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特集:グリーン成長を巡る世界のビジネス動向「ピンチをチャンスに」、環境問題に取り組むスタートアップ(インドネシア)

2021年5月28日

インドネシアでは近年、経済成長に伴って廃棄物が増加。その適切な処理が課題になっている。そこでジェトロは、環境問題に取り組むインドネシアのスタートアップ2社にヒアリングを実施。廃棄物処理や廃プラスチック問題の現状、その解決方法、環境ビジネスを取り巻く現状、日系企業との連携の可能性などについて聞いた。

廃棄物の分別進まないインドネシア

インドネシア環境林業省によると、インドネシアでは1日当たり約9万トンもの廃棄物が排出されている。そのうち、ジャカルタ特別州では約8,370トンに及ぶ(表参照)。

表:インドネシア主要州の1日と1年当たりの廃棄物排出量(2020年)(単位:トン)
1日当たり 1年当たり
東ジャワ州 14,327 5,229,411
西ジャワ州 9,184 3,352,487
中部ジャワ州 8,836 3,225,472
ジャカルタ特別州 8,369 3,054,791
バンテン州 6,951 2,537,373
南スラウェシ州 2,902 1,059,533
バリ州 1,816 662,835
その他 37,530 13,697,125
合計 89,915 32,819,027

出所:インドネシア環境林業省統計からジェトロ作成

廃棄物の多くは分別されることなくトラックで処分場に運ばれ、そのまま埋め立てられる。いわゆる「オープンダンプ方式」と呼ばれる方法で処理するのが一般的だ。家庭から出るペットボトルなどリサイクル可能な廃棄物は、インドネシア語でPemulung(プムルン、「ゴミを集める人」の意)が各家庭から回収し、収集業者などに販売する。しかし、回収量は排出量全体から見るとわずかだ。西ジャワ州ブカシ市のバンタルグバン最終処分場はインドネシア最大で、ジャカルタ首都圏の廃棄物を受け入れてきた。しかしその処分場が、収容能力の限界を迎えつつある。代替地もまだ見つからない。廃棄物の量そのものを減らすことも大切だが、まずは分別してプラスチックなど再利用できるものをリサイクルすることが重要になる。

こうした現状に対し、2018年に創業したスタートアップRekosistem外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (レコシステム)は市民に廃棄物に適切な分別を促し、健全な廃棄物のバリューチェーン構築を目指す。同社の最高経営責任者(CEO)のアーネスト・レイマン氏にインタビューした(インタビュー実施日:2021年3月18日)。


アーネスト・レイマンCEO(レコシステム提供)
質問:
貴社が解決しようとしている社会課題は何か。
答え:
「廃棄物バリューチェーンの生産性の低さ」がインドネシアの大きな課題と考えている。インドネシアでは、年間約3,300万トンもの廃棄物が排出される。しかし、そのうち適切に分別されているのは9%にとどまる。それに伴い、リサイクルされる廃棄物の割合は全体の7%と非常に低い。廃棄物の多くは処分場にそのまま運ばれ、埋め立てられる。処分場に向かう道は廃棄物を満載したトラックで混雑し、トラック利用の非効率にもつながっている。廃棄物のバリューチェーンの出発点は「廃棄物の分別」で、われわれはそれを改善しようとしている。
質問:
貴社が提供している製品・サービスは。
答え:
人々に廃棄物を分別するよう促すには、インセンティブを与える必要があると考えた。そのため、当社が提供するスキームで廃棄物の分別を行った消費者がアプリケーションを通してインセンティブを得られるよう、システム構築した。具体的には、IoT(モノのインターネット)を活用したゴミ箱、「Rebox(リボックス)」の開発だ。飲み終わった後のペットボトルをリボックスに捨てる際、事前にリボックスのQRコードを専用アプリケーションで読み込む。そうすることでポイントがたまるが、ポイントはインドネシアで広く活用されている電子決済サービスのゴーペイ(Go-pay)で利用可能だ。また、当社が設置する廃棄物ステーションに家電などを持ち込むことで、1キログラムにつき100ポイントを得ることができる。当社は、地下鉄を運営するMRTジャカルタが行ったスタートアップ向けアクセラレーションプログラム「MRTJアクセル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」に採択されている。当社のサービスは、ブロックM駅で実証実験中だ。

地下鉄の駅に設置されている
リボックスを利用する人
(3月18日、ジェトロ撮影)

廃棄物ステーションに家電ごみなどを持ち込む人々
(3月18日、ジェトロ撮影)
質問:
貴社のビジネスにとって追い風、向い風となっている事象は何か。
答え:
インドネシア政府は、2025年までに廃棄物の埋め立て量を30%減らす計画を立てている。環境に配慮したビジネスに、より多くの投資が行われるようになるのではないか。一方、廃棄物の分別に対する人々の意識は依然として低い。この点を改善していきたい。
質問:
中長期的にはどのような事業展開を目指しているか。
答え:
まず、廃棄物ステーションをジャカルタ特別州の各都市に設置する。その後、国内34州の全ての州都に展開していきたい。
質問:
日本企業とはどのような連携を期待しているか。
答え:
リボックスには画像認証機能を使っている。この分野で良い技術を持つ日本企業がいれば連携していきたい。

世界有数の廃プラスチック汚染国

廃棄物の分別が進まないということは、前述したとおり、本来ならリサイクルされるべきものがされない現状につながる。プラスチックがその典型例だ。世界経済フォーラム(WEF)が2020年4月に発表した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(22.22MB)によると、インドネシアでは年間680万トンものプラスチックが廃棄。その70%は環境に悪影響を与える方法で処理されている。具体的には、焼却(48%)、埋め立て(13%)、もしくは海洋への投棄(9%)だ。この状況下、廃プラスチック問題に取り組むスタートアップがGreenhope外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (グリーンホープ)だ。最高経営責任者(CEO)のトミー・チプタジャヤ氏に聞いた(インタビュー実施日:2021年3月19日)。


トミー・チプタジャヤCEO&ファウンダー(グリーンホープ提供)
質問:
グリーンホープの活動について。
答え:
廃プラスチック問題に対応するため、イノベーションを用いて便利な環境に優しいプロダクトを提供するのがミッション。この取り組みは、政府や民間企業、非営利組織などと協業して進めている。キャッサバを利用した生分解性(注)技術などについて研究開発してきた。特許も有する。当社は、インドネシアの40以上の工場、さらには10カ国以上と提携。生分解性機能を有する最終製品(買い物バッグなど)を作成している。リサイクルが難しい場合、プラスチックは最終的に埋め立てられることになる。しかし、生分解性の機能を持つバイオプラスチックであれば、環境に悪影響を与えずにすむ。当社では従来の3Rではなく、4Rを提唱している。4Rとは、リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)に、リターン・トゥ・アース(Return-to-Earth)を追加するというものだ。

グリーンホープの技術を活用した買い物バッグなど(同社提供)
質問:
インドネシアの廃棄物処理ビジネスをどうみているか。
答え:
既に廃棄物処理場はそのキャパシティーを超えつつある。一方で、経済成長が進む中で、環境に配慮したプラスチックやパッケージングへの需要が高まるとみている。同時に、消費者の環境への意識も、徐々に高まりつつある。インドネシア政府も、長期的には化石燃料への依存状態からの脱却を検討中だ。その際には、当社が保有する技術が一層注目されるようになると考えている。
ジャカルタ特別州はプラスチックごみ削減のため、2020年7月1日から小売店でのレジ袋の配布を禁止した(2020年7月3日付ビジネス短信参照)。施行されてから、まだ1年も経過していない。しかし、消費者の意識は目に見えるかたちで変化した。これにより、当社も生分解性プラスチックを用いたショッピングバッグの開発により積極的になることができる。
質問:
中長期的にはどのような事業展開を目指しているか。
答え:
当社の技術によって作られた製品は現在ではタイやスペイン、ケニア、米国などで利用されている。提携先の国ごとに、仕様やニーズが異なる。積極的に海外でパートナーを求めていきたい。
質問:
日本企業とはどのような連携を期待しているか。
答え:
日本では2020年7月から、全ての小売店でプラスチック袋を有料で提供するようになったと聞いている。しかし、生分解性技術を用いたプラスチック袋は対象外とも聞いた。そのため、当社の技術の優位性を発揮できるのではないかと考えている。日本で当社の技術を認めてもらうためにも、日本の業界団体と連携したい。その後、当社の技術を活用し、最終製品を一緒に作ってくれるパートナーを探したい。

日本の技術にも期待

冒頭に述べたとおり、インドネシアはまさに多くの環境問題に苦しんでいる。日本も戦後の高度成長期を通して、環境問題に苦しみ、克服してきた経験がある。ヒアリングを行った2社が述べているとおり、日本への期待は高い。実際に貢献できる分野も多いのではないだろうか。「ピンチをチャンスに」捉えたビジネスが定着し、インドネシアの環境が改善されることを願ってやまない。


注:
通常のプラスチックと同様の耐久性を持つ一方、使用後は自然界に存在する微生物の働きで分解される。最終的には、二酸化炭素と水に完全に分解されるという。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
上野 渉(うえの わたる)
2012年、ジェトロ入構。総務課(2012年~2014年)、ジェトロ・ムンバイ事務所(2014年~2015年)、企画部企画課海外地域戦略班(ASEAN)(2015年~2019年)を経て現職。ASEANへの各種政策提言活動、インドネシアにおける日系中小企業支援を行う。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
シファ・ファウジア
2019年からジェトロ・ジャカルタ事務所で勤務。日系中小企業支援や、調査業務などを担当。

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