アフリカでのビジネス事例 群馬からアフリカへ パートナーとの連携と社内体制整備が重要
2026年8月20日
ジェトロは7月24日、群馬県高崎市内で国際協力機構(JICA)、国連開発計画(UNDP)、国連工業開発機関(UNIDO)との共催により、アフリカビジネスセミナーを開催した。食品会社、自動車部品製造会社、金融機関など約40人の企業・団体関係者が参加した。本セミナーでは、群馬県に本社を置く地元企業2社が、自社のアフリカビジネス経験について語った。講演では、商社や国際機関、公的支援機関との連携や、人材確保、安全対策、アフターサービス体制の構築の重要性が共有された。
コロナ禍でケニアへ焼却炉を納入したキンセイ産業
産業廃棄物焼却プラントや各種熱エネルギープラントの企画・設計・製造を手がけるキンセイ産業(本社:群馬県高崎市)は、2020年から2021年にかけて、ケニアの首都ナイロビ市内の病院に感染性廃棄物の焼却炉を納入した。同社の乾溜ガス化燃焼装置は、廃棄物をガス化する工程と発生したガスを燃焼させる工程を分けることで燃焼を制御し、完全燃焼を促す仕組みを採用している。さまざまな廃棄物を無害化できるほか、自動運転により維持管理が比較的容易であることも特徴だという。
同社が新興国・開発途上国市場に取り組み始めたのは2012年ごろだ。ブラジル・リオデジャネイロで開かれた国連持続可能な開発会議「リオ+20」への参加をきっかけに、それまで想定していなかった海外市場に事業機会を見いだしたという。その後、公的機関の支援を活用しながら、中南米や東南アジアを中心に実績を積んだ。こうした取り組みの一環として、UNIDOが運営するサステナブル技術普及プラットフォーム(Sustainable Technology Promotion Platform、STePP
)に自社技術を登録していたところ、ケニアでの事業提案に参加する機会を得た。日本のコンサルティング企業から、ケニアに納入先がある可能性があるとの提案を受け、納入につながった。

納入したのは1日500キログラムの廃棄物処理が可能な乾溜ガス化燃焼装置だ。新型コロナウイルス感染症の影響により現地への渡航が不可能な状況の中、日本において設計・製造・試運転を行った上で、ケニアに輸出した。現地での据え付け工事は、現地パートナーが見積もりを取得して選定した現地業者が行った。現場にカメラを設置し、映像を通じて日本側が作業状況を確認しながら、オンラインで据え付け方法を指示した。設置後の試運転や研修も、全てオンラインで実施した。納入後、現地からは「廃棄物に対する意識が大きく変わった」との評価を得た。

ケニアの事業を進める中で、日本との共通点に加え、現地特有の課題も明らかになった。基礎工事や配管などにかかる費用は日本とほぼ同じ水準で、環境影響評価や環境測定についても日本と同程度の対応が求められた。また、感染性廃棄物を外部の事業者に委託して処理する費用も日本と同程度だった。外部への処理委託費が高いほど、病院が焼却炉を自ら設置する経済的なメリットは大きくなることから、同社はケニアでの事業展開に可能性を感じたという。
一方、工事・設置に必要な申請や許可の取得は、プロジェクト期限の直前までかかった。また、付属品が現地で盗難に遭い、現地で再手配を余儀なくされるトラブルも発生した。納入後には、現地担当者の交代時に十分な引き継ぎが行われず、操作マニュアルを再送する必要も生じた。
講演した同社の金子啓一常務取締役は、事業を円滑に進める上で、信頼できる現地パートナーの重要性を指摘した。今後は、海外からの留学生や青年海外協力隊経験者の採用も検討し、自社の海外事業体制の強化を図るという。今後アフリカ展開を考える企業に向けては、「中小企業であっても、さまざまな公的機関の支援を何度も活用し、多くの人と知り合うことで、アフリカ市場にたどり着くことができる」と強調した。
拡大するアフリカの即席めん市場に進出する冨士製作所
即席めんの製造ラインの受注製造・販売を行う冨士製作所(本社:群馬県藤岡市)は、袋めんやカップめん、フライめん、ノンフライめんなどの製造ラインを顧客のニーズに合わせて設計・製造している。国内・海外ともに市場シェアの50%以上を誇る業界トップ企業として、これまでに世界60カ国へ900ライン以上を納入しているという。

世界ラーメン協会によると、現在の即席めん消費の中心は中国やインドネシア、インド、ベトナムなどのアジア諸国だが、人口や所得の増加と連動して、近年はアフリカでの即席めん需要も増えている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に、保存性が高く、安価で調理しやすい食品としてあらためて評価され、世界の即席めん市場は拡大している。
同社は1985年に商社からの引き合いでエジプトにラインを出荷したことを皮切りに、1990年代にかけてエジプト、ナイジェリア、南アフリカ共和国に出荷したが、当時は市場が未成熟であったため、しばらくアフリカ向けの出荷は停滞した。しかし、ナイジェリアで現地の食習慣に合わせたスープのない焼きそば形式の即席めんがヒットしたことで、2001年ごろから同国の即席めん市場が拡大した。その後、人口増加や所得水準の向上に伴い、アフリカの即席めん市場は拡大し、2016年以降、ガーナ、スーダン、モロッコ、エスワティニ、ケニア、アルジェリアへ出荷した。同社が2026年7月までにアフリカに出荷してきたラインは計54ラインで、うち約半分となる26ラインがナイジェリア向けだ。エジプトが12ライン、モロッコが4ラインで続く。商社と組んでの展開が多いが、3分の1ほどは直接出荷しているという。また、納入先には、現地に進出した日本企業と現地企業の双方が含まれる。
現在感じている課題として、コスト面での対応がある。アフリカでは安価な袋めんが市場の中心であり、商品の販売価格を抑えるため、製造設備にも低価格化が求められる。同社は基本的に日本国内で設計・製造・組み立て・試運転を行った上で輸出しているが、顧客の予算や現地の状況に応じて設備の機能を絞り込むほか、比較的簡易な部品については現地で調達するなどしてコスト削減を図っている。一方、限られた予算の中で、これまでは自動化度が低い最低限の設備を備えたラインがアフリカへの出荷の中心だったが、現地労働者の賃金上昇により、近年はより自動化度の高いラインの発注も増えてきているという。
アフリカでは安価な袋めんから高価なカップめんへと需要が高度化する余地があり、市場は飽和にはほど遠い。同社は、今後の人口増加や所得水準の向上に伴い、アフリカでの即席めん需要がさらに拡大するとみている。
アフリカビジネスを展開するための社内での体制整備にも注力している。同社の製造ラインは全て受注生産であり、納入時には原則として顧客の工場へ技術者を派遣し、設備の据え付けや立ち上げを支援する。商談や契約は英語で進められる場合でも、設備の据え付けや立ち上げの段階では、フランス語や現地語が必要になることがある。社内に外国語に対応できる人材が限られていることから、設置の際に派遣する技術員には通訳を付ける必要がある。アフリカは環境が厳しい国も多く、予防接種や医薬品キットの支給など、技術者の健康・安全面への配慮も必要になる。派遣先の環境に応じた出張手当のあり方も検討課題となる。同社は外務省が発表している海外安全情報を参照し、危険情報がレベル3(渡航中止勧告)以上の地域については、技術員を派遣せずオンラインで対応している。
ラインの納入後はアフターフォローも不可欠になる。製造ラインは納入後、20年程度使用されることもあり、長期間にわたる支援が求められる。日本とアフリカ諸国(島嶼〔とうしょ〕国を除く)には最大9時間の時差があり、納入先から日本の定時後に問い合わせや対応依頼が入ることもある。このような業務に対応する社員への手当の支給や勤務時間の調整など、持続的な社内体制整備のための規定づくりも必要だと指摘する。

今回登壇した両社は、事業分野は異なるものの、商社や国際機関、公的支援機関などとの連携を通じてアフリカ市場を開拓してきた点で共通していた。また、人材確保や安全対策、コスト管理、アフターサービス体制の構築といった課題への対応が、アフリカビジネスの持続的な拡大に向けて重要であるとの認識を示した。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ調査部中東アフリカ課
波多野 瞭平(はたの りょうへい) - 2025年10月から現職。中東・アフリカ地域の調査業務を担当。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
天神 和泉(てんじん いずみ) - 2015年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援課、ジェトロ静岡、企画部海外地域戦略班(アフリカ担当)を経て、2022年7月から現職。





閉じる





