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TICAD特集:アフリカビジネス5つの注目トレンドアフリカでの協業、両政府の後押しも加速(インド)

2019年7月31日

インドは東にASEAN、北に中国、西には中東・アフリカ地域と近接する。13億人を擁する大市場や強固な工業基盤と相まってインドは、ASEANや中国を包含するサプライチェーンを構築している日本にとって重要な地位を占める。こうした認識の下、東アジアのサプライチェーンにインドを包含していくことに加え、インド以西の有望市場である中東やアフリカ市場についても、進出の橋頭堡(ほ)としてインドを位置づける動きが日本企業の間で出始めている。特に、アフリカ地域とインドは、これからの発展が大いに期待できる関係にある。日印政府はアフリカの開発や産業発展における協業の志向を加速させており、さまざまな形での両国企業の協力が模索されている。

英国植民地支配が生んだアフリカとのつながり

インドは古くからアフリカ東部沿岸地域と交易があったとされるが、近世に入ってアラビア半島のイスラム王朝を経由したモンスーン貿易を通じて、両地域の往来は大きく発展した。19世紀に入ると、英国植民地政策の下、多くのインド人がプランテーション労働者として東南部アフリカに渡った。1895年に開始されたウガンダ鉄道建設にも多くのインド移民が従事したという。19世紀後半には、労働者だけでなく、技術者や商人などの移民も進んだ。こうして、モーリシャスやタンザニア(ザンジバル)、ケニア、南アフリカ共和国などの東南部アフリカを中心に、インド移民コミュニティーが構築されていった。これら地域はインドと同様に、英国植民地支配下にあった国がほとんどで、インドはアフリカの反植民地主義、反人種主義に共闘してきたとも言える。また、インドと同様、公用語が英語であることもあり、インドにとってアフリカは歴史の面でも身近な地域となっている。

インドからアフリカへの輸出額をみると、2017年は188億ドルだった。アフリカでの第三国協力が目される国々とのアフリカ向け輸出額のシェアの推移を比較すると、2017年でインドは最大シェアとなっており、上昇傾向が見られる(図参照)。また、fDiインテリジェンスによると、インドからアフリカ向けの投資(2003年1月~2019年3月累積)は、投資額で全体の約2割を占めており(表1参照)、インドのアフリカとの結びつきの強さが見て取れる。インドからアフリカ向け投資の内容を業種別にみると、投資件数では「金融サービス」「ソフトウエア・ITサービス」「通信サービス」などが上位に来ている(表2参照)。金額では「石炭・石油・ガス」向けが約4割を占める。投資先をみると、件数ではトップが南ア、それにケニア、ナイジェリアが続く。金額ではモザンビーク、ナイジェリアが上位だ(表3参照)。

図:主要国の輸出におけるアフリカ向けの割合(推移)
2017年、インドは各国の中で最大シェアを占めている。

出所:各国統計を基にジェトロ作成

表1:インドの地域別対外直接投資
(2003年1月~2019年3月累積)
地域 投資額
(百万ドル)
投資件数
(件)
投資額
シェア
件数
シェア
アジア 80,648 1,260 32.8% 27.6%
北米 20,209 674 8.2% 14.8%
西欧 26,896 1,047 10.9% 22.9%
中南米 10,294 225 4.2% 4.9%
東欧 15,422 209 6.3% 4.6%
中東 46,917 704 19.1% 15.4%
アフリカ 45,798 448 18.6% 9.8%
合計 246,183 4,567 100.0% 100.0%

出所:fDi Intelligenceから作成

表2:インドのアフリカ向け投資分野別内訳(2003年1月~2019年3月累積)
分野 件数
(件)
件数シェア 投資額
(百万ドル)
投資額
シェア
雇用合計
(人)
雇用平均
(人/件)
金融サービス 55 12% 592.6 1% 1,263 22
ソフトウェア・ITサービス 49 11% 631.3 1% 5,008 102
通信サービス 37 8% 3,362.9 7% 4,221 114
ビジネスサービス 36 8% 489 1% 10,199 283
自動車OEM 35 8% 1935 4% 19,200 548
石炭・石油・ガス 23 5% 18628 41% 3,113 135
医療 21 5% 276 1% 1,518 72
医薬品 17 4% 353 1% 2,533 149
化学 16 4% 5650 12% 6,322 395
産業機械 16 4% 235 1% 3,308 206
消費者製品 15 3% 135 0% 3,730 248
金属 14 3% 2638 6% 7,774 555
プラスチック 14 3% 1824 4% 8,687 620
食料・たばこ 11 2% 2448 5% 6,773 615
繊維 11 2% 1317 3% 15,756 1,432
その他 78 17% 5,284 12% 18,209 3,632
合計 448 100% 45,798 100% 117,614 262

出所:fDi Intelligenceから作成

表3:インドのアフリカ向け投資国別内訳
(2003年1月~2019年3月累積)
対象国 件数
(件)
件数
シェア
投資額
(百万ドル)
投資額
シェア
雇用効果
(人)
南アフリカ 90 20.1% 5,203 11.4% 11,971
ケニア 47 10.5% 2,125 4.6% 9,192
ナイジェリア 45 10.0% 6,541 14.3% 13,741
エジプト 37 8.3% 5,392 11.8% 13,285
タンザニア 32 7.1% 833 1.8% 3,933
エチオピア 25 5.6% 2,076 4.5% 20,587
ガーナ 20 4.5% 2,254 4.9% 6,869
モーリシャス 19 4.2% 489 1.1% 1,984
ウガンダ 16 3.6% 668 1.5% 1,361
ザンビア 15 3.3% 1,457 3.2% 4,737
モロッコ 13 2.9% 988 2.2% 8,158
モザンビーク 11 2.5% 8,176 17.9% 3,169
ボツワナ 10 2.2% 156 0.3% 867
コンゴ民 8 1.8% 378 0.8% 862
ジンバブエ 8 1.8% 3,114 6.8% 3,678
ルワンダ 7 1.6% 220 0.5% 1,007
マダガスカル 5 1.1% 361 0.8% 797
セイシェル 4 0.9% 166 0.4% 528
その他 36 8.0% 5,201 11.4% 10,888
合計 448 100% 45,798 100% 117,614

出所:fDi Intelligenceから作成

日印政府による協力後押しも加速

インド政府は、アフリカ諸国との関係強化のための「インド・アフリカ・フォーラムサミット(IAFS)」を2008年から開催、参加国を増やしながらこれまでに3回開かれ、アフリカとのつながりの強化を図っている。モディ政権下でも、首相をはじめ閣僚がアフリカ諸国を数多く訪問、アフリカ重視の姿勢は鮮明になっており、新規プロジェクト発掘を目的とし、インド工業連盟(CII)、インド輸出入銀行(EXIM BANK)が主催する「アフリカ・コンクレーブ会議」が毎年開催されるなどしている。

こうした背景の下、日本政府は2016年11月に発表した日印共同声明で、アフリカの開発、産業ネットワーク開発で日印対話を重視していくことを確認。これをきっかけに、アフリカビジネスにおける日印協力の検討が加速している。日印政府は、IAFSや、日本政府が主催し8月に横浜で第7回会議が開催される「アフリカ開発会議(TICAD)」などを通じて、この協力をさらに進めていくことや、アジア・アフリカ地域における日印のビジネスプラットフォームをジェトロとCIIに担ってもらうことも約束している。

アフリカビジネスにおける日印連携には、以下のとおり、幾つかの類型が考えられる。

  1. 在インド日本企業によるアフリカ地域への輸出:在インド日本企業は、従来主にインド市場向けに供給を行ってきたが、近年、輸送機器分野を中心に、インドの価格競争力のある製品を市場が類似するアフリカ諸国に輸出するケースが出ている(2019年4月26日付地域・分析レポート参照)。マルチ・スズキやトヨタは自動車を、東芝トランスミッション・アンド・ディストリビューション・システムス・インディアは変圧器をアフリカ各国に輸出。ダイキン・エアコンディショニング・インディアは2018年からインド製エアコンのアフリカ輸出を開始し、アフリカの代理店の技術者をインドに招き、技術研修を開始している。
  2. 日印企業の協業によるアフリカでのプロジェクト実施:日本企業によるインド内外からの輸出やプロジェクト立案・運営と、インド企業からの輸出や現地での「設計・調達・建設(EPC)」取りまとめ、途上国での活用に適した機器・技術などを組み合わせて、発電プラントや太陽光エネルギー事業などを共同実施するもの。
  3. 日印企業によるアフリカでの共同投資や共同運営
  4. スタートアップ・デジタル分野の協力可能性:インドとアフリカはインフラが未発達で類似の社会課題を共有する中、デジタル技術の活用によるリープフロッグ成長をもくろむことも構想されている。

インド企業をどう活用するか

さまざまな協力のかたちが検討できる中、アフリカビジネスを展開しているインド企業はどういった分野に日本との協業可能性を見いだしているのだろうか。自動車、農機、不動産、IT、金融、ホスピタリティーなどのビジネスを展開するマヒンドラ・グループで売り上げ全体の半分以上を占めるという自動車・農機分野の担当者にアフリカ事業について聞いたところ、「インドで生産した自動車などの製品を南ア、ケニア、ウガンダ、ルワンダなどに輸出している」という。ビジネスの中で現地にプレゼンスを置くことの重要さを感じ、この15年間でヨハネスブルク(南ア)、ラゴス(ナイジェリア)、ナイロビ(ケニア)、カイロ(エジプト)にオフィスを開設した。ビジネスを実施している各国で2~3のディストリビューターを有しているため、「アフリカ全体では50程度のディストリビューターを利用している」という。同社は既に農機分野で三菱マヒンドラ農機と協力関係があり、日本企業との協業実績がある。同氏は「アフリカビジネスにおいても農機分野などで検討できるのではないか。まずはパイロットプロジェクトを立ち上げ、そのモデルを展開することを検討したい」と語った。

日用品(FMCG)、家電、農業、不動産、化学分野などをカバーするゴドレジ・グループは、アフリカでは日用品を展開。ゴドレジ・コンシューマー・プロダクツの経営戦略ヘッドのジシュヌ・バタビャル氏は「主力のヘアエクステンションのほか、殺虫剤、せっけんなどの日用品を現地で製造し、アフリカ約45カ国を対象に販売している。国ごとの売り上げ構成は、南ア、ケニア、ナイジェリア、その他の国で各25%ほど」だと語る。同社は海外展開においてブランド構築を容易にするため、地場企業買収のかたちをとっており、アフリカ展開でも地場企業を買収、各国で地元の人材を活用し、ローカライゼーションに努めているという。ヘアエクステンションの事業については、原料のファイバー「カネカロン」を日本のカネカと共同開発しており、同社とは深い協力関係にある。今後の日本企業との協業については、「FMCGなど同様の商品群を自社のディストリビューションネットワークに乗せて販路構築を支援することはできそうだ。また、各国の製造拠点を活用した委託生産、商品開発のためのエンジニアリングなども検討できる。そのほか、ともに新たな市場を開拓するなど、互いにメリットのあるパートナーシップを構築する必要がある」と語った。

執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所
古屋 礼子(ふるや れいこ)
2009年、ジェトロ入構。在外企業支援課、ジェトロ・ニューデリー事務所実務研修(2012~2013年)、海外調査部アジア大洋州課を経て、2015年7月からジェトロ・ニューデリー事務所勤務。

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