TICAD特集:アフリカビジネス5つの注目トレンド政府のアフリカ支援強化で連携加速か(米国)

2019年7月31日

米国企業のアフリカ進出は、従来の資源中心から、情報通信や小売り・流通などに拡大がみられる。直接投資残高(2017年末)を分野別にみると、構成比が最も高い資源分野の比率は35%と、2014年末の62%から大幅に低下した。一方、2012年末からの5年間では食品製造(4.0倍)、情報産業(4.5倍)、システム管理などの専門サービス(2.2倍)が伸びている。

こうした中、米国政府の対アフリカ政策はどう変化しているのか、また、米国企業との連携の余地は。米国企業のアフリカ進出を長らく支援してきたマンチェスター・トレード副社長で、ジョンズ・ホプキンス大学非常勤教授も務めるアンソニー・キャロル氏に聞いた(注)。


キャロル氏(本人提供)

米国内でのシェールガス開発を受け資源の比重が低下

質問:
米国企業のアフリカ進出動向は。
答え:
以前は資源関連の企業が大半を占めたが、最近は多様化している。中でもゼネラル・エレクトリック(GE)は発電、石油・ガス、ヘルスケア、鉄道など多角的に投資を進め、インフラ開発と技術革新に大きく貢献している。
情報通信でも活発な投資が見られる。IBMは1920年代に進出し、域内20カ国以上に拠点を持つ。近年ではヨハネスブルク(南アフリカ共和国)とナイロビ(ケニア)に研究開発施設を設立し、人工知能(AI)を活用した社会課題解決事業などを実施する。マイクロソフトは進出から25年を数える。デジタル化の促進やスキル人材育成に力を入れ、2019年5月にはナイロビとラゴス(ナイジェリア)にアフリカ開発拠点を開いた。グーグルも投資を加速させており、2019年4月にガーナにAI研究所を設置した。アマゾンは2005年にケープタウン(南ア)に技術センターを開いたものの、2015年までアフリカの重要性に気付かず、他社に出遅れた。その後、急ピッチでネットワークインフラの整備を進めている。
食品や小売り・流通分野では、ケロッグのナイジェリア合弁会社が生産工場を有するほか、ウォルマートはアフリカ広域展開のパートナーとして南アの現地大手流通業者を傘下に収め、市場に参入している。
質問:
貿易面での動きは。
答え:
通商政策では、2000年にクリントン政権下で施行されたアフリカ成長機会法が中心で、2015年に10年延長が決定し、2025年までの適用が決まった。市場経済化や法による統治などの一定の条件を満たすサブサハラ・アフリカ諸国に対して、米国への輸出において特恵関税が適用される。米国からアフリカへの輸出は、2016年から2018年までの3年間で2割ほど増加しているものの、過去十数年を振り返ると縮小傾向と言える。全世界に占める割合は2%にも満たない。貿易品目の変化で特筆すべきは、米国内でのシェールガス開発により、これまで輸入の8割を占めていたナイジェリア、アンゴラ、チャドなどからの鉱物性燃料の輸入が大幅に減少したことだ。輸出は、国別では南ア、エジプト、モロッコ、ナイジェリア向け、品目別では石油・同製品、建機部品・ガスタービン、航空機・同部品、自動車・同部品などが上位に並ぶ。

中国に対抗、米政府がアフリカ進出支援を大幅強化

質問:
トランプ政権のアフリカ政策の特徴は。
答え:
前政権と明らかに異なるのは、政策課題の焦点が「中国とロシアの増大する影響力への対抗」に置かれていることだ。両国が政治的な影響力と経済取引を拡大させるために賄賂や不透明な融資のほか、環境破壊や法制度を逸脱した非倫理的な行動を繰り返していることを、現政権は声高に批判している。また、中国のアフリカ市場での経済的な躍進が、政策転換の要因であることは言うまでもない。従来の経済相手国であった英国やEU、日本などのプレゼンスは低下し、中国の台頭に加えてインド、ロシアもそれに追随する。中国企業の躍進は、一方でアフリカ市場の潜在力を立証するきっかけになった。米国企業は、市場競争でこれ以上、中国に後れを取ることへの危機感を募らせている。
質問:
具体的な政策は。
答え:
2019年6月、マプト(モザンビーク)で開催された米国アフリカビジネスサミットで「プロスパー・アフリカ」イニシアチブが正式に発足した。米国アフリカ間の貿易投資の倍増を目指し、双方企業に対して市場参入のための支援を提供する。もう1つは、2018年に成立したビルド法だ。海外インフラ支援枠の強化が目的で、これまで保険商品や間接的な融資しかできなかった米海外民間投資公社(OPIC)と、米国際開発庁(USAID)の一部機能が統合されて、米国際開発金融公社(USIDFC)が新設された。
同公社には600億ドルの支援枠が付与され、企業への直接的な低利融資も可能になった。さらに、この600億ドルのうち、4分の1がアフリカ投資支援に配分された。これを機に、米国企業のアフリカ向け投資は急速かつ大幅に加速すると期待される。既存の米輸出入銀行(EXIM)や米貿易開発庁(TDA)との協業も図られるが、アフリカを含めた支援対象の拡大を目指す。中国が「一帯一路」構想などで、インフラ支援を通じて影響力を増大させていることを踏まえたものだ。

ビジネス協議会や商工団体の現地ネットワークがメリット

質問:
日本企業との連携可能性は。
答え:
トランプ政権はインド洋と太平洋にまたがる広範囲で、日本やオーストラリア、インドとの関係を強化させている。日米の政府機関の間では、2017年にOPICと国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)とがそれぞれ覚書を締結した。EXIMとNEXIや、米国地質研究所(USGS)と石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)などは長年良好な関係を築いている。こうした中、日本企業は米国企業と組むことで、先に述べた米政府によるインフラ支援枠の強化に伴う恩恵を享受できるだろう。
アフリカ諸国の政府や企業に対して、強力なネットワークと影響力を持つ、2つの商工団体の存在も大きい。米国商工会議所アフリカセンターと、米国アフリカビジネス協議会(CCA)だ。商工会議所は米国企業メンバーに限定してサービスを提供しているが、CCAはフランスやカナダの商工団体とも協力している。日本の在アフリカ商工団体も同様に、CCAとの連携が可能であろう。また、こうした団体の活動や米国企業を支えているのは、米国のビジネスコンサルタントでもある。アフリカ諸国の政府要人や企業関係者などの重要人物を数千人単位でリストアップし、ネットワークの維持に日々努めている。こうしたコンサルタント企業の活用も連携のかたちとして有効と言えよう。

注:
2019年6月21日、ジェトロによるヒアリング。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課 課長代理
高崎 早和香(たかざき さわか)
2002年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、ジェトロ熊本、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所(2007~2012年)を経て現職。共著に『FTAガイドブック』、『世界の消費市場を読む』、『加速する東アジアFTA』など。

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