二輪・三輪車需要が急増、EV市場も拡大(ケニア)

2026年8月28日

ケニア国家統計局(KNBS)によると、2025年の自動車新規登録台数(二輪・三輪車、中古車含む)は39万5,235台となり、前年比47.9%増加した。市場拡大の大部分は二輪・三輪車によるものだ。近年のケニア自動車市場では、政府による電動化政策や現地組み立て支援策が進められる一方、市場の中心は依然として中古車であり、四輪車新車市場の成長は限定的だ。また、EV市場も拡大しているが、その中心は電動二輪・三輪車となっている。

二輪・三輪車が市場拡大を牽引

2025年の新規登録台数を車種別に見ると、二輪・三輪車は25万2,241台で全体の63.8%を占めた(表1参照)。一方、四輪車は14万2,994台で36.2%にとどまった。2024年には二輪・三輪車の構成比は47.3%で、わずか1年間で16ポイント以上上昇したことになる。

また、2025年の新規登録台数増加分は12万8,042台だったが、そのうち二輪・三輪車は12万5,751台、四輪車は2,291台増加した。市場全体の増加は主として二輪・三輪車によるものだった。

特に二輪車の新規登録台数は24万1,763台となり、前年比104.4%増と倍増した。ケニアでは「ボダボダ」と呼ばれるバイクタクシーが広く利用されているほか、配送サービス向けの需要も背景にあるとみられる。もっとも、二輪車の新規登録台数は2021年の28万5,203台をピークに減少し、2023年には7万691台まで落ち込んだ。2025年の大幅増加は、こうした落ち込みからの回復局面を反映した側面もある。

表1:二輪・三輪車の新規登録台数(中古車含む) 注:2025年は暫定。
車種 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比(%)
二輪車 285,203 131,513 70,691 118,308 241,763 104.4
三輪車 6,350 4,001 5,760 8,182 10,478 28.1
合計 291,553 135,514 76,451 126,490 252,241 99.4

注:2025年は暫定。

出所:ケニア国家統計局「Economic Survey 2026」を基にジェトロ作成

商用車需要は堅調な一方、乗用車の新規登録は減少

四輪車の新規登録台数は14万2,994台となり、前年比1.6%増加した(表2参照)。商用車分野が堅調で、ローリー・トラックは7,211台で前年比21.8%増、トレーラーは4,856台で同31.6%増、小型バン・ピックアップなどは9,073台で同7.0%増となった。バス・コーチは23.4%増、ミニバスは1.8%増となった。

一方、市場の約7割を占めるステーションワゴンが9万9,395台で前年比1.8%減、セダンが6,592台で同22.5%減と大幅に落ち込んだ。四輪車の新規登録全体に占めるセダンの割合は2021年の7.6%から2025年には4.6%まで低下している。

ケニアでは依然として中古車輸入が市場の中心であり、多くの消費者にとって新車は価格面でハードルが高い。こうした状況の中、乗用車需要が伸び悩む一方、物流や公共交通、建設関連を中心とした事業用需要が市場を下支えしていると考えられる。

表2:四輪車の新規登録台数(中古車含む)(△はマイナス値)注:2025年は暫定。
車種 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比(%)
セダン 8,170 6,350 6,378 8,502 6,592 △ 22.5
ステーションワゴン 64,350 55,004 61,711 101,224 99,395 △ 1.8
小型バン・ピックアップなど 5,986 10,901 12,957 8,478 9,073 7.0
ローリー・トラック 7,071 10,075 13,635 5,918 7,211 21.8
バス・コーチ 893 2,173 3,122 1,626 2,007 23.4
ミニバス 822 907 1,579 2,792 2,843 1.8
トレーラー 3,187 3,457 6,368 3,691 4,856 31.6
トラクター 2,818 2,553 2,054 744 891 19.8
その他 14,202 7,945 11,401 7,728 10,126 31.0
合計 107,499 99,365 119,205 140,703 142,994 1.6

注:2025年は暫定。

出所:ケニア国家統計局「Economic Survey 2026」を基にジェトロ作成

現地組み立て産業は回復も市場規模は限定的

2025年の現地組み立て台数は1万3,692台となり、前年比18.5%増加した(表3参照)。2024年の落ち込みから回復したものの、2025年の四輪車の新規登録台数14万2,994台の9.6%に相当する規模にとどまっている。

政府は、乗用車などの完成車(CBU)輸入に対し、東アフリカ共同体(EAC)共通対外関税制度に基づく35%の輸入関税を課す一方、現地組み立て事業者など認定メーカーによる原材料・中間財の輸入については、輸入申告手数料(IDF)や鉄道開発税(RDL)の軽減措置を講じている。ケニア・シリング相場の安定によるCKD(完全ノックダウン)キット輸入コストの低下や、金利の低下による融資の回復も組み立て需要を後押ししていると考えられる。もっとも、市場の大部分は依然として輸入車が占めており、現地組み立ての比率は限定的だ。政府は組み立て産業育成を進めているが、部品供給網の整備や需要拡大など、自動車産業基盤の強化にはなお課題が残る。

表3:現地自動車組み立て台数 注:2025年は暫定。
項目 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 前年比(%)
自動車組み立て台数 9,989 13,473 13,527 11,555 13,692 18.5

注:2025年は暫定。

出所:ケニア国家統計局「Economic Survey 2026」を基にジェトロ作成

自動車・EV関連投資が拡大

2026年2月にはケニア運輸省が国家電動モビリティ(eMobility)政策を正式に発表した。同政策は電気自動車(EV)普及、充電インフラ整備、現地生産促進などの方向性を示すものであり、近年活発化するEV関連投資の制度的な後押しとなっている。

その後の動きとして、2026年6月には豊田通商グループのCFAOモビリティ・ケニアが、ケニア・ビークル・マニュファクチュラーズ(Kenya Vehicle Manufacturers)に約24億ケニア・シリングを投資し、99.4%の株式を取得した。また、ケニアの大手コングロマリットであるシンバ・コーポレーション傘下のアソシエーテッド・ビークル・アセンブラーズ(Associated Vehicle Assemblers)は、EV組み立てラインへの投資を進めており、ケニアで電動バス事業を展開するBasiGoや中国の東風汽車(Dongfeng)などとの協業を発表している。

EV市場は急成長も普及の中心は二輪車

ケニア運輸省によると、EV累計登録台数(電動二輪・三輪車を含む)は2022年の1,378台から2025年には3万9,324台へ増加した。3年間で28.5倍となった。もっとも、この成長の中心は電動二輪車および三輪車だ。燃料費削減による経済的メリットが大きく、商業利用を中心に導入が進んでいる。

一方、四輪EV市場は依然として限定的だ。市場にはDongfengやトヨタbZ4Xなど新たなモデルが投入されているほか、商用車分野ではいすゞ・イーストアフリカが電動トラックの実証導入を進めている。しかし、多くのEVは高額な購入費用に加え、中古車との価格競争も厳しい。そのため、現段階のEV普及は環境対応というより、事業者による運行コスト削減ニーズによって支えられている側面が大きい。

インフラ、人材、資金調達が課題

EV市場拡大には複数の課題が残されている。最大の課題は充電インフラ不足だ。近年、充電設備やバッテリー交換拠点は増加しているものの、その多くはナイロビなどの主要都市に集中している。地方や主要幹線道路沿いでは依然として設備が不足しており、長距離利用の制約要因となっている。

また、バッテリー交換方式ではメーカーごとに異なる規格が採用されているため、交換ステーション間の相互利用が難しい。ネットワークの効率的な拡大に向けては標準化が課題となっている。加えて、EVやバッテリーの多くを輸入に依存していることから、為替変動や輸入コスト上昇の影響を受けやすい構造となっている。EV向け融資商品は増えているものの、多くの消費者にとって車両価格は依然として高い水準にある。

さらに、EVの整備・保守に対応できる技術者や整備拠点も十分ではない。車両の普及に対してアフターサービス体制の整備が追いついておらず、人材育成や技術移転が今後の課題となる。

執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所
ピース・ルムンバ
2024年からジェトロ・ナイロビ事務所勤務。調査や事業全般に従事。