ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応ベトナム拠点増強で北米向け供給を安定化(京写)

2026年4月7日

プリント配線板大手の京写(本社:京都府)は、拠点と市場の多角化などグローバル戦略の見直しや中国における環境規制の強化を背景に、2019年にベトナム法人を設立した。2021年からはベトナム工場で両面プリント配線板の生産を開始し、2023年には生産ラインを拡大、ベトナムからの調達を増やすベトナム内外の日系自動車関連企業(Tier1)などからの需要に応えている。KYOSHA Vietnam Co.,Ltdの岡口General Director、金子Sales General Managerに、ベトナム進出の経緯や調達・販売の実態、市場の競争環境などについて聞いた(取材日:2026年1月19日)。

中国での委託生産から、ベトナムでの自社生産へ

質問:
事業概要について。
答え:
当社の主要事業は、プリント配線板の製造販売。プリント配線板は、ほぼ全ての電子機器に不可欠な部品で、京写グループ全体では、「片面プリント配線板(金属基板を含む)」「両面プリント配線板」「多層プリント配線板」を製造している。「片面プリント配線板」は、LED照明やエアコン、冷蔵庫などに用いられるもので、当社が世界第一位の生産量を誇る。現在、ベトナム拠点では、自動車ライトやメーターパネル、エアコンなどに用いられる「両面プリント配線板」を製造している。
1993年の香港での合弁会社設立を皮切りに、海外展開を進めてきた。現在は、中国、東南アジア、北米(メキシコ含む)に、3つの製造拠点と10の営業拠点を構えており、顧客企業への迅速な製品供給を実現している。

京写ベトナムで製造しているプリント配線板(ジェトロ撮影)
質問:
ベトナム進出の経緯は。
答え:
進出前は、国内製造分を除く全ての「両面プリント配線板」を中国の協力工場に委託して生産していた。しかし、グループ内での地域別売上構成の見直し、サプライチェーンの多元化や、2013年頃に中国で銅メッキに対する環境規制が強化されたことを受け、他国での自社生産を本格的に検討し始めた。インドネシアの既存拠点への移管や、メキシコでの新設も含めて検討したが、特にASEAN地域の顧客企業への近さや原材料などのサプライチェーン体制、労働力、インセンティブなどからベトナムを選択した。2019年にKyosha Vietnam Co., Ltd.を設立、2021年に生産を開始した。自社生産に切り替えることで、品質、コスト、納期の管理がしやすくなった。2023年には補助事業(注)を活用して生産ラインを増設し、現在の生産キャパシティーはおよそ40,000m2/月。今後、さらに生産ラインを増やす計画もある。

原材料調達は中国に依存

質問:
販売先は。
答え:
ベトナム拠点で製造される製品のエンドユーザーは、ベトナム内外の日系自動車関連企業(Tier1)が大部分を占める。当社は製品をEMS(電子機器製造受託)企業などに販売し、そこから北米、ASEAN、南西アジア、日本の各エンドユーザーの拠点に納入される。特に北米の顧客からは、米中貿易摩擦の影響で中国以外での生産を要望されることも多く、ベトナムに拠点を持つことが強みになっている。このほか、家電製品向けでは、日系電機メーカーのASEAN拠点向けにも販売している。
質問:
調達・購買での課題があれば。
答え:
プリント配線板の基礎となる銅張積層板については、主に中国、台湾企業から調達している。インキはベトナム国内で調達しているが、原材料は中国産。生産機械も中国メーカーのものが大半であり、原材料や設備の大部分を何らかのかたちで中国に依存しているのが実態だ。例えば米国企業から「中国での生産、中国産原材料の使用、中国企業の関与、全てを避けてほしい」と要望されることがあるが、この場合、生産コストが競合製品の2倍になってしまうだけでなく、原材料調達そのものにも不具合が生じることになるだろう。
調達構造を抜本的に変えることは難しいが、当社では、あらかじめ顧客から複数の原材料調達先の承認を得るようにして、ある調達ルートが利用できなくなった場合に、他のルートで対応できるようにしている。また、現地調達が可能な基礎薬品などは、ベトナム国内で調達するよう努めている。

スマート工場でコスト競争力を高める

質問:
市場の競争環境をどうみているか。
答え:
中国企業は価格競争力が高く、手強い競合相手だ。最新の生産機械を使用しており、品質も悪くない。引き合いがあった際に、中国企業が提示した価格を参照されることがあるが、中国産の原材料をベトナムで加工した当社の製品が中国からの輸入品よりも高くなることは避けられず、苦心している。
ベトナム以外のASEAN地域でも、中国企業、台湾企業の進出が相次いでいる。例えば、タイに進出したこれら企業は、本来、「多層プリント配線板」の製造販売をターゲットにしているが、現時点では受注が少ないので稼働率を確保するため「両面プリント配線板」を製造しており、当社製品と競合することが多くなっている。今後、これら企業の「多層プリント配線板」の受注が本格化するまでは、競争激化の恐れがある。
質問:
激化する競争環境にどのように対応していくか。
答え:
当社の工場は、生産ラインの自動化やIT化を採り入れた「スマート工場」。今後さらに生産性向上と自動化を推し進め、コスト競争力を高めていきたい。オペレーション面では、不要な電気代や不良品の発生率を減らすなどして効率化に努める。また、新製品の開発やベトナム国内での販路拡大にも取り組んでいきたい。

左からKYOSHA Vietnam Co.,Ltd 岡口General Director、金子Sales General Manager(ジェトロ撮影)
企業基本情報
会社名 KYOSHA Vietnam Co.,Ltd
設立 2019年1月
所在地 Lot CN04+08, Dong Van III Supporting Industrial Park, Dong Van Ward,
Ninh Binh Province, Vietnam. 430000
資本金 15,000,000USD
従業員数 233人(2026年1月時点)
URL https://www.kyosha.co.jp/about/network/vietnam/ 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

注:
ASEANなどの地域において、サプライチェーン多元化を目的とした設備導入などにかかる経費の一部を補助する事業(今後の公募予定なし)。類似の事業として、経済産業省「グローバ ルサウス未来志向型共創等事業」がある。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ海外ビジネスサポートセンターグローバルサウス課 課長代理
母良田 政秀(ほろた まさひで)
2009年、ジェトロ入構。農林水産・食品調査課、サンティアゴ事務所、ジェトロ・アジア経済研究所、ジェトロ名古屋などを経て、2024年8月から現職。

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