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TICAD特集:アフリカビジネス5つの注目トレンドアフリカ事業を成功に導く3つのプレイヤー(英国)

2019年7月31日

アフリカ諸国との強固な関係で知られる英国だが、日本企業の間では協業相手として見る向きはまだ限定的だ。しかし英国の主要プレイヤーと戦略的に連携することで、アフリカ市場の開拓を勢いづかせることが可能だ。

顔が見えづらい英国企業

英国の対アフリカ投資残高は460億ドルで、フランス(640億ドル)、オランダ(630億ドル)、米国(500億ドル)に続く世界4位〔国連貿易開発会議(UNCTAD)、2017年〕。資源、そして金融サービスが主力だ。2018年~2019年第1四半期の英国からアフリカへのグリーンフィールド投資は66億2,753万ドルで、エジプト(21億9,070万ドル)、南アフリカ共和国(以下、南ア、21億1,485万ドル)の2カ国で約3分の2を占めた(「fDi Markets」データベース)。エジプト向けは石油大手BPによる天然ガス開発、南ア向けは鉱業大手ベダンタ・リソーシズ英子会社による亜鉛採掘・精錬事業など。このほか、サブサハラアフリカの独立系発電事業者(IPP)最大手グローベレックの子会社によるコートジボワールの発電事業、北アフリカで石油・天然ガス開発を手掛けるSDXエナジーによるモロッコの天然ガス事業など、大型案件はフランス語圏でもみられる。同期間の合併・買収(M&A)では、南アとナイジェリアが最多で(各7件)、モロッコとケニアが続く(各4件、「トムソン・ワン」データベース)。代替エネルギーを含む発電、金属資源、情報通信技術(ICT)、食品などの部門で案件が多かった。

対アフリカ投資は活発で、歴史的つながりも強固な英国だが、実は多くの日本企業は、英国をアフリカ市場開拓の有望パートナーとして見ていない。アフリカの日系企業が協業相手として期待する国は、南アが最多で(13.9%)、インド(10.6%)、フランス(7.3%)、中国(5.9%)、モロッコ(2.6%)と続き、英国は米国、ドイツと並んで6番手(2.3%)に甘んじている(本特集:「多角化する日系企業のアフリカビジネス」図3参照)。

最大の理由は、プレイヤーが見えづらいことだ。M&Aを中心に対アフリカ投資の相当部分をプライベートエクイティなど金融機関が担っているため、実際にアフリカで事業活動を行う英国のビジネスオペレーターは、投資額の割に少ない。通信大手ボーダフォン、日用品大手の英国・オランダのユニリーバなどアフリカで強い存在感を持つ事業者もあるが、総体としては資源上流や金融部門に集中しており、日本企業の関心が高いインフラ・重電分野などでボロレ、ヴァンシ、アルストムといったアフリカに強い巨大事業会社を有するフランスなどとは対照的だ。加えて、グローバル企業が多数拠点を構える特性から、英国以外にルーツを持つ在英国企業の対外投資も活発で、「英国企業」の顔を描きにくい事情もある。先述のベダンタ・リソーシズはインド発祥の企業で、対南アICT部門のM&A案件の1つは、NECヨーロッパによる、地場システム開発大手XONへの追加出資だ。

さらに、世界的にみれば引き続き活発な英国の対アフリカ投資も、近年は相対的に地位が下がりつつある。2013年時点の対アフリカ投資残高は600億ドルで、1位のフランス(640億ドル)、米国(610億ドル)と僅差の3位だったが、出資先の売却や投資利益の回収により残高は減少。冒頭にみたように順位を下げており、足元では中国(2017年:430億ドル)も迫っている。2013年にサントリー食品インターナショナルが英国製薬大手グラクソ・スミスクラインの飲料事業を買収したように、英国企業のアフリカ事業を取得することも、市場開拓の有効な手段の1つだ。しかし、「協業」となるとイメージしづらく、関心も相対的に下がっているのが実情だ。

注目すべき英国のプレイヤー

ではアフリカ市場を攻める上で、英国との協業は本当に価値がないのか。実態はそうではなく、むしろ英国はより戦略的に活用できるというのが結論だ。協業相手として注目すべき3つのプレイヤー(図参照)を、以下に見ていく。

図:アフリカ市場開拓に活用できる英国の協業相手
アフリカ市場開拓に活用できる英国の協業相手について 【公的機関】ジェトロ作成 国際開発省(DFID)や同省の資⾦ を活⽤した企業・基⾦などがインフラ、 農業、医療、教育、イノベーションなど 幅広い分野で積極的に投融資・助成 などを実⾏。ブレグジット後を睨み、英国政府はアフリカとの経済関係強化にも意欲的。(CDCグループ 、⺠活インフラ開発グループ(PIDG)、英国輸出信⽤保証局(UKEF)、グローバル・イノベーション・ファンド 、イノベートUK 、ロジスティクス・イノベーション・フォー・トレード 、AgDevCo ほか。) 【スタートアップとエコシステム】欧州随一のスタートアップの集積を誇る英国には、アフリカを市場とする テック系スタートアップや、アフリカのスタートアップを支援するインキュベー ター、アクセラレーターなども存在。 (アズーリ、シムプリンツ等の大学発 テックベンチャー、ファウンダーズ・ファクトリー・アフリカ 、ザ・バオバブ・ネットワークなど) 【サービス・プロバイダー】アフリカの政財界と強⼒なコネクションを 持つ⾦融機関、法律・会計事務所、コ ンサルティング会社などが多数存在。アフリカに特化した企業データ会社なども。(スタンダード・チャータード銀⾏、大 小様々なPE等の⾦融機関 、多国展開する法律・会計事務所 、アソコ・インサイト等の情報企業) 【ビジネス・オペレーター 】フランスなどに比べるとアフリカで存在感 の大きい事業会社は少ないが、特定分野では強さを発揮。 (BP、タロー・オイル、リオ・ティント、BHP等の資源上流、ボーダーフォン、ユニリーバほか) 【アフリカ関連イベント】政府、企業、大学、シンクタンクなど様々な主体がアフリカ に関する国際会議やピッチイベントなどを多数開催。 (FTアフリカ・サミット、アフリカ・ビジネス・サミット(ロンドン・ビジネススクール)、ビジネス・イン・アフリカ・カンファレンス(ケンブリッジ大学)、アフリカ・テック・サミットほか)  

出所:ジェトロ作成

(1)公的機関

英国政府は以前から、政府開発援助(ODA)によりアフリカの社会経済開発に積極的に関与してきた。2016年には英国のEU離脱(ブレグジット)が決まり、離脱後にEU以外の国々と通商関係を深める必要性から、英連邦(コモンウェルス)加盟国を中心にアフリカへの経済的関心も増している。

テレーザ・メイ首相(当時)は2018年に財界幹部らを伴い、南ア、ナイジェリア、ケニアを歴訪。英政府系開発金融CDCグループによる最大35億ポンド規模の雇用創出関連投資、英政府などが出資する民活インフラ開発グループ(PIDG)による最大3億ポンドのインフラ投資、そして金融機関など英民間部門による40億ポンドの投資など、向こう4年間で総額80億ポンド(約1兆800億円、1ポンド=約135円)規模のアフリカ向け投資を実行すると表明している。

そのPIDGの一部門で、アフリカの初期段階のインフラ開発案件に資金を提供するインフラコ・アフリカが初期段階に投資したガーナ最大級の複合火力発電事業には、2014年に住友商事が出資している。PIDGも日本企業との協業に意欲を示しており、アジアでも東京電力との連携事例が生まれている。

こうした機関との協業は、案件の見極めやリスク軽減に極めて有効だ。英政府は英国輸出信用保証局(UKEF)の機能強化による資金アクセス拡大なども打ち出しており、日本企業も活用できる英国の公的支援スキームは広がっている。

(2)スタートアップ

協業し得るビジネスオペレーターは、巨大企業に限らない。新興企業にも目を向けると、英国の戦略的価値が飛躍的に増す。

柔軟で開かれた市場、世界トップクラスの高等教育機関、金融街シティといった強みを有する英国は、スタートアップの集積でも欧州随一だ。ユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)の数では米国、中国に次ぐ世界3位(2019年6月時点、テック・ネーション、ディールルームの共同調査)、スタートアップを支えるエコシステムでも、ロンドンが米国のシリコンバレー、ニューヨークに続いて世界3位(2019年、スタートアップ・ゲノム)に位置する。

そこには、アフリカを舞台に事業を展開するテック系スタートアップも多数存在し、日本企業との連携も生まれている。丸紅は2019年6月、ケニア、タンザニアなどアフリカの未電化地域で家庭用太陽光発電キットを販売する英国スタートアップ、アーズリ・テクノロジーズへの出資を発表した。NECも同月、生体認証技術の英国スタートアップ、シムプリンツテクノロジーと、ワクチン接種を推進するスイス本拠の国際団体GAVIアライアンスとの間で覚書を締結。開発途上国の予防接種率向上を目指し、指紋データを予防接種記録に活用する実証実験を、2020年前半にタンザニアとバングラデシュで始める。いずれも、ケンブリッジ大学発のスタートアップだ。

ファウンダーズ・ファクトリー・アフリカ(FFA)、ザ・バオバブ・ネットワーク(TBN)など、アフリカのスタートアップを支援するインキュベーター、アクセラレーターも英国に拠点を構える。FFAはアフリカ最大手銀行の南ア・スタンダード銀行と、TBNは化粧品世界最大手のフランス・ロレアルなどの多国籍企業と連携している。アフリカのスタートアップ探索のため、こうした英国のプレイヤーとの協業を検討する価値は十分にあるだろう。

(3)サービスプロバイダー

歴史的・地理的なつながりを背景に、アフリカに深く食い込むコンサルティング会社や法律・会計事務所、ファンドなどが英国に多数存在することは、よく知られている。多国籍展開する大手から、個人単位で動くブローカーまでさまざまだ。

近年は、アソコ・インサイトなど、アフリカの企業情報をデータ化して提供する調査会社なども生まれており、金融機関や多国籍企業などを顧客に事業を拡大している。TBNも2018年末、アフリカのテック・エコシステムの情報を提供するサービスを立ち上げた。こうした英国のサービスプロバイダーを、うまく活用することも有効だ。

今こそ戦略的な活用を

英国では、こうしたプレイヤーがアフリカを舞台にダイナミックに活動している。アフリカに関するノウハウ、技術、経験、情報は極めて価値が高い。日本企業も、その資産や能力を一層活用しない手はない。

さらに英国では、アフリカに関するさまざまな会議や催しが多数行われ、現地の政財界の第一線で活躍する人々が頻繁に渡航している。人脈形成や協業相手の探索においても、英国は欠かせない。

ジェトロ・ロンドン事務所のアフリカ・デスクでは、これらのプレイヤーとの橋渡しを含め、英国を活用したアフリカ市場開拓を積極的に提案していく所存だ。

執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所 次長
宮崎 拓(みやざき たく)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ・ドバイ事務所(2006~2011年)、海外投資課(2011~2015年)、ジェトロ・ラゴス事務所(2015~2018年)などを経て、2018年4月より現職。

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