日系など外資はどう見る
急成長を遂げる南米の新興国ガイアナ(3)

2026年1月15日

前稿に続き、ジェトロが2025年10月に実施した「ガイアナビジネスミッション2025」について、本稿ではガイアナ唯一の進出日系企業と、デンマーク系物流企業の話から浮き彫りとなったガイアナのビジネス環境の課題について紹介する。

三井海洋開発のベストプラクティス、現地ネットワーク構築と専門家活用がカギ

本ミッション2日目の午前は、ガイアナでエクソンモービルの油田開発プロジェクト向けのFPSO(注)事業を手掛ける進出日系企業の三井海洋開発(以下、MODEC)を訪問した。ガイアナにおける同社の事業説明のほか、ガイアナの投資機会や、現地でビジネスを行う上での同社のベストプラクティスについて聞いた。

MODECはガイアナで、エクソンモービルの「Uaru」と「Hammerhead」の2つのプロジェクト向けにFPSOプロジェクトを受注している。同社は、急拡大するガイアナの石油セクターの需要に対応するべく、2025年7月に首都ジョージタウンに正式にオフィスを開設。2024年に13人だった従業員は43人(2025年10月23日取材時点)に増え、2026年度までに約250人まで増員する。MODECのガイアナ拠点でコーポレートマネジャーを務めるキム・フイン氏は、ガイアナの投資機会のポイントとして次の4つを挙げた。

  1. 急成長する経済:石油産業の成長により、エネルギー、建設、物流、金融、サービス分野で需要が拡大。
  2. 多様なビジネス・投資分野:住宅、ホテル・観光、農業、輸送、テクノロジーなど幅広い分野にチャンス。
  3. 文化の多様性:多民族社会で、英語が公用語。国際ビジネスに適した環境が存在。
  4. 政府の意欲的な方針:道路、橋、住宅、ガス、電力などの公共投資が活発。大規模な橋の工事も完工。電力の安定化を目指すエネルギープロジェクトが進展

フイン氏は、前述のように投資機会があふれる同国を「Land of opportunity」と称す一方で、多くの課題があると指摘した。例えば、住宅やホテルについては開発が進んでいるとはいえ、供給が需要に追い付いていない状況にあり、価格が急騰しているという。輸入品に依存する食料や資材についても同様の状況で、港湾のキャパシティーの小ささも相まって、最終価格に影響を与えている。またインフラ整備を急ピッチで進めている影響で、街中のいたるところで工事が行われており、特に首都のジョージタウンでは交通渋滞が頻繁に発生する。人材確保の観点では、石油産業の外資系企業の参入が活発化していることから、優秀な現地人材の確保も困難になってきているということだ。


三井海洋開発が拠点を構えるペガサスコーポレート
タワー(ジェトロ撮影)

コーポレートマネジャーを務めるキム・フイン氏によるベストプラクティスの紹介(ジェトロ撮影)

続いてフイン氏は、このようなビジネス環境を踏まえた、MODECのベストプラクティスについて紹介した。まず、ガイアナの主要なビジネス機関にアプローチすることが重要と述べた。フイン氏によれば、ガイアナでのビジネスは現地の人脈づくりが非常に重要になるため、現地機関にコンタクトをとることで、正確なビジネス情報、適切な関係者や人材の紹介などの有益な現地ネットワークを獲得可能になるという。具体的には、地域ビジネス開発センター(CLBD:Centre for Local Business Development)、天然資源省内に設置されているローカルコンテンツ事務局(Local Content Secretariat)、ジョージタウン商工会議所(GCCI:Georgetown Chamber of Commerce & Industry)、民間セクターコミッション(Private Sector Commission)などを挙げた。自社の業界に関わらず、さまざまなイベントに参加し、現地のリーダーたちと関係構築を図ることが重要と述べた。現地法人の設立を目指す企業には、信頼できる法律事務所・監査法人・税務コンサルタントを活用し、法人設立の方法や、労働法、コンプライアンスなどについて十分に理解することを勧めた。ビザ、労働許可、転居、税務などについても、ガイアナで豊富な経験を持つ第三者のプロバイダーからサポートを受けることが大切ということだ。またガイアナの人材不足に対応する方法として、研修プログラムを通じた人材開発や、現地大学との連携を挙げた。実際に同社は、ブラジルやシンガポールのオペレーションチームと現地で働く研修プログラムや、2年間のオフショアプログラムなどを整備しており、積極的にガイアナ人材の開発に投資をしている。

石油・ガス産業で適用されるローカルコンテンツ法の存在

続いて、調達マネジャーのペドロ・ナシメント氏が登壇し、同社の調達方針について説明をした。その中で、石油・ガス産業に関わる企業が必ず順守すべき法律として、2021年ローカルコンテンツ法(Local Content Act of 2021、以下、ローカルコンテンツ法)を挙げた。

ローカルコンテンツ法とは、石油・ガス産業に従事するコントラクター、サブコントラクター、ライセンシーに対して、ガイアナ企業からのモノやサービスの調達や現地人材の活用・開発を促す法律だ(表1参照)。石油・ガス産業に従事する企業は、特定のセクターにおける調達において最低調達割合や、ローカルコンテンツプランの提出や報告などが義務付けられている。ローカルコンテンツ法によると、「ガイアナ企業」が満たす条件として、次の1または2に該当する必要がある。

  1. ガイアナ会社法に基づき設立された会社で、
    1. ガイアナ国民が最終的に51%以上の議決権を保有している、かつ
    2. ガイアナ国民が経営幹部・上級管理職の75%以上、および非管理職その他の職の90%以上を占めている企業
  2. ガイアナ国民と1の条件を満たす会社との間のパートナーシップ法に基づくパートナーシップがある企業。

ガイアナ企業からの最低調達割合については、現在40のセクターがローカルコンテンツ法の付則1で特定されており、各セクターにおいてその割合は異なる(表2参照)。割合は5~100%までさまざまだが、「エンジニアリング・機械加工」のように、ガイアナ企業からの調達では供給キャパシティーが不足し得るような項目については、調達割合が低く設定されている。この40セクターからの調達については、ローカルコンテンツ事務局(ガイアナ資源省傘下)から認証を受けたガイアナ企業のサプライヤーを利用する必要がある。サプライヤーの一覧は、ローカルコンテンツ事務局のウェブサイト「Local Content Register外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」、で閲覧できる。なお、ガイアナ政府はローカルコンテンツ法の改正プロセスを進めていると発表している。具体的には、現行法で規定する「ガイアナ企業」の定義の抜け穴を悪用するケースを取り締まるため、本定義の厳格化を予定している。また、調達においても最低調達割合の見直し、対象となるセクターの拡大なども検討されている。

ナシメント氏によれば、「ローカルコンテンツ法に記載のない分野については、現時点では自由に調達や雇用が行えるが、現地調達や雇用を優先することが好ましい」と、現地への社会貢献が重要であるとの認識を示した。

表1:ローカルコンテンツ法の概要
項目 内容
目的 石油事業または石油分野に関連する活動に従事する者に対して、ローカルコンテンツ義務の実施を規定する法律。ガイアナ国民およびガイアナ企業を、石油分野のバリューチェーン強化のための物品・サービス調達において優先し、現地の人材開発を促進する。
ガイアナ企業の定義
  1. ガイアナ会社法に基づき設立された会社で、
    1. ガイアナ国民が最終的に51%以上の議決権を保有している、かつ
    2. ガイアナ国民が経営幹部・上級管理職の75%以上、および非管理職その他の職の90%以上を占めている企業
      または
  2. ガイアナ国民と1の条件を満たす会社との間のパートナーシップ法に基づくパートナーシップがある企業。
対象 石油・ガス事業に関連する全てのコントラクター、サブコントラクター、ライセンシー
調達義務 付則表1で定められた40のセクターについては、「Local Content Register」に登録されたガイアナ企業からの最低調達割合を満たす必要がある。
ローカルコンテンツプラン提出義務 付則2の雇用サブプラン、調達サブプラン、能力開発サブプラン、調達基準などを含めたローカルコンテンツマスタープランを資源省(Ministry of Natural Resources)に提出。ローカルコンテンツマスタープランは5年ごとに更新。また年次のローカルコンテンツプランも提出。
報告書の提出 半年ごとにローカルコンテンツ達成状況を踏まえた報告書を提出。

出所:「Local Content Act 2021」からジェトロ作成

表2:石油・ガス関連のコントラクター、サブコントラクター、ライセンシーの調達においてガイアナ企業が優先されるセクターと最低調達割合

No 対象分野 最低調達割合
1 オフィススペース賃貸 90%
2 宿泊サービス(アパート・住宅) 90%
3 機材レンタル(クレーンなどの大型機械) 50%
4 測量 75%
5 パイプ溶接(陸上) 25%
6 パイプサンドブラストおよびコーティング(陸上) 30%
7 ビル建設工事(陸上) 50%
8 構造製作(鋼材の切断・曲げ・組み立て)(陸上) 30%
9 廃棄物管理(非有害廃棄物) 75%
10 廃棄物管理(有害廃棄物) 25%
11 保管サービス(倉庫) 60%
12 清掃・ランドリーサービス 90%
13 ケータリングサービス 90%
14 食料供給 75%
15 運営支援・施設管理サービス 75%
16 入国管理支援サービス 100%
17 労働許可、ビザ申請、到着ビザ、水中活動許可 100%
18 資材置き場施設 90%
19 通関仲介サービス 100%
20 輸出梱包(こんぽう)・保存・検査 50%
21 害虫駆除サービス 95%
22 貨物管理・監視 75%
23 船舶・リグ用品サービス 25%
24 ボーリング試験サービス 20%
25 環境サービス・調査 25%
26 輸送サービス - トラック輸送 75%
26b 輸送サービス - 人の輸送 100%
27 計測サービス 10%
28 換気サービス 70%
29 産業清掃サービス(陸上) 75%
30 警備サービス 95%
31 ICT - ネットワーク設置・サポートサービス 20%
32 人材派遣・乗組員サービス 50%
33 浚渫(しゅんせつ)サービス 10%
34 現地保険サービス 100%
35 現地会計サービス 90%
36 現地法務サービス 90%
37 医療サービス 25%
38 航空支援サービス 20%
39 エンジニアリング・機械加工 5%
40 現地マーケティング・広告サービス(広報) 75%

出所:「Local Content Act 2021」の付則表1「First Schedule-Minimum local content levels.」からジェトロ作成

逼迫するガイアナの労働市場の需給

2日目の午後は、デンマークに本社を構える国際物流・輸送会社のブルー・ウォーター・シッピング(Blue Water Shipping)を訪問した。同社は2015年にガイアナ事業に小規模に参入した。2022年に、主に鉱業分野で入国管理、トラック輸送、通関業務を手掛けていた現地企業のファルコン・ロジスティクス(Falcon Logistics)を買収し、本格的にガイアナでの事業を開始した。現在、ブルー・ウォーター・シッピングは貨物輸送、フォワーディング、通関業務、入国手続き、倉庫管理、トラック輸送などのサービスを、エクソンモービルを中心とした石油・ガス業界向けに提供している。同社は、ローカルコンテンツ法にのっとり、51%以上を現地オーナーが所有しているため、ガイアナ企業として認証を受けている。駐在員は常駐しておらず、従業員は100%現地人にしている。

日系企業からは、ローカルコンテンツ法の認証を受けていない場合どうなるのかという質問が挙がった。ブルー・ウォーター・シッピング担当者は「ガイアナで石油・ガス産業にサービスを提供する場合、必ずローカルコンテンツ法の認証を受ける必要がある。その他の産業であればサービスの提供に問題はない」とし、あくまで石油・ガス産業の調達に絞られた法律であることを説明した。

ガイアナの労働市場の状況についても質問が挙がった。同社の担当者は「エクソンモービルなどのコントラクターが、ガイアナ人労働者の確保に注力する中、経験の者や高等教育を受けた高度なガイアナ人材が限られており、人材獲得競争が激化している。これは石油・ガス産業に限らず、現在ガイアナのどの産業でも起きている問題」と、同国の慢性的な人材不足の現状について回答した。また労働市場の需給逼迫から「賃金も毎年2桁台で上昇している。当社の倉庫作業員の月給は、労働者の等級によって異なるが、大体月1,000ドル~1,200ドル程度」と、賃金が高騰している現状についても言及した。


ブルー・ウォーター・シッピングのオフィス(ジェトロ撮影)

成長のポテンシャルを見込む、インフラ整備状況と人手不足には課題あり

ミッション1日目、2日目には、ガイアナ企業、商工会議所、業界団体がメンバーとして名を連ねるガイアナ民間部門委員会(Private Sector Commission of Guyana)の幹部メンバーや、現地ガイアナ企業とのネットワーキング懇親会も開催、日系企業と現地企業のネットワークキングが活発に行われた。懇親会を経て、実際にガイアナ企業との商談へと発展した企業や、元々関心のあったガイアナ企業とマッチングし、本ミッション後にオフィス訪問をする企業もおり、ガイアナでのビジネスの足掛かりを掴む様子がみられた。

ミッション後、参加した日系企業向けに、実際に訪問して受けたガイアナの印象と今後のビジネス可能性についてアンケートを取った。多くの企業から、急激に国が発展している雰囲気と、その中にビジネスチャンスを感じるといった旨の回答得た。一方で、インフラの整備状況や、慢性的な人材不足、厳しいローカルコンテンツ法の存在など容易ではないビジネス環境が存在していることにも、多くの指摘があった。現在も急ピッチで進んでいるインフラ整備と、さまざまな産業の需要に耐えられる人材の供給が成り立てば、ビジネスの可能性があると見込んで、今後も動向を注視していくとした企業が多かった。

本ミッションを通じて、ガイアナの街が変化していくスピードには多くの企業がポテンシャルを感じたようだ。確かに、筆者が2025年7月にガイアナへ出張した際、ジョージタウンから対岸へわたるためには、間のデメララ川に浮橋のような小さな橋しかなく、ひどい渋滞を引き起こしていた。しかし今回は、中国鉄建(CRCC)が建設した巨大な橋が完成しており、両岸を行き来する車の渋滞も緩和されていた。このように、街のいたるところで中国資本の企業を中心としたインフラ整備が急ピッチで進んでおり、きれいに舗装された幹線道路や新しい住宅、ホテルが並ぶ風景が散見された。一方で日系企業が感じたように、石油・ガス産業による外資系企業の流入や、そもそもの人口の少なさに起因する人材不足、いまだ整備途中のインフラの状況、ローカルコンテンツ法の存在など、ビジネス環境上の課題も見えてきた。ジェトロは引き続き、ガイアナビジネスの可能性に注目しつつ、情報発信に努めていく。


2025年7月、デメララ川の巨大な橋が建設される前に利用されていた小さな浮橋(ジェトロ撮影)

2025年10月、デメララ川に開通した巨大な橋
(ジェトロ撮影)

注:
「Floating Production, Storage and Offloading system」の略で、海底油田から生産される原油やガスを、洋上で生産、貯蔵、出荷する船舶型の設備のこと。
執筆者紹介
ジェトロ企画部企画課海外地域戦略班(中南米担当)
小西 健友(こにし けんゆう)
2022年、ジェトロ入構。調査部米州課中南米班でメキシコや、ブラジルを中心とするメルコスールの政治・経済の調査を担当。2024年9月から現職。