アフリカでのビジネス事例SMBC、ファイナンスを通じてアフリカの経済発展と日本企業を支援

2025年3月19日

国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告書によると、アフリカにおいて、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が完全に施行され、輸送・電力・情報通信技術(ICT)などのインフラ整備が進展すれば、3兆4,000億ドルの市場が創出され、大きなビジネスチャンスが生まれるという(2025年2月19日付ビジネス短信参照)。他方で、同報告書では、アフリカ企業が直面するビジネス上の課題として、特に「金融へのアクセス」と答えた企業が約3割と多い、と指摘する。

また、国連の報告書によると、アフリカでは2025年のGDPは3.7%の成長との予測だが、政府の債務残高は増加しているという(2025年1月10日付ビジネス短信参照)。

このような中、三井住友銀行(SMBC)は、アフリカにおいて、政府や企業向けファイナンス、地場金融機関へのファイナンス、トレードファイナンス、プロジェクトファイナンスに加えて、グループ会社と連携したサムライ債(日本国内市場で発行される外国企業・外国政府による円建て債券)の発行支援に取り組んでいる。

同社のアフリカでの取り組みについて、SMBC欧阿中東本部副本部長の齋藤 順氏(ロンドン駐在)に話を聞いた(取材日:2025年2月27日)。


副本部長の齋藤氏(左から4人目)および欧阿中東本部アフリカチーム(同社提供)
質問:
企業概要およびアフリカでの活動は。
答え:
SMBCグループグローバル事業部門は、現中期経営計画において「日本・アジアエッジを有するソリューションプロバイダー」を目指す姿と定め、欧州・アフリカ・中東(EMEA)、米州、アジア大洋州の各地域で、金融サービスを提供している。EMEA地域向けには、ロンドンに位置するSMBCバンクインターナショナルを中心に事業を展開している。
ロンドンやEMEA地域に18カ国35拠点を配置している。アフリカでは、エジプトのカイロに1975年に拠点を設立し、南ア(南アフリカ共和国)のヨハネスブルクに1996年に拠点を設立した。これらはそれぞれ駐在員事務所・出張所であるため、ロンドン拠点などと連携し、コーポレートファイナンス、トレードファイナンス、プロジェクトファイナンスなど金融サービスを提供している。エジプトなど北アフリカや中東などの地場金融機関向けなどには、イスラム金融を通じた支援も行う。
質問:
アフリカで珍しいファイナンス事例は。
答え:
SMBCグループ一体で支援した、エジプトでのサムライ債はあまりアフリカで他に例を見ない案件と言える。2022年3月、エジプト政府が600億円のサムライ債(5年物)をSMBCの保証付きで起債した。保証によりリスクが軽減されたことで日系投資家40社以上が参画した。エジプト政府は、この債券の起債により得た資金を、天然ガスを活用したガソリン車のデュアル燃料車への転換や、新型コロナのワクチン接種などに用いた。
この案件は、SMBCの保証に対して日本貿易保険(NEXI)の保険を付保しており、NEXIにとって、初の本格的なキャピタルマーケット活用案件となった。
この案件はちょうど2022年のロシア・ウクライナ危機が始まったタイミングで組成され、ウクライナから小麦を調達していたエジプト政府としては、不確定な今後のマーケット状況を苦慮したうえでの案件組成となった。
2023年11月にもエジプト政府は、SMBCが保証する750億円のサムライ債(5年物)を起債した。こちらも、イスラエルとハマスの衝突が始まったタイミングと重なっており、奇しくも再び不確定なマーケット状況を見極めての発行となった。
エジプト政府のサムライ債調達コストは、SMBCの保証により、2案件ともに米ドル建て債の調達コストを下回った。また、同国財務省は、この債券を通じて通常の米ドル建て債を買う投資家とは異なる日本の投資家を新たに発掘することで、資金調達の多様化に成功している。今年(2025年)に入ってからは、欧米銀と共にブックランナー(主幹事)として、エジプト政府が発行する20億ドルの米ドル建て債券発行の支援を行った。サムライ債や米ドル建て債の発行を通じて、同国財務省との関係が強化されているため、今後もローン・債券借り換え時の支援が可能と考えている。
SMBCグループとして、ルーマニア、ハンガリー、スロベニア、ポーランドなど中東欧地域でも数百億円規模のサムライ債発行の支援をしているが、エジプトでのサムライ債はこれらの中でも最大規模だ。
また、2024年には、アフリカ輸出入銀行(Afreximbank)による機関投資家向け672億円と、個人投資家向け141億円のサムライ債発行も、SMBCグループ一体となって支援した。
質問:
アフリカでのプロジェクトファイナンスの事例は。
答え:
住友商事が、2022年にアラブ首長国連邦(UAE)の再生可能エネルギー企業 AMEAパワーの子会社のAmunetと共に40%出資をして参画した、エジプトでの500MW(メガワット)の風力発電プロジェクトにおいて、複数の金融機関と協調融資によるファイナンスを実施した。
その他、エジプトにおいて、豊田通商およびユーラスエナジー、フランスのエンジー、エジプトのオラスコムなどが参画する陸上風力発電・陸上風力プロジェクトにも融資をしている。
質問:
アフリカでのトレードファイナンスの事例は。
答え:
トレードファイナンスとしては、中東湾岸諸国からエジプトなどアフリカ諸国向けの原油・石油精製品輸出、アフリカ向けの建機・自動車などの輸出に関する事例がある。現地銀行のリスクを、信用状確認を通じたリスクヘッジで引き受けた事例だ。
また、コートジボワールにおける多国籍金融機関向けのトレードファイナンスについて、カカオ農家への間接的な資金支援などの事例がある。農業分野でのトレードファイナンスにより、アフリカにおける気候変動や食糧不足などの社会課題の解決が可能であると考えている。
質問:
JICAとの協調融資による海外投融資の事例は。
答え:
国際協力機構(JICA)との協調融資案件の枠組みとして、「SMBC-JICAサステナブルファイナンスフレームワーク外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を立ち上げている。インフラ・成長加速、SDGs(持続可能な開発目標)などに特化し、社会的価値創造に資するローンも提供できるフレームワークだ。これまでの事例は次のとおり。
  • 2021年3月:エジプトのBanque Misrに1億ドル(女性活躍、零細企業支援)
  • 2022年3月:Afreximbankへ4億ドル(ワクチン製造、病院施設)
  • 2023年12月:東部南部アフリカ貿易開発銀行(TDB)へ2億4,000万ユーロ(産業育成、金融アクセス改善)
  • 2024年11月:南部アフリカ開発銀行(DBSA)へ1億5,000万ドル(再エネ、蓄電池)
アフリカ開発会議(TICAD)などの機会も踏まえて、今後も案件組成に取り組んでいく。
質問:
これまでのTICADなどでの取り組みや、TICAD9に向けた取り組みは。
答え:
これまで、TICADではAfreximbank、AFC(Africa Finance Corporation)、TDB、などの多国籍金融機関や、アフリカ各国の地場銀行などとの連携に関する覚書(MOU)を締結した。
今後も、アフリカ現地や日本およびその他の地域も含む様々な金融機関などと議論し、効果的な案件組成を目指す。また、サウジアラビアなど中東の開発銀行とも連携し、アフリカを支援する形も検討している。
また、2025年(8月)に横浜で開催されるTICAD9に向けて、アフリカ関連情報を日本語で提供するセミナーを開催するなど、情報発信も積極的に行っている。
TICAD9の機会に、社会インフラ整備、政府発行のサムライ債発行支援など各国の経済発展に資する支援を検討したい。
質問:
アフリカビジネスに取り組む企業へのサービス・支援は。
答え:
エジプト、南アフリカ共和国、ナイジェリア、ケニア、コートジボワール、タンザニアなど、日系企業にとってリスクが高い国でのビジネスにおいて、地場銀行と連携しリスクを引き受けることができる。各国地場銀行や地域金融機関、輸出信用機関等と連携したトレードファイナンス支援拡大に注力している。
前述のとおり、日本との輸出入の他、インド、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビアといった国々とアフリカ諸国との輸出入の際に、地場銀行発行の信用状に関する保証(信用状確認)を提供するなどしている。アフリカとの貿易の際にはぜひ活用いただきたい。
アフリカでのNEXIの信用状確認保険の第1号案件もSMBCの取り組みであった。
なお、日系企業の日常取引ニーズは、ロンドンの他、ドバイ、ヨハネスブルク、パリの拠店からカバーしており、アフリカに関する情報提供や紹介・サポートなどの支援を実施している。
質問:
今後のアフリカ展開の方向性は。
答え:
アフリカは人口が多く、54カ国の中には経済規模の大きい国もある。内外情勢を踏まえて注力する国を設定し、各国政府、金融機関とコンタクトをとり、随時、状況をアップデートしている。経済的な課題や貧困問題もあるが、グループ会社と連携した、政府・アフリカ金融機関・企業の債券発行の支援、トレードファイナンスによるアフリカの貿易促進などを通して、同地域の経済発展に貢献していきたい。また日本企業による、アフリカへの新規進出や資本投資を含むビジネス展開も引き続き支援していきたい。TICAD9に向けてアフリカに関心が高まっていると考える。アフリカ関連ビジネスにおいて何かあれば相談して欲しい。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。

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