アフリカでのビジネス事例アフリカにおけるビジネス上の課題を再考する
チャンスとリスクが併存するフロンティア

2025年8月12日

横浜で2025年8月に第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が開催される予定で、アフリカとの経済連携に注目が集まっている。アフリカは、人口が急増し、経済成長が続く見込みのため、消費市場としての魅力が高まっている。一方で、課題も多い。本稿では、アフリカでのビジネスの課題とリスクについて、あらためて振り返る。

財政やインフレ、汚職も課題

アフリカには、石油・天然ガスや金属類など鉱物資源が豊富な国もあるが、2010年代に資源価格が下降し始めると、外貨収入は減少し、アフリカ諸国は過大な借り入れで債務危機に陥った。さらに、新型コロナウイルス危機による財政負担の増加もあり、政府歳出に占める利払いの割合は、2019年の19%から2024年には27.5%まで増加している。物価上昇も無視できない。2024年にはアフリカ15カ国が10%以上のインフレ率に見舞われた(2025年6月5日付ビジネス短信参照)。汚職も深刻な問題だ。紛争やクーデターが発生するなど治安が悪化し、国際的な難民や当該国内での避難民が発生している国もある。

日本企業にとっては、詐欺が多いのにも要注意だ。現地企業とアポが取れない、取っても変更になるなどの話も聞く。

アフリカ進出日系企業の課題多数

日本からの投資は地理的に近いアジアや、所得が高くビジネス環境が整った欧米などが圧倒的に多い。アフリカは地理的に遠く、高所得者層も少ないほか、アフリカ全体のGDPは日本の7割程度と経済規模が小さく、他の地域と比べて投資はわずかだ。さらに、ビジネス上の課題が多いのが実情だ。

ジェトロの「2024年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)」によると、投資環境の課題では、「規制・法令の整備、運用」が66.2%で、前年に続いて最多だった。特にモザンビークやコートジボワール、ナイジェリア、ケニアでは割合が高い。具体的な内容では、「行政手続きの煩雑さ」「現地政府の不透明な政策運営」「窓口での施行レベルのばらつき」などが挙がった。法律自体が不明瞭なほか、急な施行や突然の制度変更もある。窓口や担当者レベルで異なる見解を示す場合もある。時間感覚のずれや煩雑な手続きにより、想定より時間がかかることも多い。民間企業との取引でも、契約が履行されない、支払いや納期が遅れるなどのトラブルもある。

「財政・金融・為替面」が課題との回答も60.7%で多かった。具体的には、「不安定な為替」「外貨決済・調達」「税制・税務手続きの煩雑さ」などだ。例えば、ジンバブエやナイジェリア、エジプトなど為替の変動が激しく、現地通貨の信用力が低い国々も多い。外貨不足などもアフリカ諸国の課題で、海外送金や輸入業務に支障を来す場合もある。また、エチオピアやガーナ、ザンビアは債務不履行(デフォルト)となった。

一方で、モロッコについては、「特に問題はない」との回答が25.0%で、他の国と比べると、課題は少ないことがうかがえる(表1参照)。

表1:所在国の投資環境面での課題(複数回答)(n= 219)(単位:%)
国・地域名 規制・法令の整備、運用 財政・金融・為替面 不安定な政治・社会情勢 インフラの未整備 貿易制度面 雇用・労働の問題 特に問題はない
アフリカ全体(n=219) 66.2 60.7 58.4 47.0 39.3 37.4 4.1
南アフリカ共和国(n=48) 58.3 45.8 91.7 75.0 27.1 37.5 2.1
エジプト(n=35) 62.9 80.0 37.1 25.7 28.6 22.9 11.4
ケニア(n=35) 71.4 60.0 77.1 37.1 45.7 31.4 0.0
ナイジェリア(n=21) 76.2 76.2 95.2 76.2 57.1 57.1 0.0
モロッコ(n=16) 43.8 31.3 6.3 12.5 37.5 18.8 25.0
ガーナ(n=12) 66.7 83.3 16.7 25.0 50.0 41.7 0.0
コートジボワール(n=11) 81.8 36.4 9.1 45.5 27.3 54.5 0.0
モザンビーク(n=10) 90.0 70.0 30.0 40.0 40.0 50.0 0.0

出所:2024年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

改善見られないとの回答が多数

前述の調査で、投資環境について直近1年間で改善した点を聞いたところ、「課題はあるが、何も改善していない」との回答が57.5%で最多だった。課題の解決が進んでないことも示唆された(表2参照)。

南アやコートジボワールでは、インフラに改善が見られたとの回答などはあった。一方で、アフリカ全体で見ると、物流・インフラは未発達で、国境を越えた輸送には時間とコストがかかる。鉄道の総距離は世界の6.5%、貨物輸送量はわずか1.2%と限定的だ(2024年8月19日付地域・分析レポート「アフリカの人口急増と物流・貿易動向」参照)。未舗装道路も多く、特に内陸国への輸送では時間とコストがかかる。都市部でインフラが整っていても、農村部との格差がある国もある。

多くの日本企業が課題と答えた「規制・法令の整備、運用」も改善は少ない。アフリカには54カ国あり、それぞれ輸出入規制が異なるため、域内貿易は通関手続きも煩雑で、貿易の障害となっている。アフリカ全体を経済圏として統合するアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の取り組みにも課題はあるが、域内での製造や輸出が増加する可能性もあり、今後の進展が期待される。

表2:所在国の投資環境面で直近1年間で改善した点(複数回答)(n= 214)(単位:%)
国・地域名 インフラの未整備 政治・社会情勢 財政・金融・為替面 規制・法令の整備、運用 雇用・労働 貿易制度面 課題はあるが、何も改善していない 改善すべき課題はない
アフリカ全体(n=214) 17.3 13.1 10.3 7.9 2.3 1.9 57.5 4.2
南アフリカ共和国(n=44) 47.7 29.5 6.8 9.1 0.0 2.3 38.6 0.0
ケニア(n=35) 5.7 5.7 5.7 0.0 0.0 0.0 82.9 2.9
エジプト(n=34) 17.6 14.7 38.2 5.9 0.0 2.9 38.2 2.9
ナイジェリア(n=21) 4.8 4.8 4.8 9.5 9.5 0.0 71.4 4.8
モロッコ(n=17) 5.9 0.0 0.0 5.9 5.9 11.8 52.9 23.5
ガーナ(n=12) 0.0 0.0 8.3 8.3 8.3 0.0 75.0 8.3
コートジボワール(n=11) 36.4 9.1 9.1 9.1 9.1 0.0 45.5 0.0
モザンビーク(n=9) 11.1 11.1 0.0 22.2 0.0 0.0 55.6 0.0

出所:2024年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

治安リスクも、最新情報収集が重要

日系企業進出実態調査によると、政治・外交的な動きが活動に与える影響について、「大いに影響がある」と「やや影響がある」との回答は合計86.4%だった。特に紅海でのイエメンのフーシ派による攻撃(ジェトロの特集「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」)により、輸送コスト増加、輸送日数延長・遅延などの影響があるとの回答が多かった。

域内での政変や紛争も多い。アフリカでは2020年以降、マリ、ギニア、ブルキナファソ、ニジェール、ガボンなどで政変が起こった。エチオピア、スーダンで紛争やコンゴ民主共和国域内での周辺国も巻き込んだ武力衝突も発生している。

日本の外務省は2025年7月末時点で、スーダンのハルツームなどで「レベル4:退避勧告」、マリのバマコ、ニジェールのニアメなどでも「レベル3:渡航中止勧告」を出している。

日本企業の出張が多い国を見ると、ケニアでも大規模デモが発生しており、7月時点では首都ナイロビは「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」となっている。ナイジェリアのアブジャやラゴス、南アフリカ共和国のプレトリアやヨハネスブルクもレベル2となっている。

その他、経済規模の大きい国では、エジプト、アルジェリア、モロッコ、エチオピアの首都などは「レベル1:十分注意」で、比較的低い(表3参照)。なお、ボツワナなどでは全土で危険情報が出ていない(レベル0)。

表3:アフリカ各国の渡航安全情報(7月30日時点)

アフリカ各国の首都の危険レベル
国名(国内危険情報リンク) 首都 首都危険度 危険度説明 主な危険情報
スーダン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ハルツーム 4 退避勧告 軍事衝突が激化、退避勧告
ソマリア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます モガディシュ 4 退避勧告 テロや誘拐事件が頻発、無政府状態
リビア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます トリポリ 4 退避勧告 突発的な衝突や誘拐事件の報告あり
中央アフリカ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます バンギ 4 退避勧告 武装勢力の活動、治安部隊が機能不全
南スーダン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ジュバ 4 退避勧告 内戦状態が継続、治安が極めて不安定
チャド外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ンジャメナ 3 渡航中止勧告 イスラム過激派組織による活動など
ニジェール外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ニアメ 3 渡航中止勧告 一部地域で誘拐事件の発生
ブルキナファソ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ワガドゥグー 3 渡航中止勧告 2022年クーデター後、混乱、抗議集会など
マリ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます バマコ 3 渡航中止勧告 2020年、2021年に軍の一部による武力政変など
経済規模が大きい国の首都の危険レベル
国名(国内危険情報リンク) 首都 首都危険度 危険度説明 主な危険情報
ケニア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ナイロビ 2 不要不急の渡航中止連絡 抗議行動やテロの可能性あり
ナイジェリア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます アブジャ 2 不要不急の渡航中止連絡 ボコ・ハラムなど過激派の活動
南アフリカ共和国外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます プレトリア 2 不要不急の渡航中止連絡
アルジェリア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます アルジェ 1 十分注意
アンゴラ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ルアンダ 1 十分注意
エジプト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます カイロ 1 十分注意
エチオピア外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます アディスアベバ 1 十分注意 ティグライ州や近隣の州などで衝突が発生
ガーナ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます アクラ 1 十分注意
コートジボワール外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ヤムスクロ 1 十分注意
モロッコ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます ラバト 1 十分注意

出所:外務省海外安全ページ「国・地域別情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

医療事情も未整備な場合や各種疾病が流行している国もある。黄熱病など各種のワクチン接種が必要な国もある。アフリカ地域でのビジネスや出張に当たっては、外務省の最新の渡航安全情報の確認が必要だ。

なお、TICAD9のイベントでは、アフリカ約40カ国がブースを構え、ステージでも現地企業が登壇する予定のため、普段渡航が難しい国の人々と日本で面談をする機会となる。

カントリーリスクもアジアに比べて高い

国別の信用度について見ると、NEXIの保険の引き受け方針ページでは、国カテゴリーはAからHまでの8段階に分類され、Aが最もリスクが低く、Hはリスクが最も高い。2025年7月時点でモロッコ、モーリシャス、ボツワナは「D」のカテゴリーでインドと同水準、南アは「E」でベトナムと同水準だ(表4参照)。アフリカ諸国は「G」「H」などリスクが高い国も多い。海外ビジネスでは保険などでリスクヘッジを検討することが重要だが、リスクが高い国ほど保険料は高くなり、保険付保できない国もある。

表4:カントリーリスク・NEXI「国カテゴリー表」抜粋(2025年7月7日現在)
分類 参考(アジア) アフリカ諸国
A シンガポール、日本 対象なし
B 韓国 対象なし
C 中国 対象なし
D インド モロッコ、モーリシャス、ボツワナ
E ベトナム 南アフリカ共和国
F バングラデシュ アルジェリア、コートジボワール、
カーボベルデ
G カンボジア エジプト、セネガル、トーゴ、ベナン、ナイジェリア、ルワンダ、カメルーン、アンゴラ、ウガンダ、タンザニア、セーシェル、ナミビア、レソト、エスワティニ
H ラオス チュニジア、リビア、スーダン、モーリタニア、ガンビア、ギニアビサウ、ギニア、シエラレオネ、リベリア、ガーナ、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャド、中央アフリカ共和国、赤道ギニア、ガボン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ブルンジ、サントメ・プリンシペ、エチオピア、ジブチ、ソマリア、ケニア、モザンビーク、マダガスカル、ジンバブエ、マラウイ、ザンビア、コモロ、エリトリア、南スーダン共和国

注:Aが最もリスク低く、Hが最も高い。
出所:NEXI、最新情報は同社「国カテゴリー表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」参照

NEXIでは、企業の貿易、融資、投資などの対外取引で民間企業が保険を引き受けることが難しい国での事業でも保険付保可能な場合がある。アフリカではエジプトの風力発電、チュニジアの太陽光発電、ケニアの地熱発電などの事業で利用された例がある(2024年11月14日付地域・分析レポート参照)。

経済産業省、外務省、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)など、日本政府や政府系機関も海外展開支援イベントや各種支援を提供している。民間の保険会社や金融機関、コンサルタントのサービスも検討できる。

アフリカビジネス協議会もイベント開催や情報提供を行うほか。同協議会に参画する日本経済団体連合会と経済同友会は2025年にTICAD9への提言を出した。

国連工業開発機関(UNIDO)、国連開発計画(UNDP)などの国際機関の支援利用も検討できる。

競合企業も増加

海外進出日系企業実態調査では、進出先の競合相手数は5割超が増加と回答した。競合先は地場企業が31.3%で最大、中国、欧州、日本、インドなどの企業が続く。競合先が強いと思う理由では、「コスト競争力」が6割超で突出している。次いで「販売ネットワーク」「ブランド・知名度」が4割前後だ。特に中国やインドの企業のコスト競争力、欧米企業のブランド・知名度で競争力が高いとの結果だった。植民地時代の影響から欧州企業のプレゼンスも高い(表5参照)。

表5:進出先市場で最も競争力が強いと思う企業とその理由(複数回答)(単位:%)
国・地域名 コスト競争力 販売ネットワーク ブランド・知名度 市場ニーズに適した製品サービスの開発力 営業力の高さ 意思決定の早さ 現地企業との連携・パートナリング コンプライアンス対応の差 現地・外国政府による優遇措置・インセンティブ、FTAなどの差 製品・サービスの技術力 その他外国企業との連携・パートナリング 納品・提供までのスピード 人材獲得における競争力 現地・外国政府による規制の差 その他
アフリカ全体(n=115) 64.3 40.9 37.4 29.6 27.8 22.6 21.7 20.0 18.3 17.4 12.2 10.4 7.8 5.2 6.1
地場企業(n=36) 63.9 47.2 22.2 19.4 22.2 27.8 22.2 13.9 22.2 8.3 13.9 8.3 5.6 8.3 5.6
中国企業(n=28) 92.9 21.4 7.1 21.4 10.7 21.4 10.7 35.7 10.7 3.6 3.6 14.3 7.1 3.6 7.1
欧州企業(n=18) 33.3 55.6 72.2 38.9 38.9 16.7 38.9 11.1 27.8 33.3 22.2 0.0 16.7 11.1 0.0
日本企業(n=16) 62.5 50.0 62.5 43.8 37.5 18.8 31.3 6.3 18.8 43.8 18.8 12.5 6.3 0.0 6.3
インド企業(n=8) 87.5 37.5 37.5 37.5 37.5 37.5 12.5 37.5 12.5 12.5 0.0 25.0 0.0 0.0 12.5
米国企業(n=6) 16.7 33.3 100.0 50.0 33.3 16.7 16.7 16.7 16.7 33.3 16.7 16.7 16.7 0.0 16.7
韓国企業(n=1) 0.0 100.0 100.0 0.0 100.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
台湾企業(n=0) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
その他(n=2) 50.0 0.0 0.0 50.0 100.0 0.0 0.0 50.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

注:営業利益の発生しない駐在員事務所は設問の対象外とした。
出所:2024年度 海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)

一方で、同調査では、パートナー候補としてフランスやインドの企業との回答が多い。日本企業が競合となる企業もいるが、協力できる部分もある。このため、世界各国の動きにも注目すべきだろう。主要国の動きは、ジェトロの特集「「次のフロンティア」アフリカを巡る世界各国・地域の動向」も参照を。

投資コストが高い国も、人材育成がカギ

アフリカの1人当たりGDPは1,940ドルで、高所得者層が少ない。品質の高い消費財を売れる層がまだ限られる。その上で、南アのヨハネスブルクのように、アジア諸国と比べて一般職工の人件費などが高いこともある。人件費で比べると、アフリカ各国でも状況はさまざまで、ナイジェリアのラゴス、ガーナのアクラなどでは、アジア主要都市よりも低い水準だ。

投資コストが低いアフリカ諸国でも、製造業に関する人材やインフラが整っているとは限らない。アフリカの平均年齢は19歳と若く、労働力の潜在力は高いが、教育水準や職業訓練の不足により、産業人材としての活用が十分に進んでいない。日本との文化、習慣や時間感覚のずれなどもある。進出済みの日系製造業は時間をかけて人材育成をしつつ、徐々に生産を増やす例もある。

人口は多いが、産業は未発達で、働く場所が限られるため、失業率が高い国もある。例えば、南アは2024年第1四半期(1~3月)の失業率は32.9%、若年層(15~34歳)では45.5%だ。

社会課題をビジネスで解決へ

アフリカでの急激な人口増加は市場拡大の一方で、さまざまな社会課題ももたらしている。農村から都市への人口流入、交通インフラ未整備による渋滞や物流障害の発生、上下水道の不足、食糧不足と食糧の輸入依存、学校や病院の不足、若年層の失業といった数多くの課題が発生している。各国政府は解決に取り組むものの、汚職や財政難、援助依存から対策は遅々として進まない。他方、アフリカでの社会課題をビジネスチャンスと捉え、アフリカで成長する現地の企業もある。

ジェトロでは「J-Twende(Japan-Africa Collaboration Hub)」(「Twende」はスワヒリ語で「Let's go」)を立ち上げ、「稼ぐ力」「人づくり」「街づくり」を可能にする技術を持つ日本企業とアフリカ有望企業のマッチングをし、社会課題をビジネス機会に変えることを目指す。

さらに、感染症対策や、農業、環境・グリーン分野などで、日系スタートアップがアフリカの課題解決に挑戦している(特集「アフリカと日本の未来切り拓く、日系スタートアップの挑戦」参照)。

アフリカでは歴史的にODAプロジェクトも多い。一方で、2024年のOECD諸国からのアフリカ向けODAは1.0%減の420億ドル、日本の世界向けODAは14.4%減の168億ドルとなった(2025年5月2日付ビジネス短信参照)。2025年に入り、多くの米国の援助が停止されたため、アフリカでのHIV/AIDSや対テロ対策、食糧の危機などの懸念を生む。

このような中で近年、ODAではなく、ビジネスベースで取り組む日本企業も多い。ジェトロの特集「アフリカでのビジネス事例」の企業の動きも参考になる。この事例では、合弁先や協業先、M&A相手などパートナー選びが重要だと示唆された。アフリカでは詐欺案件(「国際的詐欺事件について(注意喚起)」参照)なども多いため、信頼できるパートナーを探すことが重要だ。なお、2025年8月に横浜で開催される「TICAD Business Expo &Conference」には、現地の有望企業も出展し、参加する予定だ。

リスクとチャンス併存するフロンティア

課題も多い。それでも、人口減少が続く日本とは逆に、人口が急増するアフリカを次のフロンティアとして、将来を見据え挑戦している日本企業もある。海外進出日系企業実態調査によると、今後1~2年の事業展開について、「拡大」と答えた割合は前年度から3.0ポイント増の57.0%だ。理由として「現地市場ニーズの拡大」との回答が6割超えだった。

アフリカといっても、業種や分野によって有望市場やビジネスチャンスは異なる。国ごとに文化、言語、商習慣、法律が異なるため、情報収集が必要だ。無論、アフリカは統計自体にも課題があり、統計に反映されないインフォーマルセクターの市場も大きい。統計の信頼性が低いケースや情報が古いケースもあり、留意してほしい。

統計集としてまず、「アフリカ・ビジネスデータ集(第2版)(2025年7月)」を参照。

さらに、アフリカの可能性や魅力については、「第9回アフリカ開発会議(TICAD9)とアフリカビジネス」も参照。

執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。

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今後記事を追加していきます。

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