州レベルで導入進むPFAS規制
米国包装材規制の今(3)

2026年4月17日

米国においても2010年代頃から、健康や環境への懸念から有機フッ素化合物(PFAS)(注1)規制を求める声が高まっている。PFASは規制対象範囲が広く、技術的・経済的影響の大きさから利害関係者が多層的に存在し、規制導入に反対する動きが大きい。企業の自主規制により2025年7月以降、PFASが意図的に混入された食品包装材は米国市場では流通できなくなった。このため、米国市場向け食品包装材を扱う企業は、代替材への切り替えが必須となっている。シリーズ3回目の本稿では、包装材への毒性規制の中でもPFAS規制を巡る連邦と州の対応状況について説明する。

進まない連邦レベルの包装材PFAS使用規制立法

PFASには耐熱性や耐水性、耐油性、非粘着性などの特性があり、食品包装、調理器具、衣類、化粧品、電子・電気部品などに幅広く使われてきた。しかし、米国では環境保護庁(EPA)が2021年に「PFAS戦略ロードマップ(2021‑2024)」を策定、水質、土壌や大気などについて、全庁横断的に連携し、安全性の調査や規制導入に向けた検討を始めた。2023年10月に成立したPFAS報告規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)は、2011年以降にPFASを商業目的で製造・輸入した企業に対しPFASの化学的情報、使用用途、製造量、環境・健康への影響や廃棄方法などの報告を義務付けている。報告期間は2026年4月13日~10月13日の半年間(小規模事業者は2027年4月13日まで)だ。EPAはまた、2024年4月10日に第一種飲料水規則(NPDWR)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを決定した。同規則では、6種類(注3)のPFASに関する上限基準値(MCL)を定めており、水道事業者は2027年以降、飲料水中の上記PFASについて法令順守モニタリングを実施し、その結果を国民に公開する義務を負うほか、MCLを超える場合にはそれを国民に開示し、改善のための措置を講じる義務を負うこととなった。この義務の開始時期は当初全て2029年以降とされていたが、PFASの一種であるペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)については2031年以降に延期されることが決定している。

一方、包装材については、特にその耐熱性、耐油性から使い捨て食品容器に使われることが多いが、食品医薬品局(FDA)が2019年からPFASへの取り組みを本格化し、2020年7月には主要メーカーと合意し、短鎖PFAS含有の油脂防止剤(グリースプルーフ剤)の段階的排除を開始すると発表した。これは企業に自主的にPFASの使用中止を求めたもので、例えば米素材大手のスリーエムは2022年12月、2025年末までにPFASの製造を終了すると発表した(2022年12月22日付ビジネス短信参照)。FDAはさらに2024年2月28日には、PFASを含有した食品包装用グリースプルーフ材についてメーカーによる自主的フェーズアウト(段階的廃止)が完了し、米国市場で販売されなくなったと発表した。2025年1月6日には、紙・板紙製の食品包装材に油脂防止剤として使用されてきたPFAS含有食品接触物質に関する35件の食品接触通知(FCN)(注4)について「もはや有効ではない」と判断した通知を連邦官報に掲載し、在庫の販売処分も2025年6月30日までとした。

しかし、これら行政による取り組みの一方で、連邦議会でのPFAS規制の立法化(特に食品包装材へのPFAS混入禁止法案)の動きは進まず、2024年9月に下院に提出された食品包装材への混入規制法案は会期中に成立することなく失効した。連邦議会では2019年から2024年までの間に食品包装材へのPFAS混入規制法案が3度にわたり提出されたが、いずれも会期内に成立せず失効した。

2020年頃から州レベルでのPFAS規制導入が本格化

こうした連邦レベルの立法化の遅れを横目に、食品包装材への「意図的な」PFAS混入を禁止する州法の制定が進んでいる。2026年3月時点で、15州(図参照)で食品包装材に関するPFAS規制法が成立した。2023年から2025年の2年間に11州(注5)の議会で規制法案が提出された。ただし、そのうち成立したのは、ニュージャージー州のみで、オハイオ州(HB272、2025年5月13日提出)では審議中だ(2026年3月時点)。イリノイ州では、立法化の最終段階で影響が広範囲だとして食品包装材は対象から外された。またそれ以外の8州では会期中に失効・廃案となった。

図:食品包装材へのPFAS規制の立法化状況と施行開始日(2026年3月時点)
2026年2月時点で、PFAS規制を導入した州を色分けし、施行開始日を記入した米国の地図。州名、施行開始日は表と同じ。

出所:各州議会、各州政府ウェブサイトからジェトロ作成

各州の食品包装材PFAS規制法の内容と規制開始時期はまちまちだ(図、表参照)。共通しているのは、食品包装材に「意図的な混入」を禁止するという点と混入量の上限が決まっていないことぐらいだ。その「意図的混入」でさえ、州によって定義が異なる。それ以外の点でも、規制対象品目などが州ごとに異なっている(表参照)。例えば、植物由来の素材や繊維で作られた(紙や木など)食品包装材だけを対象にしている州は6州(表参照)ある。また、ワシントン州とメーン州は規制発動要件として、州の環境当局が「より安全な代替品が利用可能であると判断すること」を盛り込んでいた。メーン州では、9種類の食品包装材について、安全な代替品が存在するとして2026年5月25日から規制が発効する予定だ。ワシントン州の場合は、同州環境局(DOE)による検討の末、2023年2月1日以降、ラップ、皿、ピザ箱などが、 2024年5月1日以降は袋、スリーブ(注6)、ボウルなどが規制対象となった。この規定は複雑で、5年周期で優先化を判断し規制対象を選ぶというプロセスを踏むことになっている。

表:食品包装材へのPFAS規制の立法化状況(2026年3月時点)
No 州名 法案/法令番号 立法日 規制開始日 対象となる包装材の範囲
1 ニューヨーク S8817(A4739-C) 2020年12月2日 2022年12月31日 意図的に添加されたPFASを含む植物繊維系食品包装
2 カリフォルニア AB 1200 2021年10月5日 2023年1月1日 意図的に添加されたPFAS(意図がなくても上限は100ppm)を含む植物繊維系食品包装。
3 ワシントン RCW 70A.222.070 2018年3月21日、2022年2月1日改定 2023年2月1日、2024年5月1日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装。代替物質の可用性が確認された包装材から2段階(1回目:ラップ、皿 、ピザ箱など、2回目:袋、スリーブ、ボウル、トレーなど)に分けて施行
4 バーモント S.20.Act36/
9 V.S.A. Subchapter 12C
2021年5月19日 2023年7月1日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装
5 コネティカット SB 837/21‑191 2021年7月13日 2023年12月31日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装
6 メリーランド HB 275/SB 0273 2022年4月21日 2024年1月1日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装
7 コロラド HB22-1345 2022年6月3日 2024年1月1日 意図的に添加されたPFASを含む植物繊維系食品包装
8 ロードアイランド HB 7438A 2022年6月29日 2024年1月1日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装
9 ミネソタ HF2310/325F.075 2023年5月24日 2024年1月1日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装
10 ハワイ HB 1644/ Law 152 2022年6月27日 2024年12月31日 意図的に添加されたPFASを含む植物繊維系食品包装(ラップ類、皿、舟形容器、ピザ箱の4 種類のみ)
11 オレゴン SB 543/HB 2365 2023年5月16日 2025年1月1日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装
12 メーン LD 1503 2024年3月25日 2026年5月25日 意図的に添加されたPFASを含む9種類の(バッグ、ボウル、ピザ箱など)植物繊維系食品包装
13 ニューメキシコ HB 212 2025年4月8日 2027年1月1日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装
14 ニューハンプシャー HB1649 2024年2月8日、2024年8月6日改定 2027年1月1日 意図的に添加されたPFASを含む食品包装
15 ニュージャージー S1042/A2033 2026年1月12日 2028年1月12日 意図的に添加されたPFASを含む植物繊維系食品包装

出所:各州政府、議会ウェブサイトからジェトロ作成

なお、ミネソタ州とメーン州、ニューメキシコ州の3州では食品包装材に加えて、対象を「PFASの使用が避けられない場合」を除く全製品に拡大し、意図的なPFASの使用を2032年1月1日から全面禁止する法案が成立している。

ちなみにPFAS規制法案が連邦でも州でもなかなか成立しないのはなぜだろうか。

1つには反対勢力の強力なロビー活動の存在が指摘されている。それに加え、米国の立法制度もその要因だ。米国の立法過程では、法案が委員会段階で審議されないまま会期終了となる「自然消滅(died in committee)」や、期限までに採決されず失効するケースなど、法案の成立には多くのハードルが存在し、総じて提出された法案の成立率は低いといわれている。

日本企業が留意すべき点は何か

PFAS規制に対して、日本企業が優先したい対策としては、自社のサプライチェーン上で、製品のPFAS含有状況を正確に把握することだ。原材料の宣言書、検査体制、製造監査、トレーサビリティなどを定期的に確認することも重要だ。州ごとに異なる規制対象品目、禁止開始時期や報告義務の有無、「意図的に添加されたPFAS」の定義などを正確に把握して、対応を検討する。必要に応じ、自己宣言や第三者機関によるPFASフリー証明書を用意する。このほか、PFAS含有廃棄物は有害物質扱いとなるため、米国での廃棄・リサイクル工程に関与する場合には処理費用・責任リスクも考慮する必要がある。

今のところ、「意図的でないPFAS」の混入量について定めているのは、カリフォルニア州だけだ(注7)。同州では2024年9月29日に成立したPFAS規制の試験・登録・執行強化法(AB347)により、2029年以降、PFASを扱う製造業者に対するさまざまな義務が段階的に導入される予定だ。具体的には、該当企業は2029年7月1日までにカリフォルニア州の有害物質管理局(DTSC)に対し、(1)製品登録を行う、(2)登録手数料を支払う、(3)PFAS規制に準拠していることを証明するコンプライアンス証明書(statement of compliance)を提出することが義務付けられる。同法はまたDTSCに対し、2029年1月1日までにPFASの使用禁止を執行するための規則を制定し、2030年7月1日以降においては規則の執行と順守を確保することを義務付けている。同法は同時にDTSCに対して、2029年1月1日までに、PFAS規制への適合を調べるための承認された検査方法および適切な第三者認証を受けた試験機関のリストをウェブサイトに掲載することも義務付けている。


注1:
有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称で、1万種類以上の物質があるとされる。 本文に戻る
注2:
正式名称は「有害物質規制法(TSCA)第8条(a)(7)に基づくペルフルオロアルキルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)に関する報告と記録保管規則」。 本文に戻る
注3:
PFOA、PFOS、PFHxS、PFNA、HFPO-DA、PFBS混合の6種類。 本文に戻る
注4:
FDAは全ての食品接触物質について「食品接触通知(FCN)」を上市の条件に義務付けているが、今回の通知は、PFAS含有物質が米国市場から一掃されたことを意味する。 本文に戻る
注5:
イリノイ州、マサチューセッツ州、ミシガン州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ノースカロライナ州、オハイオ州、ペンシルベニア州、テネシー州、テキサス州、ウィスコンシン州。 本文に戻る
注6:
熱い飲み物を提供する際、熱さから指を保護するためにカップに装着する紙・布のカバー。 本文に戻る
注7:
AB1200では、カリフォルニア州内で意図的に添加されたPFAS、あるいは総有機フッ素(Total Organic Fluorine、TOF)が100 ppm以上(100mg F/kg以上)含まれる材料の製造、販売、流通を禁止している。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課アドバイザー
岩井 晴美(いわい はるみ)
1984年、ジェトロ入構。海外調査部欧州課、中東アフリカ課、欧州ロシアCIS課、ロンドン事務所勤務の後、オランダにてコンサルティング会社代表を経て現職。