニアのダルエスサラーム港またはケニアのモンバサ港から、1,000キロを超える陸路で運ばれる。このため、LPガスの普及には、まず輸入・貯蔵体制を整え、安定供給を確保する必要がある。ただし、LPガスの安定供給だけでは、利用を広げることは難しい。サイサンによると、各地域のエンドユーザーまで届ける供給網の構築も欠かせない。そのため、ジブガスワンは、ジブが持つ国内店舗のネットワークと小型設備「スマートステーション」を組み合わせ、最終消費者の手元まで商品を届けるラストワンマイル供給に取り組む計画だ。
スマートステーションは、小型のLPガス貯槽と充塡機を組み合わせた設備だ。大型の充塡所に比べ、需要地の近くに設置できる。スマートステーションでは、6キログラムまたは12キログラムの容器を使用し、最少2キログラムから必要量を充塡できる。将来的にはジブのフランチャイズ網を活用して地域ごとに供給拠点を設け、家庭などの小口需要を開拓する方針だ。ラストワンマイル供給は、ジブガスワンが競合他社との差別化を図る上での強みとなる。


現在稼働しているスマートステーションは、ジブガスワンの事務所に設置され、近隣世帯にLPガスの販売を行っている。今後は、スマートステーションを運営する従業員やフランチャイズ事業者の教育・実地訓練にも活用する。同社はさらに、工場や国際機関など、まとまった需要が見込める顧客にもLPガスを販売し、事業基盤を整えている。設備や機器の販売、フランチャイズフィーによる収入も得るが、主な収益源は継続的なLPガス販売だという(図参照)。
産業向けでは、製菓工場を運営する企業や国内47カ所でガソリンスタンドを持つ企業にLPガスを供給している。さらに、国際機関向けでは、同社は2024年12月に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の案件で、ルワンダ東部のマハマ難民キャンプ向けに、6キログラムのLPガス容器8,500本、バーナーグリル9,500個、1トンのLPガス貯槽を納入した。ジブガスワンが契約先に選ばれたのは、価格に加え、安全管理や保安体制が評価されたためだという。また、2026年7月には国際移住機関(IOM)が進める学校の燃料転換案件で、7校分を受注した。学校にLPガス供給設備を設置し、それまで調理に使用していた薪からLPガスへの転換を進めている。
図:ルワンダにおけるLPガス供給の流れ
出所:ジェトロ作成
課題を乗り越え、LPガス市場のさらなる開拓へ
ルワンダでの事業立ち上げには課題もあった。会社設立やLPガス事業に必要な許認可の取得では、制度や手続きの運用がわかりにくい部分があり、時間を要したという。こうした中、アフリカ数カ国で事業を展開し、ルワンダでの法人設立を経験していたジブの知見が、事業の立ち上げを支えた。サイサンは、アフリカで事業を進める上では、信頼できるパートナーを選ぶことが重要だと強調する。ジブが持つ店舗網や現地での事業経験と、サイサンが蓄積してきたLPガスの貯蔵・充塡、安全管理のノウハウを組み合わせることで、現地での事業化につなげた。また、同社が日本企業として最重要視している安全操業を担う人材の育成も今後の課題となる。現地社員を日本に招くほか、日本から技術者を派遣し、設備の運転や保守、安全管理に関する研修を行う方針だ。
今後の展開として、ジブガスワンは2026年秋ごろ、新たに3基のスマートステーションをルワンダへ搬入する。首都圏や地方部への設置を予定しており、地域におけるLPガスの供給拠点を広げる。さらに、2030年までに国内20カ所への設置を計画している。将来の販売件数の構成は、家庭向け9割、産業向け1割を想定しており、多くの家庭にLPガスを届ける事業構成を目指す。一方、産業向けの大口需要も取り込み、事業の安定的な拡大につなげる考えだ。このため、国際機関や法人向けの需要開拓も継続する。IOMによる学校の燃料転換案件の継続受注を目指すほか、新たに建設される1,500戸の集合住宅に対し、LPガス集中配管システムを提案する。将来的には、モンゴルやバングラデシュで既に手掛ける自動車用LPガス「オートガス」についても、アフリカで需要が拡大する可能性があるとみている。同社は、「お客さま第一主義」と「凡事徹底」の理念を現地でも実践しながら、ルワンダで事業を着実に成長させていく方針だ。
- 執筆者紹介
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ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
天神 和泉(てんじん いずみ) - 2015年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援課、ジェトロ静岡、企画部海外地域戦略班(アフリカ担当)を経て、2022年7月から現職。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部中東アフリカ課
山本 彩織(やまもと さおり) - 2026年5月から現職。中東・アフリカ地域の調査業務を担当。





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