ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応ポンプ部品の供給網を多元化 ベトナム内販には課題も(柳川精工)
2026年4月28日
精密切削加工を手掛ける柳川精工(本社:東京都大田区)は、2006年にベトナム北部・ハイフォンに進出し、自動車部品などの生産を手掛けている。日本からの供給に依存している自動車エンジン向け高圧燃料ポンプ部品の供給網多元化のため、2023年以降、ベトナムで生産能力を増強している。YANAGAWA SEIKO VIETNAM CO., LTD.の柳川忠之社長に、ベトナム進出の経緯、市場環境、今後の販路拡大における課題を聞いた(取材日:2026年1月19日)。
コスト競争力求め、ベトナムに進出
- 質問:
- 事業概要とベトナム進出の経緯について。
- 答え:
- 当社では精密切削加工を手掛けており、自動車関連部品を中心に、OA機器関連部品、関係部品を製造している。2006年に投資許可を取得し、2008年に北部ハイフォンでの生産を開始。当時の円高下では、日本で生産するよりも海外で生産したものを輸入した方がコスト競争力が高かった。そうした中、製造業のASEAN進出が進んでおり、当社も取引先企業のASEAN拠点向けに納品するために製造拠点を設立した。
- 質問:
- ハイフォンを選んだ理由は。
- 答え:
- ベトナム各地にある他の工業団地と比較した。港まで約1時間で行けること(物流コスト削減、製品破損のリスク減少)、当社が入居する日本・ハイフォン工業団地は敷地内に発電機があったこと(安定的な電力供給)が決め手になった。進出当時は道路に未舗装部分があり、ノイバイ空港までの移動に5時間を要していたが、現在では2時間強に短縮されている。
-

建屋面積1万4,000平方メートルの同社工場(ジェトロ撮影)
生産設備を増強し、顧客ニーズに対応
- 質問:
- 日本拠点との役割分担や生産体制について。
- 答え:
- 自動車エンジン用高圧ポンプ部品、同インジェクタ部品、サスペンション部品、サーモスタット部品などを製造している。販売先は日系自動車関連企業(Tier1)で、親会社(日本)を介して、または直接ASEAN内外にある取引先の製造拠点に輸出している。
- 日本では、国内販売向けの小ロット生産品や試作品など、少量多品種の製造を行う。生産工程も基本的には日本で構築し、工場規模の大きいベトナムで量産、というかたちで分担を図っている。
- 補助事業(海外サプライチェーン多元化支援事業)(注1)を活用し、2023年以降新たに35台の切削加工機を導入し、現時点で319台を保有している。従業員数は業務状況に応じて増減がある。
- 質問:
- 原材料などの調達はどのようにしているか。
- 答え:
- 鉄やステンレスといった原材料は、日本の親会社が調達し、当社に販売する。自動車部品では、取引先から原材料サプライヤーが指定されることが多く、これらの業者から調達する必要があるためだ。
- 一方、二輪車部品ではこのようなサプライヤー指定がない場合が多い。しかし、原材料や加工を行うための設備は、ベトナムでの現地調達が難しい。加工を行うための切削工具や周辺設備であれば、ベトナム企業などの製品があり、ある程度は調達が可能だ。
- 質問:
- 市場の競争環境について。
- 答え:
- 地場企業や中国系企業が競合となるだろう。切削加工を手掛ける企業も現れてきており、特に二輪車部品ではローカル化が進んでいる。中国系企業の価格競争力は非常に高く、「なぜあれほど安くできるのか」と思わされることもある。当社としては、切削技術の高さ、徹底した品質・納期の管理、サービスで対抗していくつもりだ。
販売は好調、さらなる展開には課題も
- 質問:
- 直近の販売動向は。
- 答え:
- 設備投資や加工改善により生産キャパシティが向上した結果、顧客からの増産依頼や新規部品の生産立ち上げに対応できるようになり、昨年は取引先企業から優秀サプライヤーとして表彰を受けるに至った。受注も増えており、従業員数を増やすとともに、土日も工場を稼働させるなどして対応している。今後数年間は既存の発注が継続する見通しだ。また、電機部品メーカー向けの新規販売も狙っている。
- 質問:
- 人材確保上の懸念はあるか。
- 答え:
- 近年は韓国企業に加えて中国企業も進出してきており、獲得競争が激しくなっている。今のところは求人を出すと募集がある状況だが、今後は人材の確保が難しくなる恐れがある。加えて、当社の製造工程は、進出当時の人件費の安さを活かした工程であり、今後このままでは立ち行かなくなることを危惧している。時間をかけて、少しずつ機械化を進めていくつもりだ。
- 質問:
- 今後のビジネス展開における課題は。
- 答え:
- 今後は国内ビジネスの拡大など、次のステージへの発展を目指していきたいが、制度面での課題がある。当社は輸出加工企業(EPE)(注2)のステータスであるため、国内で販売するには手続きや税務上の制約があり、価格競争力が低くなる。加えて、近年では、ベトナムまたはASEANが締結するEPA/FTAも増えており、EPEであることのメリットが少なくなっている。EPEを対象にした税関からの監査への対応にも手間やコストがかかるため、国内販売向けにNon-EPEで別会社を設立することも検討している。
-

YANAGAWA SEIKO VIETNAM CO., LTD.の柳川社長(ジェトロ撮影)
| 会社名 | YANAGAWA SEIKO VIETNAM CO., LTD. |
|---|---|
| 設立 | 2006年6月 |
| 所在地 |
Japan-Hai phong IZ Lot J5, Japan - Hai Phong Industrial Zone, Hong An Ward Hai Phong City |
| 資本金 | 3,190,386 USD |
| 従業員数 | 約700人(2026年1月時点) |
| URL |
https://yanagawaseiko.com/ |
- 執筆者紹介
-
ジェトロ海外ビジネスサポートセンターグローバルサウス課 課長代理
母良田 政秀(ほろた まさひで) - 2009年、ジェトロ入構。農林水産・食品調査課、サンティアゴ事務所、ジェトロ・アジア経済研究所、ジェトロ名古屋などを経て、2024年8月から現職。





閉じる




