タイの空港ラウンジ会社、中部空港を起点に日本事業の拡大目指す
2025年12月23日
タイ資本のラウンジ運営会社、ジ・エグゼクティブ・ラウンジ・ジャパン(The Executive Lounge Japan)は、本社をタイのプーケットに置き、空港で「ザ・コーラル・ラウンジ(The Coral Lounge)」を展開している企業である。同社は2025年4月、タイ国外では初となるラウンジを中部国際空港に開業し、同年10月には、第2ラウンジを同空港に開業した。本稿では、日本進出の背景や同社が提供するサービスの特徴、今後の日本での事業展開について、同社会長のタッサチョン・スップスーントーンクン氏と日本代表のナパッサナン・スップスーントーンクン氏に聞いた(2025年10月17日)。また、ラウンジを受け入れた中部国際空港・営業推進本部・空港事業部・施設活用グループの西本徹氏にも、当該ラウンジの受け入れ背景と期待を聞いた(2025年10月3日)。

右:タッサチョン・スップスーントーンクン会長)(ジ・エグゼクティブ・ラウンジ・ジャパン提供)
タイと日本の融合で、新たな価値を提供
- 質問:
- ジ・エグゼクティブ・ラウンジ・ジャパンの歴史と現在の事業概要は。
- 答え:
- 20年以上の歴史を持つ当社は、タイを起点にラグジュアリーな旅行体験とプレミアムな空港ホスピタリティを専門とするグループ会社へと成長してきた。
- これまでに、空港ラウンジサービスをはじめ、ブティックホテル、スペシャリティカフェなど事業を多角化してきた。目的は一貫して、顧客に対して、円滑で記憶に残る旅行体験を提供することだ。それらの中核事業として位置付けているのが、「ザ・コーラル・ラウンジ」である。
- 2008年に空港ラウンジの在り方を再定義するビジョンを策定し、それを基に事業を始動した。世界中の旅行者に、タイの温かく心のこもったホスピタリティを提供することを目指し、卓越したサービスと、洗練された施設デザインを融合させている。現在は、スワンナプーム国際空港、ドンムアン国際空港、プーケット国際空港、チェンマイ国際空港など、タイ国内の主要空港で22のラウンジを運営している。2025年4月には、初めての海外拠点となるラウンジを日本・名古屋の中部国際空港に開設し、事業運営において大きな節目を迎えた。その成功を受けて、同年10月には2つ目のラウンジも開設した。
- 質問:
- 今後の事業展望について、タイ国内および海外の両側面でどのように考えているか。
- 答え:
- 今後の事業展望としては、タイ国内でのプレゼンス強化と海外展開の双方に注力する予定だ。タイでは、ラウンジの拡充と、利用者への利便性向上、高付加価値なサービスの提供を目的とした、新規コンセプトの導入を計画している。海外では、アジア、中東、その他の主要地域に、「ザ・コーラル・ラウンジ」のブランドを展開する。旅行需要が高く、国際的で接続性のある市場を中心に拡大を進める。長期的なビジョンとしては、世界水準のサービスを提供しながら、アジアを代表するラウンジブランドとして、認知度を高めることを目標としている。
- 質問:
- 日本へ事業展開を決めた背景は。
- 答え:
- 日本への展開は、従前からの当社の思いと、明確な将来ビジョンの双方に基づいている。相手に敬意を示し、調和を愛する日本人の精神は、当社に深いインスピレーションを与えるもので、当社のサービスの在り方と共通する部分がある。ザ・コーラル・ラウンジを日本で展開することで、日本の洗練されたサービスとタイならではのホスピタリティを融合し、新たな価値を顧客に提供できると考えている。また、日本は地理的にも、国際的な旅行のハブとなり得ることから、弊社の海外展開において理想的な場所である。
- 質問:
- タイから見た日本でのビジネス・観光需要をどう見込んでいるか。
- 答え:
- 日本市場は、タイと大きく異なり、独自のビジネスの進め方があると理解している。そのため、求められるサービスの基準、コミュニケーションスタイルなど、文化的な違いを理解し、尊重して、事業を運営していきたい。我々にとっては新しい事業環境であるため、顧客満足度の高いサービスを提供するため、必要な情報に耳を傾け、慎重に適応することを心掛けている。
- 質問:
- 日本市場における今後の事業展望についてどう考えるか。
- 答え:
- 日本市場について非常にポジティブに捉えている。今年4月に第1ラウンジを開業して以来、顧客やビジネスパートナーからの反応は良好だ。当社が提供するホスピタリティのあるサービスに対して、ニーズと顧客満足度が高いことを実感している。また、日本は、品質とサービスを重視する国であり、今後の市場展開において、革新的なサービスを提供し続けることが重要と考えている。今後も、空港でのラウンジ体験の水準をさらに高めていきたい。現在、日本国内の他空港への進出に向けた協議を開始しており、今後も日本での展開を積極的に進めていきたい。

外資を受け入れる中部国際空港の狙い
外資による新たなラウンジを受け入れた背景や狙い、中部国際空港の今後の展望を同空港の西本氏に聞いた。
- 質問:
- 中部国際空港(空港)がザ・コーラル・ラウンジを受け入れた背景は。
- 答え:
- 2020年からの新型コロナウイルス流行により航空需要が激減し、航空便の運休・撤退が相次いだ。本空港でも、一時的にラウンジ利用者が激減し、ラウンジの一時閉鎖や撤退が生じた。その後、新型コロナ禍の収束に伴い、航空需要が回復し、ラウンジ利用者が増加したため、空港としても、ラウンジ再開に向けた働きかけや、新規運営事業者の誘致を積極的に行ってきた。そうした中、2024年に初の海外進出を希望するタイ資本のジ・エグゼクティブ・ラウンジ・ジャパンと出会い、協議を重ねた結果、顧客満足度の高いラウンジサービスを提供いただけると判断し、契約締結に至った。
- 質問:
- ジ・エグゼクティブ・ラウンジ・ジャパンに今後期待していることは。
- 答え:
- 中部国際空港内のさまざまなラウンジの中でも、同社は本格的なタイ料理やタイ式マッサージなどを提供する日本唯一のラウンジだ。2025年10月にはラウンジが拡張され、より多くの利用者を受け入れる体制が整った。タイのラウンジ運営で培った経験を生かし、タイならではのサービスや特色を保ちながら、ハイレベルなおもてなしを提供いただくことを期待している。
- 質問:
- 中部国際空港としての今後の展望は。
- 答え:
- 中部国際空港は2025年2月に開港20周年を迎えた。
- コロナ禍で陥った苦境からインバウンド旅客は回復し、2026 年9 月からは愛知・名古屋でアジア競技大会の開催を迎えるなど、これまで以上に中部地域のゲートウェイとしての役割が期待されている。
- また、空港運用の完全24時間化を実現すべく、現滑走路の大規模修繕を見据えた代替滑走路の整備に着工し、2027年度中の供用を目指している。
- 航空ネットワークのさらなる拡充を図るとともに、施設・サービスの両面で受入れ体制を整備し、地域経済の発展と観光振興に貢献していきたい。
- 執筆者紹介
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ジェトロ名古屋
亀多 瞭介(かめた りょうすけ) - 2021年、ジェトロ入構。本部スタートアップ課を経て、2024年7月から現職。




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