アフリカでのビジネス事例カシオ、中東・アフリカの現地政府・教育現場との連携で関数電卓需要つかむ

2025年3月14日

増加を続ける人口や、若年層の厚さから、成長市場として期待される中東・アフリカ。2024年度にジェトロが実施した「海外進出日系企業実態調査(中東編)」と同「アフリカ編」によると、中東に拠点を置く日系企業の49.7%、アフリカでは57.0%が今後1~2年で事業を拡大する予定だ。一方で、同地域の競争環境は激化しており、同調査では両地域とも、半数以上の進出日系企業が競合相手数について増加していると回答した。また、特にアフリカでは、9割以上の進出日系企業が規制・法令面や、財政・金融・為替面をはじめとした投資環境に何らかの課題があると回答している。各国企業が注目する旺盛な内需や市場の拡大といった魅力がある一方、進出の障壁も少なくない中東・アフリカで、日本企業はいかに商機を見いだしていくことができるだろうか。日本企業を取り巻く競争環境や、進出上の留意点などについて、現地で事業を展開する日本企業の事例から考えていきたい。

ジェトロは、時計や電卓、楽器などを製造販売するカシオ計算機のアラブ首長国連邦(UAE)現地法人カシオ・ミドルイースト・アンド・アフリカ(CASIO Middle East and Africa FZE)に、中東・アフリカでの取り組みについて話を聞いた(インタビュー日:2025年2月5日、取材対応者:シニアゼネラルマネジャー・平石豊太郎氏、ゼネラルマネジャー ・島田康司氏 アクティングゼネラルマネジャー・鳥越龍亮氏、マネジャー・笠圭佑氏)。

質問:
貴社の中東・アフリカ地域での事業概要は。
答え:
主に自社の時計や教育、楽器品目の事業を展開している。2013年にUAEのドバイに販売会社を立ち上げ、現在では中東とアフリカ全土を含む合計40カ国でビジネスを行っている。
教育事業では、主に関数電卓の事業拡大に注力している。関数電卓の普及に当たっては、現地の政府機関などとの連携を通じたトップダウン式の活動と、教師への支援などを通じたボトムアップ式の活動を組み合わせた「GAKUHAN活動」による需要拡大に取り組んでいる。具体的には、(1)関数電卓の活用教材の作成、(2)自社製品への現地政府の推奨獲得、(3)教師トレーニングセミナーの開催、(4)教育カンファレンスへの参加などを行っている。

関数電卓の活用教材の例(カシオ・ミドルイースト・アンド・アフリカ提供)

ナイジェリアのラゴス州教育省と連携したGAKUHAN活動の様子
(カシオ・ミドルイースト・アンド・アフリカ提供)
時計事業では、主力ブランドのG-SHOCKとスタンダードモデルの腕時計の販売を行っている。特に比較的安価なスタンダードモデルはアフリカ地域での販売基盤となっている。アフリカ地域での売り上げは好調で、前年比2桁成長を継続している。
質問:
中東・アフリカ地域の競争環境はどうか。
答え:
教育事業(電卓)に関しては、偽物・模倣品や、現地の量販店が販売している安価なOEM製品などが競合となっている。
時計事業では近年、スマートウオッチの人気が高く、中国製の安価なモデルが普及しつつある。UAEや東アフリカなど、インド系の人々が多く住んでいる地域では、TITANなどのインド発ブランドも人気が高い。また、エジプトではアルバやダニエルクラインなど、安価で若者向けのデザインが売りのブランドが普及している。マーケティング戦略としては、毎年多くのイスラム教徒が巡礼に訪れるサウジアラビアで、巡礼ルートの動線に沿ってブランド訴求を行っている。アフリカではインフルエンサーの活用や、店舗でバッテリー交換を行うサービスデーを設けるなど、ブランドに親しんでもらう取り組みを行っている。
質問:
中東・アフリカ地域でのビジネス上の課題は。
答え:
教育事業では、偽物・模倣品の流通を問題視しており、(1)税関との連携、(2)市場での摘発活動、(3)本物啓発活動に注力している。特にナイジェリアでは、ラゴス州政府教育省の認証を取得したナイジェリア専用関数電卓を開発・販売しており(2024年7月12日付ビジネス短信参照)、汎用(はんよう)品との差別化を図ることで、模倣品が生まれにくくしている。このナイジェリア専用機はナイジェリア国旗と同じ緑色のデザインにしており、型番にもナイジェリアを示す「NG」の文字を入れるなどして、オリジナリティーを出している。

偽物・模倣品対策として、ナイジェリア標準化機構適合性評価プログラム(SONCAP) 認証を取得した
ナイジェリア専用関数電卓(カシオ・ミドルイースト・アンド・アフリカ提供)
時計事業では、特にアフリカ地域の輸入関税の高さが課題だと感じている。エジプトやモロッコでは、欧州から時計を輸入する際の関税が免除されるケースがある。一方、自社製品の製造拠点の1つの中国からの輸入関税は約60%となっている。
その他、事業全体を通して、アフリカ地域では商品代金の支払いの遅れや、並行輸入品の流通といった問題も感じている。
質問:
中東・アフリカ地域でのビジネスで心がけていることは。
答え:
教育事業では、製品の普及に向けて、まずは進出先の国の教育カリキュラムを研究し、現地ニーズに合った製品提案・開発を行っている。関数電卓の需要の程度に加え、進出先地域の購買力も考慮する。代理店の選定基準に関しては、資金力や、現地の教育機関と強いコネクションを持っているかどうかなどの点を重視している。
質問:
中東・アフリカ地域での今後の事業展開の展望は。
答え:
時計事業に関しては、アフリカは若年層が多く、購買力も増している中で、嗜好(しこう)品である腕時計への需要が拡大していくと考えられる。さらに、SNSの普及や都市化の進行で消費者のライフスタイルが変化していることから、時計をファッションアイテムとして求める層が増加することに期待している。
ついては、ドバイの拠点を活用し、アフリカ地域への継続的な投資を進めていくことを考えている。アフリカは東西南北で市場特性が異なるため、各国の経済状況を見極めつつ、ブランドとしての品質の高さを訴求して高価格帯商品の販売推進を行う地域と、比較的低価格帯の商品の販路拡大に注力する地域の2つの軸で、時計事業の拡大に取り組んでいる。
教育事業に関しては、アフリカの人口増加はすなわち、関数電卓ユーザーになり得る生徒数が増えることを意味するため、非常に期待が高まっている。ただし、地域によっては、教師不足や教材不足などの社会的な課題も根強いため、その国・地域の状況を見極めながら、適切なGAKUHAN活動による支援と、投資を進めていく。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 リサーチマネージャー
久保田 夏帆(くぼた かほ)
2018年、ジェトロ入構。サービス産業部サービス産業課、サービス産業部商務・情報産業課、デジタル貿易・新産業部ECビジネス課、ジェトロ北海道を経て2022年7月から現職。

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