UNCTAD報告、アフリカは将来3兆4,000億ドル市場となる可能性も、政治・経済・ビジネスの課題多数

(アフリカ)

調査部中東アフリカ課

2025年02月19日

国連貿易開発会議(UNCTAD)が2月10日に発表した「2024年アフリカ経済開発報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の完全な施行により、3兆4,000億ドルの市場が創出される可能性があるという。

アフリカ域内の輸出額は、2022年時点で総輸出額の16%を占めるに過ぎない。今後、AfCFTAとあわせて、輸送、エネルギー、情報通信技術(ICT)などインフラ整備が進展すれば、域内貿易が活発化になり、大きなビジネスチャンスになりえるという。

政治や経済の課題も多数

一方で、報告書では、アフリカにおける課題も指摘する。1950年以降、世界で492件起きたクーデター未遂事件のうち220件がアフリカで起きており、このような不安定な政府は経済状況を悪化させ投資を阻害すると指摘した。さらに、2023年には、アフリカ諸国の約半数が債務のGDP比が60%を超え、多くの国で教育や医療よりも債務利子の支出が多い状況だ。

アフリカでは、次のようなさまざまな分野で課題に直面しているという。

  • 政治:クーデター、ガバナンスの課題、民主主義の弱体化
  • 経済:多額の債務、不均衡な貿易、インフレ
  • 人口:急速な人口増加、移住圧力
  • エネルギー:化石燃料への依存、再生可能エネルギー普及の課題
  • 技術:デジタル格差、イノベーションの不足
  • 気候関連:異常気象、気候変動に脆弱(ぜいじゃく)な農業への依存

アフリカ諸国では、世界的な経済混乱の影響も受ける一方で、ボツワナ、カーボベルデ、モーリシャス、モロッコ、南アフリカ共和国は他の国と比べて強い回復力を示しているという。

投資が重要、ビジネス課題も

報告書によると、インフラ、貿易の多様化、中小企業への投資が、持続可能な開発に重要だという。一方で、アフリカの企業が直面するビジネス上の課題も多く、中でも金融へのアクセスが最多だ。課題の割合は次のとおり。

  • 金融へのアクセス:32%
  • インフォーマルセクターの慣習:8%
  • 税率:8%
  • 汚職:7%
  • その他:45%

アフリカの将来のための政策を提言

同報告書では、前述のような政治・経済・ビジネスにおける課題の解決や将来のアフリカ発展のため、次のような政策を提言している。

  • 工業化インセンティブ:域内での製造・生産に投資する企業への減税、資本コスト削減、低利子融資
  • リスク管理メカニズム:貿易関連リスクの基金、早期警戒システム、緊急対応と保険のために官民資金を準備
  • 危機対応ファシリティ: 企業支援の貿易金融メカニズム構築、域内市場への転換、雇用維持支援

(井澤壌士)

(アフリカ)

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