トランプ政権の米中政策
緊張と緩和が繰り返される米中関係
2025年12月9日
ドナルド・トランプ米国大統領の政権2期目での対中政策は、基本的には強硬な姿勢を堅持しつつも、経済情勢やいわゆる「ディール」に応じて時に柔軟な姿勢もみせるなど、硬軟織り交ぜている。例えば、トランプ政権の目玉政策の1つである追加関税は、中国に対しては一時100%を超え、輸出管理は、その対象範囲を拡大する新規則の導入などにより強化した。だが、2025年10月30日の米中首脳会談を経て、追加関税率の引き下げや輸出管理の適用停止などで合意した。一時緊張が高まった両国関係は、現在、表面上は落ち着きを取り戻している。ただし、希土類(レアアース)の中国依存が解消されておらず、将来の火種はくすぶり続ける。さらに、首脳会談での合意内容の認識に両国間で隔たりがある上、トランプ氏は必ずしも「対中タカ派」ではないとも指摘されている。こうした状況から、トランプ政権下の米中関係は、今後も緊張と緩和を繰り返すと予測される。
変遷するトランプ政権による対中措置
トランプ政権2期目の初めての追加関税は、合成麻薬フェンタニルの流入阻止を目的とした対中追加関税だった。トランプ氏は2025年2月1日、同目的の下、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、中国、メキシコ、カナダに対して2月4日から10%の追加関税を課すと発表した。メキシコとカナダに対しては、追加関税賦課時期を延期したものの、中国に対しては予定通り追加関税を課した。その後3月になると、フェンタニルの流入危機が沈静化していないことなどを理由に、中国に対する追加関税率を20%へと引き上げた(注1)。
米中両国の追加関税率が大きく動いたのは、トランプ氏が4月に発表した相互関税だった。トランプ氏は世界全体に対して追加関税を課す相互関税を発表し、中国に対する相互関税率を34%に設定した。これに反発した中国は即日、米国に対する対抗措置を決定し、米国が中国に課している相互関税率と同じ34%の制裁関税を発動した。これを受けトランプ氏は、相互関税率の引き上げを決定した。すると、中国も同様に制裁関税を引き上げた。わずか数日のうちに両国は複数回、関税率を引き上げ、最終的に相互関税率は125%にまで上昇した。ただし、100%を超える高い関税率は長くもたず、5月には米中双方の追加関税率の引き下げで合意した(注2)。その後、両国は閣僚を中心に、通商協議を続けることになる。
輸出管理の面では、トランプ政権は3月、輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL、注3)に、中国を含む複数の国の80の事業体を追加した。中国に関しては、軍事転用できる高性能のコンピューティング能力や量子技術の取得の制限、極超音速兵器の開発阻止を理由とした(注4)。4月になると、トランプ政権が米半導体大手エヌビディアの人工知能(AI)向け半導体「H20」や、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の半導体 「MI308」を輸出管理対象に加えた、と報道された(注5)。バイデン前政権は、先端半導体に対する輸出管理を複数回にわたって強化したため、H20は報道時点で、中国に輸出可能なAI向け半導体の中で最も優れたモデルだといわれている。
その一方で、トランプ政権は5月に、バイデン前政権下で制定されたAI向け半導体の輸出管理を強化する、いわゆる「AI拡散規則(AI Diffusion Rule)」を撤回した(注6)。AI拡散規則についてトランプ政権は、米国のイノベーションを阻害し、企業に過度の規制負担を課すものだと批判した。実際、AI拡散規則に対しては産業界から、「業界の有意義な意見を一切聞かずに、これほど大規模かつ影響力のある政策転換が急きょ決定されたことに、われわれは深く失望している」(米国半導体工業会:SIA)、「米国の競争力やグローバルな同盟関係への影響をほとんど考慮していない」(情報技術産業協議会:ITI)といった声明が出されていた。さらに8月になると、トランプ政権は、エヌビディアおよびAMDと、中国への半導体輸出について、販売収益の15%を米政府に納付することを条件に、ライセンスを発給することで合意した(注7)。
だが9月には、ELなどに掲載される事業体が50%以上所有する事業体も輸出管理の対象とする「関連事業体ルール」を発表した(注8)。通商に詳しい法律事務所は、ELなどへの事業体の掲載数は現在3,000程度だが、関連事業体ルールによって輸出規制の対象となる事業体は数万単位に増加する可能性が高い、と指摘している。ELへの中国の事業体の掲載数は多く(注9)、関連事業体ルールの施行は、実質的に対中輸出管理強化にもなっている。
そのほかトランプ政権は、1974年通商法301条に基づき、中国企業が所有・運航する船舶、中国で建造された船舶、米国外で建造された自動車運搬船などの入港料金の徴収や(注10)、トランプ政権1期目の2020年に合意されたいわゆる「第1段階の米中経済・貿易協定」の中国の履行状況の調査も開始している(注11)。また2026年1月には、バイデン前政権下で決定した対中301条関税率の引き上げが、リチウムイオン電池や天然黒鉛(グラファイト)などに対して行われる(表1参照)。
| 日付 | 内容 |
|---|---|
|
2025年 2月4日 |
不法移民や合成麻薬フェンタニルの流入阻止を目的に、IEEPAに基づき、中国原産品へ10%の追加関税賦課 |
| 3月4日 | IEEPAフェンタニル関税率を20%に引き上げ |
| 3月26日 | 輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に、中国、イランなどの80の事業体を追加 |
| 4月2日 | 相互関税を発表。中国に対する相互関税率は34%に設定 |
| 4月9日 | 中国に対する相互関税率の125%への引き上げを発表 |
| 4月15日 | 商務省がエヌビディアのAI向け半導体「H20」、AMDの半導体「MI308」を輸出管理対象に加えたと報道 |
| 5月12日 | 経済と貿易に関する共同声明発表(ジュネーブ合意)。相互関税率を引き下げ、ベースライン関税と同じ10%に |
| 5月13日 | バイデン前政権下で制定されたAI向け半導体への輸出管理を強化する「AI拡散規則(AI Diffusion Rule)」の撤回を発表 |
| 5月28日 | 商務省が中国に対する航空機部品および半導体技術の輸出許可を一時停止したと報道 |
| 5月末 | 米国の石油ガス輸送大手エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズとエナジー・トランスファーに、石油化学原料のエタンとブタンの対中輸出に、ライセンス取得を要求すると通知したと報道。その後、輸出管理は解除との報道も |
| 6月5日 | 米中首脳による電話会談。中国のレアアース輸出管理などを協議 |
| 6月9日 | 米中閣僚によるロンドンでの通商協議。中国人留学生のビザ審査緩和の意向などを発表 |
| 8月8日 | トランプ政権が、エヌビディアとAMDに対し輸出ライセンスの発給を開始。両社は、輸出ライセンス取得条件として販売収益の15%の米政府への納付で合意 |
| 9月29日 | ELなどに掲載される事業体が50%以上所有する事業体も輸出管理の対象とする「関連事業体ルール」を発表 |
| 10月14日 | 301条に基づき、中国企業が所有・運航する船舶、中国で建造された船舶、米国外で建造された自動車運搬船などへの入港料金徴収を開始 |
| 10月24日 | 301条に基づく第1段階の米中経済・貿易協定の中国の履行状況の調査を発表 |
| 10月30日 | 米中首脳会談。IEEPAフェンタニル関税の引き下げなどで合意 |
| 11月4日 | 中国に対する34%の相互関税を2026年11月10日まで停止(ただし、ベースライン関税10%は適用)。IEEPAフェンタニル関税率の20%から10%への削減を発表 |
| 11月9日 | 301条に基づく入港手数料の徴収などの2026年11月9日までの停止を発表 |
| 11月10日 | 「関連事業体ルール」の2026年11月9日までの停止を発表 |
| 11月26日 | 301条関税の適用除外期限を2026年11月10日まで延長 |
|
2026年 1月1日 |
バイデン前政権下での決定に基づき、EV用以外のリチウムイオン電池、天然黒鉛・永久磁石、フェースマスク、医療用手袋への301条関税率を引き上げ予定 |
出所:米国政府発表、メディア報道などから作成
新型コロナ禍の水準まで低下した米国の対中輸入額
このように、米国の対中政策の不確実性が増す中、米国の対中輸入額は2025年に入り大きく減少した。1月こそ416億ドルと前年同月の358億ドルを上回ったが、2月以降は前年同月を下回る水準で推移し、6月には189億ドルまで縮小した(図参照)。米国の対中輸入額が月別で200億ドルを下回ったのは新型コロナウイルス禍の2020年3月以来で、さらにそれ以前では、世界金融危機から間もない2009年2月にまでさかのぼる。
出所:米国際貿易委員会(USITC)から作成
1~7月までの米国の対中輸入額を2024年と2025年で比較すると(注12)、同期間中の上位10品目全てで輸入額が減少した。特に、輸入額が大きいノートパソコン(PC)やスマートフォンで大きく減少した。2024年の同期間中、輸入額が最大だったノートPCは前年同期比で57.8%減、次に大きいスマートフォンは35.3%減となった(表2参照、注13)。これらはいずれも、例外的に相互関税の対象外品目として指定されているが、米国は中国原産品に対して、IEEPAフェンタニル関税や301条に基づく追加関税を課しており、ノートPCやスマートフォンはこれら追加関税の対象となっている。さらに中国原産品は、1962年通商拡大法232条に基づく産業別の追加関税の対象にもなっている。これらの追加関税率は基本的に累積されるため、中国原産品に対しては、他国と比して高い追加関税率が課されている。
| HTSコード | 品目 | 2024年 | 2025年 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 847130 | ノートPC | 18,772 | 7,917 | △57.8 |
| 851713 | スマートフォン | 18,439 | 11,925 | △35.3 |
| 850760 | リチウムイオン電池 | 7,782 | 7,595 | △2.4 |
| 950300 | 三輪車など | 6,025 | 4,982 | △17.3 |
| 851762 | スイッチング・ルーティング機器 | 4,435 | 3,400 | △23.3 |
| 847330 | パソコン用部品 | 3,740 | 3,577 | △4.4 |
| 300490 | 医薬品 | 3,162 | 2,487 | △21.3 |
| 852852 | モニター | 2,800 | 2,148 | △23.3 |
| 392690 | プラスチック | 2,273 | 2,102 | △7.5 |
| 392410 | プラスチック製食器など | 2,013 | 1,646 | △18.2 |
注:デミニミス・ルール適用品目(HTSコード:999995)を除く。
出所:米国際貿易委員会(USITC)から作成
1年間待たず、緊張が再度高まる見込みの米中関係
米国の対中輸入額の減少が続く中、米中関係は10月から11月にかけて1つの節目を迎えた。トランプ氏と習近平国家主席は10月30日、韓国で首脳会談を行い、追加関税率の修正や輸出管理措置の緩和などで合意した。中国は、レアアースなどに対する輸出管理の緩和、フェンタニルに対する規制強化などのほか、米国の最大の対中輸出品目である大豆の輸入再開を約束した(注14)。一方で米国は、対中IEEPAフェンタニル関税の半減、中国に対する相互関税率の維持(2026年11月10日まで10%)、EAR上の関連事業体ルールおよび中国船の入港に対する手数料徴収の1年間の停止、などで合意した。米国はこれら合意事項を着実に履行しており、現在、米中の通商関係は、少なくとも表面上は落ち着きを取り戻している(表3参照)。
| 国名 | 合意内容 |
|---|---|
| 中国 | 10月9日に発表した全世界向けのレアアースに関する輸出管理と関連措置の停止 |
| レアアース、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、黒鉛(グラファイト)に対する一般(包括)輸出許可の発行 | |
| 米国への合成麻薬フェンタニルの流入を阻止するための措置の履行。具体的には、北米向け特定指定化学物質の出荷停止、その他の特定化学物質の全世界向け輸出の厳格な管理 | |
| 2025年3月4日以降に発表した全ての報復関税を停止 | |
| 2025年3月4日以降に米国に対して実施した全ての報復的非関税措置の停止または撤廃。これには、米国企業を中国のエンドユーザーリストや、信頼できないELに掲載した措置も含まれる | |
| 米国産大豆を11~12月に少なくとも1,200万トン購入し、2026~2028年の各年に少なくとも2,500万トンを購入。米国産ソルガムや広葉樹原木の購入再開 | |
| オランダ系半導体メーカー、ネクスペリアの中国国内施設からの出荷再開 | |
| 301条に基づく米国の中国船の入港に対する手数料徴収に対する報復措置の撤廃、海運事業者に対する制裁の解除 | |
| 米国からの輸入品に対する関税除外措置の2026年12月31日までの延長 | |
| 半導体サプライチェーンに関する米国企業を対象とした各種調査〔反差別調査やアンチダンピング(AD)調査を含む〕の終了 | |
| 米国 | フェンタニルの流入抑制を目的とする中国への追加関税10%分を11月10日から撤廃。中国に対する相互関税率を2026年11月10日まで10%に維持 |
| 11月29日に期限が切れる301条追加関税の適用除外措置を2026年11月10日まで延長 | |
| EAR上の「関連事業体ルール」の適用を11月10日から1年間停止 | |
| 301条に基づく中国船の入港に対する手数料徴収を11月10日から1年間停止 |
出所:米政府発表のファクトシートから作成
だが、米中関係は、各種通商措置の1年間の停止期限を待たず、再度不安定化するとみられている(注15)。合意内容の認識に、米中間で差異があるとみられるためだ。とりわけ、中国のレアアースの輸出管理措置に対する認識の齟齬(そご)が指摘されている。米中合意に関する米国のファクトシートでは、中国がレアアース、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、黒鉛に対する一般(包括)輸出許可の発行で合意したことから、「2023年以降に中国が課した輸出管理は事実上撤廃した」と評価している(注16)。これに対し、11月9日に中国が発表した措置は、2024年12月の「軍民両用品目に関係するガリウムやゲルマニウム、アンチモン、超硬質材料への対米輸出の原則不許可」「黒鉛に関する対米輸出の厳格な審査」の2つの条項の1年間の停止にとどまる。2024年12月の措置に含まれる「米国の軍事関連企業向け、または軍事用途の軍民両用品目の輸出禁止」を定めた条項は停止していない(注17)。従って、米中合意による約束事項の履行後も、中国は引き続き、米国の軍関係向けにはレアアースの輸出を規制できる制度が残っている。米中関係に詳しいワシントンの識者は、「米国のファクトシートでは、中国の輸出管理に関する全ての課題が解決したような書き方だが、仮にそうなれば、この1年間、米国はレアアースを大量に買える。こうして在庫を積み増せば、1年後の停止期限が切れる際に、中国はレアアースをレバレッジとして使えなくなる。そうした状況を中国が許すはずはない」と指摘している。こうした状況が起きた背景には、米国政府が誤った認識の下で交渉していた、あるいは実務に詳しい専門的知識を有する閣僚などの関与が不十分な状態でファクトシートを作成した可能性がある。実際に、米国のファクトシートは発表当初、「中国の一般(包括)輸出許可の発行は、中国が2025年4月と2022年10月に課した規制の事実上の撤廃を意味する」と記載していたが、中国が行った2022年10月の措置は確認できておらず、その後、当該部分が削除されるかたちで修正されている。
そのほか、フェンタニルの輸出管理強化についても、そもそも違法状態で輸出されている状況を取り締まれていない中、具体的な管理強化の方法に言及していないことから、どのように規制するか不透明で実効性には乏しいとみられる。これらから、10月の米中合意は、「米国の対中依存を緩和するために時間を買っただけで、米中間にある課題を何も解決していない」との評価がワシントンではなされている。
緊張と緩和を繰り返す米中関係
トランプ政権発足後1年弱の対中政策を振り返ると、トランプ氏は中国に対して、100%を超える追加関税を課すなど時に極端な措置をとることがあるものの、中国や米国企業とのディール次第で方向性を軌道修正している。輸出管理についても、一貫した方針はみられない。特に先端半導体は軍事力向上につながるため、米国政府内でも安全保障上の理由から対中輸出には慎重になるべきとの意見がある。一方で、過度な規制は米国企業にとって大きな中国市場を失いかねないとの意見もあり、米国内で意見は統一されていない。こうした状況から、バイデン前政権下では、先端半導体などの重要技術に対象を限定して厳格に保護する「小さい庭に高い壁(small yard, high fence)」の方針をとってきた。だが、トランプ氏は安全保障などよりも相手国や企業との個別のディールを優先している(注18)。例えば、エヌビディアへの対中輸出許可の発行については、「ほとんど全ての国家安全保障会議(NSC)の職員が止めたにもかかわらず、トランプ氏は認めた」といわれている。また、トランプ氏に対しては、「中国に対するイデオロギー的な対立意識を、全く持っていないだろう」「中国から投資が増えることに対する政権内の中国タカ派からの批判について気にしない」との指摘があり、「トランプ氏はJ.D.バンス副大統領やマルコ・ルビオ国務長官などのような対中タカ派ではない」との評価もある。これらに加え、トランプ氏は10月の米中首脳会談で台湾に関して言及しなかったことや、中国の人権問題を指摘せず、民主主義の価値を啓発しないことなどから、「中国にとって史上最も良い大統領」との見方さえある。さらに、レアアースのような重要な資源のサプライチェーンを中国に依存している状況を変更するには時間が必要で、一朝一夕には解決できない。今後しばらくは、中国への依存が続くことになる。これら状況に鑑みれば、トランプ政権下の米中関係は、今後もその時々の情勢によって、緊張と緩和を繰り返すと予測される。
- 注1:
- 2025年3月4日付ビジネス短信「トランプ米大統領、中国に対するIEEPA追加関税を20%に引き上げる大統領令発表」参照。
- 注2:
- 2025年5月13日付ビジネス短信「トランプ米政権、中国への追加関税率の引き下げを発表、協議継続の枠組み設置へ」参照。
- 注3:
- ELは、米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載したリストで、それらに米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、BISの事前許可が必要となる。
- 注4:
- 2025年3月26日付ビジネス短信「米商務省、中国・南ア・イランなどの80事業体を輸出管理対象に追加」参照。
- 注5:
- イズインフォームドレターを通じた措置とみられる。イズインフォームドレターとは、特定の製品や技術が特定の事業体や仕向地などに輸出などされる場合に、ライセンスが要することを、取引相手の企業に個別に通知するもの。対象となる取引を必要なライセンスなしに行った場合、EAR違反となる。レターの送付などについて、政府から公式発表する必要はない。時間をかけて規則を変更する必要がなく、具体的な取引を禁止できるため、トランプ政権は、このイズインフォームドレターを多用するとみられている。2025年4月17日付ビジネス短信「トランプ米政権、エヌビディア製などの半導体輸出管理を強化との報道」も参照。
- 注6:
- 撤回し、新たな規則を公開するといわれているものの、執筆時点でまだ新規則案は発表されていない。2025年5月15日付ビジネス短信「米商務省、AI半導体などへの輸出管理を強化する暫定最終規則の撤回方針を発表」参照。
- 注7:
- 2025年8月18日付ビジネス短信「米エヌビディアとAMD、対中AIチップ販売再開条件として米政府に収益15%納付で合意」参照。
- 注8:
- 2025年9月30日付ビジネス短信「トランプ米政権、輸出管理の適用範囲を拡大、EL掲載企業の子会社なども対象に」参照。
- 注9:
- 中国のほか、ロシアなどの事業体も多く掲載されている。
- 注10:
- 2025年10月14日付ビジネス短信「米USTR、自動車運搬船の入港料金算定基準を大幅引き上げ、10月14日から徴収開始」参照。
- 注11:
- 2025年10月27日付ビジネス短信「米USTR、301条に基づく米中第1段階の経済・貿易協定の履行状況の調査開始」参照。
- 注12:
- 執筆時点で7月が最新データ(政府閉鎖の影響により、貿易データの公開が遅れた)。
- 注13:
- 米国の対中輸入額から見る米中サプライチェーンについては、2025年3月19日付地域・分析レポート「トランプ政権下の米中サプライチェーン―少量でも製造に不可欠な製品の調達管理が今後の焦点―」、および2023年10月16日付地域・分析レポート「米中対立が対米サプライチェーンに与えた影響」を参照。また、電気自動車(EV)の輸入動向などについては、2025年12月4日付地域・分析レポート「米国のEV市場と「脱中国」の現状―安全保障と企業の競争力バランスが問われる局面に―」参照。
- 注14:
- 米国の2024年の大豆(HTSコード120190)の対中輸出額は126億ドルで、対中輸出総額の8.8%を占め1位。2位は民間航空機で、116億ドル。だが、2025年の輸出額は7月まではゼロとなっている。
- 注15:
- 当該段落以降の有識者の見方は、筆者による首都ワシントンの米中関係に詳しい業界団体やシンクタンク、大学の研究者、連邦議会スタッフなどへのインタビューに基づく(2025年11月12~14日)。
- 注16:
- 2025年11月4日付ビジネス短信「トランプ米政権、中国との通商合意に関するファクトシート発表、11月10日から対中追加関税10%分を撤廃」参照。
- 注17:
- 2025年11月12日付ビジネス短信「中国、米国産原木と大豆の輸入規制撤廃、ガリウム・ゲルマニウム・アンチモンなどの対米輸出禁止を1年間停止」参照。
- 注18:
- トランプ政権2期目の輸出管理の方向性は、2025年8月6日付地域・分析レポート「トランプ米政権の輸出管理政策(前編)厳格化の方向性は変わらず」も参照。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ニューヨーク事務所 調査担当ディレクター
赤平 大寿(あかひら ひろひさ) - 2009年、ジェトロ入構。海外調査部国際経済課、海外調査部米州課、企画部海外地域戦略班(北米・大洋州)、調査部米州課課長代理などを経て2023年12月から現職。その間、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部客員研究員(2015~2017年)。政策研究修士。




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