高まる経済安全保障リスク、各国・地域の自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略とは日本への磁石輸出に大きな影響
中国のレアアース輸出管理(1)

2026年3月10日

近年、中国政府は希少鉱物などの両用(デュアルユース)品目に対する輸出管理を強化してきた。2023年以降に、ガリウム、ゲルマニウム関連品目の追加(2023年8月施行)、黒鉛関連品目の調整(2023年12月施行)、アンチモン関連品目の新規追加(2024年9月施行)を行った。また、米国向けに、軍事ユーザーおよび軍事用途での両用品目の輸出禁止措置に加え、ガリウム、ゲルマニウムなどの両用品目の輸出管理強化(2024年12月施行)などを行ってきた。2025年には、タングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウム関連品目の新規追加(2025年2月施行)、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの関連品目の新規追加(2025年4月施行)が行われた(注1)。なお、2025年10月には、一部のレアアース品目についての中国国外における再輸出規制の実施の決定や、一部の中・重レアアース関連品目に対する輸出規制実施などを含む6つの公告が公布された。その後、これらの6つの公告については、10月30日に実施された米中首脳の釜山での会談を受けた措置により2026年11月10日まで暫定停止された(注2)。さらに、2026年1月6日には、日本向けの両用品目輸出管理の強化が公布され、即日施行された(注3)

日本企業への影響が大きい磁石関係のレアアース

中国政府による希少鉱物に対する輸出管理の強化のうち、2025年においてジェトロが対応した企業からの相談や問い合わせの数、企業へのヒアリングやその内容から判断すると、2025年4月施行のサマリウム、ジスプロシウムなどの7種のレアアースの輸出管理の強化に関する公告(商務部 海関総署公告2025年第18号)の影響が最も大きかったといえる。同措置の対象品目だけでも、参考として提示されているHSコードベースで97の品目が存在する。なお、商務部の「両用品目に関するよくある質問の回答」によれば、該非判定にあたりHSコードはあくまでも参考としての位置付けであり、品目の特性やスペックなどについての説明による判断が重要となる。それを踏まえるとさらに広範囲の品目が同公告の対象となる。

前述した2025年4月施行のサマリウム、ジスプロシウムなどの7種のレアアースの輸出管理の強化に関する公告(商務部 海関総署公告2025年第18号)によって両用品目の輸出管理対象となったレアアースのうち、特にサマリウム、ジスプロシウム、テルビウムという三つの物質については非常に大きな影響を受けた。永久磁石の製造に使われており、かつ永久磁石は自動車、産業機械に加え、その他の電子機器など幅広い産業に使用されているためだ(表1参照)。

表1:7種の中重希土類の主な用途
希土類品目名:元素記号 主な用途
サマリウム:Sm サマリウムコバルト磁石
ガドリニウム:Gd 磁気メモリ、レーザー光源、MRI造影剤
ジスプロシウム:Dy ネオジム磁石、レーザー光源
テルビウム:Tb ネオジム磁石、蛍光体材料、海軍ソナーシステム
ルテチウム:Lu 触媒、放射線医薬品、蛍光体材料
スカンジウム:Sc 高強度アルミニウム合金、水銀灯、ハロゲンランプ
イットリウム:Y 蛍光体材料、YAGレーザー、薄膜コンデンサ

出所:JOGMEC「中国によるレアアースに対する管理強化に係る動向」などからジェトロ作成

磁石関係のサプライチェーンに関し、同措置の影響を受けたものは、主に(1)レアアース(金属、酸化物など)や磁性材料(合金など)を直接中国大陸外に輸出するもの、(2)中国大陸で永久磁石を製造し輸出するもの、(3)中国大陸で磁石を組み込んだ中間品に加工し輸出するもの、に大別される。このうち、同措置において(2)の永久磁石を製造し、輸出するサプライチェーンについて多くの企業が影響を受けた。その影響で、従来は(2)のサプライチェーンを構築していた企業も、(3)の中間品まで加工して、両用品目輸出管理条例の管理対象外の品目として輸出するようにサプライチェーンを変更した例がみられた。しかし、多くの企業にとってはコストの上昇を伴う措置であり、時限的な措置として捉えているようだ。

中国からの日本向け永久磁石の輸出量の推移を見ると、「レアアース磁石(HSコード:85051110)」は輸出管理強化直後の2025年4~5月に顕著に輸出量が減少した(図参照)。特に5月の輸出実績の25.7トンは近年で最低水準の輸出量となった。その後6月以降に両用品目輸出管理条例に基づく輸出許可を取得できた企業が増え始め、7月以降はおおむね過去2年間の単月輸出実績と同等のレベルまで回復してきている。しかし、輸出のための許可取得プロセスについては、依然として申請から約3カ月以上かかる場合が多く、かつ企業からは商務部門における審査プロセスの透明性に対する疑義の声があがっている。

一方、レアアースを含まない「その他の金属永久磁石(HSコード:85051190)」については、レアアース磁石とは異なる推移を見せている。2025年4~5月の輸出量は、過去2年の単月ベースの輸出量と比較しても大幅な変化は見られなかったものの、6月から8月にかけて低い水準が続いた。

図:中国からの日本向け永久磁石の輸出量(KG)
まず、レアアースの永久磁石について、2023年の動きを振り返ると、7月には21万3,116キログラムで始まり、8月には14万2,148キログラムまで減少します。その後、9月は16万2,384キログラム、10月は17万337キログラムと持ち直し、11月は15万9,277キログラム、12月は15万4,353キログラムと、比較的安定した範囲で年を終えました。2024年に入ると、1月は15万8,500キログラム、2月は12万995キログラムと減少したあと、3月は14万4,238キログラム、4月は11万6,854キログラムでした。5月には16万1,804キログラムと増え、6月には19万4,157キログラムへとさらに増加します。夏にかけては7月が18万9,041キログラム、8月が18万2,476キログラム、9月が18万8,777キログラムと、18万キログラム台の安定した動きが続きました。10月は17万3,602キログラム、11月は21万6,098キログラム、12月は21万3,072キログラムと、年末にかけて再び強い増加が見られます。2025年になると、1月には24万2,058キログラムと大きく伸びましたが、2月は16万2,539キログラムとなり、3月には25万3,069キログラムへとふたたび増加します。しかし4月には9万2,214キログラムと急激に減少し、5月は2万5,719キログラムと、この期間で最も低い水準となりました。6月は13万1,947キログラムへ戻り、7月は23万2,626キログラム、8月は25万5,695キログラムと上向きが続きます。秋以降は9月が22万8,031キログラム、10月が22万6,053キログラムと推移し、11月には30万4,551キログラムでピークを迎えます。そして12月は28万337キログラムで締めくくられました。一方、その他の金属製永久磁石の推移は、全体を通してレアアースのものより大きな変動を繰り返しました。2023年は7月が23万7,990キログラム、8月が20万8,040キログラムで始まり、9月には40万16キログラムへと急増します。10月は31万7,339キログラムとなったあと、11月は17万750キログラム、12月は17万4,170キログラムと大きく振れ幅を持ちながら推移しました。2024年に入ると、1月の輸出量は39万36キログラム、2月は16万4,017キログラム、3月は25万6,136キログラムと上下を繰り返し、4月には41万4,097キログラムまで増えます。5月は22万2,205キログラム、6月は19万3,684キログラム、7月には35万8,605キログラムと増え、8月には13万5,708キログラムまで下がります。その後、9月は19万4,419キログラム、10月は29万2,511キログラム、11月は15万4,201キログラム、12月は10万6,151キログラムと、後半にかけて徐々に低下が続きました。2025年になると、1月は42万4,821キログラムで再び大きく跳ね上がり、2月は16万9,823キログラム、3月は50万3,303キログラムと、この期間で最も高い輸出量を記録します。4月は25万1,599キログラム、5月は32万6,784キログラムと推移し、6月には9万5,720キログラムと一時的に落ち込みますが、7月には12万2,771キログラム、8月は8万5,939キログラム、9月には36万2,367キログラムへと再び上昇します。10月は9万7,449キログラム、11月は13万3,748キログラム、そして12月は32万6,035キログラムと、年末に向けて再び増加していきました。

注:85051110に含まれるレアアースは7種の中・重希土類に限らない。
出所:グローバルトレードアトラスデータを基にジェトロ作成

日本企業の共通課題

こういった状況を受けて、日本企業もサプライチェーンの維持のために対応に追われた。ジェトロのヒアリングおよび対応した相談から日本企業に共通する課題を抽出すると、主に、該非判定、許認可の運用、税関検査の状況、営業秘密保護などとなった(表2参照)。このうち、該否判定については、自社製品が輸出管理の対象となるかの判断が難しい(特に組み込み品など)といった課題がある。また、商務部がよくある質問と対応(Q&A)というかたちで該非判定に係る一定程度の考え方は示しているものの、加工度を上げた製品についてどこまでが管理の対象になるか、といった点も引き続き不透明だ。

また、多くの企業から問い合わせがあった項目としては、許認可の運用が挙げられる。

特に、輸出許可取得までの日数が企業側の想定よりも長くかかるケースが多く、許可取得状況などに関する予見性の低さや不確実性が課題となっている。

このほか、後述する税関検査において検査に長期間を要する問題などに加え、許認可プロセスにおいて企業の営業秘密や競争力に関わる情報の提出を求められる問題なども懸念されている。具体的には、許認可申請窓口となっている地方商務部門に中国国外のサプライチェーンや製品組成に関する詳細な資料の提出を求められたといった企業からの声が聞かれる。法的に必要かどうか不明あるいは不必要と考えられる企業の競争力に関わる情報提出に注意が必要となっている。

表2:日本企業からの問い合わせ/課題の例
類型 概要
該非判定
  • 自社製品が輸出管理の対象かの判断(特に組み込み品など)
  • 加工度を上げた場合の該非判定の変化の有無
許認可の運用
  • 他社の輸出許可取得実績、許可発出の状況
  • 許可取得までの日数の実績
  • 中国側での審査を早めるための方法
  • 再輸出管理についての運用、動向
税関検査の状況
  • レアアース7種を含まない「磁石」まで影響が及んでいる(各税関の対応が統一的でない)
  • 検査に長期間を要する、検査費用、倉庫保管料が高額
  • 口頭で輸出できないと言われた
  • 船会社などが、規制の影響による貨物の遅延や税関手続きの煩雑化のリスクを嫌い、ブッキングを拒否
営業秘密保護 許認可申請窓口の地方商務部門に中国国外のサプライチェーンや製品組成に関する詳細な資料の提出を求められた(企業の競争力に関わる情報提出の是非、エンドユーザーの協力を得ることが困難)

出所:企業ヒアリングなどを基にジェトロ作成

税関検査で通関に長期間を要する場合も

レアアースを含まない磁石の輸出量が2025年6月から3カ月連続で低水準であった原因の1つとして、中国の地方税関において両用品目輸出管理条例の対象となるレアアースを「含んでいないことを証明する」検査が強化されたことが挙げられる。特に6月16日から中国海関(税関)総署が海関総署公告2025年第123号(注4)に基づき、両用品目輸出管理における疑義の確認業務の権限を明確化してから、検査の強化が顕著となった。税関は同公告により、輸出者が税関に対して、国家輸出管理部門(商務部)が発行する許可証を提示せず、かつ、当該貨物が輸出管理対象に該当する可能性がある証拠を税関が有する場合、税関は輸出者に対して貨物の性能指標、主要な用途などの書類の提出を求めることができるようになったほか、法に基づいて判定または組織的鑑定が可能となっていた。

ジェトロによる在中国進出日系企業などへのヒアリングからは、地方税関によってサンプル検査の頻度や範囲に違いはあるものの、おおむね上述の公告の施行以降、税関での検査に数週間から1カ月程度の時間を要するケースが広範囲に観察された。ジェトロが把握する限り、広東省の蛇口税関における検査が厳しいとの意見が複数の企業から聞かれた。

なお、5月9日には、広東省深セン市において、商務部、公安部、国家安全部、海関(税関)総署、最高人民法院、最高人民検察院、国家郵政局などの政府部門が合同で、戦略的鉱物資源の違法な輸出の取り締まりに関する会議を開催していた。この会議においては、中国がガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、タングステン、中・重希土類(レアアース)などの戦略的鉱物資源について輸出管理を実施して以降、「一部の域外のエンティティー(企業など)が域内の犯罪者と結託して違法な輸出の手口を絶えず生み出し、打撃を逃れようとしている」と指摘していた。また、会議においては、各政府部門に対して、「戦略的鉱物資源分野を重視し、根本の管理を強化し、連携して取り締まりに当たること、特に虚偽の報告や隠蔽(いんぺい)、個人携帯による密輸、第三国・地域経由での輸出などの典型的な規制回避行為の取り締まりに注力することのほか、取り締まりの成果をあげること」も求めていた(注5)

図の中国からの日本向け永久磁石の輸出量(KG)を見ると、レアアースを含まない磁石の輸出量について9月は約362.3トンまで回復したものの、10月は97.4トン、11月は133.7トンまで再び落ちこんでいる。これが税関検査による影響かどうか、引き続き注視する必要がある。

なお、ジェトロの中国各事務所ではこのような日本企業が直面する課題について、中国の地方政府との対話の場を設け、改善要望を行っている。例えば、深セン市における税関検査による輸出遅延などの問題については、ジェトロと在広州日本総領事館、深セン日本商工会が9月25日に、広東省深セン市で同市政府との間で、現地進出日系企業のビジネス環境改善を目的とした意見交換会を開催し、「通関が滞り、高額な保管料が発生している問題」などについて改善の要望を行った(注6)。この問題について、深セン市商務局は「こういった要望は既に商務部産業安全管理局に報告している。審査プロセスの最適化を検討中で、近いうちに効率化への道筋が示されると確信している」と回答した。


注1:
中国、中・重希土類7種のレアアース関連品目で4月4日から輸出管理を実施」参照。 本文に戻る
注2:
2025年11月11日付ビジネス短信「中国、米中合意に基づき、10月9日発表のレアアース輸出管理関連措置などを1年間暫定停止」参照。 本文に戻る
注3:
2026年1月8日付ビジネス短信「中国、デュアルユース品目の対日輸出管理を強化」参照。 本文に戻る
注4:
2025年6月18日付ビジネス短信「中国税関、両用品目輸出管理における疑義確認に関する詳細を発表」参照。 本文に戻る
注5:
2025年5月12日付ビジネス短信「中国、戦略的鉱物資源の違法な輸出に対する取り締まりを強化」参照。 本文に戻る
注6:
2025年10月2日付ビジネス短信「日本側が深セン市政府と意見交換会、レアアース輸出規制や海外AIツールの利用規制などに関心」の利用規制などに関心」参照。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
藤原 智生(ふじはら ともき)
2009年にジェトロ入構後、海外調査部中国北アジア課、企画部企画課、北京事務所などでの業務に従事。
現在は中国大陸、香港、台湾関連の調査を担当。ジェトロの媒体などで経済動向や制度情報などについて、情報発信を行う。