持続可能な包装と企業の対応事例EUの包装・包装廃棄物規則(PPWR)は不確定事項が山積

2026年3月31日

EUの「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」は、包装廃棄物を削減し、発生を防止するとともに、包装材のリサイクルを推進することを目的としている。同規則は、2025年2月11日施行。2026年8月12日に一部条項が義務化される予定だ(注1)。ただし、それぞれの規定に異なる適用時期が定められるほか、詳細を規定する多数の細則が今後順次発表される。ジェトロのヒアリングによると、欧州企業も詳細がわからない中で規則への対応準備を進めざるを得ない状況だ。

それを踏まえて本稿では、2026年2月16日時点でわかっていること、わからないことを整理したい。なお、規則全体の内容については、ジェトロ「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)を参照されたい。

必要とされる循環型社会の構築

EUの環境政策への意識の高さは論じるまでもないかもしれないが、PPWR導入の理由はそれだけではない。具体的には、EU内で包装廃棄物が増加の一途をたどり、リサイクル体制が十分ではないために処理量が追い付いていないという現状がある。EUにおける包装廃棄物は、2021年に総量で8,400万トン。2021年は1人当たり188.7キログラムであり、2011年に比べて約32キログラム増えた。リサイクルされる廃棄物の量も増えているものの、全体として包装廃棄物の量とリサイクルされた廃棄物の量の乖離は広がっている。1人あたりの包装廃棄物は2030年までにさらに19%増えると予想されている(注2)。加えて2017年12月末から中国で施行された廃プラスチックを含む固形廃棄物の輸入禁止を受け(2017年9月15日付ビジネス短信参照)、EUも中国へ包装廃棄物を含む廃プラスチックを輸出できなくなり、2024年のEUの廃プラスチックの輸出は2015年比で半減している(図1)。

図1:EUの廃プラスチック(HSコード:3915)の輸出額
通貨はUSドル。世界は、2015年 931,615,230、2016年 801,176,662、2017年 672,705,525、2018年 478,448,532、2019年 420,467,379、2020年 383,966,434、2021年 393,522,903、2022年 444,959,186、2023年 417,763,020、2024年 422,973,932。マレーシアは、2015年 14,195,635、2016年 12,073,778、2017年 25,979,953、2018年 64,984,709、2019年 78,049,979、2020年 80,344,294、2021年 48,142,691、2022年 67,647,702、2023年 89,890,014、2024年 98,450,922。中国は、2015年 506,766,925、2016年 431,154,857、2017年 293,285,291、2018年 22,567,359、2019年 5,914,987、2020年 1,106,635、2021年 581,185、2022年 1,312,241、2023年 1,401,578、2024年 197,009。このようにEUの廃プラスチックの世界への輸出は金額ベースで半減しており、中国は同産品の輸入を停止状態。代わりにマレーシアがEUの廃プラスチック輸出の23%を受け入れている。

注:マレーシア、中国はそれぞれ2024年、2015年の金額ベースで最大の輸出先。
出所: Global Trade Atlas(S&P Global)から作成

代わりにマレーシアがEUの廃プラスチックの23%程度を受け入れている(2024年)が、近年マレーシア政府も同産品の輸入に消極的な構えだ。廃プラスチック輸入に関しては、公的認証機関であるマレーシア工業標準所(SIRIM)の認証取得を2025年7月より義務化。加えて、輸出国側での事前検査なども要求するなど、廃プラスチックの輸入規制強化を進めている(注3)

加えて、2024年にEUは廃棄物輸送規制を改定。EUとしても域外への廃プラスチックの輸出を制限し、域内の循環型経済実現に向けてリサイクルを促進する方向性を強化した。

PPWRで特に注目されるリサイクル可能性とリサイクルプラスチックの要件

EUでは1994年に施行された「包装・包装廃棄物に関する指令」が数回の改定を経て運用されてきた。EUにおける「指令」は、EU加盟国に「達成するべき内容」を示すものであり、各国はそれに従って国内法を制定する。今回、包装・包装廃棄物について「指令」を廃止して「規則」に置き換えることで、EU域内でのルールが統一され、行政側にとっては強制力が高まることにつながる。

他方で、特に注目されるリサイクル可能性とリサイクルプラスチック要件は、欧州産業界からも、野心的で実現が難しいと指摘する声がある。以下に、PPWRの中で特に企業からの関心が高い同二項目を解説する。

  • リサイクル可能性要件

    PPWRは「市場に出る包装は、全てリサイクル可能でなければならない」と定める。リサイクル可能な包装とは、以下の要件を満たすものだ(図2)。

    図2:PPWRが定めるリサイクル可能性要件
    次の2つの要件が示されている:1マテリアルリサイクル用に設計。・廃棄物を同じ製品の原材料として利用可能であること。・適用時期:2030年1月1日、または要件の詳細を定める委任立法の発効日から2年後のいずれか遅い日。2 大規模なリサイクルが可能。・EUレベルで年間廃棄量の55%以上がリサイクルされていることを確保できるプロセスに対応していること。・適用時期:2035年1月1日、または要件詳細を定める実施法令の発効日から5年後のいずれか遅い日。続く見出し「リサイクル可能性の2つの要件を満たす方法」の下に、次が記載されている:リサイクル可能性の評価は、委任立法と実施法令に基づく「リサイクル性能等級」で判断する。重量ベースで A(95%以上)、B(80%以上)、C(70%以上) の3段階。2030年1月1日以降 または委任立法発効日から2年後以降は A・B・C の包装のみ上市可能。2038年1月1日以降 は AとB の包装のみ上市可能。

    出所:ジェトロ「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)概要スライド15ページ、PPWR6条などから作成

    第一の要件は、マテリアルリサイクル(注4)用に設計されることであり、これを満たすためには、リサイクル設計基準とリサイクル性能等級に関して今後制定される委任法令(注5)を順守する必要がある。第二の要件が、大規模なリサイクルが可能であることだ。リサイクル可能性規模の評価方法と大規模なリサイクルの管理メカニズムの実施法令が今後制定される。
    リサイクル可能性に関する上記の2要件を満たしているかどうかを判断するために、製造事業者は材料や包装の種類で分類した包装のカテゴリー別に、上記の委任法令と実施法令に基づいてリサイクル可能性評価を実施する。リサイクル設計基準の詳細は委任法令が定めるが、基準の設定で考慮する要件として、添加物、接着剤、染料、密封用などの包装部品、原材料の構成、コーティング/バリアの有無と素材、インクや塗料、空にしやすいこと、解体のしやすさなどを挙げている(注6)
    2030 年1月1日、または委任立法の発効日から2年後のいずれか遅い日以降、上市できるのはリサイクル性能等級が重量ベースで70%以上と判定される包装だけとなる。2038年には、これは80%以上になる予定だ。リサイクル可能性要件の適用除外は、医薬品に直接接触する包装や危険物の輸送に使用される包装などについて定められている。また、ティーバッグなどの茶、コーヒー、そのほか飲料用と一緒に使用され廃棄される浸透性のある袋または使い捨ての軟包装や、青果物に貼り付ける粘着性ラベルにはリサイクル可能性の要件は適用されないが、堆肥(たいひ)化可能な包装とする必要がある。これは、2028年2月12日より適用される。

  • リサイクルプラスチック要件

    執筆時点でPPWRにおいて、プラスチックについてはリサイクル材の含有義務が定められている(表1)。

    表1:プラスチック包装のリサイクル材最低含有率の目標 ※使い捨て飲料ボトルを除く。 注:接触に注意が必要な包装とは、食品・飲料、飼料、医薬品、医療機器などに使用される包装。PETはポリエチレンテレフタレートの意。
    No 包装の種類 2030年 2040年
    1 PETを主要材料とする接触に注意が必要な包装(※) 30% 50%
    2 PET以外のプラスチック材料の接触に注意が必要な包装(※) 10% 25%
    3 使い捨てプラスチック飲料ボトル 30% 65%
    4 1~3以外のプラスチック包装 35% 65%

    ※使い捨て飲料ボトルを除く
    注:接触に注意が必要な包装とは、食品・飲料、飼料、医薬品、医療機器などに使用される包装。PETはポリエチレンテレフタレートの意。
    出所:ジェトロ「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)概要スライド16ページ、PPWR7条1~2から作成

上市する包装のプラスチック部分は、前述の表に記載の割合で使用後のプラスチック廃棄物(注7)から回収したリサイクル材の使用が義務付けられている。適用開始時期は、2030年1月1日または制定される実施法令の発効日から3年後のいずれか遅い日以降だ。また、2040年に目標が引き上げられる。医薬品に直接接触する包装や他の規則に規定される一部の医療機器、乳幼児向け食品、堆肥可能な包装などは適用を免除される。


ブリュッセル市内の有機食品を扱うスーパーの売り場(ジェトロ撮影)

現在発表されているPPWRに照らし合わせると、スーパーの売り場の写真の中でも、包装全体(2030年以降のリサイクル可能性要件あり)、包装のプラスチック部分(2030年以降リサイクル材の割合を義務付け)といったように、PPWRの対象となるものがほとんどだ。しかし、厳密な適用範囲や包装の種類によるリサイクル可能性の算出方法などは、今後発表される細則を確認する必要がある。

PPWRは委任法令と実施法令の発表を待つ状況

実際にどのような委任規則と実施規則が定められる予定なのか、PPWRの条文を確認し、主なものを表にまとめた(表2)。

表2:PPWR条文に記載されている主な実施規則と委任規則
項目 採択予定日 内容
実施法令 2026年2月12日 生産者登録
2026年8月12日 EUレベルで統一した包装のラベルやラベル表示の要件、デジタル手段による提供を含む様式の仕様
2026年8月12日 標準化されたデジタルマーキング技術により包装の材料組成を識別するための方法
2026年8月12日 EUレベルで統一した包装廃棄物の収集用容器のラベルとラベルの要件
2026年12月31日 EU内のプラスチック廃棄物から回収されたリサイクル 材の割合の算出と検証の方法、技術文書の書式
2026年12月31日 EU域外でプラスチック廃棄物から回収されたリサイクル材に適用されるルールの同等性を評価・検証する方法
2027年6月30日 再利用可能な包装
2028年2月12日 包装の空き容積率
2030年1月1日 リサイクル可能規模の評価方法と大規模なリサイクルのための管理メカニズム
委任法令 2026 年 12 月 31 日 プラスチックのリサイクル技術の持続可能性基準
2027年2月12日 再利用で最も頻繁に使用される包装形態について、再利用が可能な回数の最低値
2028 年1 月1 日 リサイクル設計基準とリサイクル性能等級
2028 年1 月1 日 企業が義務を果たすために、飲料用容器の回収やリサイクルを共同で行う仕組み(プール)をつくることを認めるルールについて、その具体的な条件と、プールが各国の当局へ報告しなければならない情報の要件
2028 年1 月1 日
(必要であればとの記載)
プラスチック包装のリサイクル材最低含有率目標の新たな適用除外、および適用除外の包装の見直しの必要性

出所:PPWR

ケラーアンドヘックマン弁護士事務所ブリュッセルオフィスのヘーゼル・オキーフ弁護士は、以下のような点から、見通しは不透明だと指摘した(ヒアリング日:2026年3月6日)。

  • 2026年8月12日から開始する義務が複数存在する。例えば、「製造者」(包装されたものがその企業の名前で売られる食品であれば食品企業)が「適合宣言(Declaration of Conformity)」を作成し、技術文書を備え、適合性評価を実施する義務が課されている。さらに言えば、食品包装のPFAS(有機フッ素化合物)規制も同日から適用される。しかし、PPWR自体は極めて一般的な要件を概説した法的枠組みに過ぎず、詳細は実施法令と委任法令で定められることになる。「適合宣言に具体的に何を記載すべきか」といった基礎的内容すら十分に明示されていないと感じている。
  • 欧州委員会がPPWR公表時に「ガイダンス」を「近日中に公表する」と述べていたが、いまだに公表されていない。企業はこれを待っている状況。欧州委員会はまた、「よく聞かれる質問(FAQ)」を今後公表する予定だ。
  • 輸送用梱包(こんぽう)(PPWRにおける規定は表3)について、欧州委員会は最近、PPWR第29条第2項および第3項に定める「100%再利用目標」から、パレット用ラップおよびストラップを免除する委任決定を採択した。この委任決定は、今後欧州議会およびEU理事会の審査を経る。

表3:再利用可能な目標の設定

  • 対象となる包装:輸送用包装、保管用に製品をグループ化する包装、飲料販売用の包装
    (飲料販売用は最終販売事業者への義務付け)
  • 適用時期:2030年の目標は達成を義務付け、2040年の目標は努力義務
項目 対象となる包装 2030年達成義務 2040年努力義務
輸送用または販売用の包装 電子商取引を含めたEU域内での輸送に使用されるパレット、プラスチック製の折りたたみ式箱、箱(段ボール箱を除く)、トレー、プラスチック製クレート、ドラム缶、冷たい食品用容器(キャニスター)など 40% 70%
グループ化するための包装 販売用包装以外で、在庫保管や販売単位にまとめるために製品をグループ化する包装(段ボール箱を除く) 10% 25%
飲料用の容器包装 消費者に販売するアルコール飲料・非アルコール飲料用(乳・乳製品、ワイン、その他のアルコール飲料やウイスキー、焼酎、日本酒などを除く) 10% 40%

出所:ジェトロ「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)概要スライド17ページ

PPWRの実行が不透明な中、先んじて取引先からの要求も

このように、PPWRは現状不明瞭な点が多い。この不透明さが企業にとって大きな負担なのはいうまでもなく、今後、自社にとって必要な情報を確認していく必要がある。ただし、欧州委員会が「競争力強化」に舵(かじ)を切って、他の環境関連の規制の簡素化や延期を行っているように、産業界からのパブリックコメントや政治の動向によっては現在の義務が変更されたり、開始が延期されたりする可能性がある。具体例を挙げると、PPWRとは別の「使い捨てプラスチック指令」の実施規則を改定し、使い捨てプラスチック飲料ボトルにおいてケミカルリサイクル(注8)で処理された再生プラスチックを認めることが欧州委員会より加盟国に示されている(2026年1月9日付ビジネス短信参照)。現状PPWRはリサイクル方法をマテリアルリサイクルに限定しているが、EUがより環境負荷の高いケミカルリサイクルを容認するこのような動向も、PPWRの細則の制定に影響を与えるかもしれない。

他方で、グローバル企業などでは、投資家や消費者との関係を重視し、法制度に関わらず自主的に循環型経済などへの対応を進めるケースもある。欧州の小売業の中にはPPWRのそれぞれの項目の義務が開始する前にリサイクル可能性やリサイクル素材の使用などで独自の基準に基づいた包装材の使用を求める場合もあるという。特に中小企業においては、EUの取引先から包装材の変更や認証の取得を求められた際に、まずは、「それが法的な義務なのか、法的拘束力はないが取引先が調達要件として求めてきているのか」を明確にしてから社内の検討に入ることが有用だ。


注1:
欧州委員会ウェブサイト「Packaging waste外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」参照 本文に戻る
注2:
ジェトロ「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)参照 本文に戻る
注3:
マレーシア「2025年関税(輸入禁止)(改定)令」、2025年7月2日付マレーシア投資貿易産業省(MITI)プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(300KB)本文に戻る
注4:
廃棄物を同じ製品の原材料として利用するリサイクル方法(PPWR第3条39) 本文に戻る
注5:
規則の詳細を定める細則として、委任法令と実施法令の2種類がある。委任法令(Delegated Act)は、立法当局である欧州議会と理事会が行政当局である欧州委員会に法の特定部分に修正や補足を加えることを委任して定められるもの。実施法令(Implementing Act)は、既存のEU法令を補完し、EU加盟国間の法的統一性を確保するために欧州委員会に権限が付与されて制定される法令。実施に関する細かい規定や技術的な内容を定める場合が多い。 本文に戻る
注6:
PPWR付属書II表4 本文に戻る
注7:
この使用後の廃棄物とは「post-consumer plastic waste」とされ、消費者に使用されて破棄された廃棄物を示す(PPWR第7条)。リサイクル材は、EU内で収集された廃棄物からリサイクルされたものを使用する必要があるが、EU内の廃棄物との同等性が確認された第三国のリサイクル素材も認められる。この第三国でのリサイクル素材については、廃棄物枠組み指令(2008/98/EC)と使い捨てプラスチック指令(2019/904)で言及されているものと同等基準とされる。欧州委員会は、2026年12月31日までに、EU以外の国(第三国)でリサイクル・収集された再生プラスチックが、EUのルールと同じ水準かどうか(同等性)を評価・確認・認証する方法(第三者による監査などを含む)を定めた実施法令を採択する。 本文に戻る
注8:
廃プラスチックを化学的に分解し、元の化学成分に戻して再利用するリサイクル技術。マテリアルリサイクルに比べ、高品質な製品を製造可能だが、環境負荷は高い。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部国際経済課
板谷 幸歩(いただに ゆきほ)
民間企業などを経て、2023年4月ジェトロ入構。