ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応ベトナムを中核に「脱一極集中」と生産性向上を推進
パナソニックインダストリー

2026年3月13日

パナソニックインダストリー株式会社外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(本社:東京都)は、車載用リレー分野で世界的に高いシェアを持つ。同社は2006年のベトナム進出以降、車載用リレーとエンコーダーの生産を軸に事業を拡大してきた。中でも車載リレーは、中国拠点への生産集中リスクを分散するため、段階的にベトナムへの生産移管を進めてきた。ベトナム工場では、自動化技術の活用や工程改善を継続的に進めることで、生産効率と品質の両面を向上させている。これらの取り組みにより、同社は世界各地域の顧客へ安定的に製品を供給できる体制を構築しており、多様な市場からのニーズに柔軟に対応できる生産拠点としての役割を担っている。

パナソニックデバイスベトナムの澗隨(かんずい)浩俊アドミニストレーション・ディレクターに、ベトナム生産拠点の概要、事業拡大の経緯、今後の戦略などについて話を聞いた(取材日:2026年1月20日)。


左より同社のThuy氏、澗隨氏、Tu氏(ジェトロ撮影)

ベトナムで再構築するグローバル生産体制と品質基盤

質問:
事業概要とベトナム進出の経緯は
答え:
当社は2006年にベトナムへ進出し、現在は車載用リレーとエンコーダーを中心に事業を展開している。特に車載用リレーはベトナム拠点の売り上げ全体の大半を占める主力製品だ。車載リレーは自動車用ECUのジャンクションボックスのために不可欠な部品で、当社はグローバルでトップシェアを持つ。自動車産業は安全性への要求が極めて高いため、品質の安定性と信頼性が重要であり、当社は長年の技術蓄積によって高い品質水準を維持してきた。一方で、生産拠点が中国に集中していたことから、段階的に生産ラインの一部をベトナムへ移管した。
質問:
ベトナム工場の規模・体制や機能は
答え:
ベトナム工場では、生産体制の安定化と品質維持を重視し、効率的で持続的な運営をしている。生産現場では、品質管理や納期順守のための体制を整え、安定した供給を支える仕組みづくりを進めている。
また、製品の設計や開発・営業などの上流工程については、日本本社と緊密に連携することで、グローバルで統一された品質基準を維持している。車載部品メーカーとして求められる高い品質要求に応えるため、生産現場の高度な管理能力と運営の安定性が不可欠となっている。

ベトナム北部のタンロン工業団地に入居するパナソニック・インダストリアル・デバイス・ベトナム(同社提供)

自動化・改善活動による生産性向上の取り組み

質問:
ベトナムへの生産移管でどのような効果があったか。
答え:
ベトナム工場では、これまでグループ内で培ってきた生産技術や運営ノウハウを取り入れながら、自動化設備の活用や工程改善を進めることで、生産の安定化と品質向上を実現している。生産移管にあたっては、効率的な生産ラインづくりを目指して取り組みを重ねており、その結果、工程管理の精度向上や運用面の強化につながっている。
また、現地での改善活動や技術力向上によって、生産拠点としての柔軟性も高まり、さまざまな市場ニーズに応えられる体制が整ってきた。こうした継続的な取り組みにより、品質と効率の両立を図りながら、競争力のある製品供給を実現している。
質問:
調達・購買の現状は
答え:
中国一極集中回避の観点から複数地域から調達し多角化していく。現地調達比率はまだ高くないが、今後は拡大を目指す。ただし材料変更には顧客の承認が必要で変更プロセスには時間を要するため、調達戦略には慎重な対応が求められる。
質問:
販売先と市場動向をどうみているか。
答え:
販売先は世界各国の自動車メーカーのTier1企業である。
当社の製品は世界各地域の自動車関連メーカーで幅広く採用されており、グローバルに安定した供給体制を構築している。市場ごとに異なるニーズに応えるため、各地域への販売活動と新規顧客開拓を継続的に進めている。
また、ベトナム国内市場では、電動モビリティーの普及に向けた動きが進んでいる。今後の市場環境の変化を踏まえると、国内需要への対応可能性も広がりつつある。引き続き、ベトナムを含むASEAN地域全体で事業機会を探索し、幅広い顧客への価値提供を強化していく方針である。
質問:
競合環境の変化は
答え:
競合各社の存在感が増し、価格競争が厳しくなる中、当社は安定供給と高品質という付加価値の提供で差別化を図っている。
質問:
新型コロナ禍で経験した課題と経験は。
答え:
物流の遅延、原材料の調達不安などの影響を受けたが、ベトナム工場は操業継続のための特別体制を導入し、供給断を起こすことなく顧客への責任を果たすことができた。この経験は調達先多角化とASEAN内のサプライヤー開拓を加速させるきっかけとなった。

高度化する生産モデルと人材戦略が支えるベトナム拠点

質問:
EV化は事業にどのような影響を与えているか。
答え:
自動車産業ではEV化が加速しており、それに伴い求められる部品の種類や役割も変化している。当社でも、こうした市場環境の変化を踏まえ、電動車向けを含む幅広い製品ニーズに対応できるよう、技術開発や生産体制の強化を進めている。
EV化が進むことで新たに必要となる部品や機能も増えており、当社としても将来を見据えて製品ラインアップの拡充や新技術への取り組みを進めている。今後も市場変化に柔軟に対応し、お客様へ最適なソリューションを提供できる体制づくりを続けていく。
質問:
人材確保・育成における課題や取り組みは
答え:
オペレーターや間接部門の採用は安定しており若く優秀な人材を確保している。高度技術人材のさらなる強化も進めている。
また、人材育成に関しては、自律的に判断し迅速に行動できる人材を重視している。市場変化が加速する中、競合は開発スピードと顧客対応力を強みに存在感を高めており、当社も迅速な製品投入が求められている。品質・信頼性を重視する姿勢は強みだが、顧客ニーズを素早く把握し市場に届ける体制構築が不可欠である。今後は、設計段階から関与し、製品思想を理解した上で工程管理まで担える技術者の育成が急務と考えている。将来的には、ベトナム人技術者が海外で直接顧客の声を聞き取り、開発から量産まで一貫して主導できる体制を整え、スピードと品質の両面で競争力強化を図っていきたい。
質問:
ベトナムでの制度・通関面での運用や課題は
答え:
ベトナムは投資優遇やEPA活用の点でメリットが大きい。多くの国・地域との協定が発効しており、ベトナム・EU間のEPAは欧州市場への輸出を後押ししており、今後もこうした貿易枠組みを活用し競争力確保につなげたい。一方、制度変更のスピードが速いため、柔軟な対応力が求められている。
質問:
今後のグローバルサプライチェーンにおけるベトナムおよび各拠点の位置付けは
答え:
当社は、グローバル全体で安定した供給体制を維持するため、ベトナム工場を含む生産拠点の役割分担と生産ネットワークの最適化を進めている。各地域の特性や市場ニーズに応じて拠点を配置し、生産能力の強化と柔軟性の高いサプライチェーン構築に取り組んでいる。
また、開発や試作などの高度な技術領域については、日本が中心となって各拠点を支え、グローバル全体の品質基盤および技術競争力の維持・向上に貢献している。こうした生産・技術・運営が連携することで、外部環境の変化にも強い安定供給を実現し、世界中の顧客に高品質な製品を届けるための基盤を整えている。
企業基本情報
会社名 パナソニックデバイスベトナム
設立 2006年
所在地 Plot J1, J2 Thang Long Industrial Park, Dong Anh District, Hanoi, Vietnam
主要生産品目 車載リレー、エンコーダー
従業員数 約1,000人
URL https://www.panasonic.com/jp/industry/outline/map.html#global 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課長
藤江 秀樹(ふじえ ひでき)
2003年、ジェトロ入構。ジェトロ・ジャカルタ事務所(10~15年)、海外調査部アジア大洋州課(15~18年)、シンガポール事務所(18~22年)などを経て、2024年9月から現職。編著に「インドネシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2014年)、「分業するアジア」(ジェトロ、2016年)がある。

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