2030年までの電力統合資源計画を発表、再生可能エネルギーの拡大目指す

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2019年10月29日

南アフリカ共和国政府は10月18日、2030年までのエネルギー政策を定めた電力統合資源計画(IRP)を官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で発表した。計画案は2018年8月に公表され、その後パブリックコメントを募集していた(2018年9月3日記事参照)。

IRPでは、2030年時点での発電7万7,834メガワット(MW)のうち、エネルギー別の電源比率は、石炭43.0%、再生可能エネルギー39.6%、天然ガス/ディーゼル8.1%、揚水6.4%、原子力2.4%、その他0.5%となっている。

最大の電源である石炭火力の比率は現在71.3%だ。環境・気候変動問題を考慮し、現在建設中のメデュピ、クシレ石炭火力発電所以降は、大規模な発電所は新設しない意向を示した。他方で、電源比率の33.1%を現在占める再生可能エネルギー(水力4.0%、太陽光2.8%、風力3.8%、太陽熱0.6%)は、太陽光と風力発電事業者の新規参入やオフグリッド案件を増やし、2030年までに39.6%(水力5.8%、太陽光10.5%、風力22.5%、太陽熱0.8%)まで拡大させる計画を示した。

電源比率の7.4%のガス火力も、3,000MW級の火力発電所建設を通じて8.1%まで引き上げる計画だ。ガスの調達に当たっては、南ア沖合に大規模な天然ガスの埋蔵が確認されたブルルパッダ天然ガス田の新規開発や、2023年に天然ガス生産が予定されるモザンビーク北部のロブマ天然ガス田からパイプラインを用いた供給の可能性を示した。また、ジェイコブ・ズマ前政権時代から議論になっていた原子力発電所の新設に関しては、IRPは言及しなかった。他方で2024年にプラント寿命を迎えるクーバーグ原子力発電所の寿命を20年延長し、2030年まで現発電量(1,860MW)を維持する計画を示した。原子力の電源比率は現在の3.6%から2.4%に低下する見込み。

IRPでは、2030年までのGDP成長率を年平均4.3%と仮定して南アの電力需要の伸びを試算しているため、需要が過大に見込まれているとの報道も出ている(マニーウェブ10月21日)。なお、南アでは現在、電力公社エスコムの経営危機と既存設備改修の遅れにより、計画停電が断続的に行われており、経済活動に影響を及ぼしている。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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