ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応メタルワングループ唯一のASEAN線材加工拠点で高精度ニーズに対応
2026年4月30日
「鉄鋼総合商社」であるメタルワン(本社:東京都千代田区)は、販売、物流、製造、加工などグループ企業のさまざまな機能を掛け合わせ、鉄鋼流通の最適化に取り組んでいる。
メタルワングループの一社で、インドネシアで線材二次加工を手掛けるPT. IRON WIRE WORKS INDONESIAは、技術面での優位性を生かし、インドネシアにおける二輪車・四輪車部品用の線材二次加工分野において確固たる地位を確立している。また、複数国からさまざまな規格の鋼材の調達ルートを確保することで、顧客からの要望に対し適切に対応できる体制を構築している。同社の中村安孝代表取締役社長に、インドネシアでの生産体制、調達や人材獲得・採用面での課題や取り組み、今後の展望などについて聞いた(取材日:2026年2月20日)。

二輪・四輪向けに事業領域拡大
- 質問:
- 御社の概要とインドネシア進出の経緯は。
- 答え:
- 当社は1971年に設立され、翌1972年に操業を開始した。鉄鋼メーカーから購入した素材を、顧客が求める寸法や強度に合わせて引抜加工する役割を担っている。
- インドネシアに進出した理由は、顧客から現地生産の要請があったことに加え、将来の成長が期待される市場であるとの見立てもあったのだろう。操業当初はフェンス用途など土木・インフラ用がメインであったが、その後、建材用、家電用へと変わり、現在は二輪車・四輪車部品用が主力製品となっている。
- メタルワンは鉄鋼のトレーディング、サプライチェーンマネジメントなどの機能を有する。メタルワンのグループ企業としては、インドネシアには当社のほかに鉄鋼加工会社が3社あるが、線材二次加工の拠点は当社のみで、東南アジア全体で見てもグループとしては当社が唯一の線材二次加工拠点だ。
- 質問:
- 御社の生産加工体制は。
- 答え:
- 当社では、ファスナー、ステアリング、ラックバー、ベアリングなど、二輪車や四輪車の生産に必要な部品用の線材加工を行っている。線材加工のプロセスでは金属組織を均一化させるため熱処理を行うが、特別なノウハウが必要なため、日本の線材二次加工メーカーから技術面での援助を受けている。
- 2023年8月まではジャカルタ西部の本社工場と東部のブカシ工場の2拠点体制で生産を行っていたが、顧客が東部に集積していることに加え、本社工場が老朽化したことから、2023年9月にブカシ工場に統合した。ピーク時には390人ほどの従業員がいたが、統合後は230人ほどとなっている。
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PT. IRON WIRE WORKS INDONESIA社屋(同社提供)
インドネシア国内唯一の設備で高精度加工を実現
- 質問:
- 製品の供給先は。
- 答え:
- 顧客はインドネシア国内の二輪車・四輪車部品メーカーとなる。毎月継続して取引があるのは70~80社程度で、日系企業が約7割、現地系企業が約3割だ。当社の線材二次加工製品そのものがインドネシア国外に輸出されることはほとんどないが、インドネシア国内の部品メーカーが当社の線材二次加工製品を使用して製造した部品が輸出されることで、結果的に当社の製品が各国で流通することになる。
- 質問:
- 御社の強みは。
- 答え:
- 技術面での優位性だ。加工前の鋼材では必要とされる寸法や強度などを満たすことができないため、顧客が求める品質スペックに応じて当社で加工を行っている。特に高精度かつ直線性が要求される部品の加工にも対応可能な設備を導入しており、例えば2022年に導入したドローベンチ(注1)は、インドネシア国内では当社しか保有していない。
- 質問:
- 鋼材の調達先と調達における課題は。
- 答え:
- 調達先は日本、韓国、タイなどをはじめ、複数国からの鋼材オプションをそろえており、顧客からの各種要望に対して柔軟に対応できるソースを具備している。
- 課題はインドネシアにおける輸入規制だ。鉄鋼の輸入承認に関するルール(注2)が毎年変わり、申請をしても輸入枠が制限されることがある。申請そのものは受け付けられており、重大な支障が発生しているわけではないが、例えば前年度実績に基づき年間1万トンの枠を申請しても2,000トン程度の承認に抑えられることがあり、複数回申請を行う場合がある。承認までには3カ月程度を要することから早めに申請を行っているが、不確実性に備え、在庫を積まざるを得ない状況であり、在庫コストも当社の経営上の課題となっている。
- 質問:
- 足元の売り上げ状況は。また、他国産品の流入による影響はあるか。
- 答え:
- 二輪車向けは堅調に推移しているが、四輪車向けはインドネシア国内の新車販売台数が不調であることから、当初の想定ほど伸びていない。
- 他国産品の流入の影響はある。当社の加工技術は高いと自負しているが、韓国や中国で加工された線材二次加工製品が流入しており、特に相対的に高い品質を要求されない製品の領域が侵食されていると感じている。
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同社の線材二次加工製品(同社提供)
日本での研修を通じ次世代リーダーを育成
- 質問:
- 人材面での課題は。
- 答え:
- 採用面は問題ない。課題は教育・育成面で、従業員に対する安全・作業標準の教育、多能工化を進めている。また、将来のリーダー候補生を日本の技術供与先に短期間派遣している。日本で学んだことを当地でも活用すべく、積極的に研修に取り組んでいる。
- 質問:
- 今後の見通しについては。
- 答え:
- インドネシアでは中間購買層の所得が期待ほどに伸びておらず、自動車ローン審査の厳格化もあり、足元の四輪車の生産は低調であると認識しているが、人口や経済成長率などの面で大きなポテンシャルを持ったマーケットであることは間違いない。将来的な四輪車生産の拡大を期待するとともに、二輪車・四輪車用部品メーカーと連携して販売の拡大に努めていきたい。
| 会社名 | PT. IRON WIRE WORKS INDONESIA |
|---|---|
| 設立 | 1971年 |
| 所在地 | Kawasan GIIC, Block CB No.02 Kota Deltamas, Desa Pasiranji, Cikarang Pusat, Bekasi |
| 事業内容 | 線材加工 |
| 従業員数 | 約230人 |
| URL |
https://www.mtlo.co.jp/group/network/asean-oceania/ |
- 注1:
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棒形状の鋼材を、より寸法精度の高い製品(磨棒鋼)に加工するための設備。
- 注2:
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インドネシアにおける鉄鋼の輸入規制については、ジェトロのウェブサイト「貿易管理制度(インドネシア)」を参照。
- 執筆者紹介
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ジェトロ海外ビジネスサポートセンター グローバルサウス課 プロジェクトマネージャー
阿部 直樹(あべ なおき) - 地方自治体にて、高齢者福祉、産業政策、訪日外国人観光客誘致、政策の総合調整業務などに従事した後、2025年にジェトロ入構。





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