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特集:グリーン成長を巡る世界のビジネス動向2024年までの低炭素化目標を設定、再エネ導入などが進む(インドネシア)
技術移転で取り組み加速が課題

2021年5月28日

インドネシア政府は、2024年までの国家中期開発計画の重点事項の1つとして環境を挙げ、低炭素化に取り組んでいる。特に取り組みが進むのは、太陽光発電や地熱発電、パーム油を利用したバイオディーゼルの導入だ。さらに、国際機関と連携してバイオ圧縮天然ガスの国内市場作りにも乗り出す。本稿では、こうした政府目標と主な取り組みの現状について解説する。

中期国家開発計画で低炭素化に取り組む

インドネシア政府による環境問題への意識は「中期国家開発計画(RPJMN) 2020~2024年外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」に記されている。同計画によると、環境の質的低下と天然資源の枯渇は、天然資源セクターに依存する経済の持続的な成長可能性を妨げる可能性がある。またインドネシアでは、気候変動の影響と相まって災害リスクが高い。災害が適切に予測・処理されない場合、将来さらに大きな損失や損害を引き起こす可能性があるとする。これらの条件を考慮して、災害に対する回復力を高め気候変動に取り組むことが、2020年から2024年のRPJMNの国家の優先事項の1つに指定された。低炭素化もその一部に含まれている。

具体的には、(1)環境の質の改善、(2)災害と気候変動に対する回復力の向上、(3)低炭素化アプローチに分類される。それぞれのアプローチごとに数値目標が設定されている。まず(1)について、インドネシア独自の環境指標「環境品質指標(IKLH、注1)」を2024年までに69.7に引き上げるとした。また(2)に関しては、災害と気候変動がGDPに与える影響による潜在的なGDP損失率を2024年までに1.25%に引き下げる。(3)では、温室効果ガスの排出量を2024年までに27.3%削減する。このうち低炭素化については、エネルギー、土地などのセクターごと温室効果ガス排出量の削減率を定めている。このほか、持続可能なエネルギーの開発として、新・再生可能エネルギーの割合を2024年までに23%にすることを掲げた(表参照)。

表:中期国家開発計画における環境面での目標(抜粋)(―は値なし)
目標 指標 ベースライン
2019年(a)
ターゲット
2024年
1. 環境の質の改善 環境品質指標(IKLH)を2024年までに69.7に引き上げる
2. 災害と気候変動に対する回復力の向上 災害と気候変動がGDPに与える影響による潜在GDP損失の削減率を2024年までに1.25%に引き下げる
3. 低炭素化アプローチ 温室効果ガスの排出量を2024年までに27.3%削減
階層レベル2の項目低炭素の開発 エネルギーセクターのベースラインに対する温室効果ガスの排出量の削減率(%) 10.3(b) 13.2
土地セクターのベースラインに対する温室効果ガスの排出量の削減率(%) 36.4(b) 58.3
廃棄物セクターのベースラインに対する温室効果ガスの排出量の削減率(%) 8.0(b) 9.4
工業プロセスと製品の使用(IPPU)セクターのベースラインに対する温室効果ガスの排出量の削減率(%) 0.6(b) 2.9
海洋と沿岸セクターのベースラインに対する温室効果ガスの排出量の削減率(%) N/A 7.3
階層レベル2の項目階層レベル2の項目持続可能なエネルギーの開発 国内エネルギー・ミックスの新・再生可能エネルギーの割合(%) 8.55(b) 23
一次エネルギー強度(石油換算バレル/10億ルピア) 141 133.8
最終エネルギー強度の低下(石油換算バレル/10億ルピア) 0.9 0.8
階層レベル2の項目階層レベル2の項目持続可能な土地の回復 劣化した泥炭地の回復面積(ヘクタール) 122,833 330,000/年
森林面積の増加(ヘクタール) 206,000 420,000/年
持続可能な食用農業として指定された水田の割合(%) 50 100
階層レベル2の項目階層レベル2の項目廃棄物の管理 国内の管理されたゴミの量(100万トン) 67.5(b) 339.4(c)
衛生埋め立て基準で最終埋め立て処分場の提供を受けた家庭の数(世帯) N/A 3,885,755
統合廃棄物処理場所の提供を受けた家庭の数(家庭) N/A 494,152
階層レベル2の項目階層レベル2の項目グリーン産業の開発 グリーン産業標準を認定した中企業の割合(社) N/A 10
産業セクターにおける温室効果ガス削減基準案(案件) 3 20
階層レベル2の項目低排出の沿岸と海洋 回復されるマングローブと沿岸の生態系の面積(ヘクタール) 1,000 50,000(c)

(a)特に明記されていない限り、2019年第3四半期までの中間結果をもとに算出。
(b)2018年実績値。
(c)5年間の累積目標(2020~2024年)。
注:1ルピア=約0.01円。
出所:RPJMN2020-2024からジェトロ作成

前述目標の達成に向けて各施策が実施される。低炭素化では、次の「参考」のとおり、エネルギー、土地、廃棄物、グリーン産業、海洋などの優先分野の排出量を削減する取り組みが主だ。特に持続可能なエネルギー開発では、再生可能エネルギープラントの開発やバイオ燃料の供給の増加、エネルギー効率性の向上を据えている。

参考:低炭素開発アプローチの取組み

  1. 持続可能なエネルギー開発
    • 再生可能エネルギープラントの開発および低炭素原料からのバイオ燃料の供給増加
    • エネルギー効率化
  2. 持続可能な土地の回復
    • 泥炭地の回復
    • 森林および土地のリハビリテーション
    • 森林減少率の削減
    • 持続可能な農業に向けた農業の生産性と効率の向上
  3. 廃棄物管理
    • 家庭ごみ管理
    • 液体廃棄物管理
  4. グリーン産業の発展
    • 産業における保全およびエネルギー使用量の監査
    • プロセスおよび技術の変更の適用
    • 産業廃棄物管理
  5. 沿岸・海洋生態系の保存と回復を通じて実施される、低炭素の沿岸・海洋開発

出所:RPJMN2020-2024からジェトロ作成

太陽光や地熱発電、バイオディーゼル導入で、具体的取り組み

こうした目標の下で行われている再生可能エネルギー開発の具体的案件をみる。まず、西ジャワ州で進むチラタ太陽光発電所の建設が挙げられる。国家戦略プロジェクトの1つとして、国営電力PLNの子会社とマスダール(アブダビに本拠地を置く再生可能エネルギー会社)との合弁会社が145メガワット(MW)規模のメガソーラーを設置する計画だ。完成すればインドネシア最大の太陽光発電所になるとみられ、再生可能エネルギー代替の政府目標への貢献が期待される。また国営のクラカタウ・スチール(製鉄)子会社も、40MW規模の太陽光発電所建設を計画(「ジャカルタ・ポスト」紙4月6日)。さらに、ジャカルタ中心部に位置するブンカルノ競技場(GBK)で国営石油会社プルタミナが1MW規模の太陽光発電を行うプロジェクト(同紙3月18日)など、太陽光発電分野での動きが活発化している。

次に、地熱発電分野では、国営企業省が2021年中に地熱発電事業の国営持ち株会社を設立すると発表した。新会社は、プルタミナの子会社プルタミナ・ジオサーマル・エナジ―(PGE)と国営電力PLNの子会社2社を傘下に収めるとみられる。設立されれば、世界最大の発電量を持つ地熱発電会社になるとされる(同紙2月26日)。PGEはまた、自社単独で地熱発電容量を1,112MWまで引き上げる方針を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社が運営する北スラウェシ州ラヘンドンの地熱発電所(125MW)では、一部の蒸気生産輸送設備(SAGS)用制御システムを横河電機が受注するなど、日系企業も参画している。

このほか政府は、精製パーム油を原料とするバイオ燃料の利用を促進している。パーム油は、化石燃料の代替燃料として期待される存在だ。2020年1月から軽油にバイオディーゼルを30%混合したB30の使用を義務化した。バイオディーゼル40%混合のB40の使用については、新型コロナウイルス感染拡大に伴うパーム油の高騰などにより2021年内の導入は延期された。しかし、2022年以降に義務化されるとみられる(「コンパス」紙4月6日)。加えてプルタミナは、バイオディーゼル100%の燃料B100の生産を2021年にも開始すると発表するなど、取り組みを進める姿勢だ(同紙2020年2月25日)。

直近の動きとして、ルアンダ・スガルディマン環境林業省気候変動総局長が3月19日、2050年までに炭素中立を目指すと同省のウェビナーで発言(CNBC Indonesia 3月19日)。低炭素化の機運は、さらに高まっている。

グリーン成長で国際機関と連携

既述のように、低炭素化目標向けては、国営企業を中心とした動きが目立つ。加えて国家開発企画庁(Bappenas)は、韓国に事務局を置く国際機関グローバル・グリーン成長研究所(GGGI、注2)と連携。グリーン成長を目指す「インドネシア・グリーン・グロース・プログラム(GGP)」を2013年から実施している。GGPは、同庁とエネルギー鉱物資源省などの中央省庁だけでなく、地方政府や大学などの多くの関係者を巻き込む取り組みだ。また、各プロジェクトに対して市場アクセスや資金調達、投資家へのアクセスを提供しているのも、同プログラムの大きな特徴といえる。

GGPは、持続可能で公平なGDPと生活水準向上の実現が狙いだ。同時に、汚染の抑制やインフラの競争力強化、何世紀にもわたってインドネシア経済を支えてきた天然資源の評価を目的にする。「持続可能なエネルギー」「持続可能な景観」「経済特区での持続可能なインフラストラクチャ―」の3つの柱を掲げる。取り組みの成果として、「グリーン成長を実施・拡大するための政府機関の能力向上」「排出量削減やより健康的で生産性の高いエコシステムをもたらすため、優先セクターへのグリーン投資の増加」を目指す。具体的なプロジェクト数は、21に上る。その内容も、ハイブリッド太陽光発電やパーム油廃棄物のエネルギー化プロジェクトの実行可能性調査や、資金調達円滑化の支援など、多岐にわたる。

このうち、バイオ圧縮天然ガス(BioCNG)の市場を強化する新規プロジェクトが現実に動き始めている。これは2年間(2021~2022年)にわたり、GGGIがインドネシア、タイ、インドの3カ国で実施するものだ。インドネシアでは、パーム油、家畜ふん尿、有機都市廃棄物(Organic MSW)の開発に焦点を当てられ、1億ドルが目標投資額だ。BioCNG市場が活発化することで、農業、特にパーム油セクターの持続可能性向上が期待できる。ひいては、環境汚染や埋め立て地の使用、燃料の輸入支出のそれぞれ削減につながる。

技術ギャップ克服に、スタートアップへ期待

このように、政府は中期的な国家開発の柱の1つとして、低炭素化に向けた取り組み、企業によるプロジェクトも動き始めている。しかし、政府目標を達成して気候変動への対応を強化していくためには、政府や民間企業、国際社会が一丸となり、気候変動に対する技術や開発その移転を加速させる必要がある。インドネシア財務省が2021年2月に開催したワークショップで、環境・林業省の上級顧問ラクスミ・デワンシ氏は「技術移転が気候変動の課題に対処するカギの1つ」とし、「資金援助などとは別に、インドネシアが国際社会の支援を求めるもの」との考えを示した。加えて、技術評価・応用機構(BPPT)の天然資源開発技術担当次官ユディ・アンタナセナ氏も「エネルギー、林業、廃棄物処理などの分野で技術的なギャップがある。民間や国際社会の支援を期待する」との見解を示した。 同ワークショップでは、インドネシアで環境・社会問題に関心を持つイノベータ―が増えていることも指摘。環境や気候問題に取り組むスタートアップに期待が集まる。政府やエネルギー大手企業ではカバーできない技術ギャップもあるためだ。実際インドネシアでは、廃棄物処理や生分解性プラスチック分野のスタートアップを輩出している。こうした企業が、ギャップを克服する技術を開発し、その技術に投資する投資家が増えるような好循環が生み出されることに期待したい。


注1:
インドネシア独自の環境指標で、該当地域の環境条件を1~100の範囲で表示。低いほど自然環境への負荷が大きい。水質指数、大気質指数、森林被覆指数の3要素から測定される。
注2:
条約に基づく国際的な政府間組織。開発途上国と新興経済国の強力で包括的かつ持続可能な経済成長を支援・促進することを目的とする。韓国ソウルに本部。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
尾崎 航(おざき こう)
2014年、ジェトロ入構。生活文化産業企画課、サービス産業課、商務・情報産業課、デジタル貿易・新産業部 EC・流通ビジネス課を経て、2020年9月から現職。

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