ASEAN主要国の産業政策と企業によるサプライチェーン対応需要拡大を追い風に、ベトナムで半導体装置部品を生産拡大(フジキン)

2026年2月24日

半導体製造装置向けのバルブ大手のフジキン(本社:大阪府)は、急拡大する半導体市場と複雑化するサプライチェーン環境の中、ベトナム工場をアジア生産の中核拠点として強化している。同社は2002年のベトナム進出以来、タンロン工場とバクニン工場で精密加工・組み立て体制を拡充し、日本・米国・欧州の半導体装置メーカーからの需要に応えてきた。近年は、ベトナム工場へのライン増設を進め、生産能力を拡大させた。Fujikin Vietnam Co., Ltd.の小池弘樹General Directorに、ベトナムでの生産拡大、調達・販売の実態、人材課題、将来展望などについて聞いた(取材日:2026年1月20日)。


左より小池General Director, 軽部Factory Director(ジェトロ撮影)

ベトナム拠点を日本拠点と同程度の生産能力へ拡大

質問:
ベトナム拠点の事業概要と進出の経緯は。
答え:
当社は、半導体製造装置向けバルブで日本最大手であり、グローバル市場でも高いシェアを持つ。日本国内では大阪府内(東大阪市、柏原市)、つくば市、奥州市の4カ所に加え、海外ではベトナム、韓国、中国、アイルランド、米国に生産拠点を展開している。
このうち、ベトナム法人は、タンロン工場とバクニン工場の2拠点体制で運営されている。2002年にタンロン工業団地のレンタル工場で約20人の従業員規模で操業を開始し、2005年に自社工場を建設した。2013年にはバクニンで第2工場を稼働させた。現在は約1,400人規模の体制まで拡大している。
ベトナムへ進出した理由は、超精密バルブの製造には、多くの手作業を要することから、労働コスト、勤勉性、技能取得の早さなどを総合的に評価した結果、最適地と判断したためである。

同社製品の半導体製造装置向けバルブ(ジェトロ撮影)

質問:
現在の生産体制・工場機能の特徴とベトナムでの生産拡大の目的や経緯は。
答え:
タンロン工場では、主に半導体製造装置向けの継ぎ手やバルブ機器を製造している。一方、バクニン工場はユニット組み立てに特化し、単体機器を組み上げて装置として完成させる工程を担っている。
近年の半導体市場の拡大に加え、米中貿易摩擦に伴うリスク分散や内作率向上を目的として、2020年にはバクニン第2工場の生産能力を増強した。さらなる生産能力増強に向け、設備導入と品質管理体制の強化を進めている。ベトナムは依然として人件費が比較的安価で、研磨など人手を要する工程に適している。品質管理体制も日本と同水準まで確立されており、品質面で大きな課題はない。
質問:
半導体市況の変動が業績に与えた影響は。
答え:
半導体は、スマートフォン、5G通信インフラ、自動車、コンピューターなど、幅広い製品に欠かせない基幹部品である。このため、近年、世界的な需要拡大に伴い、市場はおおむね右肩上がりに成長してきた。
半導体業界は「シリコンサイクル」と呼ばれる需給変動の影響を受けやすい。近年の市況は、2022年頃にピークを迎え、2023年から24年前半は急激に減速した。2024年後半から2025年前半にかけて一部回復したものの春以降、再び落ち込みが顕著となった。
装置の納入からエンドユーザーでの稼働までに一定のタイムラグがあるため、上流工程に位置する当社は市況変動の影響を受けやすく、その振れ幅も大きい。需要増加時は在庫消化が急速に進む一方、減速局面では注文が急落しやすい特徴がある。

顧客の期待が高まるベトナム生産拠点

質問:
調達・購買の状況と課題は
答え:
主原料は日本および台湾から調達している。電子部品はベトナムでの調達が難しい品目が多く、日本への依存度は依然として高い。一方、加工・後処理・梱包(こんぽう)工程はほぼベトナム国内で完結し、一部は日系・ローカル企業へ委託している。近年は欧米顧客による調達先監査が増え、中国依存リスクへの確認が厳しくなっている。当社は元々、中国調達をしておらず、リスク回避の面で優位性がある。今後はさらにベトナムでの現地調達比率の引き上げを検討している。
質問:
販売先の構成と市場動向は。
答え:
販売構成は、日本が約半数を占め、中国、台湾、韓国、米国、ASEAN(ベトナム除く)が続く。主要製品は半導体装置の前工程向けだが、ベトナム国内には前工程の拠点が少ないため、国内販売はこれからの段階にある。また、中国市場では、米中摩擦の影響により同国でのレガシー半導体を中心とした産業育成が加速しており、市場は拡大していると認識している。
質問:
顧客の新規開拓とベトナムの役割強化は
答え:
主要顧客は日本・台湾・中国・韓国の企業だが、近年は欧米顧客の戦略により当社ベトナム拠点への期待が高まっている。欧米メーカーの量産工場が東南アジアに拠点を設置しているため、地理的に近いベトナムから供給するメリットが大きい。2020年頃からこの動きが顕著となり、現在では顧客向け試作を経て量産移行の段階にある。
質問:
人材確保・育成の状況・課題は。
答え:
欧米顧客との取引拡大に伴い、本社などから現地工場への監査が増え、英語による対応が求められるようになった。そのため、英語対応が可能なベトナム人スタッフを採用し、対応力を強化している。スタッフは向上心が強く、短期間で技術理解と英語を習得し、現在は英語による監査にも通常業務として問題なく対応できる水準に達している。
一方、生産現場では、一般作業員(オペレーター)での採用に大きな支障はないものの、セミスキル人材やサブリーダー経験者の確保に苦戦している。該当人材は応募者が少なく、採用難易度が高い。特に、バクニン省では中国・台湾企業の進出が増えており、優秀な人材が流出しやすい。

一貫生産体制の強化へ

質問:
競争環境と差別化戦略は。
答え:
競合は日系・非日系ともに増加している。中国市場では半導体装置向け部品メーカーが急成長している。顧客が中国市場向けの製品に中国製部品を採用するケースもみられ、コスト競争力の面で脅威と捉えている。
当社は日本市場で高いシェアを持ち、米国の装置メーカー向けにも一定のシェアを確保している。今後さらなる差別化を図るためには、品質の安定性を一層高めるとともに、精密加工からユニット組み立てまでを一貫して対応できる体制の強化を進めていきたい。
質問:
将来展望とベトナム拠点の位置付けは。
答え:
中長期的には、欧米顧客の東南アジア生産拠点向けの販路拡大にあたって、ベトナムを主要供給拠点とする。ステンレス土台上に各種装置を搭載したユニット製品の生産を強化し、あわせて日本の生産工程も段階的にベトナムへ移管していきたい。拡大が見込まれる中国市場向けには、ベトナム供給を維持しつつ、中国工場の能力も高め、地域別の需要に応える体制を構築する考えである。
企業基本情報
会社名 Fujikin Vietnam Co., Ltd.
設立 2002年
所在地 H-2B plot,Thang Long Industrial Park, Dong Anh Dist ., Hanoi
事業内容 半導体製造装置などに代表されるクリーンなバルブ/継ぎ手の製造
従業員数 約1,400人
URL https://www.fujikin.co.jp/ja/company/office/#overseas-vi 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課長
藤江 秀樹(ふじえ ひでき)
2003年、ジェトロ入構。ジェトロ・ジャカルタ事務所(10~15年)、海外調査部アジア大洋州課(15~18年)、シンガポール事務所(18~22年)などを経て、2024年9月から現職。編著に「インドネシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2014年)、「分業するアジア」(ジェトロ、2016年)がある。

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