アフリカでのビジネス事例アフリカの食糧安全保障とアグリフードの最前線(コートジボワール)
UNIDO主催、製粉工場ツアー

2025年2月21日

第3回日アフリカ官民経済フォーラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が2024年12月16日にコートジボワールのアビジャンで開催され、100以上の企業・団体、アフリカ各国の閣僚級約40人など、官民から1,200人以上が参加した(2024年12月19日付ビジネス短信参照)。

これに合わせ、国連工業開発機関(UNIDO)東京事務所とUNIDOコートジボワール事務所は12月17日、コートジボワール商業・産業省、コートジボワール投資庁(CEPICI)の協力のもと、フォーラム参加日本企業向けに、サイトツアー(工場見学)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを実施した。

本稿では、西アフリカのアグリフード産業のリーディング企業であるAVOSグループの事業や、ツアーの様子を中心に、日本企業の参画可能性についてまとめる(取材日:2024年12月17日)。


工場へ向かうバスから見えるアビジャン郊外の様子(ジェトロ撮影)

アフリカの食糧安全保障

国連の人口推計によると、アフリカの人口は、1950年の2億2,778万人から増加を続け、2024年には15億1,514万人に到達、2100年まで右肩上がりの増加が見込まれる(2024年8月19日付地域・分析レポート参照)。人口増加は、アフリカのポテンシャルを高める一方、深刻な問題にもつながる。その1つとして深刻な食糧不足が指摘されている。アディスアベバ大学などの研究者らの共同研究によると、人口増加により、アフリカの人口が必要とする穀物の量は、2020年の4億3,830万トンから、2050年には5億5,870万トンに増加すると予測されている。これは、アフリカの現在の食糧システムでは、到底賄うことはできない量である(注1)。

アフリカの農業はもともと天候に左右されやすいが、近年の干ばつ、洪水、熱波などの異常気象にみられるように、気候変動の影響からその不安定性は増していくと見込まれる。対策を講じなければ、食糧不安が蔓延(まんえん)する危険性が高いと警告される中、アフリカ各国は食糧安全保障の課題について、生産性向上、水利活用などに積極的に取り組んでいる。アフリカ開発銀行のレポートによると、2015年から2020年にかけてアフリカの農業生産性は毎年、平均13%の水準で向上している。農業生産性の向上は、貿易収支の改善にも寄与しているとみられ、アフリカの農産物貿易赤字は2015年から2020年までの間に26%減少し、一部の加工農産物においては世界的な市場シェアを獲得し始めている。

一方で、2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、穀物、植物油脂、エネルギーなどの価格高騰の中で、ウクライナやロシアとの経済的関係が深いアフリカ各国が特にその影響を受け、アフリカの穀物供給の輸入依存の危険性が顕著となった。世界銀行によると、サブサハラ・アフリカ地域は、穀物輸入の15.3%(そのうち小麦に限っては、約3分の1)をウクライナとロシアからの輸入に依存している(2023年2月7日付地域・分析レポート参照)。気候変動、地政学的要因に影響されない食糧安全保障の実現に向けてアフリカ各国が取り組んでいる。今回訪れたコートジボワールのアグリフードの最前線を、工場見学の報告を交えて見ていく。

西アフリカのアグリフード産業:AVOSグループ

UNIDOサイトツアーはAVOSグループの傘下にあるLes Moulins de Côte d’Ivoire (LMCI) 社の製粉工場を訪れた。

AVOSグループは、2019年に統合された西アフリカのアグリフード産業の先駆企業である。傘下には、次の子会社がある。

コートジボワール

  • SIPRA (Société Ivoirienne de Productions Animales):畜産
  • LMCI (Les Moulins de Côte d'Ivoire):製粉
  • SARES (Société Africaine de Restauration):ケータリング
  • S.A.B.B (Société d'Aliments de Bétail du Bélier) : 家畜飼料

ブルキナファソ

  • SOBUPRA (Société Burkinabé de Productions Animales) :畜産ベンチャー

AVOSグループの中核であるSIPRAは1976年創立以降、3つの事業を展開している。グループ全体で1000人以上の従業員を抱える。

  1. 養鶏、鶏肉および鶏卵の生産、加工、販売を行う「COQIVOIRE(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  2. 孵化(ふか)用の卵と雛鳥(ひなどり)を生産する「IVOIRE POUSSINS外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  3. 家畜の飼料を製造する事業である「IVOGRAIN外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

SIPRAは創業以来、製粉からファストフード(フライドチキン)まで幅広く事業展開してきた。3つの異なる会社で運営していた体制を、2019年、いくつかの企業も吸収合併してAVOSグループに統合し、経営を効率化した。グループ全体で、アフリカ4カ国に15店舗、ジャマイカに2店舗を展開している。

ブルキナファソのSOBUPRAは、コートジボワール国外でのグループ初のベンチャー企業である。今回工場見学で訪れたLMCIは、2023年からパスタに注力しており、自社のスパゲッティブランド「Gusta」を立ち上げている。

Les Moulins de Côte d’Ivoire (LMCI)

LMCIは、2006年に設立、2008年に創業して以来、コートジボワールの小麦粉生産を支えている。政情不安が続いた2000年初頭までの期間、食品分野に限らず産業の独占が続いていたコートジボワールにおいて、若い会社として台頭した。

LMCIでは、パン用、ペストリー用、ドーナツ用、パスタ用の4種類の小麦粉を製造している。工場見学では、小麦の搬入、精選、挽砕(ばんさい)、品質チェックといった工程が紹介された。1日80トンの製粉が可能で、現在は1日約50トン分稼働している。

原料である小麦は、欧州、カナダ、南米、ウクライナ、ロシアから輸入しており、時期により輸入先に変動がある。工場の機械はイタリアから輸入。ブルキナファソをはじめとした西アフリカを中心に輸出している。


備蓄倉庫(ジェトロ撮影)

手作業で袋詰めをする様子(ジェトロ撮影)

袋詰めされた小麦粉は手作業で積み上げられる
(ジェトロ撮影)

工場に設置されたネズミ返し:緑扉左側の黒いもの
(ジェトロ撮影)

日本企業の参画可能性:電力、自動化、人材育成

工場見学の後には、日本企業から機械化、賃金、官の役割、食糧自給率、エネルギーなどに関する質問がなされた。コートジボワール商業・産業省の産業局長エマニュエル・トラ・ビ(Emmanuel TRA Bi)氏、AVOSグループ事務局長ヨハン・アカ(Johanne ACKAH)氏、LMCI社長ラムベート・アカ(Lambert ACKAH)氏が応答した。

質問:
小麦粉の主な輸出先は。
答え:
(ラムベート・アカLMCI社長)主な輸出先は、欧州、米国、アジア。
アフリカでは、ブルキナファソへ輸出している。ブルキナファソは西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)の同盟国であり手続きが相対的に便利である。
質問:
コートジボワールの電気代は高騰している。製粉などのアグリフード産業において、食糧価格への影響をどう見るか。
答え:
(ラムベート・アカLMCI社長)エネルギー供給に関して、LMCIは100%送電網からの電力を利用している。他の西アフリカ地域では、発電機で常時稼働している産業もあるが、コートジボワールでは発電機の利用は例外的である。そのため、アグリフード産業として、インフラセクターに電力供給の安定性について懸念を表明している。
(エマニュエル・トラ・ビ産業局長)経済活動にエネルギー供給が追い付いていない。一方で、政府は大変な努力をしている。2023年6月、政府はコートジボワール北部ブンディアリ(Boundiali)に国内初となる大規模な太陽光発電所を稼働させた。エネルギー問題が食糧価格や産業競争力に悪影響をもたらさないよう努めたい。
質問:
コートジボワールの食料自給率について、どのような認識か。
答え:
(エマニュエル・トラ・ビ産業局長)正確な数値は把握していない。魚、穀物を除くと、多くの食品で高い食料自給率を保っていると思う。キャッサバ、トウモロコシ、豚などの食肉(牛肉を除く)は自給している。ほかの西アフリカ諸国と比べても高い食料自給率を保持している。
質問:
人件費が高騰する中で、労働ロボットを解決策として導入することはあり得るか。オーダーメイドではなく、汎用(はんよう)性のあるロボットであれば、特注のロボットよりは価格が低くなる。袋詰めの作業などこの工場でのいくつかの作業は、汎用ロボットで対応できそうだった。周辺国では、ロボットの産業利用はどこまで進んでいるのか。
答え:
(ラムベート・アカLMCI社長)生産性とコストの問題である。現状では、人件費のほうがロボット購入費よりも低いとみている。付加価値の低い作業についてはロボットへの代替もあり得る。
そのほかの観点として、マーケット規模があげられる。アグリフードに限らず、アフリカのマーケット規模は日本と比べてまだ小さく、ロボット購入経費のコスト回収に時間がかかる。
(エマニュエル・トラ・ビ産業局長)自動化による食糧生産効率の向上は、政府としても実直に取り組むべき課題と認識している。現実では、地場企業の耐久できるコスト支出は限られており、またロボットの維持費などに鑑みると、自動化に踏み出せない企業が多い。
一方で、海外から入ってくる技術に対して、それを操ることができる人材は確保しておきたいと思っている。職業訓練の整備により、インダストリー4.0(注2)に必要とされるテクノロジーに対応したスキルを持つ人材を確保していく。

質疑に答えるエマニュエル・トラ・ビ産業局長(ジェトロ撮影)

農業生産性向上はアフリカの優先課題

農業・畜産産業における生産効率の向上は、アフリカ各国政府の優先課題である。政府はインフラの安定や人材育成など、そのための多岐にわたる急務を認識している。日本企業においては、インフラの安定化、最先端技術を担う人材の育成、自動化において、技術力を生かした参画機会を見いだすことができる。一方で、地場企業の現状では、人件費や市場規模の観点から費用対効果を鑑み、新規設備投資には慎重である現場も多い。商品・サービスの価格競争力は地場企業が重視する要素である。


注1:
Simane, B., Kapwata, T., Naidoo, N., Cissé, G., Wright, C. Y., & Berhane, K. (2025). Ensuring Africa’s Food Security by 2050: The Role of Population Growth, Climate-Resilient Strategies, and Putative Pathways to Resilience. Foods, 14(2), 262. https://doi.org/10.3390/foods14020262
注2:
「インダストリー4.0」とは、「第4次産業革命」という意味合いを持つ名称であり、スマート工場を中心としたエコシステムの構築などを含む。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課
吉川 菜穂(よしかわ なほ)
2023年、ジェトロ入構。中東アフリカ課でアフリカ関係の調査を担当。

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今後記事を追加していきます。

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