米中間選挙に向けトランプ大統領支持者に対抗する民主党の戦略と課題

2026年7月23日

現在の米国の連邦議会は上院・下院ともに共和党が優勢だが、民主・共和両党の議席数は拮抗(きっこう)しており、2026年11月の中間選挙ではいずれの党が各院の多数派となるか注目される。選挙結果は、第2次トランプ政権後半の運営を左右する。ドナルド・トランプ大統領の支持率低下などが民主党にとって追い風になるとみられるが、一方で、その先の2028年大統領選挙に向けて、党内の改革や新たなリーダー選びといった課題を抱えている。

民主党はMAGAポピュリズムを打破できるのか

民主・共和両党の強力な支持者の声のみが反映される現在の社会の分断状態を変えるため、民主党は、多数派を築き、MAGA(熱狂的なトランプ支持者)ポピュリズム(注1)を決定的に打ち破ることが戦略的に不可欠とみられる。

複数の研究者は、過去数十年で共和党がさまざまな思想や価値観を受け入れ、幅広いイデオロギー的連合体を築き上げてきたこと(注2)を指摘する。2024年に共和党を勝利に導いたMAGAは、こうした幅広い支持基盤の上に成り立っている。MAGA運動は、トランプ氏を称賛するだけで受け入れられるという分かりやすさがある。民主党に欠けるのは、このような複合的なイデオロギー的結束だ。

他方、6月のニューヨーク州やコロラド州の中間選挙の予備選では、民主社会主義者を含む進歩派候補が勝利した。連邦上院選挙の予備選でも、民主党の進歩派候補に注目が集まっている(2026年7月3日付地域・分析レポート参照)。これまで民主党は、幅広い有権者を意識して中道派の候補者を選ぶ傾向があった。しかし、トランプ政権のインフレなどへの対応に不満を持つ有権者は、トランプ氏に明確に対抗できる人物を求めているとみられる。ただし、それがMAGAを超える多数派の形成につながるかは不透明だ。

共和党内でMAGAと非MAGAの乖離が顕著に

ブルッキングス研究所は、共和党内でMAGA派と非MAGA派の間で認識に大きな隔たりが生じていると、エコノミストとユーガブが5月中旬に実施した世論調査結果(注3)を基に分析している。「経済状況が悪化している」と回答した非MAGAは65%だったが、MAGAは18%に過ぎなかった。非MAGAの65%という割合は、無党派層(67%)の回答割合に極めて近い。また、同じ調査でMAGAの82%が、「トランプ氏は私利私欲のために公職を利用していない」と回答したのに対し、非MAGAは半分の41%だった。非MAGAの失望感が中間選挙の投票行動に与える影響も無視できないとしている。

中間選挙までに共和党内の結束を強固にしたいトランプ大統領

トランプ氏の支持率が低迷を続け、中間選挙の見通しが民主党優位になりつつある中、トランプ氏が中間選挙を不正に操作するという懸念が高まっている。中間選挙で民主党が連邦下院を制することになれば、第1次政権で受けた2度の弾劾訴追(2019年、2021年)に続き、3回目の弾劾訴追につながるとの見方もある。トランプ氏は民主党が議席を増やすことを何としても食い止めたいところだ(注4)

トランプ氏は自身の政策をアピールし、共和党の活性化を図るため、通常は大統領選挙の年に実施する共和党全国大会を2026年9月にテキサス州ダラスで開催すると発表した。

共和党は、中間選挙では投票率の低い層がカギを握るとみている。その多くがトランプ氏の支持者であることを踏まえ、一般には地域密着型の課題が争点となる中間選挙で、トランプ氏を「投票対象」として全面に押し出すという、従来の常識を覆す戦略を取るという。

根本的見直しを迫られる民主党

民主党の議会予備選挙などでの好結果(2026年3月26日付ビジネス短信参照)やトランプ氏の支持率低下の一方で、国民は民主党に対して必ずしも肯定的な見方をしているわけではない。

5月下旬の世論調査(注5)によれば、「生活費の高騰や物価上昇を抑制するための計画を各党が持っているか」という問いに対して、共和党が持っているとする割合は47%と、民主党(46%)をわずかに上回った。また、CNNの世論調査(注6)によれば、「民主党がほぼ団結している」とみる割合は66%で、「共和党がほぼ団結している」とみる割合(81%)を大きく下回っている。また、2021年10月の調査時(74%)から低下した。

党内でも、民主党に統一のビジョンはなく、トランプ氏への反射的な抵抗によって動かされているとする指摘もある。オハイオ州立ボーリング・グリーン大学政治学部のロバート・アレクサンダー教授は、「中間選挙に向けて民主党にとって有利に見える状況だが、どのような政策を掲げ、それをどう実現するのかを、民主党は明確に示さなければならない」と述べた。

民主党の有権者登録拡大の試み

民主党は2024年の大統領選挙で、若年有権者の支持が後退したが、今回の中間選挙を若年有権者の支持を取り戻すチャンスとみている。民主党全国委員会(DNC)は中間選挙に向け、2026年1月に、大学教育を受けていない若者を対象として100万人規模で有権者登録支援プログラムを実施すると発表した。

DNCのケン・マーティン委員長は、「共和党が若年有権者、非白人の有権者、勤労者世帯の声を封じ込めようとあらゆる手段を講じている中、取り組みを進めている」と語った。

2028年大統領選挙の民主党の有力候補者としては、カマラ・ハリス前副大統領、ギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事、ピート・ブティジェッジ前運輸長官などの名前は挙がるが、強力な支持を集める候補者はいない。中間選挙まで民主党にとって有利な状況が続くかもしれないが、民主党はその先に目を向けて物価高や雇用創出などの問題への具体的政策を示していかなければ、2028年大統領選挙での戦いは厳しいものになるとの見方もあり、今後の動向が注目される。

関連レポート


注1:
MAGAを中核とする右派ポピュリズム運動で、米国第一主義、経済ナショナリズムなどが特徴。 本文に戻る
注2:
イデオロギー的に多様な人々から成る大規模な連合体を維持するために不可欠な、地域レベルの基盤構築や多種多様なリーダーを育成し組織化する(「ザ・ニューヨーカー」誌2026年1月26日)。本文に戻る
注3:
実施時期は2026年5月15~18日。対象者は全米の成人市民1,549人。 本文に戻る
注4:
各種報道で、民主党はトランプ氏が移民・関税執行局(ICE)職員を投票所に派遣したり、郵便投票を無効にしたり、投票箱を押収することなどで、選挙結果を共和党に有利にしようとすることを懸念し、対策を考えているとされる。また、トランプ氏は7月になって選挙管理委員会(EAC)の民主党所属の委員を解任しており、これに対して中間選挙の結果を有利にしようとする「意図的な計画」という見方もある。 本文に戻る
注5:
ハーバード大学米国政治研究センターとハリス・インサイト・アンド・アナリティクスが2026年5月29~31日に実施した世論調査。対象者は全米の登録有権者1,725人。 本文に戻る
注6:
実施時期は2026年3月26~30日。民主党への回答は民主党支持者515人、共和党への回答は共和党支持者491人を対象とする。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課
松岡 智恵子(まつおか ちえこ)
展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。