ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応元実習生がベトナムの幹部に。高度人材が拓く新市場(サンテック)
2026年4月7日
サンテック(本社:山形県鶴岡市)は、分析関連装置や半導体製造装置、ターボ分子ポンプなどの最先端産業に不可欠な精密機械部品の製造を主力としている。同社の強みは、微細なキズが装置の致命的な欠陥を招く真空部品加工において、独自の工程ノウハウと徹底した品質管理体制を確立し、主要顧客のサプライチェーンにおいて代替困難なポジションを築いている点にある。
しかし、その製品の重要性の高さゆえに、一拠点での生産停滞が、特定の重要部品の供給停滞につながるリスクもあった。そこで同社は、地政学リスクを見据えた「サプライチェーンの多元化」を決断。補助金事業を活用し、日本国内拠点と相互補完し合うバックアップ体制の構築に乗り出した。
この戦略を支えるのは、徹底した人材育成だ。62人の国家技能士が在籍する高度な技能集団である同社は、2023年9月、7年間にわたり日本で教育した技能実習生を核に、ベトナム拠点の操業を開始した。高度な技能と最新設備を現地へ移管し、供給網の強靱(きょうじん)化を実現する同社のグローバル戦略について、SUNTEC VNの楯岡学General Director、五十嵐裕之Chairmanに、生産拡大の舞台裏と将来の展望を聞いた(取材日:2026年1月22日)。

元実習生をリーダーとして7年計画で構築した組織
- 質問:
- ベトナム進出に至る経緯と、その目的は。
- 答え:
- 最大の要因は、日本国内での少子高齢化に伴う深刻な人材不足により、持続可能な生産体制の構築を模索していたことにある。
- 当社は2017年から技能実習生の受け入れを開始し、ベトナム工場設立を見据え、将来のベトナム工場の幹部候補として、山形工場で5~7年間にわたり教育を継続してきた。彼らは日本語と高い技術を習得するとともに、当社の文化を深く理解する熟練工へと成長した。手塩にかけて育てた熟練工の技能を活かす「場」を作ることが、海外進出の大きな動機となっている。
- ベトナム工場の立ち上げを支えたのは元実習生4人であり、彼らが現場リーダーとして、日本と同等の品質を現地でも再現している。本社は試作品などの高難度品、ベトナムは量産品という明確な役割分担により、育てた人材を核としたグローバル戦略を具現化させている。
日系商社との協働で実現した多台持ち旋盤
- 質問:
- 現地での生産体制において、特にどんな分野に注力しているか。
- 答え:
- ベトナムにおいても人件費の上昇は続いており、当社では自動化による省力化を進めている。そこで、長年のパートナーである日系商社と協力し、一人の作業者が複数の旋盤(切削加工を行う工作機械)を管理できる多台持ち対応の自動ラインを構築した。
- 結果として、日本では一人のオペレーターが1台を担当するのに対して、ベトナムでは新設備導入により、一人で2〜3台を同時に操作できる体制を実現した。この飛躍的な生産性向上により、高度な精密加工でありながら、グローバル市場で戦える強力なコスト競争力を確保している。設備導入にあたって、日系商社と組むメリットは、単なる設備調達にとどまらない。現地のメンテナンス体制の構築や、当社の特殊なニーズ(省スペース化や操作性)のメーカー側への橋渡しをしてくれる点にある。この自動化と、日本で培った品質管理を組み合わせることで、日系企業ならではの高い信頼性を両立させている。
日本品質の調達で、外資販路を拓く
- 質問:
- 調達・購買の状況と課題は。
- 答え:
- 主原料である金属材料は、コスト面で不利ではあるものの、日本製を調達している。当社の主要顧客である分析装置関連メーカーや半導体製造装置関連メーカーからは、極めて高い品質とともに、サプライチェーンの透明性が厳格に求められる。特に昨今、半導体需要が急増する中で、調達・製造場所が明確であることが、グローバル市場での受注獲得における重要項目となっている。
- 質問:
- 販売先の構成と市場動向は。
- 答え:
- 主な輸出先は日本だ。半導体製造装置の市場動向として、生成人工知能(AI)の普及やデータセンター増設に伴い、装置需要は中長期的な拡大局面にある。主要顧客向けには、年間生産規模が拡大しており、需要の強さを裏付けている。
日本をしのぐ勉強熱心さと育成道場
- 質問:
- ベトナムでのモノづくり人材について、現場での実感は。
- 答え:
- ベトナムは私たちのようなモノづくり企業にとって素晴らしい国だと実感している。ベトナムの人材は非常にモノづくりへの関心が高く、自らアイデアを出して工夫してくれるスタッフが多い。
- 日本の本社内には独自の「育成道場」を開設しているが、そこでの彼らの姿勢には驚かされる。驚いたことに、ベトナム人スタッフの方から「自分で図面を引いて、実際に加工までしてみたい」と直訴してくれることがあり、その勉強熱心な姿勢は、今の日本ではなかなか出会えないレベルのものだ。
- 彼らは、技術を身につけることに強い誇りを持っており、その熱意が現場のカイゼンや品質向上に直結している。この意欲こそが、サンテックがベトナムを将来の供給拠点として位置付けている最大の理由だ。
-

拠点運営を担う従業員一同(左下が五十嵐Chairman、同社提供)
「ハイブリッド型人材」の創出
- 質問:
- 人材活用に関する独自のプロジェクトについて教えてほしい。
- 答え:
- 日本人にとって言語の壁は依然として高い。そこで私たちは、ベトナムの優秀な学生を「技術、営業力、日本語に加えて英語能力」を備えた人材として、育成するプロジェクトを推進している。また、経済産業省主催の高度外国人材の大学生・大学院生のインターンシップ受け入れを皮切りに、東北大学や鶴岡高専からの海外留学生のインターンシップの受け入れも計画中だ。
- 求める水準が高い分、応募者16人のうち2人を採用するなど、シビアな基準で採用している。そして、テト(旧正月)のボーナスや夏季賞与など、現地の相場を上回る手厚い待遇で報いている。現在のベトナム拠点は五十嵐氏と12人の現地従業員で構成されているが、そのうち4人は山形で5年以上のトレーニングを受けた元技能実習生だ。日本で育て上げた人材を現地に送り込み、その人材がさらに次世代を育てるという循環が、私たちの技術力を支える源泉となっている。
- ベトナムには向学心の強い若者が多いが、能力を最大限に発揮できる就職先は必ずしも多くない。彼らに教育を施し、外資系企業の技術営業の最前線で活躍できるプロフェッショナルに育てることは、単なる雇用創出にとどまらず、サンテックが今後、欧州や世界市場で戦うための強みを作るプロセスだ。
欧州市場への挑戦:ミュンヘン展示会で見えた「日本のプレゼンス」
- 質問:
- 今後の展望として欧州市場の開拓を掲げる中で、具体的にどのように進めているか。
- 答え:
- ジェトロの新輸出大国コンソーシアムの専門家派遣サービスを活用し、積極的な海外展開を進めている。昨年11月にドイツのミュンヘンで開催された「セミコン・ヨーロッパ」に出展した。現在、多くの欧州企業が中国に代わる新たな調達先を模索している。その代替候補として、日本品質のバックボーンを持つベトナム拠点は、彼らにとって極めて魅力的な選択肢だ。今年は米国ラスベガスで開催されるモノづくり展示会への出展も計画中だ。欧州大手企業との従来の取引に加え、今後はドイツ、フランス、スイスといった精密機械先進国へのアプローチをさらに強めていく。
- また、ベトナム国内での市場開拓も重要な柱だ。現在はレンタル工場で操業しているが、将来的には土地を購入し、自社工場を建設して製造設備を一気に増設したい。複雑化する国際情勢の中、お客さまの拠点戦略により添える製造体制をベトナムから作り上げていく計画だ。
- 狙うべき領域は、半導体製造装置、航空機、分析装置といった当社の強みを活かせる業界だ。補助金事業を活用した設備投資により、多品種少量生産や大型製品への対応力は既に向上している。これらを武器に、ベトナムをグローバルな供給中枢へと進化させ、世界市場でのシェア拡大を目指す。

| 会社名 | SUNTEC VN CO., LTD |
|---|---|
| 設立 | 2023年3月 |
| 所在地 | 6-1, N3-2 Road, Long Duc Industrial Park, Binh An Commune, Dong Nai Province, Vietnam. |
| 資本金 | 500,000USD |
| 従業員数 | 13人(2026年1月時点) |
| URL |
https://yamagata-suntec.co.jp/ |
- 執筆者紹介
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ジェトロ海外ビジネスサポートセンターグローバルサウス課 課長代理
石井 佑志(いしい ゆうし) - メーカー、商社にて海外市場向けの商品開発・営業に従事。バングラデシュ駐在を経験後、2022年10月ジェトロ入構。中小企業診断士。





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