中国、2024年の自動車生産・販売台数は引き続き増加
厳しい競争環境は続く
2025年6月27日
生産台数、販売台数、輸出台数ともに世界一となった中国の自動車市場。引き続き生産・販売台数は増加を続けているが、中国語で「内巻」と呼ばれる国内市場の過度な競争環境もあり、外資自動車メーカーは苦戦を強いられている。
生産・販売ともに過去最高、生産稼働率と在庫は上昇傾向
中国自動車工業協会(CAAM)の発表によると、2024年の中国の自動車販売台数は前年比4.5%増の3,143万6,193台と4年連続で増加した(図1参照)。内訳をみると、乗用車は5.8%増の2,756万3,000台(うち、国内販売が3.1%増の2,260万8,000台、輸出が19.7%増の495万5,000台)、商用車は3.9%減の387万3,000台(うち、国内販売が9.0%減の296万9,000台、輸出が17.5%増の90万4,000台)だった。
2024年の中国の自動車生産台数は3.7%増の3,128万2,000台だった(図2参照)。内訳をみると、乗用車は5.2%増の2,747万7,000台、商用車は5.8%減の380万5,000台だった。

出所:中国自動車工業協会、CEIC

出所:中国自動車工業協会、CEIC
国家統計局の中国統計年鑑の自動車生産能力と生産台数を基に生産設備の稼働率(注1)を確認すると、2016年の81.6%をピークに低下を続け、2020年の61.2%をボトムに再び上昇し、2023年は69.2%となった。電気自動車(BEV)では一般的に生産設備稼働率7~8割が損益分岐点といわれている。さらに、中国統計局発表の統計をみると、自動車製造業の2024年の売上高は前年比4.1%増だったものの、営業利益は7.8%減となっており、販売台数の増加に対し利益率の低下がみられる。また、各年末の自動車ディーラーの在庫額を確認すると、直近10年では2020年の3,984億元(約7兆9,680億円、1元=約20円)をボトムに徐々に在庫額が上昇し、2023年は5,234億元の最高額となっている(図3参照)。これらからも厳しい競争環境がうかがえる。

出所:国家統計局 中国統計年鑑を基にジェトロ作成
新エネ車の勢い止まらず、販売シェアは4割を超える
2024年の中国自動車市場は、引き続き新エネルギー車(NEV、注2)が全体を牽引したかたちとなった。NEVの販売台数は35.5%増の1,286万6,000台で、自動車販売台数全体に占める割合は40.9%と2023年より9.3ポイント上昇した(図4参照)。CAAMの発表によると、NEVの販売台数は初めて1,000万台を突破し、中国は10年連続で世界最大のNEV市場の座を維持した。特に、12月単月のNEV販売台数は前年同月比34%増の159万6,000台となり、自動車販売台数全体でのシェアが45.8%に上昇した。その要因としては、NEV買い替え促進政策が効果を表し、NEVの販売台数は8月以降、右肩上がりに増加し12月にピークを迎えたこと、および輸出が堅調に伸びたことが挙げられる。

出所:中国自動車工業協会
2024年のNEV販売台数の内訳は、電気自動車(BEV)が15.5%増の771万9,000台、プラグインハイブリッド車(PHV)が83.3%増の514万1,000台、燃料電池車(FCV)が12.6%減の5,000台だった。価格帯でみると、15万~20万元(約300万~400万円、1元=約20円)の販売台数が前年比19.2%増の337万5,000台で、NEV販売の約4分の1を占めた。
中国汽車流通協会乗用車市場情報聯席分会(CPCA)のデータ(注3)では、メーカー別のNEV乗用車販売台数は、1位が比亜迪(BYD)で前年比37.4%増の371万8,281台、2位が吉利汽車で94.0%増の86万2,933台だった。BYDは1位を維持し、NEV市場の34.1%を占めた。吉利汽車は大幅に販売を伸ばし、テスラを抜いて2位に浮上した。テスラは8.9%増の65万7,102台で3位となり、増加はしたものの、他の中国ブランド車と比較すると伸び幅は小さかった。4位は上海通用五菱(上海汽車、米ゼネラルモーターズ、柳州五菱汽車の合弁企業)で41.3%増の64万7,047台、5位は長安汽車で60.8%増の62万2,313台だった。2023年に3位だった広汽埃安新能源汽車(以下、広汽AION)は24.1%減の36万6,901台で9位にまで順位を下げた。
輸出台数は過去最高を更新も、国・地域で明暗分かれる
CAAMによると、2024年の自動車輸出台数(中古車を含まず)は前年比19.3%増の585万9,000台で過去最高を更新し、中国は引き続き世界最大の自動車輸出国となった(注4)。うち、乗用車は19.7%増の495万5,000台、商用車は17.5%増の90万4,000台だった。また、NEVの輸出は6.7%増の128万4,000台で、うち、BEVが10.4%減の98万7,000台、PHVが1.9倍の29万7,000台だった。
中国税関の統計(注5)で、2024年のBEV乗用車(HS870380)の輸出台数相手国・地域の上位20位をみてみると、1位は2023年に続きベルギーで、前年比41.2%増の24万7,788台だった。ベルギーは金額ベースでも31.7%増の66億7,989万ドルと大幅な増加になった。2位は英国で17.7%減の10万3,155台、3位はオーストラリアで25.2%減の6万4,623台だった。輸出台数の増加が著しい先としては、インドネシアが前年比約4倍、メキシコ、シンガポールが約3倍、アラブ首長国連邦、ブラジルが約2倍、マレーシアが91.7%増、韓国が82.2%増だった。他方で、輸出額2位の英国、3位のオーストラリアのように輸出台数の減少が見られる先もあり、明暗が分かれているかたちだ。スペイン、タイ、スロベニア、カナダ、スウェーデン、オランダは前年比で輸出台数が減少した。なお、日本は17.5%増の1万4,064台、米国は48.5%減の6,391台だった。中国のEV・車載電池企業のグローバル戦略については地域・分析レポート特集「中国EV・車載電池企業のグローバル戦略」も参照いただきたい。
中国系メーカーがさらに存在感強める
2024年11月27日付地域・分析レポート「日本の自動車企業が三重苦に直面(1)急激なNEV化が打撃」「日本の自動車企業が三重苦に直面(2)過当競争下で対応模索」では、日系自動車各社は中国の過当競争に直面し、厳しい状態にあると分析している。日系含め、外資系自動車メーカー各社は苦戦を強いられており、中国系ブランドの存在感が顕著に高まっているかたちだ(図5参照)。乗用車販売台数のシェアでは、中国系ブランドは前年比9.2ポイント増の65.2%に達した。中国系ブランドは2020年から2024年までの5年でシェアを26.8ポイント増加させた一方、日系とドイツ系は同期間でそれぞれシェアが約10ポイント減少したかたちだ。

出所:中国自動車工業協会、CEIC
引き続き販売台数は増加するも、厳しい競争環境は続く
2025年の中国自動車販売台数について、CAAMは2025年1月の記者会見において、前年比4.7%増の3,290万台に達する見通しと示している。そのうち、NEVは拡大を強め、24.4%増の1,600万台となると予測している。その場合、NEVの販売比率は約50%となる計算だ。なお、CAAMは当該予測に際し、「大規模設備の更新」「消費財の買い替え」の推進政策である「両新」政策の持続的機能の発揮、新エネ車取得税減免政策の継続、海外市場の持続的拡大、供給側改革の効果をポジティブな要素として挙げている。他方で、雇用や売り上げ増への圧力と消費者心理の減退、「内巻(過剰競争)」によるマイナス影響、外部環境圧力の増加などの経済運営における多くの困難と挑戦に直面していることに鑑みると、中国自動車市場の内需は依然として弱い、と指摘している。
CAAMの2025年5月の発表によると、2025年1~4月の累計販売台数は1,006万台(前年同期比10.8%増)、累計生産台数は1,017万5,000台(12.9%増)だった。うち、NEVの販売台数は430万台(46.2%増)で、自動車販売台数全体に占める割合は42.7%まで上昇した。また、中国国内販売台数812万3,000台(12.0%増)に対し、ガソリンエンジン車は前年同期比5.7%減の446万4,000台だった。
- 注1:
- 自動車生産台数/自動車生産能力×100
- 注2:
- 電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHV、レンジエクステンダー式EVを含む)、燃料電池車(FCV)を含む。
- 注3:
- CAAMとCPCAは会員企業が異なることから統計データが一致しない。主に、CAAMは完成車メーカー(OEM)の出荷ベース、CPCAはディーラーの販売ベースで集計している。
- 注4:
- CAAMの発表した輸出台数は中古車を含まず、中国税関統計の輸出台数には中古車も含まれる。
- 注5:
- 貿易統計データベースのグローバル・トレード・アトラス(GTA、原典は中国税関)による。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・北京事務所
亀山 達也(かめやま たつや) - 2021年、民間企業よりジェトロ入構。調査部中国北アジア課を経て2023年7月から現職。