アフリカでのビジネス事例日本光電、市場を理解し、強みを生かしたアフリカ販路開拓を展開

2025年7月3日

人口増加が続くアフリカ。国連の推計では、サブサハラ・アフリカの人口は、2024年時点の約12億人から30年後の2054年までに79%増の約22億⼈に達するとされている(2024年7月17日付ビジネス短信参照)。これらの国・地域で医療環境を改善することは、人口増加による経済的な恩恵を享受するための重要な要素となり得る。

アフリカでの販路拡大に挑む医療機器メーカー大手、日本光電のアラブ首長国連邦(UAE)現地法人日本光電ミドルイースト(Nihon Kohden Middle East FZE)から、同社のアフリカでの取り組みやビジネス課題について話を聞いた〔インタビュー日:2024年9月27日、取材対応者:日本光電ミドルイースト社長の嶋田隆彦氏(取材当時)、ディレクターのロアイ・メルヒ氏、シニアディビジョンマネージャーのホアン・ロドリゲス氏、プロジェクトマネージャーのデボラ・アエニ氏〕。


左から嶋田隆彦氏、ホアン・ロドリゲス氏、ロアイ・メルヒ氏、筆者、デボラ・アエニ氏 (ジェトロ撮影)
質問:
貴社の概要とアフリカ市場での取り組みについて。
答え:
当社は、動脈血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーター、血液検査装置、除細動器などの医療機器の開発・製造・販売を行う。世界各国に販売拠点を設け、世界中の医療現場へ医療機器を届けてきた。群馬県富岡市や上海でのメインプロダクト製造に加え、血液検査装置の試薬を製造する工場をUAEドバイに設立し、高品質の純正試薬を迅速かつ安定的に供給できる生産体制を構築している(2020年8月31日付地域・分析レポート参照)。
2005年にドバイに拠点を設立して以来、中東・アフリカ地域は同拠点がカバーしている。2017年にはケニアにマーケティング・オフィスを開設し、東アフリカでの販売力を強化している。2023年9月には、ナイジェリアで開催された医療機器・製薬展示会に現地代理店と協力して初めて出展。展示会出展企業や来場者の多さから、ナイジェリアを中心とした西アフリカ市場の潜在性を実感した(2023年10月12日付ビジネス短信参照)。西アフリカ市場への参入は新型コロナ禍を経て下火になっていたため、本格的な販路拡大に向け活動を進めている。

血球計数器。感染症診断の需要が高いアフリカ市場では堅調に売り上げを伸ばしている(同社提供)

脳波計。アフリカ市場でも一定のシェアを
獲得している(同社提供)
質問:
アフリカ市場参入の難しさとは。
答え:
アフリカ市場参入の難しさの1つは、信頼できるパートナーを見つけることだ。直近では、ナイジェリアに次ぐ西アフリカにおける英語圏市場の中心地であるガーナと、フランス語圏のハブとなり得るコートジボワールをターゲットに独自調査を行っていたものの、情報不足や現地企業とのコミュニケーション不足で進展が見られなかった。アフリカ企業側から引き合いがあった場合でも、当初は製品に関心を示していたものの、連絡が途絶えることは少なくない。今回、ジェトロのアフリカビジネスデスクサービス(アフリカビジネスデスク | ジェトロのサービス)を通して、ガーナのパートナー候補企業と商談を実施、複数の企業と現在もやり取りを続けている(注)。
質問:
アフリカでビジネスをするうえで心掛けていることは。
答え:
アフリカ企業との商談にあたっては、自社製品の品質と技術力の高さを強調し、外国製品、特に中国製品との差別化を図っている。安価な中国製品は、市場に導入期から流入していることから、市場への浸透度が高い。そのため、アフリカ企業の多くは、当社の扱う製品分野に対して安価なイメージを持っており、初期段階の交渉では難しさを感じている。一方で、例えばタンザニアでは、製品の品質や充実したアフターサービスを重視する傾向がみられはじめた。多くの日本企業は、質の高い製品を販売するのみならず、取引先との長期的な関係構築を行い、商品販売後も丁寧なアフターサービスを提供している。当社としても、こうした市場にビジネスチャンスがあると考えている。

タンザニアの病院でのトラブル対応トレーニングの様子(同社提供)
質問:
今後の展望について。
答え:
日本光電は、「Illuminating Medicine for Humanity」という大きなビジョンを掲げ、この目的達成のためにテクノロジーやサービスを世界中に提供している。今後も、アフリカでの販路拡大・ビジネスの確立に努めるとともに、自社製品を通じて多くの人々の命を守りたいと考えている。

注:
取材当時。
執筆者紹介
ジェトロ海外展開支援部フロンティア開拓課アフリカビジネス支援班
高橋 美織(たかはし みおり)
2023年、ジェトロ入構。アフリカビジネス支援班で、企業のアフリカ販路開拓を支援。

この特集の記事

今後記事を追加していきます。

総論・地域横断

日本企業のアフリカビジネス

アフリカ現地企業事例

アフリカ工業団地・フリーゾーン事例

第三国事例