激動の中東情勢:中東各国への影響と展望日本と中東の貿易とホルムズ海峡封鎖の影響
中東リスクと物流(2)

2026年4月14日

中東情勢悪化に伴い、2026年3月に国際的な物流の要衝であるホルムズ海峡が事実上封鎖され、世界の物流と貿易に影響を与えている。海上輸送のチョークポイントとしてのリスクが再認識され、代替ルートの開拓にも関心が集まっている。

イスラエルと米国は2026年2月28日、イランに対して攻撃を行い、イランも周辺の中東諸国にある米軍基地やインフラ、民間施設を攻撃した。さらに3月以降、ペルシャ湾とアラビア海をつなぐホルムズ海峡を通航する商業船舶に対しても攻撃を行った。これを受けてホルムズ海峡の通航が激減したが、その後、4月8日(日本時間)に米国のドナルド・トランプ大統領が、イランと2週間の停戦に合意したと自身のSNSに投稿し、緊張の緩和が期待されたが、恒久的な和平への交渉は難航しており、状況は流動的である(日本時間4月13日時点)。

日本では、原油の中東依存度が約94.0%(2025年)と高い中、現状、ホルムズ海峡の代替輸送ルートは限られている。また、日本からは中東向けに自動車などを輸出してきた。本稿では、これまでの日本と中東各国の貿易概況と、中東情勢悪化が与える影響について概観する。

ホルムズ海峡封鎖と影響を受ける国

まず初めに、中東各国や港湾の位置も踏まえた日本との貿易関係について説明する。日本の中東における最大の貿易相手はアラブ首長国連邦(UAE)であり、主にホルムズ海峡を通るジュベルアリ港やハリーファ港などでの輸出入が多かった。一方、UAEでは、ホルムズ海峡を通らないオマーン湾沿いにあるフジャイラ港などの港での迂回も、限定的だが可能だ(図1参照)。

図1:ホルムズ海峡および迂回に関する状況
ホルムズ海峡や紅海、ペルシャ湾などのイラン、イラク、サウジアラビア、UAEなど中東各国の位置関係について地図を用いて説明。また、各国の主要な港の置関係について説明。

出所:ジェトロ作成 (地図は大まかな位置を指す)

2023年まで日本の最大の原油輸入国であったサウジアラビアには、ペルシャ湾のみならず紅海にも面している港がある。コンテナ貨物などは紅海に面し、人口も多いジッタ(ジッタ・イスラム港)など複数の港での輸出入が可能なほか、同じく紅海沿いのヤンブー港には、原油の主な産出地であるペルシャ湾から陸上パイプラインがつながっている。なお、オマーンでは地域情勢悪化による混雑は想定されるが、ホルムズ海峡を通らずに貿易が可能だ。さらに、オマーンからは陸路でUAEやサウジアラビアにもつながっている。

中東各国の一部の空港は攻撃を受けたとの報道もあるものの、主な空港は稼働している。完全ではないが、小口貨物であれば航空輸送が可能となる場合もある。一方、原油や日本の輸出主要品目である自動車の空輸は困難だ。いずれにしても、UAEやサウジアラビアの迂回・代替ルートは、ペルシャ湾沿いの港からの輸送量と比べると限定的だ。このため、産油国からの原油輸入が滞っている。日本の原油の輸入シェアはUAEが42.3%で最多、サウジアラビアが39.8%で続く。原油3位でシェア約6.0%を占めるクウェートからの輸入も、ホルムズ海峡を通る必要がある。

また、日本の液化天然ガス(LNG)の輸入シェア5.3%を占めるカタールのほか、バーレーン、イラクがペルシャ湾内に位置しており、海上ルートでは迂回ができない。

なお、イランではパキスタン国境に近いチャーバハール港や、中央アジア方面への陸路による迂回も一応は存在するものの、主要な港はペルシャ湾内に位置している。しかしながら、日本は米国によるイラン制裁の影響により、近年はイランとの貿易が少ないのが現状だ。

トルコやイスラエル、北アフリカ諸国は、地理的に地中海に面した港での貿易が多く、ホルムズ海峡の情勢による直接的な影響は少ない。なお、アジアと欧州をつなぐ紅海でも、2023年以降、イエメンの親イラン組織のフーシ派がバブ・エル・マンデブ海峡近隣で船舶攻撃を実施し、多くの海運会社が紅海・スエズ運河を避け、南アフリカ共和国の喜望峰ルートを選択していた(地域・分析レポート特集「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」参照)。フーシ派は2026年4月、今回の武力衝突に関連して紅海での攻撃を示唆したことから、再び注目が集まっている。

UAEやサウジアラビアから原油を輸入

日本の国別輸入額を見ると、首位は中国だが、中東ではUAEが最多で5位、サウジアラビアが8位と上位だ(表1参照)。また、カタールが23位、クウェートが27位であり、中東の輸入上位4カ国はいずれも主にホルムズ海峡の通過するため、封鎖が長期化すれば大きな影響が見込まれる。バーレーン、イラク、イランからの輸入にもホルムズ海峡封鎖の影響はあるものの、日本からの輸入は比較的少ない。一方、オマーン、イスラエル、トルコなどは海運ルート上の直接的な影響はないものの、世界的な物流の混乱や輸送費の上昇といった間接的な影響が懸念される。

表1:2025年の日本の輸入上位国・地域および中東諸国からの輸入額(ーは記載なし)

輸入上位国・地域 その他の中東諸国
順位 国・地域 輸入額(億円) 備考
1 中国 266,999 上位国参考
2 米国 129,102 参考
3 オーストラリア 68,020 参考
4 台湾 50,017 参考
5 UAE 49,095 主にホルムズ海峡経由
6 ベトナム 45,519 参考
7 韓国 45,054 参考
8 サウジアラビア 39,349 主にホルムズ海峡経由
輸入上位国・地域 その他の中東諸国
順位 国・地域 輸入額(億円) 備考
23 カタール 10,805 主にホルムズ海峡経由
27 クウェート 8,863 主にホルムズ海峡経由
36 オマーン 3,653 ー
42 イスラエル 2,506 ー
53 トルコ 1,550 欧州に分類
62 バーレーン 766 主にホルムズ海峡経由
88 イラク 167 主にホルムズ海峡経由
89 ヨルダン 144 ー
96 エジプト 123 アフリカに分類
119 イラン 34 主にホルムズ海峡経由
150 レバノン 9 ー
161 イエメン 5 ー
182 シリア 1 ー

出所:財務省貿易統計を基にジェトロ作成

2025年(年間)の日本の中東からの輸入品目では、鉱物性燃料がシェア93.9%を占める。このうち「原油及び粗油」の輸入額は、原油価格の下落もあり、前年比12.4%減で9兆524億円(表2参照)。輸入量は0.9%減で1億2,896万キロリットルだった。そのほか、産油国からの石油製品やLNGなどの輸入も多い。また、カタールなどからはアルミニウムを中心とした非鉄金属も輸入された。

また、ホルムズ海峡を通らないイスラエルからは、半導体などの電子部品(ICチップなど)や科学光学機器、果実も輸入している。

表2:日本の中東からの輸入品目(2025年)(単位:億円、%)(△はマイナス値)
順位 品名 輸入額 構成比 前年比
1 原油及び粗油 90,524 78.4 △ 12.4
2 石油製品 11,454 9.9 △ 10.1
3 液化天然ガス 6,188 5.4 △ 7.5
4 非鉄金属 2,452 2.1 5.2
5 半導体等電子部品 749 0.6 37.3
6 有機化合物 464 0.4 △ 3.5
7 科学光学機器 296 0.3 11.8
8 液化石油ガス 195 0.2 △ 56.0
9 電気計測機器 161 0.1 209.0
10 果実 157 0.1 △ 15.6
11 原動機 146 0.1 △ 0.5
12 医薬品 80 0.1 29.8
13 金属製品 76 0.1 △ 11.9
14 非金属鉱物製品 62 0.1 4.1
15 電算機類(含周辺機器) 56 0 68.9
総額(その他含む) 115,398 100 △ 11.1

出所:財務省貿易統計を基にジェトロ作成

湾岸諸国向けに自動車を輸出

日本の2025年の国別輸出額を見ると、首位は米国であり、中東ではUAEが最多で12位、サウジアラビアが21位だ(表3参照)。ホルムズ海峡を通る国では、クウェートが33位、カタールが39位だった。

ホルムズ海峡を通らない国では、トルコ向け輸出は輸入と比べて順位が高く、金額も3倍以上であるほか、イスラエル、オマーンも輸入より輸出の順位が高い。

表3:2025年の日本から輸出上位国・地域および中東諸国への輸出額 (ーは記載なし)

輸出上位国・地域
順位 国・地域 輸入額(億円) 備考
1 米国 203,744 上位国参考
2 中国 187,780 参考
3 台湾 79,070 参考
中東諸国
順位 国・地域 輸入額(億円) 備考
12 UAE 21,192 主にホルムズ海峡経由
21 サウジアラビア 10,656 ホルムズ海峡経由も多数
28 トルコ 5,140 欧州に分類
33 クウェート 3,382 主にホルムズ海峡経由
39 カタール 2,288 主にホルムズ海峡経由
40 オマーン 2,115 ー
47 イスラエル 1,932 ー
51 イラク 1,688 主にホルムズ海峡経由
58 エジプト 1,131 アフリカに分類
61 バーレーン 1,000 主にホルムズ海峡経由
63 ヨルダン 863 ー
74 イエメン 580 ー
77 レバノン 547 ー
121 イラン 96 主にホルムズ海峡経由
170 シリア 16 ー

出所:財務省貿易統計を基にジェトロ作成

中東向けの輸出品目を見ると、自動車が最多で、前年比15.3%増の2兆4,483億円となり、貿易統計で公表されている1988年以降で過去最高を更新した(表4参照)。輸出台数は約82万台だった。自動車輸出額を国別に見ると、米国向けが前年比11.4%減の5兆3,409億円で1位、続いてオーストラリア、カナダ、中国となり、5位にサウジアラビア(22.5%増の7,533億円)、6位にUAE(13.6%増の7,107億円)となった。クウェートは12位(2,673億円、32.7%増)、カタールは19位(1,660億円、16.4%増)、オマーンは22位(1,466億円、9.0%増)と、湾岸諸国向けの輸出が国別で上位を占める。日本の主要産業である自動車の輸出が多く、ホルムズ海峡で通行が制限された場合、影響が懸念される。

なお、中古乗用車の輸出台数では、前年2位のUAEが前年比12.6%増の約22万台で首位となった。日本からUAE経由でアフリカや第三国への向かう輸出も多い。自動車の部分品、タイヤを含むゴム製品、荷役機械、二輪自動車など、車関連の輸出が目立つ。中東でのインフラ需要に応じて、鉄鋼やポンプ・遠心分離機、建設用機器などの輸出も伸びていた。

表4:日本から中東への輸出品目(2025年)(単位:億円、%)(△はマイナス値)
順位 品名 輸出額 構成比 前年比
1 自動車 24,483 52.8 15.3
2 鉄鋼 2,025 4.4 3.8
3 原動機 1,545 3.3 20.5
4 自動車の部分品 1,471 3.2 △ 1.7
5 ポンプ・遠心分離機 905 2 △ 10.8
6 ゴム製品 857 1.8 △ 5.0
7 建設用・鉱山用機械 703 1.5 10.4
8 織物用糸・繊維製品 576 1.2 △ 0.7
9 荷役機械 396 0.9 △ 6.2
10 重電機器 299 0.6 23.7
11 科学光学機器 246 0.5 △ 0.1
12 プラスチック 240 0.5 9.3
13 金属製品 222 0.5 8.4
14 電算機類の部分品 189 0.4 2.5
15 二輪自動車 163 0.4 △ 2.5
総額(その他含む) 46,358 100 10.6

出所:財務省貿易統計を基にジェトロ作成

輸入は急な増減あるが輸出は増加傾向、現地情勢に注目

次に、これまでの日本と中東との貿易額の推移を振り返る。中東からの輸入額は1990年代には2兆円から5兆円程度で推移し、2000年代は急激な増加傾向となり、2008年には過去最多となる約17兆3,510億円を記録した(図2参照)。一方、リーマン・ショックなどによる需要減少と資源価格下落により、2009年の輸入は約半分まで減少した。その後、資源価格が上昇する局面もあった、2016年と2020年には大幅な下落となった。一方、2022年にはロシアのウクライナ侵攻を受けて資源価格が上昇し、大幅な輸入増となった。以降は、2025年まで原油価格の下落とともに輸入額は減少傾向だった。

2026年に入り、中東からの輸入額は、前年からの原油価格の下落などもあり、1月は前年同月比14.5%減、2月は同12.9%減となっていた。3月以降は前述のとおりホルムズ海峡が封鎖されており、輸入はさらに減少する見込みだ。一方、2月末以前に中東を出発した船舶が日本に到着するケースも想定されるほか、代替ルートの利用や、オマーン、トルコ、イスラエルなどホルムズ海峡を通らない国からの輸入も続く。

日本から中東への輸出は、2000年以降は増加傾向だったが、輸入同様にリーマン・ショックの際に急減した。2015年以降は原油価格低迷などで産油国の経済が減速し、輸出は減少傾向となり、新型コロナ禍の2020年に底を打った。2021年以降は自動車販売などが好調で増加傾向にあった。2026年に入り、日本から中東への輸出額は、1月に前年同月比3.0%増、2月に同27.0%増と伸びを示していた。3月以降は、自動車の輸出が多いサウジアラビアやUAEなど向けに影響する可能性がある。

図2:日本と中東の輸出入額の推移
日本の中東からの輸入額は1990年代は2,000億円から5,000億円程度で推移、2000年代は急激な増加傾向、2008年には過去多を記録。日本から中東への輸出は2000年以降は増加傾向、2009年に急減。2015年以降は減少傾向となり、2020年に底をうった。2021年以降は増加傾向。

出所:財務省貿易統計を基にジェトロ作成

世界の貿易にも影響、国際的な取り組みも

最後に、世界の貿易の動きについても触れる。WTOが3月19日に発表した世界貿易見通しによると、中東情勢悪化が世界の貿易減少に影響するという。中東では、2025年の輸出量が前年比12.9%増だったのに対し、2026年は0.6%増に鈍化し、さらに低成長シナリオでは0.1%減まで落ち込むとの予測だ。なお、2025年の国別輸出額ではUAEが7,070億ドルと世界7位(シェア3.3%)、輸入額は6,190億ドルと世界10位(シェア2.8%)で、いずれも中東最多であり、世界の貿易への影響も懸念される。

今後の中東との貿易は、ホルムズ海峡の通航状況に大きく左右される。国際的には、資源、肥料、プラスチックの原料となるナフサ、ヘリウムやアルミニウムなどを中東から輸入する国々にも影響が及ぶことが浮き彫りとなった。また、日本が輸入する相手国への影響や、日系企業の現地生産への影響が生じる可能性もあることから、間接的な影響も踏まえたグローバルなサプライチェーン戦略の検討が必要だ。

事態の解決に向け、パキスタンなどが停戦を仲介してきた(2026年4月7日付ビジネス短信参照)。日本政府も、ホルムズ海峡における安全な海上回廊に向けてIMOやG7や湾岸諸国、トルコなど関係国の外相級などと相次ぎ会談し、解決に取り組んできた(2026年4月3日付ビジネス短信参照)。また、国連はホルムズ海峡に関する専門タスクフォースを設立していた(2026年3月31日付ビジネス短信参照)。仲介や沈静化に向けた取り組みを振り返ると、湾岸諸国のみならず、世界の関係国の協力が重要だと再認識された。恒久的な和平と地域の安定により、早期の貿易の正常化が望まれる。長期的には、ビジネスリスクを軽減する戦略も必要となる。一方、中東地域では歴史的に武力衝突も多く、インフラ被害の復興需要や、今後のインフラ整備需要も見込まれる。

中東情勢は流動的であり、中東と世界各国の最新動向はジェトロ特集「イスラエル・米国とイランの衝突を巡る中東情勢関連情報」、ホルムズ海峡動向は「中東情勢悪化がホルムズ海峡に与える影響」を参照。中東・アフリカのインフラや物流事情については地域・分析レポート特集「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」も参照。


変更履歴
図1を差し替えました。(2026年5月1日)

中東リスクと物流

執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課 課長代理
井澤 壌士(いざわ じょうじ)
2010年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産企画課、ジェトロ北海道、ジェトロ・カイロ事務所を経て、現職。中東・アフリカ地域の調査・情報提供を担当。

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