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TICAD特集:アフリカビジネス5つの注目トレンド多面的支援で影響力拡大、ファーウェイはアフリカ連合との協力を強化(中国)

2019年7月31日

中国は、中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)の開催などを契機に、経済のみならず政治や文化などさまざまな面で、アフリカへの影響力を一層高める姿勢を見せている。同フォーラムで示された方針に関する、中国商務部の直近の進捗報告からは、中国が着々と計画を実施している様子がうかがえる。中国側のデータで対アフリカ投資を概観しつつ、日中両国企業のアフリカでの動向を紹介する。

中ア協力のための「北京行動計画」を採択

中国とアフリカ53カ国の首脳・国家元首が参加して、中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)が2018年9月に北京で開催された。習近平国家主席は同フォーラムの基調演説において、「中国がこれまで実施してきた中国・アフリカ『10大協力計画』(注)の推進をベースに、アフリカ諸国と密接に協力し、今後3年間および一定期間において『8大行動』を重点的に実施する」ことを表明した。

「8大行動」では、(1)産業促進、(2)インフラの相互接続、(3)貿易円滑化、(4)グリーン発展、(5)能力開発、(6)健康・衛生、(7)人的・文化的交流、(8)平和・安全保障、という8つの分野での協力を実施するとした。

中国は「8大行動」の実施を促進するため、政府援助、金融機関・企業の投融資などにより、アフリカ諸国に対し600億ドルの支援をするとしており、その内訳は、150億ドルが無償援助・無利息借款・優遇借款、200億ドルが貸付限度額の設定、100億ドルが中国・アフリカ開発性金融特別基金の設立支援、50億ドルがアフリカ諸国からの輸入貿易融資特別基金の設立支援とされる。これに加え、中国企業が今後3年間で100億ドル以上のアフリカ諸国への投資を行うよう促すとも表明した(2018年09月12日付ビジネス短信参照)。

また、同フォーラムにおいては、以降3年間の中国とアフリカ諸国の具体的な協力計画を定めた「北京行動計画」が採択された。

「北京行動計画」には、政治、経済、社会開発、人材・文化、平和・安全保障、国際、FOCACのメカニズムの構築という幅広い分野にわたる協力の内容が盛り込まれており、中国が多面的な協力・支援により、アフリカへの影響力を高めようとする意図がうかがえる(2018年09月13日付ビジネス短信参照)。

なお、経済分野においては、インフラの計画、設計、建設、運営などの領域における相互協力を強化するほか、中国が、アフリカ諸国の付加価値の高い農産物や工業製品などの中国への輸出拡大を支援するとされた。

アフリカからの非資源産品の輸入が増加

中国税関総署の発表によると、2018年の中国・アフリカの貿易額は前年比19.7%増の2,042億ドルに達し、中国は10年連続でアフリカの最大の貿易パートナーとなった。

2019年6月4日に行われた第1回中国アフリカ経済貿易博覧会の記者会見において、中国商務部の銭克明副部長は、前述のフォーラムで採択された「8大行動」や「北京行動計画」などについて、進捗を発表した。銭副部長は、貿易面においては、中国の対アフリカ輸出額に占める機械・電気産品およびハイテク産品の割合が56%に上っていることや、中国のアフリカからの農産品の輸入額が前年比22%増となり、非資源産品の輸入も増加していることをあげ、貿易構造が継続的に改善している、と評価した。

インフラ建設や資源を中心に投資が蓄積

「北京行動計画」では、中国は中国企業が先進的な設備、技術、標準、サービスなどを利用することや、港湾、空港、航空会社に投資することを奨励・支援することで、アフリカ諸国のインフラの改善を図るとともに、中国企業のアフリカ諸国への進出を支援するとされていた。

銭副部長はこれに関連して、中国企業は積極的にアフリカのインフラ建設に参与しており、近年においては、鉄道、港湾、航空、電力などの分野において重要なプロジェクトを実施している、と述べた。具体的な事例として、中国路橋工程が建設を請け負い2018年11月に開通したモザンビークのマプト大橋のプロジェクト、中国水利電力対外によって建設が進められているギニアのスワピティ水力発電所をあげ、このような重要プロジェクトを引き続き進めていく、とした。さらに、中国は2018年末までに、アフリカにおいて3,700企業を設立し、アフリカへの直接投資額(ストック)は460億ドルを超えた、と実績を強調した。

なお、2017年度中国対外直接投資公報で、2017年末時点における直接投資の状況をみると、中国企業はアフリカの52カ国への投資を行っており、その企業数はアフリカにおける外国企業総数の8.7%を占める。中国企業の主な投資先国・地域(ストック)は、南アフリカ共和国が74億7,000万ドル(全体に占める割合は17%)、コンゴ民主共和国が38億8,000万ドル(9%)、ザンビアが29億6,000万ドル(7%)、ナイジェリアが28億6,000万ドル(6%)、アンゴラが22億6,000万ドル(5%)、エチオピアが19億8,000万ドル(4%)、アルジェリアが18億3,000万ドル(4%)となっており、これら7カ国の投資額を合計すると、中国企業の対アフリカ投資額(ストック)全体の52%を占めた。

なお、2017年の中国のアフリカへの直接投資額(フロー)をみると、前年比70.8%増の41億1,000万ドルであった(図1参照)。中国の対外直接投資額(フロー)に占める割合は2.6%と少ないものの、伸び率は5大陸の中で最も高かった。

図1:中国のアフリカへの対外直接投資額(フロー)
2017年度の中国のアフリカへの対外直接投資額(フロー)は、41億1,000万ドルで前年比70.8%であった。

出所:2017年度中国対外直接投資統計公報

また、産業別に中国の対アフリカ直接投資額(ストック)をみると、主に5つの産業への投資が集中していることがわかる。建築業が最も多く、128億8,000万ドルで全体の29.8%を占める(図2参照)。次いで、採鉱業が97億6,000万ドル(22.5%)、金融業が60億8,000万ドル(14.0%)、製造業が57億1,000万ドル(13.2%)、リース・ビジネスサービス業が23億1,000万ドルで5.3%となり、これら5つの産業で全体の84.8%を占めた。

図2:中国の対アフリカ直接投資額(ストック・産業別)
建築業が最も多く128億8,000万ドル(29.8%)。次いで採鉱業97億6,000万ドル(22.5%)、金融業60億8,000万ドル(14.0%)、製造業57億1,000万ドル(13.2%)、リース・ビジネスサービス業23億1,000万ドル(5.3%)と続く。

出所:中国対外投資発展報告

ファーウェイなどによる通信分野への投資も目立つ

2018年の中国企業の対アフリカ投資の動向について、fDiインテリジェンス・データベースに収録されている個別案件をみると、採鉱業では、中国海洋石油集団がナイジェリアの石油・ガス生産の拡大のための30億ドル規模の追加投資を行う案件や、南京寒鋭鈷業がコンゴ民主共和国で新エネルギー車の電池向けに粗銅や水酸化コバルトの生産拡大を目指して合弁会社を設立する案件などがみられた。通信分野では、華為技術(ファーウェイ)が南アフリカ共和国でのスマートフォン販売のための倉庫の建設、同国でのクラウドデータセンターの建設などをはじめ複数国への投資実績がみられた。

なお、同社は2019年5月31日、アフリカ連合(AU)と情報通信技術(ICT)分野における協力およびアフリカでの同分野の発展を支援する旨のMOU(覚書)を締結した。具体的には、ブロードバンド、IoT(モノのインターネット)、クラウドコンピューティング、5G(第5世代移動通信システム)、AI(人工知能)などにおける協力を強化する。同社および関連する68社は米国のエンティティー・リストに追加されており、米国製品の調達が事実上できなくなるなど、米中間の摩擦による影響を大きく受けている。一方で今回、AUとのMOUを締結したことや個別の投資案件からは、アフリカでの事業継続に意欲的な様子がうかがえる。米中間のハイテク分野をめぐる摩擦が短期的には解消しないという見通しが強まるなか、同社がアフリカでの事業をどのように展開していくか、注目される。

25カ所の経済貿易協力区を建設

中国政府には、アフリカに配置を進めている経済貿易区を効果的に活用し、中国企業のアフリカ進出を後押ししたい意向がある。銭副部長によると、すでに25カ所の経済貿易協力区を建設し、アフリカの工業化や就業の機会の提供、輸出の促進といった面で貢献をしている。また、協力区では、これまでに4万人の雇用を生み出し、設置国におよそ11億ドルの税収を生み出した、と実績を説明した。

中国政府は、今後これら25カ所の協力区について、インフラ建設や投資環境の整備、汚水処理や職業訓練などの面でさらなる改善を施し、より一層大きな効果を生み出すよう取り組む方針である。

また、「北京行動計画」においては、中国がアフリカ諸国における既存の孔子学院の発展を支援すること、アフリカ諸国が中国語教育を国家教育制度に組み入れることを歓迎すること、なども盛り込まれていた。

この進捗に関して、前述の記者会見おいては、中国アフリカ研究院を設置したことや、孔子学院を4カ所、孔子課堂を11カ所、新規設立したとの実績が示されており、文化面においても影響力を高める取り組みが着実に進んでいる様子がうかがえる。

日系企業、中国企業との競争激化を懸念

このように、中国がアフリカにおける影響力を高めるなか、現地日系企業からは、中国企業との競争激化を懸念する声が出ている。ジェトロが在アフリカの日系企業を対象に行った「アフリカ進出日系企業実態調査(2018年度調査)PDFファイル(1.7MB) 」によると、「第三国連携のパートナーとなる国」について、最も回答が多かった国は南アフリカ共和国(13.9%)となった。次いで、インド(10.6%)、フランス(7.3%)と続き、中国は5.9%で第4位だった。

なお、「最も競合関係がある企業」の割合の推移をみると、中国企業との回答が、2007年の3.7%から2018年には22.9%と大きく増加した。2017度調査までは、欧州系や日系企業を競合とする声が多かったが、今回の調査では中国企業がトップに浮上した。これは過去4回の調査で初めてで、中国企業の台頭が鮮明になった。

「アフリカと経済関係を強化する中国に対する考え」についての選択肢では、最も多かった回答が「企業・製品との競合が激化し自社にも影響を及ぼしている」で41.0%だった。一方で、「ビジネスチャンスの拡大やメリットととらえている」と回答した企業も19.7%あり、中国の影響力の高まりを肯定的にとらえる見方も一定程度あった。

日中両国は、2018年10月に第三国市場協力フォーラムを開催し、両国の政府関係機関・企業・経済団体などの間で52件の協力覚書が署名交換された。このうち、アフリカ関連では、日本通運と中国外運股份(以下、中国外運)が業務提携の覚書を締結した案件がある。

日本通運のプレスリリースによると、中国外運は、中国国営企業の招商局集団の傘下で、世界36カ国、79拠点の海外ネットワークを持つ、中国最大手の総合物流企業である。日本通運は業務提携を通じて、両社の物流業界における優位性および資源を活用し、中央アジアやアフリカなど第三国における物流面の協力を行い、相互の発展を目指すとしている。

このような事例が生まれてはいるものの、日中両国の企業が第三国市場協力案件として、アフリカを対象とするものは現段階では限定的である。やはり、日中両国の企業が協力する上で、第1の選択肢となるのは東南アジアという意見が目立つが、中国現代国際関係研究院の季志業院長は「アフリカも良い選択肢だ」と指摘する。その理由として、季院長は「近年、中国企業はアフリカで急速に業務を拡大しており、日本政府もアフリカで、より高い水準の協力を実施する方針を打ち出している。日本企業が参加することで、中国企業のアフリカでの協力水準の向上が促されると考える」と指摘する(「人民網日本語版」2019年3月15日)。

中国の日系企業の中には、第三国協力について積極的に取り組みたい意向はあるものの、パートナー企業との責任分担やコンプライアンスについての考え方の相違への懸念がある、と指摘する企業もみられる。一方で、アフリカでの影響力を高める中国企業と組んで、そのネットワークやインフラを活用する利点も考えられる。東南アジアと比較し、地理的遠隔性やビジネス環境が大きく異なるアフリカにおいて、日中両国企業が協力を進めていく利点をどこに見いだすか、検討の余地があるだろう。


注:
10大協力計画は、2015年に南アフリカ共和国のヨハネスブルクで開催された中国・アフリカ協力フォーラムにおいて発表された。同計画には、工業化協力計画、農業近代化協力計画、インフラ協力計画、金融協力計画、グリーン発展協力計画、貿易・投資円滑化協力計画、貧困削減・国民生活改善協力計画、公共衛生協力計画、人的・文化的協力計画、平和・安全保障協力計画が含まれる。
執筆者紹介
ジェトロ・北京事務所 経済信息部 副部長
藤原 智生(ふじはら ともき)
2009年、ジェトロ入構。生活・文化産業部生活文化産業企画課(2009~13年)、海外語学研修(2013~14年)、海外調査部海外調査計画課(2015~16年)などを経て現職。

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