アフリカでのビジネス事例日アフリカのスタートアップが共同でピッチ

2025年2月12日

コートジボワールの最大都市アビジャンで2024年12月16日に開催された「第3回日アフリカ官民経済フォーラム」で(2024年12月19日付ビジネス短信参照)、日本とフランス語(仏語)圏西アフリカのスタートアップ9社が、アフリカ各国から参加した閣僚や企業、政府関係者など、総勢1,200人に対し、ピッチを行った。各社からは、仏語圏アフリカを中心とした自社サービス・製品の普及状況や今後の連携戦略の紹介があった。

日本の技術を、アフリカの課題解決に

日本からは次の5社が登壇し、特に通信インフラ、医療、水資源といった分野での課題解決に向けた各種取り組みが紹介された。

  • アークエッジ・スペース(ArkEdge Space):地球観測、船舶向け衛星通信、IoT(モノのインターネット)データ収集などに対応する超小型衛星コンステレーション(注1)の企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューション提供を行う。月面活動にむけた衛星インフラ構築や深宇宙探査など、多様なニーズに対応。アフリカでの実績として、東京大学、ルワンダ政府機関と共同で、同国初の衛星「RWASAT-1」の製造・開発を手掛けた。同社衛星データの活用により、農業や環境モニタリング、通信改善などへの応用が期待されるほか、開発途上国でも利用可能な低コストの衛星技術を提供し、宇宙利用のさらなる普及を目指す。
  • ドッツ・フォー(Dots for):分散型無線ネットワーク「d.CONNECT」の敷設により、農村地に通信インフラを提供。従来の基地局中心ネットワークとは異なり、複数のルータを分散配置することで、低コストかつ短期間で農村部に通信網を構築することが可能だ。同社は、低価格なインターネットプランを提供するほか、割賦契約によるスマートフォンの販売にも注力しており、農村部の住民が継続的に利用しやすい価格設定・サービスを実現している。現在はベナン、セネガルの仏語圏アフリカ2カ国でサービスを展開しており、サブスクリプション数は両国合計で4万5,000件以上にのぼる。
  • ソワック(SOIK):アフリカの小規模医療施設向けに、デジタル産前健診アプリケーション「SPAQ」を開発・提供することで、アフリカの医療現場において、産科サービスのデジタル化を目指す。SPAQの活用を通じて、妊婦の健診受診率の向上を図り、母子死亡率の削減を図る。このサービスは、コンゴ民主共和国の他、ザンビア、ガボン、シエラレオネの4カ国40以上の医療施設に導入され、健診数は4,000件を超える。同社によると、異常値の早期発見などにより、これまで50以上の命を救うことができたという。
  • ソラ・テクノロジー(SORA Technology):ドローンとAI(人工知能)を組み合わせたエアモビリティ(注2)サービスを提供。特にアフリカではマラリア対策に注力している。世界保健機関(WHO)の報告によると、2021年のマラリアによる死亡者は61万人を超える。うち、アフリカ地域が全体の96%を占めている。こうした課題に対し、同社は衛星データやAI技術、ドローンを掛け合わせることで、より効率的なマラリア対策ソリューションを提供している。具体的には、衛星データと生成AIを用いて、ボウフラ(蚊の幼虫)の繁殖リスクが特に高い水たまりを検知・選別し、集中的に殺虫剤を散布する。無選別に殺虫剤を散布していた従来の方法と比べ、費用対効果が高く、環境負荷の低い方法で蚊の発生を抑制することが可能。同社技術では、4割もの費用削減効果があるという。
  • ウォータ(WOTA) :ポータブル型の水再生システム「WOTA BOX」などの開発・事業化を手掛ける。使用済みの水を高度な浄化プロセスにより濾過(ろか)し、手洗いやシャワー、トイレなどの生活用水として再利用できる。使用した水は、同社技術により98%以上が再利用可能だという。独立した循環システムのため、上下水道に接続していない場所にも設置できる。利用シーンとして、自然災害などで断水した地域やインフラが未整備の地域などが想定される。既に日本国内での活用も進んでおり、2024年1月に発生した能登半島地震では、WOTA BOXを利用した個室シャワーおよび手洗いスタンドの無償提供により、避難所の衛生環境の維持・改善に大きく貢献したという。気候変動や人口増加に伴い水資源の枯渇問題が深刻化する中、災害エリアに限らず、様々なシーンで同社システムの活用が期待される。

日本スタートアップのピッチの様子(ジェトロ撮影)

アフリカ勢はテック主導で、ソリューションを提案

仏語圏西アフリカからは、電動モビリティ、アグリテック、フィンテック、スマート・ロジスティクスといった分野のスタートアップが4社登壇した。各社は、環境負荷の軽減、農業効率化、地域の金融包摂、物流の効率化といった切り口で、現在展開しているビジネスを語った。登壇企業は次の通り。

  • Africharger(コートジボワール):電気自動車(EV)および電気バイクの充電インフラの開発を手掛ける。充電ステーションの設置も進んでおり、コートジボワールの最大都市アビジャンおよび中部主要都市ブアケの2拠点に計50カ所の設置が完了している。2023年から2024年にかけての1年間で、同社ステーションの充電により350万キロメートルの走行距離がカバーされ、650トンのCO2(二酸化炭素)が削減されたという。EVの充電費用は1回10ドル(1回の充電で25キロメートル走行可能)。電動バイクはステーションで充電済みのバッテリーに交換可能で、1回の交換につき費用はわずか1ドル。利用者は同社アプリケーションを通じて、モバイルマネーなどで支払い可能。同国では配車サービスやフードデリバリーの需要が高まっており、ドライバーや配達員にとっても、ガソリンより安価な電気自動車を利用するメリットは大きい。
  • Djoli(コートジボワール):コートジボワールのアグリテック・スタートアップ。食品の生産者とレストランやホテルなどの受注者を引き合わせる独自プラットフォーム「HoReCa」を展開。生産者に対して市場へのアクセスを容易にする。購入者は市場価格の最安値で食品を調達でき、注文した食品は24時間以内に配送される。毎月250のレストランが同サービスを利用し、毎月6万ユーロの収益を上げている。
  • Julaya(コートジボワール):B2B向けにキャッシュレス決済サービスを提供。銀行口座を持たない従業員への給与支払いにモバイルマネーを活用することで、企業の給与支払いの迅速化、効率化を図る。現在、コートジボワールを拠点に、セネガル、トーゴといった「西アフリカCFAフラン圏(注3)」の国々にサービスを展開している。同通貨圏は、銀行口座普及率が低い一方で、携帯電話の普及率が高い。多くの人が現金取引の代替としてモバイルマネーを使用しており、モバイルマネーは重要な金融手段となっている。2024年に同社サービスを通じて処理された総取引額(TPV, Total Payment Volume)は約7億5,000万ドルにも達する見込みだという。
  • Paps(セネガル):セネガルを拠点にコートジボワール、ベナンなど仏語圏アフリカ3カ国でスマート・ロジスティクス・ソリューション(注4)を提供。特に、最終消費者までの配送プロセス(ラストマイル配送)に注力しており、AIを活用した同社独自の住所特定技術により、97%という高い配送達成率を実現したという。今後は仏語圏西アフリカのみならず、モロッコやナイジェリアにも事業を拡大する予定ということだ。

アフリカスタートアップのピッチの様子(ジェトロ撮影)

日本政府による共同イニシアティブも始動

同フォーラムでは、武藤容治経済産業相がビデオメッセージで、大串正樹経済産業副大臣が開会あいさつでそれぞれスピーチを行い、経済産業省からは、スタートアップを通じた日本企業支援として、「日本アフリカ産業共創イニシアティブ(JACCI(ジャッシ)」を創設する旨が、新たな協力策として発表された。日本企業の海外進出支援や、海外ネットワーク、各国制度調査を強みとするジェトロもこの枠組みに加わり、「水先案内人」として日本企業のアフリカ進出を支援するほか、日本企業と現地スタートアップの連携を促す。

アフリカ開発銀行のアキンウミ・アデシナ総裁によると、アフリカのフィンテック・スタートアップの数は、2021年には5,200社を数え、前年比で3倍増になったという。その売り上げは、2025年には年間300億ドルになるといわれている。開催国コートジボワールを含む仏語圏アフリカにおいても、比較的存在感の強いBIG4(南アフリカ共和国、ナイジェリア、エジプト、ケニア)の裏で、着実な成長を遂げており、域内先進のセネガルでは、ユニコーン企業も輩出している(2024年8月8日付地域・分析レポート参照)。日本企業が現地スタートアップの活力を取り込む手段として、JACCIが果たす役割に期待が高まる。

コートジボワールのスタートアップ支援機関と日本のNPOとの間でMOU締結

フォーラム当日の覚書(MOU)式典では、コートジボワール政府傘下のスタートアップ支援機関「デジタル・ユース財団(FJN, Fondation Jeunesse Numérique)」と日本のNPO「ジャパン・コネクト(Japan Connect)」が、両国のスタートアップ拡大を目的としMOUを締結した。両者は、コートジボワールと⽇本との間でスタートアップエコシステム(注5)をつなげることにより、⽇本企業のコートジボワール進出や、コートジボワールのスタートアップエコシステムの発展を後押ししていくという。

フォーラム翌日には、コートジボワールのデジタル移行・デジタル化省やFJN、ジャパン・コネクトの協力のもと、日本のスタートアップ5社が、アビジャン市内にあるインキュベーション施設(注6)「M STUDIO」やアクセラレーション・ハブの「ZEBOX」を訪問し、施設運営者からの説明を受けたほか、入居しているスタートアップと交流した。M STUDIOは、仏語圏西アフリカで初めて「モバイル」に特化したインキュベーション施設であり、主にインフォーマルセクターの構造変革に焦点を当て、女性や若者の起業家を中心に支援している。現在、スタートアップ11社が入居している。ZEBOXは、フランスの大手海運会社のCMA CGMの最高経営責任者(CEO)ロドルフ・サーデ氏により設立されたスタートアップアクセラレーターであり、フランス、米国、英国、シンガポール、コートジボワールなど世界各国に拠点を有する。海運、陸運、空運など、主に物流ソリューションの分野のスタートアップを支援している。


M studio訪問の様子(ジェトロ撮影)

ZEBOX訪問の様子(ジェトロ撮影)

注1:
中・低軌道に打ち上げた多数の小型衛星を連携させて一体的に運用する方法。
注2:
ドローンや電動垂直離着陸機などの航空機を利用して、人や物資を空中で自由に移動させる技術やサービス。
注3:
西アフリカCFAフランを使用する通貨圏。ほとんどがフランスの旧植民地で構成され、加盟国はベナン、ブルキナファソ、コートジボワール、ギニアビザウ、マリ、ニジェール、セネガル、トーゴの8カ国。
注4:
IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ビッグデータ、ロボティクスなどの先進技術を活用し、物流やサプライチェーンのプロセスを効率化・最適化する仕組みや概念を指す。
注5:
スタートアップ企業を継続的に支援し、成長、成功に導く環境。
注6:
起業家、新ビジネスを支援する施設。
執筆者紹介
ジェトロ海外ビジネスサポートセンター ビジネス展開課
藤本 海香子(ふじもと みかこ)
2021年、ジェトロ入構。イノベーション・知的財産部知的財産課、ジェトロ・アビジャン事務所を経て2024年7月から現職。

この特集の記事

今後記事を追加していきます。

総論

2026年度

2025年度

2024年度

日本企業事例

2026年度

2025年度

2024年度

製造業のアフリカ展開

2026年度

2025年度

2024年度

全国各地からアフリカ展開

2026年度

2025年度

日系スタートアップのアフリカへの挑戦

2025年度

2024年度

アフリカ現地企業事例

2026年度

2025年度

2024年度

第三国事例

2025年度

アフリカ工業団地・フリーゾーン事例

2024年度

地域横断

2025年度

2024年度