ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応ASEAN後工程3拠点を強化、マレーシアでICを増産(RAM)
2026年9月30日
ロームは、パワー半導体やアナログICに強みを持つ半導体メーカーだ。ロームグループで半導体の後工程(組立・検査)を担うローム・アッセンブリ・マニュファクチャリング(RAM)は、2026年4月に国内の後工程3拠点を統合して発足した。後工程生産はASEAN地域のタイ、フィリピン、マレーシアの各拠点が中心を担っており、統合後は、これら海外工場への支援体制の強化やシステムの標準化を進めている。ローム本社の執行役員AP本部本部長を兼務するRAMの藤谷諭副社長ら(注1)に、ASEANの後工程3拠点の活用方針などを聞いた(取材日:2026年8月17日)。

国内3拠点を統合し、海外拠点を横断的に支援
- 質問:
- RAMの役割と、統合によって変わる点は何か。
- 答え:
- 当社は、ロームグループの半導体後工程(組立・検査)を担う会社だ。2026年4月、ローム・アポロ、ローム・ワコーの後工程部門を統合して発足した。国内3拠点(広川、行橋、笠岡)は、海外の生産拠点を支えるマザー工場として、製造支援、標準化の推進、後工程戦略の実行を担う。 統合前は、国内各拠点がそれぞれ特定の海外工場を支援していた。
- 統合後は、国内3拠点が、海外工場を横断的に支援する体制へ移行し、支援方法やシステムの標準化を進めている。
タイ・フィリピンに次ぐIC量産拠点として、マレーシアを強化
- 質問:
- 海外の後工程生産拠点はどこにあり、その中でASEANの3工場はどのような役割を担うのか。
- 答え:
- 当社が支援する海外の後工程生産拠点は、タイ、フィリピン、マレーシア、韓国、中国にある。このうち、生産規模が大きいのがASEANの3工場だ。
- タイとフィリピンは、集積回路(IC)と、トランジスタやダイオードなど単一の機能を持つディスクリート半導体を大量生産する主力工場で、それぞれ4,000人を超える従業員を擁する。タイ工場は、ICやディスクリート半導体に加えて、モジュール製品など幅広い品目を生産する。新製品や新設備を最初に導入する機会が多く、旗艦工場としての役割も担う。フィリピン工場は、トランジスタ、ダイオード、IC、抵抗器などの量産を担う。
- 一方マレーシア工場は、半島東岸のクランタン州コタバルにあり、従業員は約2,000人だ。これまではダイオードとLEDの生産が中心だったが、将来を見据えて竣工した新棟で、ICの生産を開始した。今後は生産量を増やし、タイ、フィリピンに次ぐIC量産拠点として機能を強化する方針だ。
- 質問:
- なぜマレーシアでICの生産機能を強化するのか。
- 答え:
- BCP(事業継続計画)の観点に加え、タイとフィリピンは増設できる余地が限られていた。タイとフィリピンの量産機能を維持しながら、増産や新製品の生産をマレーシアでも担うことで、ASEANの3拠点を有効に活用する。具体的な取り組みの1つが、絶縁ゲートドライバIC(注2)の生産拠点の多元化だ。
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ロームのマレーシア工場新棟(同社提供)
需要増を見据え、絶縁ゲートドライバICを多拠点化
- 質問:
- 絶縁ゲートドライバICの生産拠点を増やした背景と、マレーシアでの進捗は。
- 答え:
- 絶縁ゲートドライバICは、EV(電気自動車)のモーター制御などに使われる部品で、車両の電動化を背景に需要拡大が見込まれている。従来はタイ拠点のみで生産していたため、生産エリアの拡張とBCPの観点も踏まえたサプライチェーン強化に向けて、生産拠点の多元化を進めた。新棟ではすでに絶縁ゲートドライバICの製造体制を構築済みで、量産を開始している。
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EVのモーター制御などに使われる絶縁ゲートドライバIC(ローム提供)
投資優遇制度ITAは半導体と親和性が高い。人材も定着
- 質問:
- 生産拠点としてのマレーシアの魅力や課題は何か。
- 答え:
- 半導体は生産開始から生産数量がピークに達するまでに数年を要することも多いため、適用期間が限定される一般的な優遇措置では十分な恩恵が得られないことがある。その点、マレーシアの投資控除(ITA)(注3)は、投資額に応じた税額控除を受けられる制度で、半導体設備への投資と親和性が高い。
- 人材面では、工場がクランタン州コタバルという地方部にあるため、採用は周辺地域の人材が中心になる。IT分野などの高度人材を確保するには一定の制約がある一方で、人材の流動性は高くなく、一度定着すると長く勤務する傾向がある。礼拝時間など宗教面への配慮は必要だが、他国に比べて人材は確保しやすく、国の支援体制も整っている。
主要材料は日本調達、調達先の多元化には時間を要する
- 質問:
- ASEANの3工場では、後工程に使う材料はどこから調達しているのか。
- 答え:
- 梱包材など副資材の多くは現地調達に切り替えているが、ボンディングワイヤ、リードフレーム、モールド樹脂などの主要材料は日系企業からの調達が中心だ。BCP(事業継続計画)の観点から、ASEAN地域での新たな調達先の調査が、この先必要になると考えている。
- 質問:
- 調達先の多元化を進める上で、どのような課題があるのか。
- 答え:
- 半導体材料の変更には当然品質評価や最終顧客の承認が必要で、採用済み材料を別メーカー品に切り替えるには時間を要する。また、ASEAN各国では主要材料を供給できる現地サプライヤーが限られるため、現地調達網の構築は容易ではない。
ASEAN3拠点の役割を明確化、後工程体制を強化
- 質問:
- RAMはASEANの後工程体制を今後どのように強化するのか。
- 答え:
- 当面は新たな国への進出よりも既存拠点の活用を重視する。国内3拠点による海外工場への横断的な支援体制を整える。ASEANでは、タイとフィリピンの量産機能を維持しながら、マレーシアの生産能力拡大を進める。ASEAN後工程3拠点の役割を明確にし、それぞれの生産能力を有効に活用することで、供給力と事業継続性を高めていく。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | ローム・アッセンブリ・マニュファクチャリング |
| 設立 | 2026年4月(ローム・アポロとローム・ワコーの後工程部門を統合して発足) |
| 所在地 | 京都市右京区西院溝崎町21 |
| URL |
https://micro.rohm.com/jp/ram/ |
- 注1:
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取材には藤谷氏のほか、ロームAP本部AP生産システム開発部の中原高伸部長、同本部AP戦略課の安永幸司課長、同社社長室政策渉外グループの周藤秀和グループリーダーが応じた。
- 注2:
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絶縁ゲートドライバICは、パワー半導体(MOSFETやIGBTなど)を駆動するIC。制御回路とパワー回路を電気的に絶縁することで、安全性を高める。電気自動車(EV)のモーター制御など、高電圧・大電流を扱う用途で使われる。ロームはマレーシア工場の新棟で、このICを中心にアナログICの生産能力を強化すると公表している。(同社ウェブサイト「ロームグループ マレーシア工場に新棟竣工
」参照)。 - 注3:
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マレーシアの投資控除(ITA)は、パイオニア・ステータスに代わる税制上の優遇措置であり、初回の適格資本的支出から5年以内に発生した適格資本的支出の60%を控除できる。またその控除額は各年度の法定所得の70%まで相殺できる。未利用の控除額は、全額を利用するまで翌年以降に繰り越すことができる。奨励地域やハイテク事業、国家的・戦略的に重要なプロジェクトでは、100%の投資控除が認められる場合もある。なお、2026年3月1日から製造業の新規投資には新インセンティブ枠組み(NIF)が導入され、企業は特別税率(STR)または投資控除(ITA)のいずれかを申請できる。優遇内容は、投資が国家戦略にどの程度貢献するかなどの評価結果に応じて決まる。(「外資に関する奨励(マレーシア)」「2026年2月17日付ビジネス短信」参照)。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部アジア大洋州課
八木沼 洋文(やぎぬま ひろふみ) - 2014年、ジェトロ入構。海外事務所運営課、ジェトロ北九州、企画部企画課、ジェトロ・ジャカルタ事務所を経て、2025年11月から現職。
- 執筆者紹介
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ジェトロ海外ビジネスサポートセンターグローバルサウス課
藤田 ゆり(ふじた ゆり) - 1995年、ジェトロ入構。大阪本部、ジェトロ・パリ事務所、海外調査部、機械環境産業部、ジェトロ・ニューヨーク事務所などを経て現職。





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