アフリカでのビジネス事例英ファンド・ヘリオスCOOが語る、アフリカ成長市場への投資戦略
日本企業・機関とも連携

2026年10月21日

英国とアフリカ諸国は歴史的に深い結びつきを有し、ロンドンはアフリカ関連ビジネスの資金調達や事業統括の拠点として重要な役割を担っている。アフリカ投資に特化したプライベート・エクイティ(PE)ファンドのヘリオス・インベストメント・パートナーズ(Helios Investment Partners外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、以下、ヘリオス)は、英国およびアフリカを拠点に事業を展開し、2004年の設立以来20年以上にわたり、現地に根差した知見を強みに市場環境の変化に対応しながら、アフリカ向け投資における有力ファンドとして存在感を高めている。


ルシアナ・ジェルミナリオCOO(ジェトロ撮影)

ヘリオスのオフィス(同社提供)

ジェトロは、同社の最高執行責任者(COO)であるルシアナ・ジェルミナリオ氏に、ヘリオスの事業戦略や投資方針に加え、日本企業のアフリカ市場開拓に向けた心構えについて話を聞いた(取材日:2026年6月18日)。同氏は過去に日本駐在を経験しており、2022年のヘリオス入社以降、日本企業との提携推進で中心的な役割を果たしている。同氏は、日本企業や国際協力機構(JICA)との連携を進める中で、アフリカ市場にはなお大きな成長余地があると見ており、事業展開の成否は現地事情を理解したパートナーとの協業にかかっていると指摘した。

累計約30億ドルをアフリカ向けに投資

ヘリオスは、アフリカに特化した総合プライベート・エクイティ投資会社であり、ロンドンを中心にフランスのパリ、ナイジェリアのラゴス、ケニアのナイロビにオフィスを構える。2004年の設立以来、金融サービス、デジタルインフラ、必需消費財、テクノロジーを活用したビジネスサービスを中心に、累計約30億ドルをアフリカに投資してきた。同社の投資先はアフリカ全域の35カ国以上に及ぶ。

近年では、気候変動の緩和・適応に資する事業への投資を強化しているほか、アフリカのクリエーティブ産業にも投資対象を広げている。また、アフリカでは、新たな技術の導入を背景に急成長する企業が数多く生まれており、ベンチャー投資も活発化している。同社は2022年にベンチャー投資部門「Helios Digital Ventures」を設立し、人工知能(AI)、ブロックチェーン、フィンテックの3分野に注力している。

ジェルミナリオ氏は、「当社の中核事業はプライベート・エクイティ投資であり、一定の事業基盤を持つ企業の成長支援に強みを有している」と説明する。投資判断に当たっては市場規模を重視しており、ナイジェリア、ケニア、南アフリカ共和国、エジプト、モロッコといった主要経済国への投資が中心となっている。

同社は人口増加や都市化、デジタル化の進展に伴うアフリカ市場の需要拡大に着目し、当初は幅広い分野へ投資していた。しかし現在は、より成長性が高く、投資回収が見込める分野に重点を置く戦略へとシフトしている。

気候変動対応を見据え、クリーンエネルギー産業へ投資

エネルギー分野で気候変動対応の重要性が高まる中、ヘリオスはクリーンエネルギー関連事業への投資を強化している。その代表例が、2025年に実施した電気自動車(EV)向けのバッテリー交換ソリューションを提供するインド企業サンモビリティ(SUN Mobility外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)への投資だ。

アフリカでは、二輪車や三輪車が移動・物流手段として広く利用されている一方(ケニアについては2026年8月28日付地域・分析レポート参照)、排出ガス削減が課題となっている。国連環境計画(UNEP)によると、2040年までにアフリカの二輪車・三輪車保有台数の71%が電動化された場合、年間約9,500万トンの二酸化炭素(CO2)排出量の削減が見込まれる。

一方、EVの普及においては、バッテリー切れの際に充電に時間を要し、その間は稼働できないという課題がある。こうした課題に対応するため、サンモビリティは、世界的なOEMメーカーとの提携を通じて、二輪車や三輪車、大型商用EV向けのバッテリー交換技術を展開している。同社のシステムでは、充電が必要なバッテリーを充電済みバッテリーと即座に交換できるため、車両の稼働率向上が期待される。ジェルミナリオ氏は、「ヘリオスはサンモビリティへの投資を通じて、アフリカにおけるバッテリー交換インフラの普及を後押ししたい。こうした取り組みは、EVの普及促進を通じた、気候変動対策や大気環境の改善につながる」との考えを示した。


サンモビリティのバッテリー交換ステーション(ヘリオス提供)

急拡大するデジタル需要を支えるインフラ投資

アフリカでは、モバイルマネーの普及やSNS利用の拡大を背景にデジタルサービスの利用が広がっており、これに伴い通信量やデータ処理需要も増加している。一部の国・地域では海底ケーブルや光ファイバー、衛星通信などの通信インフラ整備が進められている。ジェルミナリオ氏は「デジタルインフラは通信サービスの提供を支えるだけでなく、AIをはじめとする先端技術の活用を可能にする基盤としても重要な役割を果たしている」と指摘する。

ヘリオスは2009年、他の投資家とともに通信タワー事業者であるヘリオス・タワーズ(Helios Towers外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を設立した。複数の通信事業者が共同利用できる通信タワーの整備・運営を通じてアフリカの通信インフラ発展を支え、2019年にヘリオス・タワーズはロンドン証券取引所に上場した。ヘリオスは2025年に同社からの投資回収を完了したが、ヘリオス・タワーズは現在もアフリカ・中東の9カ国で約1万5,000基の通信タワーを運営している。

こうした通信インフラ事業で培った知見を基盤に、ヘリオスは現在、増大するデータ需要に対応するデータセンター事業にも注力している。特に、東アフリカ有数のテクノロジー拠点としてデジタルサービスの普及が進むケニアに加え、アフリカと欧州・中東を結ぶ戦略的拠点であるエジプトやモロッコにおいて、データセンタープラットフォームの構築を進めている。


ヘリオス・タワーズの通信タワー(ヘリオス提供)

双日およびJICAとの協業を通じた事業展開

ヘリオスは、ナイジェリアの大手民間ガス供給企業であるアクセラ(Axxela外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を2016年に買収し、株主として同社の事業成長を支援してきた。2022年には双日が25%の株式を取得して株主として参画し、アクセラのさらなる成長に向けて協業を開始した(2025年7月2日付地域・分析レポート参照)。

ジェルミナリオ氏によると、ヘリオスが双日をパートナーとして選定した背景には、同社が有するガス・電力インフラ開発に関する豊富な知見に加え、長期的な視点で事業価値の向上に取り組む投資アプローチがあり、こうした考え方がヘリオスの投資方針と合致していたという。

西アフリカでは、天然ガス資源が豊富である一方、輸送インフラ不足が課題となっている。ヘリオスと双日は、アクセラを通じて天然ガスインフラの整備・拡充を進めるとともに、顧客企業によるディーゼル・重油から天然ガスへの燃料転換に取り組んできた。


アクセラの天然ガス供給設備(ヘリオス提供)

本事業では、為替環境の悪化やガス調達の不安定化などの課題に直面したが、ヘリオスと双日は共同でアクセラの成長を支えた。その結果、アクセラはナイジェリアを代表する民間ガスインフラ企業の1つへと成長し、両社は2025年末に保有株式を売却した。ジェルミナリオ氏は、「共同株主による長期的な協力と、日本企業との協働における信頼関係、透明性、そして継続的な対話の重要性を実感した」と振り返る。

また、ヘリオスは対アフリカ投資促進に向けた取り組みにも参画している。2025年8月に横浜市で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD9)において、国際協力機構(JICA)は、インパクト投資イニシアチブ「IDEA(Impact Investing for Development of Emerging Africa)」を発表した。

同イニシアチブは、民間セクターとの連携を通じて、2028年に予定されているTICAD10までに総額15億ドル規模の対アフリカ投融資の実現を目指している。その具体的な取り組みとして、JICAはTICAD9においてアフリカで豊富な投資実績を持つ3つの投資ファンドへの出資を発表した。その1つにヘリオスが選定され、2025年11月、JICAとヘリオスとの間で出資契約が締結された。

「この出資は、JICAがヘリオスを日本企業とアフリカ企業との連携を促進する重要なパートナーとして位置付けていることを示すものであり、大きな意義を持つ」とジェルミナリオ氏は語る。JICAの出資対象となるのはヘリオスが運用する5号ファンド(Helios Fund V)だ。同ファンドは、デジタルインフラ、金融サービスおよびフィンテック、必需消費財、テクノロジー活用型ビジネスサービス分野の企業への投資を目的としている。

同ファンドの最初の投資案件となったのが、ナイジェリアのガラス容器メーカーであるベータ・グラス(Beta Glass外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)だ。同社は、西アフリカ有数のガラス容器メーカーとして、世界的飲料ブランド向けのボトルに加え、食品・医薬品分野向けのガラス容器を供給している。

ジェルミナリオ氏によると、ベータ・グラスが投資先として選定された背景には、生活必需品向け製品を製造しており需要が比較的安定していることに加え、新規参入障壁が高く、今後の生産拡大の可能性が評価されたという。

日本企業との連携を進める上では、JICAをはじめとする公的機関の存在が重要な役割を果たしているという。「当社としてもアフリカ市場の魅力や投資機会に関する情報発信を行っているが、公的機関を通じて発信されることで、その信頼性はさらに高まる。今後は、こうした公的機関も含めたパートナーとの連携がますます重要になると考えている」とジェルミナリオ氏は述べる。


ベータ・グラスの工場(ヘリオス提供)

ベータ・グラスのガラス瓶製造ライン(ヘリオス提供)

アフリカ市場進出成功のカギは現地パートナーとの連携

日本企業がアフリカでの事業展開を検討する際、「リスクが高い」というイメージを持つことは少なくない。これに対し、ジェルミナリオ氏は、「現地の事業環境を理解した信頼できるパートナーと連携することで、多くの課題に対応できる」と指摘する。また、日本企業は慎重にリスクを見極めた上で意思決定を行う傾向があり、適切なパートナーを選定できれば、アフリカには多くの事業機会が存在するとの見方を示した。ヘリオスはこれまで日本企業との対話を重ね、多様な協業機会を検討してきた。また、過去2年間にわたり東京でカンファレンスを開催し、アフリカ市場の実態やビジネス機会を紹介している。カンファレンスでは、既にアフリカで事業を展開する日本企業を招き、実務経験を共有するパネルセッションも実施している。こうした先行企業の経験談は、新たな事業展開の可能性を検討する企業にとって有益だという。ジェルミナリオ氏は、「日本企業とアフリカ企業をつなぐ機会を今後も積極的に創出していきたい」と語った。

執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
植松 麗良(うえまつ れいら)
2025年8月からジェトロ・ロンドン事務所勤務。

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