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特集:グリーン成長を巡る世界のビジネス動向RE100の工業団地を目指して-セマングム・スマートグリーン産業団地の取り組み-(韓国)

2021年5月17日

ソウル特別市から南南西に約150キロ、黄海に面し、美しい干潟を整備している地域にある、ソウルの3分の2に当たる409平方キロメートルという広大な敷地が、セマングム産業団地だ(図1参照)。1991年11月から韓国最大ともいわれる干拓事業が開始され、2010年4月に全長33キロの防潮堤が完成、防潮堤の内側で産業団地や農業団地、観光・レジャー開発など大型複合開発を進めている一大プロジェクトだ。

今回、同地域の開発を担うセマングム開発庁を訪問し、セマングム産業団地の一部に設置した「セマングム・スマートグリーン産業団地」(以下、グリーン産業団地)について話を聞いた。

図1:セマングム産業団地の位置
セマングム地域は、韓国の西海岸の中央部に位置しており、群山空港があるため、大都市へのアクセスも便利。同地域は、扶安郡と群山市を繋ぐ33.9キロメートルに及ぶ防潮堤を築造するなど、韓国最大の干拓事業の地である。

出所:セマングム開発庁ウェブサイトからジェトロ作成

グリーン産業団地の開発に向けて

グリーン産業団地はセマングム産業団地内の一部の3.7平方キロを造成し、RE100(注1)を目指す産業団地だ(図2参照)。韓国政府のグリーン政策の下、再生可能エネルギー政策を担う重点開発地域に認定されている(2021年3月2日付地域・分析レポート参照)。

2020年7月2日に丁世均(チョン・セギュン)首相主催で開催された「水素経済委員会」(注2)で、セマングムに再生可能エネルギーとグリーン水素などを主要エネルギーとするグリーン産業団地を造成し、再生可能エネルギーとグリーン水素実証事業を推進する計画としている。

図2:グリーン産業団地の位置(セマングム産業団地内)
セマングムスマートグリーン産業団地は、セマングム産業団地の5・6工区に3.7平方キロメートル規模に造成中。

出所:セマングム開発庁ウェブサイトからジェトロ作成

グリーン産業団地では、7ギガワット(GW)の再生可能エネルギーを開発中だ(設置済みと計画中を含む。表参照)。現在運転中のプラントである群山水上太陽光発電所を今回見学する機会を得た。群山水上太陽光発電所は、セマングム産業団地内の遊水地約372平方キロに太陽光パネルを設置し、18.7メガワット(MW)の設備容量を誇る。発電電力量は年間2万4,571メガワット時(MWh)で、6,820世帯分の年間使用電力量に相当する。2020年7月17日には、文在寅(ムン・ジェイン)大統領もセマングム開発庁がある全羅北道を訪問し、洋上風力発電の拡大や群山水上太陽光発電への期待を寄せている。


群山水上太陽光発電所(ジェトロ撮影)

今後は太陽光や風力に加え、グリーン水素クラスター計画が開始される予定だ。同計画は2022年から2026年の5年間を計画期間として、グリーン産業団地内に水電解設備を導入し、最終的には100MW級の水電解設備で年間1万4,000トン規模のグリーン水素を生産する。水素の流通や利用に必要な公共インフラ整備のコスト負担について質問したところ、セマングム開発庁の担当者の説明では、公共部分については同庁で整備し、工場敷地内の整備は入居企業が整備する必要があるが、韓国政府の補助金などが利用できるという。

グリーン産業団地内では、風力発電や太陽光発電による電力を「マイクログリッド総合プラットフォーム」を通じ、団地内の工場や電気自動車(EV)の充電施設、公園といったインフラなどに送電し、グリーン水素を生成する電源としても活用する予定だ。蓄電システムや外部とのグリッド接続(韓国電力)を通じ、安定的な電力供給体制を構築する。

表:グリーン産業団地の再生可能エネルギー発電(一部計画を含む)
区分 容量
(GW)
事業推進主体
陸上太陽光 0.2 セマングム開発公社
0.1 群山市
水上太陽光
(2.1GW)
1段階 0.5 セマングム開発庁
0.4 全羅北道、群山市、金堤市、扶安郡
0.3 韓国水力原子力
2段階 0.9 セマングム開発庁
農地など活用太陽光 0.4 農食品部
風力
(4.1GW)
セマングム湖内 0.1 民間企業
群山洋上 1.5 検討中
西南圏 2.5 民間企業(一部検討中)
燃料電池 0.1 検討中
合計 7.0

出所:セマングム開発庁提供資料よりジェトロ作成

セマングム産業団地内の産業集積も進んでいる。特に、EVや再生可能エネルギー関連の企業進出が活発だ。最近進出したエジソンモーター(韓国)は、EVバスやトラックなどを製造する中小企業だ。また、再生可能エネルギーでは、太陽光モジュール、太陽光構造物、蓄電システムなどを製造するレナ・インターナショナル(韓国)も入居した。これら企業も含め、2020年(単年)は9社、2021年(単年)も既に3社の入居が決定している。

外国企業の誘致にも積極的だ。2021年2月24日には、セマングム開発庁とハナ銀行が共同で投資誘致のためのウェビナーを開催し、日本企業を含む海外企業と関連機関の合計35社・団体が参加した。ハナ銀行関係者は「2021年は欧州と中国、米国の3大中核市場のエコカー拡大政策とOEMによるEVへの切り替えが本格化し、『EV普及拡大元年』となる」と語る。将来的には、韓国政府が推進している未来自動車が本格化し、車体軽量化のための素材市場の拡大を予想する。このことから、素材・部材・装備分野の投資も歓迎しているもようだ。

再生可能エネルギー開発のカギは地域との共生

ジェトロはセマングム開発庁との意見交換の際、率直に再生可能エネルギー開発の困難性について質問した。同庁が回答として、開発に際する地域住民との合意形成を挙げていたことが印象的だった。陸上太陽光発電所の場合、用地取得に関する地権者との交渉に多くの時間とコストを要するという。セマングム開発庁の場合、地域住民が発電事業(SPC)に出資する仕組みをつくり、発電した電力の売却利益を還元することとした。これにより、用地を手放した住民にとって、土地の売却収入に加えて一定期間、売電による安定的な収入が得られることになる。今後は、洋上風力でも同様の仕組みが求められるだろう。

カーボンニュートラル社会が拡大してくと、再生可能エネルギーの開発のみならず、廉価で安定的な電力の供給、災害時の供給途絶(レジリエンス)、輸送システムの再構築、グリーン調達など、再生可能エネルギーのサプライチェーンの広がりは、社会構造そのものを変革していく可能性がある。企業の立地もこのような観点も踏まえつつ、コストとのバランスを図る時代になるだろう。このグリーン産業団地もその1つの選択肢として、発展が期待される。


注1:
企業が自らの事業の使用電力を100%再エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ。
注2:
水素経済委員会は、2020年2月に制定された「水素経済の育成と水素安全管理に関する法律」(施行は2021年2月5日)に基づき、「水素経済基本計画」の策定、実施、点検、評価を行い、関連政策の調整、国家間協力、サプライチェーンの構築などの主要な政策を策定・推進する省庁横断の委員会。
執筆者紹介
ジェトロ・ソウル事務所 副所長
当間 正明(とうま まさあき)
2020年5月、経済産業省からジェトロに出向。同年6月からジェトロ・ソウル事務所勤務。

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