ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応BCPの観点から、ベトナムでの生産を拡大(スミダコーポレーション)

2026年4月7日

コイル関連電子部品およびモジュール製品の設計、製造を手掛けるスミダコーポレーション(本社:東京都中央区)は、安定した事業継続の観点から、中国での生産への偏重を是正するために、ベトナムで工場を新設・増築し生産能力を増強している。グローバルマニュファクチャリンググループ テクノロジーアジア 兼 アジア・パシフィック製造(タイ・ベトナム・日本) 兼 アジア製造戦略 ヴァイスプレジデント 畑山 佳之氏に、ベトナムでの事業展開、サプライチェーン上の課題と将来の展望などについて聞いた。(取材日:2026年1月15日)

ベトナムで続々と生産拠点新設・増強

質問:
事業概要について。
答え:
当社では、コイル関連の電子部品およびモジュール製品の設計、製造を行っており、製品の用途は家電製品、自動車、産業機器など、多岐にわたる。
1956年の会社設立後、しばらくは日本国内市場をターゲットにしていたが、1971年の台湾法人設立を皮切りに海外展開を推し進め、現在では北米、日本、中国、ASEAN、欧州の14カ国に23カ所の製造拠点、4カ国に10カ所の研究開発拠点を持つ。顧客のニーズに合わせて現地で製品の開発、生産、供給を行う「メイド・イン・マーケット」という考えのもと、市場への製品投入スピードや市場洞察力の向上、効率的な運営を図っている。
図:スミダコーポレーションの国内外拠点
スミダコーポレーションの国内外拠点を示した図。

出所:スミダESGレポート2024

質問:
ベトナムでの事業展開について。
答え:
ベトナムには北部、中部それぞれに製造拠点を構えている。北部のSUMIDA ELECTRONIC VIETNAM CO., LTD.(SEV)は、2010年にハイフォン市内の工場団地内にレンタル工場(延べ床面積:2,948平方メートル)という形態で設立し、家電製品向けのインダクタ、トランスを生産してきた。その後、顧客の東南アジアでの生産ニーズを踏まえ、2023年にハイフォン市(当時のハイズオン省)(注)に自社新工場(延べ床面積:12,131平方メートル)を設立することを決定し、2026年1月から稼働を開始した。今後は家電製品向けに加えて、車載製品向け部品の生産を本格化させる予定だ。

2026年1月に稼働を開始した、ベトナム北部のSUMIDA ELECTRONIC VIETNAM CO., LTD.(SEV)自社新工場
(スミダコーポレーション提供)
中部クアンガイ省に位置するSUMIDA ELECTRONIC QUANG NGAI CO., LTD. (SEQ)は、2015年に生産を開始した。2022年には第2工場が稼働し、さらに2023年に第3工場も稼働を開始している。(第1、第2、第3工場を合計した延べ床面積:33,000平方メートル)車載製品用のパワーインダクタ、トランスに加えて、近年は電気自動車用トランスの生産を増やしている。このほか、産業機器(太陽光発電)向けや家電製品向け部品の生産も行っている。

ベトナム中部のSUMIDA ELECTRONIC QUANG NGAI CO., LTD. (SEQ)工場全景(スミダコーポレーション提供)

中国生産への偏重を是正、顧客ニーズとも合致

質問:
ベトナムの生産体制増強の背景は。
答え:
2019年時点では、中国拠点での生産比率がおよそ9割を占め、残りの1割をタイ、ベトナム、日本で生産していたが、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)の観点から、中国生産への偏重を是正する方針を立てた。具体的には、タイ、ベトナムの生産能力を増強し、日本とASEANで全体の25~30%を生産できるよう準備を進めていった。
当時、北部のSEVでは既に家電製品向け部品を製造していたものの、自動車関連企業が要求する品質マネジメントシステムに関する国際規格(IATF16949)を取得しておらず、車載向け製品の製造ができなかった。そこで中部のSEQでは、同規格認証を取得し、工場規模を活かして車載向け製品や大型の産業機械向け製品を生産することにした。なお、SEVでは、現時点では家電製品を主体に生産しているが、今後は、IATF16949を取得し車載製品の生産も強化していく計画だ。
質問:
主な取引先は。
答え:
自動車関連企業(Tier1)が主な顧客で、日系、非日系いずれとも取引がある。2019年以降、中国からベトナムへの生産移管を進めてきたが、既存部品については移管承認が得られないことがネックになっていた。顧客企業にとっては、生産移管はコスト増につながり、また完成車メーカーからも承認を得る必要があり、時間と手間がかかるためだ。
しかし、2021年頃から状況が変わった。サプライチェーン途絶リスクや経済安全保障上の観点から、顧客企業から中国生産を移管するよう依頼が入るようになった。昨今では、特に米国企業を中心に「中国以外の原材料を用いて、中国以外で生産すること」を要望されることが多くなっている。

メイド・イン・マーケットの実現のために

質問:
サプライチェーン上の課題は。
答え:
原材料供給を中国に依存している点だ。銅線、エンジニアリングプラスチックなどは、ベトナムでも調達できるようになったが、ベトナム北部に進出した中国企業からの調達であり、中国産原材料が使用されている。前述のとおり、顧客からは「脱中国」の要望があるものの、実際に行うのは難しい。1年ほど前には、中国産のマグネット系鉄粉の輸入が停止し、供給途絶リスクが露呈した。原材料の現地調達が喫緊の課題となっており、国際購買部門で戦略を練っているところ。
質問:
経営上の課題、将来の展望は。
答え:
ベトナムでも製品開発や顧客提案ができるように、エンジニアの質を高めていく必要がある。当社は中国に開発拠点を持っており、ここで製品を開発することも可能だが、基本的に製品開発は自国の原材料を用いて行われるため、中国で開発された製品には原材料の供給途絶リスクがつきまとうことになるためだ。
また、既に社内共通言語を英語にしているが、体制面でも日本人がほとんどいない生産拠点を目指している。2026年1月よりタイでは日本人駐在員を廃止した運営を開始している。今後も経営の現地化を推進していく。

グローバルマニュファクチャリンググループ テクノロジーアジア 兼 アジア・パシフィック製造(タイ・ベトナム・日本)
兼 アジア製造戦略 ヴァイスプレジデント 畑山 佳之氏(スミダコーポレーション提供)
企業基本情報
会社名 スミダコーポレーション株式会社
設立 1956年1月
所在地 東京都中央区入船三丁目7番2号 KDX銀座イーストビル7階
資本金 13,624百万円 (2024年12月31日現在)
従業員数 14,662人 (2024年12月31日現在)
URL https://www.sumida.com/ 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

注:
ベトナムの地方再編の一環として、2025年7月1日からハイズオン省はハイフォン市に統合されている。詳細は2025年7月1日付ビジネス短信参照本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ海外ビジネスサポートセンターグローバルサウス課 課長代理
母良田 政秀(ほろた まさひで)
2009年、ジェトロ入構。農林水産・食品調査課、サンティアゴ事務所、ジェトロ・アジア経済研究所、ジェトロ名古屋などを経て、2024年8月から現職。

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