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特集:グリーン成長を巡る世界のビジネス動向化石燃料依存の軽減とクリーンエネルギー導入に加速の動き(南アフリカ共和国)

2021年5月27日

南アフリカ共和国はアフリカ唯一のG20メンバーだ。気候変動対策についても、積極的に取り組む立場にある。また、同国の環境森林漁業省が2020年に発表した「南ア低排出開発戦略(SA-LEDS)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.37MB) 」によると、南アは気候変動の影響に対して脆弱(ぜいじゃく)な国の1つでもある。温室効果ガス排出の適切な削減策が実施されない場合、21世紀末までに内陸部の平均気温が5~8度上昇する恐れがあるとした。既に国際観光都市ケープタウンを擁する西ケープ州をはじめ、国内では干ばつや水不足、記録的な大雨などの異常気象が度々発生している(2018年6月6日付ビジネス短信参照)。同戦略によると、南アは温室効果ガスの排出量で世界上位20位以内に入り、化石燃料使用の削減、中でも主要電源である石炭火力発電所の温室効果ガス排出削減に向けた取り組みの必要性が示されている。

南ア政府のこれまでの気候変動対策としては、2011年に、気候変動に対応するための2050年までの政府目標を定めた「国家気候変動対応政策(NCCRP)」がある。翌2012年に策定した「国家開発計画(NDP)」では、「環境・持続可能性」という章を設けた上で、「低炭素経済への公平な移行」というスローガンを掲出。排出量の削減や脱化石燃料・再生可能エネルギーへの移行などの目標を示している。以上の流れを踏まえて、パリ協定に基づく具体的な対応策として、前述の2050年までの気候変動対策の実行計画となるSA-LEDSを策定した。

政府の具体的な取り組みとしてまず導入したのが、2019年の「炭素税法PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(329.73KB)」だ。現在、2019年~2022年末の第1フェーズが進行し、産業や経済活動ごとの非課税排出枠などが定められている。また、現在審議を進めているのが「気候変動法案」。同法案は最終調整段階にある。可決されれば、産業セクターごとの排出削減の定量的目標を課し、その達成に必要となる国家予算の割り当てを行う見込みだ。

企業もさまざまな取り組み

気候変動に関する新たな政策が打ち出される中、企業はどのように取り組んでいるのか。南アの環境NGO「環境権センター(CER、Centre for Environmental Rights)」はレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で、国内の温室効果ガス排出企業上位10社を発表している(表参照)。最大が、総排出量の39.0%を占めるのが電力公社エスコム。次いで、世界的にも展開している南ア化学メーカー最大手サソールが13.5%と続く。この2社による排出が5割強を占めている。国内の温室効果ガス排出削減の目標を達成するためには、現在の総発電容量の約7割を占めているエスコムが協力することが不可欠だ。エスコムは、特に老朽化した石炭火力発電所を更新する際、温室効果ガスの排出量が少ない他のエネルギー源を用いた発電へ切り替える必要性を認識しているとする。同時に、現在稼働している石炭火力発電所周辺の大気環境を改善すべく、石炭から液化石油ガスへ燃料を転換する「大気環境補正プログラム」を実施している。

表:南アフリカの温室効果ガス排出企業トップ10
順位 企業名 分野 排出割合
(%)
総年間温室効果ガス排出量(CO2換算100万トン)
1 Eskom Holdings SOC Limited エネルギー 39.0 205.5
2 Sasol Limited 化学 13.5 71.3
3 ArcelorMittal South Africa Limited 鉄鋼 2.8 14.83
4 South32 Limited 鉱業 2.7 14.43
5 Anglo American plc 鉱業 1.4 7.4
6 PPC Limited セメント 0.8 4.3
7 Sappi Limited 製紙 0.5 2.8
8 African Rainbow Minerals Limited 鉱業 0.4 2.1
9 Exxaro Resources Limited 鉱業 0.2 0.9
10 Gold Fields Limited 鉱業 0.1 0.5

出所:CER外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

南ア政府は2019年、2030年までのエネルギー政策を「電力統合資源計画(IRP、2019年10月29日付ビジネス短信参照)」として発表。この計画では、石炭火力発電の比率を4割に下げ、その代わりに独立発電事業者(IPP)を中心とした再生可能エネルギーの比率を上げる目標を示した。国内に豊富に埋蔵されている石炭を利用したエスコムによる石炭火力発電は、南アにとって経済性の高い電源だ。そのため、将来的にも主要電源であり続けると見込まれる。しかし、シリル・ラマポーザ大統領が率いる現政権では、電力供給の安定化が喫緊の課題となっていることを背景に、新規に再生可能エネルギーを導入する動きが従前以上に加速。政府は2024年までに6,800メガワット(MW)の電力を再生可能エネルギープロジェクトから調達するとして、複数の入札案件が進行中だ(2020年10月2日付ビジネス短信参照)。

ほかには、南アに生産拠点を持つ米自動車大手フォード・南アフリカ(FMCSA)の例がある。同社は、2024年までに南ア国内の工場での消費電力を100%再生可能エネルギーにするという目標を掲げ、敷地内で太陽光発電による電力自給に取り組んでいる。また、乗用車と商用車を合わせた国内のマーケットシェアで40年間首位を維持するトヨタ南アフリカ(TSAM)も、「トヨタ環境チャレンジ2050」に基づき、2021~2025年までの環境行動計画PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.67MB)を策定。ハイブリッド自動車の生産拡大など、クリーンなエネルギーを利用した自動車の生産・普及に関する目標を示した。

このように、南アでも化石燃料依存を軽減し、再生可能エネルギーの導入を柱とする「グリーン」な成長戦略が官民にとって重要な取り組みと位置付けられ始めている。

執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
髙橋 史(たかはし ふみと)
2008年、ジェトロ入構後、インフラビジネスの海外展開支援に従事。2012年に実務研修生としてジェトロ・ヤンゴン事務所に赴任し、主にミャンマー・ティラワ経済特別区の開発・入居支援を担当。2015年12月より現職。南アフリカ、モザンビークをはじめとする南部アフリカのビジネス環境全般の調査・情報提供および日系企業の進出支援に従事。

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