ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応インドネシアでの生産拡大により代替生産体制を強化(明石機械工業)

2026年4月16日

自動車のトランスミッションやステアリングギアの生産を手掛ける明石機械工業(本社:兵庫県加古郡稲美町)は、2006年のインドネシア拠点設立以降、現地完成車メーカーのニーズやインドネシア政府が推進する現地調達率向上の方針に呼応し、生産体制を強化している。また、インドネシア、マレーシア、そして日本と3カ国の生産拠点を一体的に捉え、各拠点の製品仕様に互換性を持たせて、サプライチェーン途絶時でも代替生産できる強靭(きょうじん)な供給体制を構築している。同社の中川仁志代表取締役社長、インドネシア拠点(PT. AKASHI WAHANA INDONESIA)の松本昇President Directorに、インドネシアでの生産拡大、調達・販売の実態、明石機械工業グループとしての生産拠点の多元化の取り組み、今後の展望などについて聞いた(取材日:2026年2月19日)。


左より中川代表取締役社長、松本President Director(ジェトロ撮影)

一貫生産ラインの構築により競争力を強化

質問:
明石機械工業グループの概要とインドネシア進出の経緯は。
答え:
当社はダイハツ工業グループの駆動ユニットサプライヤーで、2026年で創立80周年を迎える。主要製品であるトランスミッション、ステアリングギアの開発・生産・販売に加え、建設機械向け油圧部品や農機具向け部品の生産・販売も手掛けている。
兵庫県(3カ所)、滋賀県、福岡県に加え、インドネシアおよびマレーシアに生産拠点を設けており、いずれの生産拠点もダイハツ工業の車両工場に近い地域に立地している。
当社では、1983年から日本の拠点で生産したマニュアルトランスミッションをダイハツ工業経由でインドネシアのダイハツグループの完成車工場向けに供給してきたが、価格競争力の向上、ジャスト・イン・タイムによる供給、製品の品質問題への迅速な対応を実現するため、2006年4月にインドネシア拠点を設立した。当社としては初の海外生産拠点だ。
質問:
インドネシア拠点での生産体制は。
答え:
インドネシアではまだ安価なマニュアル車の需要が高いことから、インドネシア拠点の主力製品はマニュアルトランスミッションだ。年間約26万台を生産しており、売り上げの約7割を占めている。2018年から新たに熱処理設備を導入し、ギアの歯切り、熱処理、研磨工程、さらに組付まで一貫して生産できる体制を構築している。QCD(品質・コスト・納期)の改善、ひいては当社の競争力向上につながっているものと自負している。
設立当初の従業員数は69人だったが、管理部門の強化や2022年に無段変速機(CVT)構成部品の製造を開始したことで増加し、2025年12月時点では587人となっている。操業については基本2直2交代制だが、生産数に応じて柔軟に対応している。
質問:
製品の供給先は。
答え:
マニュアルトランスミッションやステアリングギアはインドネシア国内のトヨタ・ダイハツグループの完成車工場に供給している。一方、CVT構成部品については、トヨタ・ダイハツグループのCVT組立メーカーに供給している。当社インドネシア拠点とは同一敷地内で隣接していることから、当社インドネシア拠点で生産したCVT構成部品をスムーズかつタイムリーに供給可能だ。

同社のマニュアルトランスミッション(同社提供)

同社のステアリングギア(同社提供)

仕様共通化により代替生産を即応体制化

質問:
生産拠点の多元化についての取り組みは。
答え:
例えば、CVT構成部品の生産拠点は、日本、マレーシア、インドネシアの順に段階的に展開していったが、拠点ごとに仕様が異なると他拠点での代替生産が難しくなることから、海外展開当初から各拠点の製品に互換性を持たせることに注力した。当社のインドネシア拠点が供給した構成部品を使用し、インドネシア国内で組み立てられたCVTユニットが日本に輸出されることで、仮に日本での生産能力が逼迫した場合でも柔軟に対応できる体制となっている。
質問:
調達面での課題はあるか。
答え:
インドネシア国内には日系企業のサプライヤーが多数進出しており、相当数は現地調達が可能であり、当社インドネシア拠点の製品の中には現地調達率が9割を超えるものもある。一方、トランスミッションやステアリングギアに使用される部品の中には、特殊な鋼材が使われており、現地では調達できないものがあるため、一部は日本から輸入している。素材によっては、鉄鋼輸入規制(注)が厳しい場合があると承知しているが、現状では問題なく輸入できている。

安全・品質確保に向けた「DOJO」教育

質問:
人件費の高騰に伴い生産性向上が急務と考えるがいかがか。
答え:
最低賃金は年々上昇していると認識しているが(2026年1月14日付ビジネス短信参照)、現時点では人手をかけた方がまだ低コストで生産ができ、競争力を出せることから、あえて自動化していない工程もある。今後賃金がさらに上昇すれば、機械化や自動化を進めることになるだろう。それでも、10年前と比べ機械化率は少しずつ上がっている。
コスト管理の点では、一部生産工程の内製化に加え、特殊刃具の再研磨についても内製化に取り組んでいる。インドネシア拠点では約400種類の刃具を使用しているが、日々の生産により摩耗することから、定期的な研磨が必要となる。これまで特殊刃具の再研磨は全てアウトソーシングしていたが、自動研磨機を導入するなど内製に転換し、外注費の削減につなげている。将来的には再研磨の8割程度を内製化したいと考えている。
質問:
人材面での課題は。
答え:
採用面では全く問題はない。入社時の教育は2週間程度行い、手先の器用さなどの適性を見ながら配置を決定している。インドネシア人は器用で目が良くセンスがあることから、適切な段取りとカリキュラム、指導の継続があれば1カ月程度で一通りの作業ができるものと認識している。
また、日本の生産拠点と同様に「DOJO」(道場)と称する研修施設を拠点内に設けている。模擬設備による不安全行動の体験や不良品の発生による完成車の性能への影響などを学ぶことで、日々の安全や品質向上に関する知識を醸成している。

「DOJO(道場)」での研修風景(同社提供)
質問:
今後の展望は。
答え:
われわれ自動車部品メーカーは「典型的なBtoBカンパニー」と考えている。ダイハツ工業グループの一員として、顧客である完成車メーカーからの要請にしっかりと応えていくことが原則であり、QCDの改善に日々取り組んでいきたい。加えて、インドネシア国内で構成部品を供給する立場として、インドネシア政府が進める「現地調達の推進」に対しても貢献していきたい。

注1:
インドネシアにおける鉄鋼の輸入規制については、ジェトロの貿易管理制度(インドネシア)を参照。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ海外ビジネスサポートセンターグローバルサウス課 プロジェクトマネージャー
阿部 直樹(あべ なおき)
地方自治体にて、高齢者福祉、産業政策、訪日外国人観光客誘致、政策の総合調整業務などに従事した後、2025年にジェトロ入構。

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