米国の鉄鋼・アルミ・銅の232条関税の制度変更と企業の実務対応
2026年5月20日
米国の1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく鉄鋼・アルミニウム・銅への追加関税は、2018年3月の発動以降、基本的に関税率は引き上げ、対象品目は増加、課税方法は複雑化の方向で運用されてきた。ただし、2026年4月にドナルド・トランプ大統領が発表した大統領布告により、一部の関税率が引き下げられ、一部の対象品目が削減、課税方法が単純化された。仮に、日本企業が関税コストの一部を負担していた場合において、自社の製品が対象品目から除外されていたり、関税率の引き下げの対象に指定されていたりすれば、負担の軽減もあり得る。本稿では、2026年4月の制度変更の内容を整理するとともに、2026年5月1日時点の対象品目を明確化する。また、除外や軽減の対象品目の米国の日本からの輸入実績に基づき、影響の緩和が見込まれる製品群を解説する。
2025年以降の措置拡大の全体像
はじめに、これまでの措置の推移を振り返る。鉄鋼・アルミ・銅に対する232条関税措置は、とりわけ2025年1月の第2次トランプ政権発足以降、短期間で複数回の見直しが行われてきた(表1参照)。全体として、関税率は引き上げ、対象品目は増加、課税方法は複雑化する方向で措置が拡大されてきた。
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関税率:引き上げ
鉄鋼・アルミに対する関税率は、2025年3月および6月の改定により、第2次トランプ政権発足以前の鉄鋼25%・アルミ10%から、いずれも50%に段階的に引き上げられた。銅については、第2次トランプ政権が2025年3月に232条措置の発動の要否を判断する調査を開始し、8月に50%の徴収が開始された。 -
対象品目:増加
鉄鋼・アルミに対する関税の対象は、2025年に4度にわたり、派生品(derivatives)が追加された。派生品とは、鉄鋼・アルミ材料の加工品で、例えば2025年4月には缶ビール〔米国関税分類番号(HTSコード)2203.00.00.60〕がアルミの派生品として対象に追加された。さらに、米商務省は、さらなる派生品の対象追加に向けて、米国企業などからパブリックコメントを受け付ける対象品目追加プロセスを創設した。 -
課税方法:複雑化
鉄鋼・アルミに関しては、2025年3月に、派生品の含有する対象金属(鉄鋼・アルミ)の取引価格に基づく従価税が導入された。銅に関しても、2025年8月の発動時に同様の従価税が導入された。例えば、前述の缶ビールでは、アルミ缶部分にのみ232条関税が課され、内容物には232条関税は課されない構造となった(注1)。
| 年月 | 措置内容 | 関税率 | ビジネス短信 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月 | 鉄鋼・アルミ製品・派生品に対する関税率の引き上げ、鉄鋼・アルミ派生品の対象品目追加、適用除外措置の全廃、対象品目追加プロセスの創設、含有金属の取引価格に基づく従価税の導入 | 鉄鋼・アルミ製品・派生品:25%(鉄鋼製品・派生品は25%で維持、アルミ製品・派生品は10→25%に引き上げ) | 2025年3月12日付ビジネス短信参照 |
| 2025年4月 | アルミ派生品の対象品目追加(アルミ缶・缶ビール) | - | 2025年4月7日付ビジネス短信参照 |
| 2025年5月 | 鉄鋼・アルミ派生品の対象品目追加に向けたパブリックコメント受付開始(対象品目追加プロセス1回目) | - | 2025年5月2日付ビジネス短信参照 |
| 2025年6月 | 鉄鋼・アルミ製品・派生品に対する追加関税率の引き上げ | 鉄鋼・アルミ製品・派生品:50%(25→50%に引き上げ) | 2025年6月4日付ビジネス短信参照 |
| 2025年6月 | 鉄鋼・アルミ派生品の対象品目追加(冷蔵庫や洗濯機など白物家電) | - | 2025年6月23日付ビジネス短信参照 |
| 2025年8月 | 銅製品・派生品に対する追加関税の適用開始 | 銅製品・派生品:50% | 2025年7月31日付ビジネス短信参照 |
| 2025年8月 | 対象品目追加プロセス1回目の結果、鉄鋼・アルミ派生品の対象品目追加(約400品目) | - | 2025年8月19日付ビジネス短信参照 |
| 2025年9月 | 鉄鋼・アルミ派生品の対象品目追加に向けたパブリックコメント受付開始(対象品目追加プロセス2回目、現時点で結果未公表) | - | 2025年9月17日付ビジネス短信参照 |
| 2026年4月 | 鉄鋼・アルミ派生品の対象品目削減、鉄鋼・アルミ派生品および銅製品・派生品に対する関税率の引き下げ、含有金属の取引価格に基づく従価税の廃止、対象品目追加プロセスの廃止 | 鉄鋼・アルミ派生品および銅製品・派生品の一部:15~25%(50→15~25%に引き下げ) | 2026年4月3日付ビジネス短信参照 |
出所:ホワイトハウス、商務省公表資料を基にジェトロ作成
2026年4月の制度変更のポイント
トランプ大統領は2026年4月に、関税率を一部で引き下げ、対象品目を一部で削減し、課税方法を単純化する大統領布告を発表した(布告11021号、2026年4月3日付ビジネス短信参照)。これは、2025年に拡大された措置の一部を見直すもので、例えば前述の缶ビールも対象から除外された。
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関税率:一部引き下げ
鉄鋼・アルミ製品に対する関税率は50%で据え置かれた。一方で、鉄鋼・アルミ派生品および銅製品・派生品に対する関税率は、一部の品目で50%から15~25%(注2)に引き下げられた。 -
対象品目:一部削減
鉄鋼・アルミ・銅製品の対象品目数は変更がなかった。一方で、鉄鋼・アルミ派生品は一部の品目が対象から除外された(表2参照)。また、パブリックコメントを通じた対象品目追加プロセスが廃止された。 -
課税方法:単純化
含有する対象金属(鉄鋼・アルミ・銅)の取引価格ベースの課税は廃止され、製品全体の輸入申告価格に基づく従価税の課税方法に変更された。この結果、派生品の鉄鋼・アルミ・銅部分のみならず、それ以外の部分も含む製品全体に232条関税が課されることになった。また、HTSコード上2桁で72、73、74、76章に分類されず、対象金属の重量が製品全体の重量の15%未満の場合には、232条関税は課されないとの規定も設けられた。
このほか、米国や英国で95%以上が溶解・注湯された鉄鋼、精錬・鋳造されたアルミ・銅を用いた製品に対する関税率の50%から10~25%への引き下げなどの例外措置も定められた(2026年4月8日付ビジネス短信参照)。
| 品目 | 旧対象品目 | 新対象品目(2026年4月6日以降) | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 50% | 50%→50% | 50%→25% | 50%→15% |
50%→0% (除外) |
|
| 鉄鋼製品 | 303品目 | 303品目 | — | — | — |
| 鉄鋼派生品 | 540品目(注) | 129品目 | 264品目 | 32品目 | 117品目 |
| アルミ製品 | 36品目 | 36品目 | — | — | — |
| アルミ派生品 | 214品目(注) | 14品目 | 80品目 | 9品目 | 112品目 |
| 銅製品・派生品 | 80品目 | 76品目 | 4品目 | — | — |
注:HTSコードを8桁に加工し集計したため、新旧の対象品目数の合計は必ずしも一致しない。例えば、従前は7326.20.00(鋼線)のカテゴリーの品目は全品目が50%の232条関税の対象だったが、2026年4月6日以降は7326.20.0010(鋼線/ベルト・ベルト用具)、7326.20.0020(鋼線/衣類ハンガー)、7326.20.0030(鋼線/土中用固定具)、7326.20.0040(鋼線/ダブルループバータイ・ワイヤータイ)、7326.20.0055(鋼線/ペイントローラーフレーム)に対する関税率は50%から25%に引き下げられ、7326.20.0090(鋼線/その他)に対する関税率は50%で維持されている。このため、旧対象品目では7326.20.00を1品目としてカウントし、新対象品目では50%と25%の両方の項目で7326.20.00を1品目ずつカウントしている。
出所:米国税関・国境警備局(CBP)、ホワイトハウス公表資料を基にジェトロ作成
日本の医薬品、産業機械、自動車部品で影響緩和の可能性
表2に示されるとおり、鉄鋼・アルミ・銅の派生品は、少なくない品目が除外または関税率の引き下げの対象となった。さらに、対象金属の重量が製品全体の重量の15%未満であれば課税対象外となるため、鉄鋼・アルミ・銅の使用が限定的な派生品は、適切に輸入申告(注3)することで、232条関税の負担を軽減できる可能性がある。
また、対象から除外された派生品について、米国の日本からの輸入実績(2025年)を見ると、特に医薬品(20億5,000万ドル)と航空機部品(19億1,000万ドル)の輸入額が大きい(表3参照)。医薬品では、錠剤などの包装材に使用されるアルミ箔の部分にこれまでアルミ派生品に対する232条関税が課されていたとみられるが、今後は除外される(注4)。
関税率が引き下げられた派生品についても、米国の対日輸入額を見ると、金属切削加工用途の産業機械・部品、ブルドーザーなどの建設機械、フォークリフトなどの荷役機械、自動車部品の輸入額が大きい。これらは対象金属部材が製品全体重量の大部分を占めると想定されることから、課税方法が含有金属の取引価格から製品全体の申告価格に変更されたことで関税コストの負担が増大するとはいえ、関税率の50%から25%への半減による負担軽減がこれを相殺または上回る可能性もある。
表3:鉄鋼・アルミ・銅に対する232条関税の除外・軽減対象品目の米国の対日輸入額(2025年、注) (ーは値なし)
| HTSコード | 品目 |
輸入額 (億ドル) |
|---|---|---|
| 3004.90.92 | 医薬品 | 20.5 |
| 8807.30.00 | 航空機部品 | 19.1 |
| 8409.91.50 | 自動車用エンジン部品 | 12.2 |
| 8486.90.00 | 半導体製造装置部品 | 12.0 |
| 8407.21.00 | 船舶用エンジン | 7.8 |
| — | その他 | 20.5 |
| HTSコード | 品目 |
輸入額 (億ドル) |
|---|---|---|
| 8479.89.95 | 84類以外の機械 | 5.5 |
| 8457.10.00 | マシニングセンタ | 4.8 |
| 8428.70.00 | 産業用ロボット | 4.1 |
| 8479.90.95 | 84類以外の機械部品 | 2.9 |
| 8207.30.60 | 金属加工用工具・部品 | 1.8 |
| — | その他 | 12.7 |
| HTSコード | 品目 |
輸入額 (億ドル) |
|---|---|---|
| 8429.52.10 | 建設機械 | 30.7 |
| 8427.20.80 | 荷役機械 | 11.2 |
| 8503.00.65 | 電動機・発電機部品 | 7.5 |
| 8708.99.81 | 自動車部品 | 6.5 |
| 8708.29.51 | 自動車部品 | 5.8 |
| — | その他 | 86.3 |
注:HTSコードを8桁に加工し集計。
出所:米国際貿易委員会(USITC)輸入統計を基にジェトロ作成
対象品目の確認方法と実務上の留意点
自社の製品が除外対象か否かなどを調べるには、まず自社の製品のHTSコードを過去の輸入申告書(entry summary)などで特定した上で、当該HTSコードが232条関税の対象品目を示した米政府発表資料のどの項目に掲載されているかを確認する必要がある。主な参照資料は、(1)2026年4月2日付大統領布告の付属書
(PDF形式)、(2)2026年4月3日付CBPガイダンス(CSMS)
の別添資料(Word形式)の2点だ。いずれの資料も使いやすさは一長一短で、布告付属書は対象の品目のHTSコードに加えてテキストの要約が記載されているが、PDF形式のため加工に制約がある。CSMS別添資料はWord形式のため加工しやすいが、今回の制度変更で対象から削減された品目のHTSコードが掲載されていない。いずれの場合でも、HTSコードは4~10桁で記載され、その粒度が統一されていないため、自社の製品のHTSコードを10桁で検索し見当たらなければ、8桁、6桁、4桁と階層を変えて段階的に検索する必要がある。また、いずれの資料も関税率は布告やガイダンスの本文で説明されているが、布告付属書やCSMS別添資料には記載が乏しく、以下の表4と照らし合わせて確認することが効率的だ。
| 関税率 | 大統領布告 付属書 | CBP CSMS別添資料 |
|---|---|---|
| 50% | 付属書I-Aに記載されるHTSコードの品目 | 9903.82.02の項目に記載されるHTSコードの品目 |
| 25% | 付属書I-Bに記載されるHTSコードの品目 | 9903.82.09の項目に記載されるHTSコードの品目 |
| 15% | 付属書IIIに記載されるHTSコードの品目 | 9903.82.10~9903.82.11の項目に記載されるHTSコードの品目 |
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0% (除外) |
付属書IIに記載されるHTSコードの品目 | 記載なし(大統領布告付属書IIを要参照) |
出所:CBP、ホワイトハウス公表資料を基にジェトロ作成
制度変更を踏まえた日本企業の対応
鉄鋼・アルミ・銅に対する232条関税は、措置の導入から一定の期間が経過している。銅は2025年8月の発動から1年に満たないが、鉄鋼・アルミ製品は2018年3月の発動から既に6年以上が経過し、関税率が50%に引き上げられてからも間もなく1年を迎える。この間、日本企業は関税コストの一部を販売価格に転嫁する、あるいは一部を自社で吸収するよう、対応を進めてきたと考えられる。2026年4月の制度変更で、第2次トランプ政権発足以降では初めて措置が縮小方向に転じたことを踏まえ、日本企業にとっては、関税コストの転嫁や吸収の従来の対応に加え、販売価格自体の見直しを通じて過大な関税コストの負担を軽減するよう調整する余地が生じている。米国の取引先に向けて、日本やASEANなどの第三国から対象品目を輸出する企業は、自社の製品が対象から除外されているか、あるいは関税が引き下げられているかどうか、不要なコストを継続的に負担するリスクを避けるために、今一度確認することが肝要だ。
- 注1:
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缶ビールの内容物には232条関税は課されない代わりに、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税などが課された。ただし、米連邦最高裁判所が2026年2月にIEEPA関税を違法と判断したことを受け、米国際貿易裁判所(CIT)は2026年3月にCBPに対してIEEPA関税の還付を命令した。CBPは2026年4月からIEEPA関税の還付の申請を受け付けている(2026年4月21日付ビジネス短信参照)。
- 注2:
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関税率が15%に引き下げられた品目について、一般関税率が15%未満の場合には一般関税率と232条関税率を合計し15%、一般関税率が15%以上の場合には232条関税は課されない。なお、本軽減措置は時限的措置で、2028年1月1日以降は関税率が15%から25%に引き上げられる。
- 注3:
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2026年4月3日付のCSMSによれば、対象金属の重量が製品全体重量の15%未満であることを示すために対象金属の総重量(kg)を輸入申告書の第2数量(second quantity)として記載するとともに、この理由により232条関税の対象外となることを示す関税処理用HTSコードの9903.82.03を記載する必要がある。
- 注4:
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ただし、医薬品に対する232条関税が課される。日本の医薬品に対する232条関税率は、一般関税率が15%未満の場合には一般関税率と232条関税率を合計し15%、一般関税率が15%以上の場合には232条関税は課されない(2026年4月3日付ビジネス短信参照)。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部米州課リサーチ・マネージャー
葛西 泰介(かっさい たいすけ) - 2017年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課・外国企業支援課、北九州事務所、海外調査部米州課を経て、2026年2月から現職。2024~2026年にワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)日本部客員研究員。





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