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TICAD特集:アフリカビジネス5つの注目トレンド国営企業の民営化などの変革期、積極的な仕掛けが望まれる(エチオピア)

2019年7月31日

アビィ・アハメド首相が2018年4月に就任して以降、エチオピアが政治・経済改革に本腰を入れている。経済分野で注目を集めるのは国営企業の民営化で、官民パートナーシップ(PPP)法に基づく案件管理組織の設置(PPP運営委員会)や、投資法での外国投資開放分野の見直しなども進めている。こうした政策転換と制度変更は、外資企業にも新たな商機を提供するとみられ、既に欧米などの企業から関心を集めている。

改革の加速は、経済面からも不可欠

エチオピアでは、ハイレマリアム・デサレン前首相の下で、海外直接投資の受入額を大きく増やしてきた。海外から企業誘致を進めることにより資本流入を促すとともに、技術移転、雇用促進も図ってきた。政府は軽工業ハブを目指して工業団地整備を進め、繊維・縫製産業を中心に、アジア企業、最近では欧米からの投資もみられるようになっている。アビィ首相に代わっても、引き続き外国企業誘致は最重要課題の1つであり、経済改革努力は加速化している。これにはいくつかの理由があり、まずは改革継続と加速化そのものが、政治面でみられる民主化努力と周辺国との善隣外交とともに、国内外に「開かれたエチオピア」を印象付ける。加えて、改革継続と加速化が不可避な面もある。エチオピアの国際収支は構造的に赤字体質にあり、外貨不足が経済成長のみならず、国民生活の足かせともなっている。政府はこの現状を解消するためにも、ビジネス環境整備に取り組まざるを得ず、海外資本を引きつけ続ける必要がある。

今後2~3年かけて進む民営化

連合与党は、2018年6月に開いた理事会で、民営化の方針を示した。理事会声明では、鉄道、砂糖工場、工業団地、ホテル、その他工業製品の製造を含め、全額政府出資の企業については、株式の一部または全てを民間企業に譲渡するとし、通信を独占するエチオテレコム、アフリカ随一の航空会社であるエチオピア航空、エチオピア向け貨物を事実上独占するエチオピア海上輸送物流サービス公社、エチオピア発電公社についても、部分民営化が示された。これら民営化の多くは、今後2~3年かけて進むと、政府高官がたびたびメディアで発言している。最初の方針発表から1年余りを経た現時点では、工業団地開発公社(IPDC)が2019年5月に、ジンマ工業団地(75ヘクタール)の運営で華堅集団(中国)と合意している。華堅集団は、2011年にエチオピアに進出しており、靴を製造し欧米に輸出している。2016年以降はアディスアベバ郊外に自社開発の華堅工業団地を整備・運営中で、周辺都市開発も含めた巨額投資を実施している。運営権を取得したジンマ工業団地では、最大1億ドルを投じて靴を増産し、コーヒー輸出も手掛けるという。

工業団地に続くとみられるのは、砂糖工場とエチオテレコムの民営化だ。砂糖工場の民営化では、財務省と砂糖公社が建設中の製糖工場を含む、13件全てを民営化対象とする方針で、このうち、5~6件は今後1年以内に民営化を完了したい考えだ。すでに各工場の資産や生産能力、環境影響評価などの調査を終えており、企業参入を可能にする砂糖法案の策定を進める一方、国内外企業から関心表明を募っており、海外からはケニア、モーリシャス、アラブ首長国連邦(UAE)、モロッコ、南アフリカ共和国(以下、南ア)などの企業が関心を寄せている。より広範に関心を集めているのは通信分野だ。エチオテレコムの民営化では、ドイツテレコム、オランジュ(フランス)、MTN(南ア)、ボダコム(同)、サファリコム(ケニア)、ベトテル(ベトナム)など、国際的に著名でアフリカ域内で実績のある通信会社が名乗りをあげている。政府は通信分野を、電波塔建設や光回線敷設などのインフラ整備部門と、そのインフラを使った通信サービス提供部門とに上下分離し、新規に2社の参入を認めて、エチオテレコムと競わせる方針を固めている。すでに、独立通信規制庁の設置法が国会で成立しており、通信分野の民営化は2020年第1四半期にも完了する見込みだ。

「待った」がかかった航空部門

他方、エチオピア航空の民営化については、政府内部や民間から異論が相次ぎ、現在では鳴りを潜めている。エチオピア航空は航空連合スターアライアンスに加盟し、航空サービス調査会社スカイトラックス(英国)の国際評価では3年連続で4つ星を獲得、2019年もアフリカ地域の最優秀航空会社との評価を得ている。こうした実績により、アフリカ各国から自国の航空会社再興を嘱望されている。政府が株式100%保有でも、経営は独立しており、国内では「国有企業だから直ちに非効率を意味するわけではなく、優良会社をわざわざ売却する必要はない」との論調が多数を占める。エチオピア航空の貨物部門は、2018年7月にDHL(ドイツ)と合弁会社設立で合意しているが、これは民営化ではなく、従来、国内企業のみに限っていた物流部門に、外国企業からの50%未満の出資を認めた最初の事例である。内陸国であることから、かねて投資家からは、物流コスト(時間、費用、非効率)への不満の声が政府に寄せられており、物流部門改革の一環として、鉄道公社や海上輸送物流サービス公社との競争を促す意図も持つ。その鉄道公社は、ジブチとの間で電化鉄道を運行中だが、商業借款を含めた巨額債務の存在や総裁の辞任などもあり、民営化は進んでいない。海上輸送物流サービス公社は、ひとまず物流の運営改善を先行させ、トラック調達などを進めている。しかし、同公社が管理する内陸コンテナデポでは、2019年3月のマクロン大統領のエチオピア公式訪問に前後して、CMA/CGM社(フランス)が当地最大のモジョドライポートの運営で合意した、と報じられている(「リポーター」紙3月16日付)。旅客・物流を含む輸送部門の民営化の進捗はまだら模様で、効率改善をキーワードに、投資家からの提案が歓迎される状況といってよさそうだ。

発電施設は官民パートナーシップで整備

発電部門は、国家の威信をかけて建設を進めるグランドルネッサンスダム〔発電能力6,000メガワット(MW)〕を除き、今後の発電施設は、原則、民間資金による建設・保有・運営・譲渡など(いわゆるBOTやBOOTスキーム)を想定し、開発していく考えだ。IMFなどから債務持続性について注意喚起される中、新規借り入れには譲許的なものを除き、慎重姿勢とならざるを得ない。その中でインフラ建設を進めるには、財源を注意深く選択する必要があり、資金回収が見込める案件はPPPを推進していくしかない。自然エネルギーを活用した電源多様化を図る中で、PPP運営委員会はすでに地熱や風力など複数の発電案件を認可している。発電公社そのものは当面、債務を整理するなど、民営化より構造改革を先行させる。

これら紹介した変化は今後も続き、エチオピアの変貌から目が離せない状況が続く。筆者が接するエチオピア政府高官からは異口同音に、出資だけではなく具体的なノウハウを持つ企業を求めている旨が語られる。民営化にしてもPPPにしても、エチオピア政府の姿勢は一貫しており、企業と一緒に国際水準の投資環境を整備し、世界で勝負できる企業を作っていくことに関心がある。幸い、日本企業への評価や信頼は高く期待も大きい。45年前まで皇帝が統治する帝国だったエチオピアでは、当時、日本が最大の投資家であったという。それを記憶する意思決定権者も多く、概して日本企業には好意的だ。仕組みが変わる中で、待ちの姿勢ではなく、提案型で攻める日本企業が歓迎される。

執筆者紹介
ジェトロ・アディスアベバ事務所 事務所長
関 隆夫(せき たかお)
2003年、ジェトロ入構。中東アフリカ課、ジェトロ・ナイロビ事務所、ジェトロ名古屋などを経て、2016年3月から現職として事務所立ち上げに従事。事業、調査、事務所運営全般からの学びを日本企業に還元している。

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