2024年は輸出入とも過去最高、貿易赤字が拡大(米国)
アジアなどから輸入増、対日赤字は低下

2025年5月20日

米国商務省は2025年3月21日、2024年の貿易統計(国際収支ベース)を発表した。財・サービスをあわせた(1) 輸出額、(2)輸入額とも、過去最高だった。一方、(2)の増加幅が(1)を上回り、貿易赤字が1,329億ドル増加し、9,178億ドルになった。特に対アジア諸国・地域(日本などを除く)での貿易赤字は、過去最大を記録した。財貿易では、資本財が最大の押し上げ要因になった。対日貿易赤字は31億ドル縮小し、687億ドルだった。

輸出入とも過去最大

米国商務省の発表によると、輸出(財・サービス)は前年比3.9%増の3兆1,906億ドル。輸入は6.5%増の4兆1,084億ドルになった(表1、図1参照)。輸出入額とも、データが確認できる1980年以降最大となり、貿易赤字額は、2022年に次いで2番目に高い水準となった。

財、サービス別には、財が1兆2,130億ドルの赤字、サービスが2,952億ドルの黒字だった。

表1:財・サービスの輸出入と貿易収支(国際収支ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
項目 2023年 2024年
金額 前年比
(貿易収支は差額)
金額 前年比
(貿易収支は差額)
輸出 3,071,816 1.1 3,190,606 3.9
階層レベル2の項目 2,045,221 △ 2.2 2,083,247 1.9
階層レベル2の項目サービス 1,026,596 8.2 1,107,358 7.9
輸入 3,856,707 △ 3.2 4,108,441 6.5
階層レベル2の項目 3,108,509 △ 4.9 3,296,236 6.0
階層レベル2の項目サービス 748,198 4.8 812,205 8.6
貿易収支 △ 784,890 159,872 △ 917,835 △ 132,945
階層レベル2の項目 △ 1,063,288 116,653 △ 1,212,989 △ 149,701
階層レベル2の項目サービス 278,398 43,219 295,154 16,756

注:貿易収支の前年比は差額。
出所:米商務省データを基に作成

図1: 財・サービスの輸出入と貿易赤字(国際収支ベース)(単位:億ドル)
貿易赤字は、2006年に7,635億ドルと高い水準を記録したが、その後、リーマンショックの影響により2009年には3,948億ドルまで減少した。その後、貿易赤字は再び拡大する傾向にある。2024年は、輸出額が3兆1,906億ドル、輸入額が4兆1,084億ドル、貿易赤字は9,178億ドルとななった。

出所:商務省データを基にジェトロ作成

財貿易に限ると、輸出が前年比1.9%増の2兆832億ドル、輸入額が6.0%増の3兆2,962億ドルになった(表2参照)。

主要品目別では、輸出入とも、資本財が最大の押し上げ要因になった。輸出品目を寄与度(注)順にみると、(1)民間航空機用エンジンおよび部品(寄与度0.66)やコンピュータ部品(同0.55)、(2)コンピュータ(同0.42)、(3)半導体(0.40)、輸入では、(1)医薬品(同1.40)、(2)コンピュータ部品(同1.08)、(3)コンピュータ(同0.91)、(4)乗用車(同0.52)になる。輸出の(1)~(3)はすべて資本財、輸入では(1)だけが消費材だ。

表2:2024年の主要財別貿易(国際収支ベース)

(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
輸出
主要品目 金額 前年比
食料品・飲料 165,761 2.4
工業用原材料 717,868 △ 0.2
(うち原油) 118,038 0.5
資本財 646,912 7.3
自動車・同部品など 173,262 △ 3.8
消費財 259,402 0.1
その他 120,042 △ 1.7
合計 2,083,247 1.9
輸入
主要品目 金額 前年比
食料品・飲料 217,323 7.9
工業用原材料 659,845 △ 1.3
(うち原油) 171,997 1.5
資本財 969,757 12.1
自動車・同部品など 475,443 3.5
消費財 806,603 6.5
その他 167,265 6.7
合計 3,296,236 6.0

出所:商務省データを基にジェトロ作成

アジアなどとの貿易赤字が拡大

財貿易を主要国・地域別にみると、輸出では次の通り。

  • メキシコが最大の押し上げ要因になった(表3参照)。前年比3.5%増の3,344億ドルだった。「機械類(HSコード84)」「電気機器(HS85)」「航空機および部品(HS88)」などで、輸出が増加した。
  • 次いで、英国が7.2%増の805億ドル。「真珠・貴石など(HS71)」「航空機および部品」「機械類」が増加した。
  • ブラジルが11.1%増の493億ドルで、続いた。「航空機および部品」「医薬品(HS30)」「プラスチックおよびその製品(HS39)」などが伸びた。
表3:2024年の国・地域別財貿易額(国際収支ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域名 輸出 輸入 貿易収支
金額 前年比 金額 前年比 金額 前年との差額
EU 372,442 △ 1.4 609,190 5.1 △ 236,748 △ 35,103
カナダ 349,891 △ 1.4 420,494 △ 1.6 △ 70,603 1,726
メキシコ 334,431 3.5 515,948 6.5 △ 181,517 △ 20,135
中国 144,571 △ 2.8 439,749 2.9 △ 295,178 △ 16,462
日本 80,809 5.3 149,554 0.6 △ 68,744 3,134
英国 80,515 7.2 69,123 5.7 11,392 1,700
韓国 66,863 0.7 133,084 13.3 △ 66,221 △ 15,225
ブラジル 49,285 11.1 42,529 8.8 6,757 1,473
シンガポール 45,904 8.2 42,932 5.1 2,971 1,395
台湾 42,705 5.5 116,370 32.6 △ 73,665 △ 26,337
インド 41,857 3.4 87,458 4.5 △ 45,602 △ 2,369
サウジアラビア 13,477 △ 5.3 12,781 △ 19.8 697 2,416
ベトナム 13,103 33.2 136,578 19.4 △ 123,475 △ 18,877
その他 447,394 4.0 520,446 9.3 △ 73,053 △ 27,037
世界計 2,083,247 1.9 3,296,236 6.0 △ 1,212,989 △ 149,701

出所:商務省データを基にジェトロ作成

財貿易を主要国・地域別にみると、輸入では次の通り。

  • 輸出同様、メキシコが最大の押し上げ要因になった。前年比6.5%増の5,159億ドルだった。「機械類」「自動車など(HS87)」「電気機器」などが伸びた。
  • 次いでEUが5.1%増の6,092億ドル。医薬品、有機化学品(29)、航空機および部品が増加した。
  • 続いて、台湾が32.6%増の1,164億ドル。目立つのは、「コンピュータ(HS8471)」「コンピュータ部品(8473)」などの「機械類」「集積回路(HS8542)」などの「電気機器」「鉄鋼(HS72)」など。
  • さらにベトナムが19.4%増の1,366億ドル。「機械類」「家具類(94)」「履物類(64)」などが牽引(けんいん)した。

財貿易赤字を増加幅順にみると、(1) EU、(2)台湾、(3)メキシコ、(4)ベトナム、(5)中国、(6)韓国の順に増加した(図2参照)。(1)は前年比351億ドル増の2,367億ドル、(2)は263億ドル増の737億ドル、(3)は201億ドル増の1,815億ドル、(4)は189億ドル増加して1,235億ドルになった。(5)の中国以外はいずれも、データの確認できる1999年以降、最大を記録した。

中国に関しては、輸出が減少し、輸入が増加した。その結果、赤字額は前年から165億ドル拡大し、2,952億ドルになった。対中赤字額は前年比では増加したものの、2010年以降で2番目に低い。輸出では、原油などの「鉱物性燃料(HS27)」「採油用の種子・果実(HS12)」などが押し下げた。一方、輸入では「医薬品」「自動車など」「鉄鋼製品(HS73)」などが増加した。このうち自動車に関しては、トランプ政権(2025年1月発足)下での不透明な貿易環境を見越し、2024年後半に輸入を前倒しした影響が強いという見方が多い。

また韓国との貿易は、「自動車など」「機械類」「医薬品」「不揮発性半導体記憶装置(8523)」などの「電気機器」の輸入が伸びた。その結果、赤字額が152億ドル増、662億ドルになった。

対日赤字は縮小

日本に向けては、輸出の伸びが輸入の伸びを上回った。その結果、赤字額が31億ドル縮小。687億ドルになった。対日貿易赤字の減少は4年ぶりになる。輸出は、「医薬品」「機械類」「航空機および部品」が押し上げた。輸入は、「医薬品」「自動車など」が伸びを牽引した。

図2:国・地域別財貿易赤字額推移
2024年は中国が最多で2,952 億ドル、次いでEUが2,367 億ドル、メキシコ(1,815億ドル)、ベトナム(1,235 億ドル)が続いた。いずれも2000年から大幅に増加している。

出所:米商務省データを基にジェトロ作成


注:
寄与度は、輸出(または輸入)全体に、国ごとの実績の変化がどのくらい影響したかを示す指標。具体的には、〔各品目の輸出(または輸入)額増減〕÷〔前期の輸出(または輸入)額〕×100で計上する。全ての国の寄与度を合計すると、全体の伸び率と同じ数値になる。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 リサーチ・マネージャー
大原 典子(おおはら のりこ)
民間企業勤務を経て2013年からジェトロ・ニューヨーク勤務。自動車産業を柱に米国の産業調査を担当。