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TICAD特集:アフリカビジネス5つの注目トレンド変貌するアフリカ、多様化する市場プレーヤーがもたらす新たな商機

2019年7月31日

2019年8月28日~30日に、横浜で第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催される。日本の官民関係者やアフリカ54カ国の元首・閣僚、国際機関や第三国関係者ら4,000人以上が一堂に会し、アフリカ開発の新たな方向性を討議し、日本と国際社会、アフリカ諸国が一体となって取り組む行動計画を策定する。今回のTICAD7では、「ビジネス」を通じたSDGs(持続可能な開発目標)の実現が最重要議題の1つとして取り上げられる予定で、アフリカ開発の原動力を「民間投資」に求めるTICAD5(2013年)以降の新たな政策アプローチは、総仕上げの段階に入る。

成長市場でのシェア確保を目指し安定的に流入する外国投資

長らく世界経済の周縁部に位置付けられてきたアフリカは、2000年代に入り、中国など新興国の一次資源需要の急増と債務削減に向けた国際的協調、各国政治情勢の安定化を背景に、高成長期に入った。資源開発分野を中心とした外国直接投資(FDI)の活発化と輸出産品市況の上昇で外貨・国庫収入が増加、債務重圧の軽減ともあいまって政府の歳出余力が拡大し、国内の投資や消費が活発化した。この結果、市場としての魅力が高まり、非資源分野にも新たな投資を呼び込む好循環が生まれた。

もっとも、アフリカ経済は右肩上がりの成長を遂げているわけではない。2009年のリーマン・ショックの影響は短期的だったが、アフリカ経済の成長とFDI流入を支えてきた一次産品ブームは、非石油資源が2012年、エネルギー資源が2014年を境に低迷期に入る。アフリカでは資源産出国を中心に、経常収支や財政収支の悪化に見舞われる国が相次ぎ、年率5%近い高成長を持続してきた域内経済は、2010年代半ば以降3%台の成長へと減速している。

それでも、長期的視野に立てば、成長市場としてのアフリカの魅力が色あせることはない。2018年の数値を2000年と比較すると、世界の総生産に占めるアフリカの割合は0.7ポイント増の2.7%(IMF)、輸入金額では0.9ポイント増の2.9%〔国連貿易開発会議(UNCTAD)〕、FDI受入額については2.8ポイント増の3.5%(同左)と、世界各地で新興国が急成長を遂げる中にあっても、アフリカ経済の重みは着実に高まっている。将来を見渡しても、アフリカの20歳未満の若年人口比率は50.7%(2020年、国連推定)と高く、2050年には世界人口の4分の1を占めると予想されており、今後、長期にわたり新たな消費者と労働力を市場に送り込むことが可能だ。アフリカには資源ブームの終焉(しゅうえん)以降も年500億ドル内外のFDIが流入しており、雇用の受け皿となる民間部門の成長と、消費拡大の原動力となる中間層の形成に期待がかかる。

市場プレーヤーの多様化で新たな産業・ビジネスが相次いで成長

発展余地の大きい成長市場として、アフリカへの注目と期待が高まる中、域内外の企業はビジネス強化へとかじを切っている。英国やフランスなど旧宗主国の多国籍消費財メーカーや商社、資源・エネルギー系企業、欧米や南アフリカ共和国資本の金融・流通企業といった旧来からのアクターに加え、2000年代以降は南ア以外の地場の財閥グループや金融・保険企業、建設・土木企業、さらには電気通信・運輸企業が成長し、国境を越えて商圏を拡大している。

一方で、携帯電話の急速な普及により情報通信産業が興隆する中、モバイル送金・決済などアフリカ発の革新的なビジネスモデルがインフォーマルセクターの可視化に成功しつつあり、市場参入のハードルが下がってきた。モバイルビジネスの成長から派生したスタートアップ企業も相次いで誕生・成長し、域内のデジタル経済化を後押ししている。また、未整備な法制度や規制、インフラの不足、多角化が遅れる産業構造を逆手にとって、アフリカを実証の場に選び、新たな製品・サービス投入の加速化にも余念がない。アフリカのスタートアップ市場は、2018年までに年間10億ドル規模の新たな投資機会を生み出している。

域外に目を転じると、過去20年で旧宗主国の市場占有を崩し、欧米資源メジャーの権益にも食い込んできた中国に加え、近年はインドやトルコ、湾岸アラブ諸国、南欧諸国、ロシアもアフリカ市場での存在感を高めており、2017年にアフリカが50億ドル以上の輸入を計上した国は2000年比で3倍増の21カ国となった。自国企業のアフリカ進出を後押しするため、世界の主要国は外交、通商両面でアフリカとの関係強化に余念がない。TICADと同様に、対アフリカ協力会合を定期開催する国・地域は2018年時点で10カ国を超える。

市場参入する日本企業の裾野の広がりに期待

アフリカ経済が内発的な変化を遂げ、市場プレーヤーも多様化する中、日本企業のアフリカ進出も活発化している。2017年までの10年間で、アフリカに進出する日本企業数(日本外務省公表)は74.0%増の795社に増加し、進出先国も6カ国増えて42カ国に達するなど面的な広がりも進展している。もっともこの間、アフリカの対世界輸入に占める日本のシェアは3.2%から1.7%(UNCTAD)へと低下している。対アフリカ直接投資残高も、商社などによる資源開発投資に加え、近年は資本・消費財分野で日本企業による大型M&A案件が目立つものの、欧米諸国や中国、インドなど新興大国の後塵(こうじん)を拝す状況だ。少子高齢化が進み、国内市場の縮小が予見される中、グローバル競争下で日本企業が成長を続けていくためには、今後、長期にわたり成長が期待されているアフリカ市場のさらなる取り込みが重要な課題となる。

民間投資が国の開発の原動力となることを知ったアフリカ諸国は、投資環境の改善や地域共通市場の創出に努め、今後はアフリカ大陸全体の市場統合にも取り組んでいく。デジタル経済の進展で生まれた多くの新興企業が、インフォーマル市場の可視化を実現し、予見性の高いマーケティングが可能になりつつある。アフリカに根を張る世界各国の企業は、現地政府・企業との関係強化を通じてリスク管理能力を高め、新たな製品の投入や市場開拓に余念がない。アフリカの変化の中に新たな商機を見いだし、現地あるいは第三国の優れたパートナーと連携して、販路開拓や市場に適合した商品の開発、リスク管理を行うことにより、日本からも中小企業を含めたより多くのプレーヤーがアフリカ市場に参入することは可能である。

狭い国土と度重なる自然災害、多くの人口を抱えながら、戦後復興から高度経済成長を経て、グローバル経済の時代を歩んでいる日本の民間部門には、アフリカの社会的課題を解決し、新たなビジネスと雇用を生み出し、持続的な経済成長や地域開発に貢献しうる技術とノウハウが数多く存在する。TICAD7が、日本企業とアフリカ各国の胸襟を開いた対話の出発点となり、より多くの日本企業がアフリカ経済の成長と繁栄に関わっていくきっかけとなることを、心から期待したい。

執筆者紹介
ジェトロお客様サポート部長
兒玉 高太朗(こだま こうたろう)
1990年、ジェトロ入構。海外調査部中東アフリカ課、ジェトロ・ドバイ事務所(2008~2014年)、同・パリ事務所(2014~2019年)、中東アフリカ課長などを経て2019年7月より現職。共著に『企業が変えるアフリカ』(ジェトロ・アジア経済研究所)、『アラブ首長国連邦を知る60章』(明石書店)など。

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