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特集:グリーン成長を巡る世界のビジネス動向 特集:北米地域における環境政策の動向と現地ビジネスへの影響気候サミットを振り返り、新排出量削減目標を点検する(米国)

2021年6月9日

米国主催で、気候変動リーダーズサミット(以下、気候サミット)が4月22日から23日にかけて開催された(2021年4月23日付ビジネス短信参照)。パリ協定に復帰した米国が新たな温室効果ガス(GHG)排出量削減目標を発表。先進国・地域も米国に追随して環境対策を強化していく方針を表明した。本稿では、気候サミットの各国首脳・要人発言を振り返る。あわせて、米国の新たなGHG排出量削減について現状や見通しを考察する。

首脳40人が参加、環境対策強化を表明

気候サミットには世界各国・地域の首脳40人のほか、企業経営者、環境団体関係者が参加した(参加首脳リストは2021年3月31日付ビジネス短信添付表参照)。会議の冒頭、ジョー・バイデン米国大統領が、パリ協定に対応した米国の新たな目標(注1)を発表。「2030年までに2005年比でGHG50~52%削減」とした(表1参照)。日本やカナダ、英国なども、気候サミットに前後して従来目標の引き上げや新目標の設定を表明した。世界に占めるGHG排出割合の高い新興国の中国、インド、ロシアからは、具体的な数値目標についての言及こそなかった。しかし、中国の石炭消費の段階的削減への言及のように、各国が具体的方策を説明した。そのほか韓国や南アフリカ共和国は、目標引き上げを検討中の旨、言及。ブラジルやアルゼンチンは、違法森林伐採の取り締まり強化などを表明した。

表1:主要国・地域のGHG削減目標と世界に占めるCO2排出量割合(2018年)
国・地域 GHG削減目標 世界に占めるCO2排出量割合(2018年)
中期目標 長期目標
米国 2025年に△26~△28%(2005年比)
→2030年に△50~△52%(2005年比)
2050年にカーボンニュートラル達成 14.7%
日本 2030年度に△26%(2013年比)
→2030年度に△46%(2013年比)
2050年にカーボンニュートラル達成 3.2%
EU 2030年に△55%(1990年比) 2050年にカーボンニュートラル達成 9.4%
英国 2030年に△68%(1990年比)
→2035年に△78%(1990年比)
2050年にカーボンニュートラル達成
カナダ 2030年に△30%(2005年比)
→2030年に△40~45%(2005年比)
2050年にカーボンニュートラル達成 1.7%
中国
  • 2030年にGDP当たりCO2排出量で△65%(2005年比)
  • 2030年までに排出量を削減させる
    →2026~2030年で石炭消費を段階的に減少させる
2060年にカーボンニュートラル達成 28.4%
インド 2030年にGDP当たり排出量で△33~△35%(2005年比) 現時点で言及なし 6.9%
ロシア 2030年に△30%(1990年比) 現時点で言及なし 4.7%
韓国 2030年に△17%(2017年比)
→目標を引上げ、年内に国連に新たに提出する
2050年にカーボンニュートラル達成 1.8%
ブラジル 2030年に△43%(2005年比)
→2030年までに国内違法伐採を根絶
2050年にカーボンニュートラル達成 1.2%

注1:太字は今回サミットを契機に、数値目標の引上げや追加目標とされた項目。
注2:インドの「GDP当たり」目標について、目標年までにGDPが排出量よりも伸びていれば排出量自体は増加していることもありうる。
出所:国連、外務省IEAなどの資料からジェトロ作成

開発途上国の首脳からは、米国主導の環境対策強化の動きを牽制し、先進国からの支援を求める発言が目立った。ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領は、自国を含めた開発途上国の経済について「発展する権利がある」と主張。ベトナムのグエン・スアン・フック首相は「開発途上国にも配慮したロードマップが必要。ベトナムの工業化は30年前に始まったばかりだ」と述べた。中国の習近平国家主席は「先進国は、開発途上国のために資金や技術などで支援して助けるべき」と述べた。

米閣僚の発言から政権の取り組み姿勢を読み取ると

気候サミットには米国の主要閣僚も出席した。各閣僚の発言からバイデン政権の環境問題への取り組み姿勢が見て取れる(表2参照)。それらは、(1)環境正義の重視、(2)経済成長のエンジンとしての環境対策、そして(3)外交ツールとしての環境問題への協働、の3つに大別することができる。

表2:気候サミットでの米閣僚の主な発言
氏名 主な発言
カマラ・ハリス
副大統領
世界中の革新と協調が必要。環境正義の重要性を認識することが必要。
ジョン・ケリー
気候変動特使
  • 政府だけで必要な投資を賄うことは不可能。
  • この10年で排出量を削減できた場合のみ、2050年カーボンネットゼロを実現できる。
ジーナ・マッカーシー
国家気候変動顧問
環境正義の問題を解決するための機会が今ここにある。
ブレンダ・マロリー
環境諮問委員会議長
全ての人がきれいな水や空気を使用する権利があるが、あまりにも多くの人がこれを享受できていない。この事実を認識することが問題解決に向けての非常に重要な一歩。
アントニー・ブリンケン
国務長官
地球を救うために米国は各国と協力していきたい。協働することにより、他の共通の課題に関する協力の基盤を築ける
ジャネット・イエレン
財務長官
2022年度予算において、4億8,500万ドルを多国間の気候変動枠組みのために活用予定。他国と協力して、持続可能なインフラ計画の特定などを行っていく。
マイケル・リーガン
環境保護庁長官
排出量を削減していくには、家庭の料理器具、暖房といったあらゆるレベルでの排出削減努力が必要であり、そのために大胆なリーダーシップが必要。
ジェニファー・グランホルム
資源エネルギー省長官
米国雇用計画は、クリーンエネルギーの研究開発に多額の投資を求めている。今後数週間で、水素、炭素除去、エネルギー貯蔵などについてのコスト目標を新たに発表予定。
ジーナ・レモンド
商務省長官
2020年にクリーンテクノロジーへの世界の投資が5,000億ドルを超え、今後数十年で新しいクリーンテクノロジー市場は数兆ドルに達する見込み。
ピート・ブティジェッジ
運輸省長官
国家インフラを現代化する投資を行うとともに何百万もの雇用を創出できる。カーボンネットゼロの目標を追求することはゼロサムゲームではない。
キャサリン・タイ
通商代表
世界各国が脱炭素化の動きを見せる中において、貿易政策はポジティブな競争インセンティブを生み出すための強力なツールとして機能

出所:ホワイトハウス資料などからジェトロ作成

第1の「環境正義の重視」とは、人種や出身国、所得にかかわらず、全ての人々が環境問題において公平な待遇を受けるべきとする姿勢だ。ハリス副大統領やマッカーシー気候変動顧問など複数の閣僚などが気候サミットで度々この言葉を口にしていた。人種的公平の実現を政権の優先課題に掲げることとも関連しているだろう。国内の分断を修復したいという政権の思いが、この分野でも読み取れる。

第2の「経済成長のエンジンとしての環境問題」は、商務長官や運輸長官が「環境対策による投資は数兆ドル」「何百万もの雇用を生む」などと述べていることなどに表れている。従前の考え方は、環境に対する投資は企業のコスト増となり経済成長を阻害するというものだった。ここから一線を画し、新たな需要を生み出す投資対象とする姿勢が示されたことになる。一方で、化石燃料産業を中心に、失われる雇用や投資が存在するのも事実。マイナス効果を加味した詳細な経済効果の試算は、米政府からいまだ公表されていないのだ。この点は、今後公表される国家気候戦略に盛り込まれることが期待される。なおバイデン大統領は、就任後初の施政方針演説で「新たに生み出される雇用は主にブルーカラーによるもの」と述べた。ここからも、国内の分断を修復したいという意図が読み取れる。

第3の「外交ツールとしての環境問題への協働」は、対中関係を念頭に置いた姿勢と考えられる。米国と中国は対立関係が続いている。その中で、環境問題は両国が協働できる数少ない分野だ。この点については、ブリンケン国務長官の「協働することにより、他の共通の課題に関する協力の基盤を築ける」という発言からも読み取れる。また、タイ通商代表の「貿易政策は脱炭素化に向けたポジティブな競争インセンティブを生み出すための強力なツール」という発言からは、米国がこの分野でのルールメーカーになろうとする意欲が感じられる。トランプ前政権が環境問題に対して距離を置く中で、中国やEUなどは「気候行動に関する閣僚会合」など協働の枠組みを整え、排出権取引などの議論を積み上げてきた。そうした動きに対し、バイデン政権で気候変動特使に就任したケリー特使は、米国がこの分野で再びリーダーシップを取り、各国を巻き込んでいこうという意欲を見せている。今回のサミットを契機に米国が各国とのパートナーシップやイニシアチブの締結を発表していることは、その証左といえよう(表3参照)。また、バイデン大統領は、先進国が年間1,000億ドルの公的・私的資金を開発途上国の支援に投資していくことの重要性を訴えた。同時に、2024年までに米国の開発途上国への公的支援額を、2013~20216年度のオバマ政権第2期平均の2倍にするための財政措置を議会に求める意向を示している。

表3:米国が締結した主なパートナーシップ・イニシアチブなど
名称 概要
米インド・クリーンエネルギーアジェンダ2030パートナーシップ 2030年までの450 GWの再生可能エネルギー達成など、印の環境目標達成のために資金的、技術的支援を行う。
米UAE農業イニシアチブ 米UAE間で、低炭素排出を促進するための農業及び食料システムの革新技術・研究開発について協力する。オーストラリア、ブラジルなど各国からの支援も受ける。
国際気候ファイナンス計画 開発途上国の温室効果ガス排出削減を支援するための資金支援等を行う。
グローバル気候野心イニシアチブ 開発途上国がNDCを実施していくにあたっての、国連への進捗状況報告の作成を支援する。
グリーン化政府イニシアチブ 持続可能な行政運営を行うためのグリーン化政府計画促進についての国際会議を立ち上げる。
カーボンネットゼロ創出フォーラム 2050年までにカーボンネットゼロ戦略を達成するため、カナダ、ノルウェー、カタール、およびサウジアラビアとともに、技術協力を行う。
グローバル電力システム変革コンソーシアム 2035年までの米国での電力部門での無炭素化を達成するため、英国とともに、主要な電力事業者、研究機関などの間で技術協力を行う。

出所:ホワイトハウス資料などからジェトロ作成

新目標の達成には、2019年のGHG純排出量からさらに約43%要削減

米環境保護庁(EPA)によると、米国の2019年のGHG純排出量は57億7,000万トン。2005年比では13.1%減少した。2030年までに対2005年比で50%削減するという新目標を達成するためには、2019年の排出量からさらに42.5%(24億5,000万トン)削減する必要がある(図1参照)。なお、米国のGHG総排出量に占める二酸化炭素(CO2)排出割合は、8割程度だ。このことを踏まえると、CO2に関しては、19億6,200万トンの排出量削減が求められる。これは日本のCO2排出量(10億8,070万トン、2018年、IEA)の1.8倍に相当する。

図1:米GHG純排出量の推移と目標削減量
米国のGHG純排出量は、2005年まで増加し、同年の純排出量は66.4億トンを記録しました。しかしその後減少に転じ、2019年は57.7億トンと、2005年と比べて約13.1%減少しました。 米国は、2030年のGHG排出量を、2005年の50%に相当する、33.2億トンに削減することを目標としています。その実現には、2019年の純排出量の約42.5%分に相当する24.5億トンの削減が必要となります。

出所:環境保護庁ウェブサイトからジェトロ作成

米国連邦政府が国連に提出した資料によると、今回の新目標は政府部門全体で協議し、各部門で分析を行い、科学者や労働団体など様々な利害関係者と調整して作成したとされている。部門ごとの主な方針と関連施策は、表4の通りだ。

表4:部門ごとの新NDCなどの主な方針および今後の施策
部門 新NDCなどの主な方針 米国雇用計画などでの具体的措置
電力部門
  • 2035年までに二酸化炭素排出をゼロにする(新NDC)
  • エネルギー効率とクリーン電力に関する基準作成(雇用計画)
  • カーボンネットゼロの投資に対する税額控除(雇用計画)
  • エネルギー省で新しい送電網開発機関を設立(雇用計画)
  • 洋上風力発電を2030年に30GWまで拡大(大統領令)
輸送部門
  • 新たな燃費基準による小型・中型車の100%EV化(公約)
  • 50万カ所のEV充電施設設置(公約)
  • 再生可能燃料へのシフト(新NDC)
  • EV普及に1,740億ドル(連邦政府のEV調達、EV施設設置への補助金など)(雇用計画)
  • 港湾、水路、空港施設の電化に170億ドル(雇用計画)
  • キーストーンXLパイプラインの建設許可撤回(大統領令)
住宅・商業部門
  • 商業施設400万棟の省エネ化、住宅200万戸の耐候性向上(公約)
  • 持続可能な住宅を建築、改装するために2,130億ドル(雇用計画)
産業部門
  • 炭素除去技術と新しい水素エネルギーの
    開発支援(新NDC)
  • 低炭素製品の連邦調達(新NDC)
  • 脱炭素水素実証プロジェクトに対する税額控除(雇用計画)
  • 大規模炭素除去プロジェクトへの取組支援(雇用計画)
農業部門
  • 森林など自然ベースの炭素吸収源開発への支援(新NDC)
  • 環境に配慮した気候スマート技術開発と効率的な農業資源管理開発への支援(雇用計画)
技術革新
  • 蓄電技術、水素エネルギー、先進的原子力エネルギーなどの開発(公約)
  • 国立科学財団の規模拡大などに500億ドル(雇用計画)
  • 「気候高等研究計画局」(ARPA-C)の立ち上げなど、気候変動に対処する技術に350億ドル(雇用計画)

出所:ホワイトハウス資料などからジェトロ作成

米国内でのGHGの排出源を経済分野別にみると、輸送部門が29%で最も高いシェアを占める。これに、電力部門25%、産業部門23%が続く(図2参照)。

図2:経済分野別GHG排出割合(2019年)
分野別で最大の割合を占めるのが輸送分野で、29.0%を、次いで発電が25.0%、工業が23.0%商業及び住宅が13.0%、そして農業が10%を占めています。

出所:米環境保護庁

輸送部門の中では、大型車を含む自動車の比重が大きい。この部門全体に占める自動車によるGHG排出割合は8割強に上る。電気自動車(EV)化を進めていくことは、排出量削減の観点から重要だ。

もっとも、輸送部門をはじめとする各部門の動力源が化石燃料から電力にシフトし、電力需要が今後増加することが予想される。そうすると、電力部門自体のカーボンフリー化が重要になってくる。この点に関し、主要電力会社は2030年までの排出量80%削減に向けてバイデン政権に協力していく意向だ(ロイター4月19日)。現在の発電のGHG排出割合(25%)が今後も変動しないと仮定した場合、2030年に電力部門の排出量が80%削減されると、米国全体で約2割のGHG削減を実現することとなり、新目標達成に大きく寄与することになる。実際に達成が可能とする研究の多くは、電力部門が迅速に排出量を削減するという観測に基づく。全米科学技術アカデミーによるレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます でも、2030年までに排出量50%削減という短期的な目標を達成するには、電力部門のカーボンフリー化が不可欠とした。その上で、この課題を第1の優先事項に挙げている。

電力部門では、2019年末時点ですでに排出量を2005年比で33%削減したとされる。バイデン政権は2030年までに洋上風力発電を増強させ、30GW(ギガワット)の電力生成能力を目指すとする(2021年3月31日付ビジネス短信参照)。30GWと言えば、1,000万世帯以上への電力供給に相当する能力だ。電力部門のカーボンフリー化に向けた再エネ電力へのシフトは、今後一層強まると思われる。新目標達成に向け、連邦政府は今後さらに分析する姿勢だ。その詳細は、2021年後半に策定する国家気候戦略にそ盛り込む予定としている。

主要企業側からGHG削減目標が発表される例も見られる(表5参照)。その中には、国としての新目標を上回る削減目標を掲げる企業も数多い。また、主要業界団体は新目標に対する支持を表明している(表6参照)。このことから、今後も企業のコミットメントや取組みは増えていくものと思われる。一方、化石燃料産業などからは急速な脱炭素の方向性に懸念も示される。「総論賛成、各論反対」ともいえる状況だ。

2021年11月には、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催される。改めて各国が集まり、環境政策が議論されることになる。それまでに各業界などと利害調整し、COP26に向けて実効性のある気候戦略を打ち出せるかが、今後の注目点だ。

表5:主要企業の表明したコミットメント
企業名 目標 具体策
アルファベット 2030年までにカーボンネットゼロ
  • 風力発電と太陽光発電の割合を40%以上増加させる
  • 電力需要のAI予測による供給の効率化
アマゾン 2025年までに再エネ率100%
2040年までにカーボンネットゼロ
  • 配送用電気自動車10万台発注(2021年~)
  • 世界で91の再エネプロジェクトを実施
アップル 2030年までにサプライチェーン含めた
全行程のカーボンネットゼロ
  • サプライチェーンのクリーンエネルギー化
    (自社は達成済)
  • 炭素除去技術への投資・開発
マイクロソフト 2030年までにカーボンネガティブ
2050年までに創業以来の二酸化炭素排出量を回収
  • 2025年までに、使用する全電力をクリーンエネルギー化
  • 2030年までに世界の全拠点における車両をEV化
ドミニオン
エナジー
2050年までに16州での発送電事業の
カーボンネットゼロ
  • 洋上風力170億ドル、太陽光200億ドルなど、2035年までに 脱炭素化に720億ドルを投資
スターバックス 2030年までにサプライチェーン含めて
炭素排出量を50%削減
  • 植物由来製品の拡充、使い捨てから再生容器への移行
  • 森林再生や保全、水への補充への投資
ゼネラル
モーターズ
2040年までに全世界での製品と業務のカーボンネットゼロ
  • 2035年までに新車小型車(乗用車とSUVやミニバンなどの小型トラック)のEV化
エクソン
モービル
2025年度までにGHG強度注を2016年比で15~20%削減
  • 2025年までに低炭素技術事業に30億ドル投資
  • 石炭から天然ガス・LNGへの切り替え促進

注:GHG強度とは、エネルギー消費当たりのGHG排出量。エクソンモービルの予測によると、GHGの実排出量としては30%減に相当する。
出所:各社公表資料などからジェトロ作成

表6:主要業界団体の政策へのスタンス
業界団体 政策へのスタンス 数値目標
全米商工会議所 パリ協定復帰歓迎、新規エネルギー開発停止には反対。 排出量目標は設定していないが、企業の気候変動対策は不可欠とし、効果的な気候政策を政府に提言。
ビジネス・ラウンドテーブル パリ協定復帰含むバイデン政権の政策を歓迎。 2050年までに米国のGHG排出量を05年比で80%以上削減するという目標を支持。
エジソン電気協会 パリ協定復帰含むバイデン政権の政策を歓迎。 排出量目標は設定していないが、適切な政策と技術があればエネルギーの100%クリーン化を実現できるとしている。
米国石油協会 パリ協定復帰歓迎、キーストーンパイプラインの停止には強く反対。 排出量目標は設定していないが、カーボンプライシング政策は支持。
自動車イノベーション協会 排気ガス・GHG排出規制の見直しなどバイデン政権の政策を支持。 排出量目標は設定していないが、輸送分野の炭素ネットゼロ目標とEV化など政権と協調し取り組むと表明。
全米製造業者協会 パリ協定の各国間の不公平を正すべきとの立場。 排出量目標は設定しておらす、米国製造業が衰退しないようにパリ協定に拘束力を持たせるべきと提言。
米国化学工業協会 パリ協定復帰は歓迎しているが、バイデン政権の政策の支持は不明。 排出量目標は設定していないが、サステナビリティ原則を制定して会員企業に対してその誓約を義務付けている。

出所:各業界団体公表資料などからジェトロ作成

議会調整には懸念も

これまで見てきたように、バイデン政権は各国と協調した外交戦略を展開するとともに、貿易政策を活用してパリ協定達成に向けた脱炭素化の主導権を握ろうとしている。また国内では、企業など世論の後押しも背景に、新目標達成に向けた施策を各分野で打ち出す。今後はその実行に向けて動いていくことになる。

補助金など財政措置が必要な施策については、法案化が必要だ。そのためには、議会との調整が避けられない。共和党は、歴史的に過度な環境規制に反対の立場を示してきた。上院の議席数は、共和党と民主党で50議席ずつを分け合う状況にある。法案を通すためには、民主党から1人の造反も許されない(注2)。しかし、民主党内も一枚岩ではない。例えば、ニューヨーク州のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(ニューヨーク州)は、脱炭素化を経済の柱とする「グリーンニューディール計画」を提案する。そのような環境規制急進派がいる一方で、ジョー・マンチン上院議員のようにバイデン政権の急激な脱炭素化の方向性に距離を置く。同議員は、石炭産業が盛んなウェストバージニア州を地盤にする。政権が今後、環境政策を進めていくにあたっては、共和党だけでなく民主党内部にも配慮した政策運営が求められている。


注1:
ここで言う「目標」とは、Nationally Determined Contribution(NDC)のこと。理解を容易にするために、本文ではあえて「目標」と表現した。ちなみにNDCは、パリ協定に示されている世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃未満、できる限り1.5℃以内に抑えるという長期目標に対する各国の貢献を表すものであり、「国が決定する貢献」という訳語が当てられる。NDC達成・未達成に対する強制力や罰則はない。
注2:
上院では通常、法案可決にはフィリバスター(議事妨害)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が不可欠になる。ただし、歳出・歳入・財政赤字の変更に関する法案については、財政調整措置(リコンシリエーション)を利用して、法案審議を迅速化できる。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所
宮野 慶太(みやの けいた)
2007年内閣府入府。GDP統計、経済財政に関する中長期試算の作成などに従事。中小企業庁や金融庁にも出向し、中小企業支援策や金融規制などの業務を担当。2020年10月からジェトロに出向し現職。

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