アフリカでのビジネス事例日系企業に聞く、南ア鉄道改革が生む商機と課題
2026年9月1日
南アフリカ共和国(南ア)で進む鉄道改革により、貨物鉄道市場への民間参入が本格化している。ジェトロは7月7~8日に南ア・ヨハネスブルクのサントンコンベンションセンターで開催されたアフリカ鉄道会議・展示会「Africa Rail 2026」において、南部アフリカの鉄道市場に対する日系企業の見方を聞いた。信号・通信システム分野などへの関心が聞かれる一方、資金調達や設備盗難対策、黒人経済力強化政策(B-BBEE)(注) への対応といった事業上の課題も指摘された。
南アで鉄道改革、貨物輸送への民間参入が本格化
南アの主要輸出品である鉄鉱石や石炭、マンガンなどの鉱物資源輸送では鉄道の役割が大きいが、近年は設備の老朽化やケーブル盗難、運営効率の低下により輸送能力が制約されてきた。その結果、一部貨物が道路輸送へ転換し、物流コストの上昇や港湾混雑の要因となっている。南ア政府は、老朽化が進む鉄道インフラの再整備と物流機能の回復を重要政策としている。鉄道貨物の年間輸送量を2億5,000万トン規模に拡大することを目標に掲げており、鉄道を軸に陸海輸送を結ぶ物流ネットワークの整備も進めている(2026年3月16日付調査レポート「サブサハラ・アフリカ地域における物流・インフラプロジェクトの動向(主要5カ国の国別分析)」参照)。
今回の展示会では、こうした課題の解決に向けた鉄道インフラ投資やデジタル技術の活用、民間資本の導入などが主要テーマとして取り上げられた。各社の見方からは、車両や設備の新規供給に加え、老朽設備の更新や信号・通信システム、保守・運行効率化など、既存インフラの機能回復に関わる分野にも事業機会が広がる可能性がうかがえた。各国の鉄道事業者、政府機関、投資家、金融機関、メーカーなど多くの関係者が参加し、主催者による来場者数見込みは5,000人以上だった。会場では、鉄道信号システム、自動運行技術、運賃収受システム、保守サービスなど幅広い分野の展示が行われ、南アのみならず周辺国を含む広域市場への関心の高さも示された。
南アをアフリカ展開のハブとする日立レール
日立レールは2024年にフランスの電機企業タレス(Thales)の地上交通システム(Ground Transportation Systems:GTS)事業を買収し、過去15年以上にわたり南アで展開されてきた同社の事業基盤を継承した。これには、高速都市鉄道ハウトレインの自動運賃収受システムプロジェクトや、南アフリカ旅客鉄道公社(PRASA)の鉄道信号・通信システム事業が含まれる。現在の日立レールは、特にPRASA向けを中心とした鉄道信号システム事業に注力している。設備盗難や老朽化したインフラといった課題は依然として存在するものの、同社はケープタウンの現地オフィス、現地企業とのパートナーシップ、人材育成への取り組みやB-BBEEへの対応を通じて、事業基盤を強化してきた。今後、日立レールは南アをサブサハラ・アフリカ展開のハブとして活用し、貨物鉄道プロジェクトや計画中の高速鉄道構想への参画を通じて事業拡大を目指しているという。

インド生産の価格競争力で市場開拓を図る京三製作所
鉄道信号システムなどを手掛ける京三製作所グループは、インドを拠点にアフリカ市場への参入を模索している。インフラ未整備や治安面の課題はあるものの、鉄道信号分野は他分野に比べて競合企業が限られており、日本企業にとって参入余地が大きいとみている。日本国内で培った長年の技術力に加え、インドでの現地生産による価格競争力を強みに、市場開拓を進める方針だ。

資金調達、盗難、B-BBEEが課題
日本企業A社は、南アの鉄道改革について「鉄道事業の効率化やコスト削減につながる可能性がある」と評価した。また、鉄鉱石や石炭などの大量輸送では鉄道が道路輸送よりも優位性を持つとして、物流需要の拡大に伴う市場成長に期待を示した。一方で、資金調達の難しさや鉄道設備の盗難、黒人経済力強化政策(B-BBEE)への対応などが事業上の課題になると指摘した。A社の指摘は、市場の成長期待と事業展開上の課題が併存していることを示している。
技術力だけでなく現地化対応と事業基盤がカギ
今回のヒアリングでは、各社がアフリカの鉄道市場に対して中長期的な成長期待を示した。各社の見方からは、車両や設備の新規供給に加え、老朽設備の更新や信号・通信システム、保守・運行効率化など、既存インフラの機能回復に関わる分野にも事業機会が広がる可能性がうかがえた。
南アでは依然として電力、物流、治安などの課題が残るものの、鉄道改革の進展に伴い、インフラ整備や輸送効率化に向けた投資需要の拡大が見込まれる。アフリカ各国では人口増加や都市化の進展に加え、資源輸出拡大に対応する輸送インフラ整備の需要が高まっている。その中で南アは産業基盤や金融市場が域内では比較的整っており、多くの企業が南アを南部アフリカ地域への展開拠点と位置付けている。今後は、日本企業の技術力やノウハウに加え、現地化やパートナー連携を含めた事業基盤の構築が、鉄道分野でのビジネス機会の獲得に向けた重要な要素となりそうだ。
- 注:
-
南ア政府による黒人経済力強化政策。詳細は南ア制度情報「備考」を参照。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
金城 瑛大(かねしろ あきひろ) - 2020年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ青森を経て、2024年10月から現職。





閉じる





